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65、魔王の壁

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「ニア様、レベルいくつになりましたか?」

「今963だね。レイラは?」

「私は859です」

 王様スライムと戯れる事1ヶ月。
 まだまだ魔王には届かない。
 なんなんだレベル1578って。

「やっぱりニア様のレベルには、全然追いつけないです」

「王様は俺の石投げの方が倒しやすいしな」

 レイラは剣でザクザクと一撃で倒しているが、俺は適当に遠くからでも投げてりゃ倒せる。
 やっぱ、投げるって最強。

「私も頑張ります! 魔王さんには負けてられません!」

 レイラは魔王の素顔を見た日からやる気に火が付いたようで、レベル上げに対する気持ちが強くなっている。
 主に『魅力』を上げる為なのだが‥‥‥。

 レイラの魅力はかなり高い。
 俺とレイラのレベル差は100以上あるはずなのだが、魅力では俺が完敗するようになってます。
 俺が2500くらいなのに対し、レイラは3400以上ある。
 他の能力は大体俺が勝っているが、ステータスの伸びには個性がある模様。
 レイラは初めから可愛い女の子だった。
 俺は‥‥‥。
 まあ、そう言う事だな。

「さて、今日はそろそろ帰るか」

「はい!」

 転移魔法は王様討伐時にもかなり役に立つ。
 以前はいちいち教会を通り、ダンジョンを抜けて来ていた。
 また来たのか、と言いたげな顔の神父をやり過ごすのが割と恥ずかしい。
 そしてダンジョンを毎日往復するのが嫌なので、何日か籠っていた。
 ‥‥‥わかるだろ?
 転移魔法様の偉大さが!


「ニア様、いつでも良いですよ」

 ここぞとばかりに、俺に抱きつくレイラがとても可愛い。

「じゃあ飛ぶぞ」

 転移魔法は色々と役に立つ。





「あ、お帰り!」

「ただいま」

 宿に戻ると受付で何か、ゴソゴソとしているアリスさん。

「レイラ、遂に手に入ったよ!」

 レイラの方を向き、ニヤリと笑うアリスさん

「‥‥‥まさか?! お願いしてたあれが!」

 目を見開くレイラ。
 
「大変だったんだよ。しかも今回は3個も必要だったでしょ」

「アリスさん、早く見せて下さい!」

 アリスさんに詰め寄るレイラ。
 いったい何を頼んだんだ。
 ‥‥‥もしかして見てない方がいいのかな?
 レディの嗜み的な物かもしれないしな。

「フッフッフッ、見よ! この可愛いフォルム!」

 アリスさんが取り出したのはぬいぐるみ。
 ‥‥‥また、それですか‥‥‥。

「きゃー! 可愛い! 」

 レイラはアリスから受け取ったぬいぐるみに、抱きついて頬擦りしている。

「『ニア様限定抱き枕2~もっと強く抱きしめて~』よ。本当に手に入れるの物凄く大変だったんだからね!」

「アリスさん、ありがとうございます!」

 キラキラした目でお辞儀をするレイラ。
 本人が横にいるんだ、それいるか?!

「私のコネクションなくして、手に入れるのは不可能だと思うよ!」

 胸を張るアリスさん。

「あ、魔王さんにも早く渡してあげないと!」

 何故、魔王にも?!
 もっと強く抱きしめられるのか?!

「大丈夫。魔王さんはさっき来て嬉しそうに持って帰ったよ」

「全員分あって本当に良かったですね!」

 ‥‥‥この人たち。
 
「‥‥‥アリスさん、いつから魔王と仲良くなったの?」
 
 怖がってた魔王だよ。
 あなたは俺に魔王討伐を決定させた、張本人でしょ?

「いつからかな? ちょくちょく顔を出してくるからね」

「ちょくちょく来るの? 魔王が?」

 聞いてない。

「あんたの弱点を教えろって初めは来たかな?」

「‥‥‥は? 教えたの?」

「教えたよ」

 敵に弱点を教えるとは、なんたる行為だ。

「‥‥‥それはまずいでしょ。いくらなんでもアリスさんやり過ぎです」

「そう? あんたの弱点なんて、見てたら大体誰でもわかるでしょ。魔王さんはそういうの苦手なのよ。まあレイラもだけどね」

「お恥ずかしいです。でもアリスさん、私も今では魔王さんには教える立場になってますからね!」
 
「‥‥‥待って。レイラまで魔王に何か教えてるの?」

 コクリと頷くレイラ。
 ‥‥‥どうかしてるぞこの人達。

「最近は3人でよくお茶してるのよ」

「何してるの?!」

「‥‥‥何ってお茶」

 魔王と女子会?
 何かが狂ってる。

「‥‥‥ねえ、俺の弱点って何を教えたの?」

 眉間に皺を寄せる俺を、ニンマリと見る2人。

「「 押しに弱い 」」


 ──うるさい!




【勇者レイラ】
レベル859
力1785
素早さ1716
身の守り1708
かしこさ2628
魅力3412
HP3413
MP4216

【ニア】
レベル963
力2952
素早さ2845
身の守り2825
かしこさ2917
魅力2524
HP5665
MP3163
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