上 下
78 / 103

78、美味しいご飯と色欲と強くなりたい男

しおりを挟む


「ご飯できたよ」

「待ってました!」

 魔法陣の前に座る俺を、呼びに来たのはアリスさん。

「ダーリン、今日も凄く美味しいよ!」

「イレイザ、アリスさんの料理に間違いはない!」

 先にテーブルに着いていたイレイザは、笑顔でアリスさんの作ったご飯を食べていた。

「あのね‥‥‥そんな理由でこんなとこに呼ばないでよ」

 溜息を吐いてるアリスさん。
 でもなんだか嬉しそう。

「アリスさん、本当にごめん。召喚するつもりはなかったんです‥‥‥」

 俺の頭が導き出した、毎日美味しいご飯を食べるための方法は、アリスさんの召喚だったようだ。
 まあ、大正解だったわけだが‥‥‥。
 アリスさんは創造主に狙われている訳ではないので、祠から出ても良いのだが、1人でプリングの街まで帰る手段がない。
 そして大丈夫だとは思うが、この辺りから俺の関係者が急に現れるのもどうかとは思う。
 『天使ちゃん一号』と戦ったのは、この祠の近くなのだ。
 祠が見えてないとはいえ、俺が最後に目撃された場所の近くは目をつけられてる可能性が高い。
 アリスさんには申し訳ないが、暫く3人で生活する事になった。

「アリスさん、おかわり頂いてもよろしい?」

「はいはい。イレイザ、片付けは手伝ってよ? その後は今日も料理の練習する?」

「ありがとうアリスさん。私もダーリンに美味しいご飯を作れるように頑張るわ」

 祠での生活を開始してから数日、イレイザはアリスさんに完全に懐いていた。
 ご飯の力は偉大。
 
「さてと、俺も美味しいご飯を食べて昼からも頑張るぞ!」

 アリスさんから聞いた情報によると、レイラは魔王と一緒にレベル上げをしてるらしい。
 女神様が言うように、創造主はレイラと魔王には攻撃してこないようだ。
 そして、俺の心にも火がついていた。
 魔法陣を使ったレベル上げはかなりずるいが、魔王が行う修行も凄いものだと思う。

 ──負けないぞ!


「ごちそうさま。アリスさん美味しかったわ。片付け先にしとくね」

 尻尾をフリフリしながら部屋を出るイレイザ。

「ところであんた、あの娘の事、ちゃんと面倒見れるの?」

 イレイザが部屋を出るのを確認してから、コッソリ耳打ちしてくるアリスさん。
 あの娘とか言ってるが、あれは魔族でしかも魔王軍の四天王なんだけどな‥‥‥。
 まあ、アリスさんは魔王とも仲良しなのだが。

「‥‥‥面倒とは?」

「レイラと魔王さん怒らない?」

「‥‥‥怒るんじゃないかな」

 レイラは確かイレイザを亡き者にしようとしてたし、魔王はイレイザの上司だ。
 
「じゃあなんで手を出したの?」

「‥‥‥記憶にございません」

 本当に全く覚えてない。

「うわ、あんたサイテー」

「だって覚えてないものは、覚えてないんだい!」

 朝起きたら、見知らぬ女性が横で寝てたっていう例のアレだ。

「男の子なんだから、責任はしっかりとりなよ」

「‥‥‥なんか考えときます」

「あとね、私が言うことじゃないかもしれないけど、押しに弱いのもほどほどにしないと、嫁の人数がとんでもないことになるよ。あんたモテるんだから、そのへんをもう少し自覚した方がいいと、私は思う」

 そう言うとアリスさんも部屋を出て行った。
 怒られてしまった。
 
「‥‥‥とりあえずレベル上げしよう」

 なんにしろ『天使ちゃん』を余裕で倒せるくらいに強くならなくては、ここから出ることも出来ない。
 2人にイレイザの事を話すのは、少なくともその後になる。
 
 ──2人とも怒るだろうな。

 ‥‥‥しかし俺は、いつ魔王と付き合ったんだろうか?
 確か何かの勝負に負けて、魔王の慰み者になったんだっけ。
 魔王の慰み者。
 これは付き合ってるのか?!
 ‥‥‥よくわからん。

「まあ、レイラと魔王、2人に早く会いたいのは事実だ」


 早く強くなろう。
 誰にも負けないくらいに。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six
ファンタジー
大学生の浅野壮太は神さまに転生してもらったが、手違いで、何も能力を与えられなかった。 転生されるまでの限られた時間の中で神さまが唯一してくれたこと、それは【ステータスの上限を無くす】というもの。 さらに、いざ転生したら、神さまもついてきてしまい神さまと一緒に魔王を倒すことに。 神さまからもらった能力と、愉快な仲間が織りなすハチャメチャバトル小説!

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...