69 / 103
69、天使の羽根は取り外し可能?
しおりを挟む俺は一度プリングの街に転移してから、祠を目指していた。
とりあえず急げとの事なので、マスターしていた飛行魔法で空を飛んでます。
歩きとは比較にならないほど速い。
「‥‥‥俺も海に行きたかったな」
無念である。
「そもそもなんで俺が狙われてるんだ? 」
俺がそんなに悪いことしたか?
女神様より上の存在で、俺の殺害命令を出した黒ずくめの男。
そいつの指示で、狙ってくるのが『天使ちゃん一号』。
ふざけた名前だが天使。
考えたくないが、黒ずくめの男の役職はなんとなくわかりましたよ。
──神。
そんな存在がいるのかどうかは知らないが、もうきっとそいつはそんな感じの人なんだろう?
「‥‥‥命は狙われるし、2人の水着姿は見れないし、今日は散々な日だ」
全部黒ずくめの男が悪い。
そして許さない。
1人で楽しみやがって。
会ったらぶん殴ってやる。
──レベルをもっと上げてからな!
‥‥‥今は逃げる。
「お、あれが祠のある森かな?」
はるか先に鬱蒼としげる森が見えてきた。
かなり広大。
森というか最早ジャングル。
「‥‥‥祠なんてすぐ見つかるのか?」
あまり手間取っていると、黒ずくめに気付かれるかもしれない。
女神様も、もう少し詳しく場所を教えてくれたら────
「目標を発見。排除を開始」
「‥‥‥え?」
不意に頭上からの声。
ここは空の上。
人などいるはずもない。
──油断した!
声のする方を向こうとした時には遅かった。
ドガッ!
「ぐっ‥‥‥」
頭上からの攻撃。
後頭部を殴られ、地面に叩きつけられていた。
「いたたたたっ‥‥‥。くそっ、完全に不意打ちじゃないか!」
急いで立ち上がり、空を確認すると人影が見えた。
──攻撃してきたのはあいつか。
金髪ショートカットで、黒いゴスロリファッションに身を包む女性。
背中の大きな白い羽根を優雅に羽ばたかせながら、俺の方に降りてくる。
何故ゴスロリファッションなのかは気になるが、おそらくこいつが『天使ちゃん一号』なのだろう。
「‥‥‥逃げきれなかった」
俺はこっそり祠に入らなければいけなかった。
見つかってしまったら、レイラと魔王の囮も無駄だろう。
作戦失敗だ。
──戦うか?
魔王でも勝てないかもしれないと言ってたな‥‥‥。
今の俺に勝てる気はしない。
‥‥‥どうしよう。
考えがまとまるまで、待ってくれるわけもなく、『天使ちゃん一号』と思われる女性が俺の前に舞い降りた。
真っ白い羽根がとても綺麗、まさに天使。
──あれ?
ゴスロリファッションの『天使ちゃん一号』は、近くで見ると10代半ばの可愛い少女だった。
‥‥‥そしてその顔には見覚えがある。
「‥‥‥女神様、何やってんですか?」
服装と羽根が生えてる事を除けば、完全に女神様です。
逃げろ言っといて自分で襲ってきますか?!
綺麗な羽根とか生やして生意気な。
ちょっと羨ましいぞ。
これが本来の姿なのかな?
「詳しく事情を教えてください。いったいなにがどうなって────」
ドゴーンッ!
「ちょっと! なんで攻撃してくるんですか?!」
すんでのところでかわせたが、女神様の手から放たれた魔法が、俺がいた辺りの地面に大きな穴をあけていた。
「‥‥‥何か話せない事情でもあるんですか?」
「‥‥‥」
無言でこちらを見ている女神様。
女神様が『天使ちゃん一号』なのか?
『天使ちゃん一号』が女神様なのか?
‥‥‥一緒か。
──よし! わからん。
「女神様! 聞こえますか!」
「‥‥‥」
やっぱり反応無し。
操られている可能性もある。
こちらからは攻撃したくない。
かと言ってこいつは魔王より強いんだろ?
この状況、俺が選べる選択肢は一つしかない。
──全力で逃げる!
俺のとっておきの緊急脱出魔法。
打ち上げ花火だ。
転移魔法は少し時間がかかるので、戦闘中は向いてない。
無防備になりすぎる。
打ち上げ花火で、距離を取ってから転移してやる。
「さらばだ!」
俺の全力の魔力を一気に放出。
ブシューーーッ!
俺は物凄い勢いで上空へ飛び上がった。
目が開けられない程のスピード。
「とにかく逃げて、魔王に詳しく聞いてみるか」
かなり距離を取れたので、転移魔法の準備に入ったのだが──
──殺気?
「‥‥‥」
「‥‥‥嘘でしょ?」
自分の身体より大きな両手剣を構える、ゴスロリ少女が目の前にいた。
かなりのスピードで飛んでいるのに‥‥‥。
グシャッ!
「‥‥‥ぐはっ!」
脳天から叩きつけられた大剣により、一瞬意識が飛んだようで、気付いた時には地面に大の字で転がってた。
寝転がる俺の前には、ゴスロリ少女が大剣を担ぎ無表情で立っている。
「うわ!」
転がりながら距離を取って、立ち上がる俺。
まだ頭がガンガンする。
連続で頭に攻撃を受けたからだろうな。
──どうすんのよこれ?
ゴスロリ少女がトラウマになりそうです。
0
お気に入りに追加
607
あなたにおすすめの小説
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?
木山楽斗
恋愛
英雄の血を引くリメリアは、若くして家を継いだ伯爵の元に嫁いだ。
若さもあってか血気盛んな伯爵は、失言や失敗も多かったが、それでもリメリアは彼を支えるために働きかけていた。
英雄の血を引く彼女の存在には、単なる伯爵夫人以上の力があり、リメリアからの謝罪によって、ことが解決することが多かったのだ。
しかし伯爵は、ある日リメリアに離婚を言い渡した。
彼にとって、自分以上に評価されているリメリアは邪魔者だったのだ。
だが、リメリアという強力な存在を失った伯爵は、落ちぶれていくことになった。彼女の影響力を、彼はまったく理解していなかったのだ。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
姉の持ち物はすべて妹のもの。それなのに、玉の輿!? 旦那様を渡しなさいよ!
青の雀
恋愛
第1話
妹レイナは、なんでも私のものを欲しがる。ドレスでもアクセサリーでも。
「お姉さまの幸せは、妹レイナの幸せ。」をモットーに。
婚約者を寝取られ、差し上げたにもかかわらず、次の婚約者にまでちょっかいを出した妹。王女殿下の怒りを買い…。
第2話
公爵令嬢が婚約者の王太子の誕生日会で男爵令嬢を虐めていたと冤罪をでっちあげ婚約破棄される。
公爵令嬢は、「どうぞ、ご勝手に」とさっさと破棄を受け入れる。
慌てる国王陛下と王妃殿下、その理由は…。
セクションの意味がわかりませんか?一般的だと思って使用していました。第〇条のことをいいます。お小さい方が読まれることが多いのかしら。一般教養で普通に習うことです。法律用語の使い方を知らない人が読まれているようです。正しい法律用語を覚えられるように書いていく所存です。
永く書き過ぎました。今日で終話とさせていただきます。
また、いつかどこかで。
他サイトで継続して書いています。探してみてください。HN,タイトル違うからわからないかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる