59 / 103
59、パーティー行かなあかんねん
しおりを挟む「‥‥‥流石にその服装のままでは、まずいでしょう」
城に用意された俺の部屋。
俺の服を見ながら、シャラサードさんの一言。
ねずみ花火により致命傷を与えられてボロボロだ。
「別に構わんでしょ。俺は勇者の付き人みたいなもんですし、誰も見てないですよ」
魔法王国アルフォード主催、勇者との親睦パーティーにお呼ばれした俺、嫌々ながらも出席の準備を進めている。
まあ、特にすることがないのだが。
王から用意されたドレスを着るために、レイラは別室で準備中。
「後はマスク問題だな‥‥‥」
第一王子スパミュールによりマスクを禁止されてしまっているので、何か別のもので顔を隠す必要があった。
「どうですかシャラサードさん、似合います?」
「‥‥‥ニア殿、勘弁して下され」
俺の考えたマスク禁止令に抗う手段。
そう鉄仮面だ。
マスクは禁止と聞いているが、鉄仮面は禁止と聞いていない。
ボロボロの服を着た鉄仮面の男。
我ながら怪しすぎるコーディネートです。
「俺は用意出来ました。レイラが来たら行きましょうか」
「‥‥‥本当にその格好で行かれるつもりですか?」
「もちろん」
頭を抱えるシャラサードさん。
「‥‥‥ニア様、どうですか?」
頬の赤いレイラ。
肩口から胸元まで大きく開いた、薄い水色のドレス。
顔を隠す為のレースのベールを頭から付けていた。
ベール越しに見える顔は、妖艶な雰囲気さえ漂わせている。
「レイラ、凄く綺麗!」
「良かったです」
ニコニコと嬉しそうな顔のレイラ。
なるほどベールとは王様も考えたな。
これなら近づかないと顔はしっかり見れないだろうが、顔の美しさは遠目からでもなんとなくわかる。
「さて用意もできたし、さっさと行くか」
部屋から出ようとする、俺たちを止めたのは、シャラサードさん。
「‥‥‥ニア殿、その格好ではあまりにもレイラ殿が不憫だと思いませんか? ニア殿が顔を出したらおそらく騒ぎになるでしょう。しかし女性に恥をかかす男は、ワシは最低だと思いますぞ」
そう言うと、シャラサードさんは手に持っていた黒いタキシードを差し出してきた。
こんな服着たことないぞ。
「‥‥‥レイラ、着た方が嬉しい?」
「‥‥‥せっかく綺麗にしてもらったので、出来ればニア様もカッコいい方が嬉しくはありますよ‥‥‥ごめんなさい」
ペコリと頭を下げるレイラ。
‥‥‥そうか。
俺の配慮が足りませんでした。
「シャラサードさんありがとうございます。レイラを悲しませるところでした。服、お借りしますね」
「この服はワシの若い頃着てた物です。お譲りしますので、今後もこういった時にお使いください」
俺はニコニコと笑うシャラサードさんに深くお辞儀をして、服を受け取った。
「何から何まですいません」
「いえいえ。後はレイラ殿に近づく悪い虫に『俺の女に手を出すな!』とでも言ってやればよろしいのです」
その悪い虫はあなたの国の王と、王子なんですけど?
「では先に会場に行っておりますので、ちゃんとレイラ殿をエスコートするのですぞ!」
そう言うとシャラサードさんは、部屋を出て行ったのであった。
華やかなパーティー会場。
優雅な音楽が流れ、皆煌びやかな服装に身を包んでいた。
「レイラ君、なんて美しいんだ! 僕のためにドレスアップしてくれたんだね。なんて素晴らしいんだ。さあ一緒に踊ろう、たっぷり可愛がってあげるよ」
レイラに纏わりつく、悪い虫一号ことスパミュール。
「いえ、私はニア様と踊りますので」
「恥ずかしがる姿も美しい。あんなボロ雑巾は放っておいて、僕の胸に飛び込んでおいで」
「スパミュール君、僕の連れに気安く話しかけないでくれたまえ」
「ぐっ‥‥‥君は、だ、誰だ?」
レイラの後ろに立つ俺を見て、スパミュールは腰を抜かしてひっくり返った。
今日のレイラは物凄く綺麗だが、正装した素顔の俺も捨てたもんじゃないだろ?
「ボロ雑巾のニアでございます。以後お見知り置きを。今後もレイラにちょっかいを出すようなら、国ごと叩き潰しますのでよろしく!」
何故かスパミュールの後ろで親指を立て、サムズアップポーズをしているシャラサードさん。
‥‥‥後で怒られても知りませんよ。
「ニア様、踊りませんか?」
崩れ落ち呆然とするスパミュールを置いて、俺たちはパーティー会場の真ん中へ。
「ニア様、ダンスもできるんですね! 素敵です!」
もちろん初体験。
「レイラも上手」
「見様見真似です」
軽いステップなら即興でなんとかなる。
今の俺たちの身体能力を侮ってはいけない。
「物凄く注目されてるな‥‥‥まあ、そりゃそうか」
会場中の人が崩れ落ちつつも、キラキラした目で俺たちを見ている。
遠目からで顔が鮮明に見えないとはいえ、ぶっ飛んだ魅力の二人による美しすぎるダンス。
その神々しさに失神する者が多数いたようだ。
‥‥‥なんか申し訳ない。
「私、今凄く幸せです!」
俺の素顔を間近で見てるせいか、顔が真っ赤なレイラは凄く可愛かった。
たまにはこんな日があってもいいかな。
明日からまた本気出す。
0
お気に入りに追加
607
あなたにおすすめの小説
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?
木山楽斗
恋愛
英雄の血を引くリメリアは、若くして家を継いだ伯爵の元に嫁いだ。
若さもあってか血気盛んな伯爵は、失言や失敗も多かったが、それでもリメリアは彼を支えるために働きかけていた。
英雄の血を引く彼女の存在には、単なる伯爵夫人以上の力があり、リメリアからの謝罪によって、ことが解決することが多かったのだ。
しかし伯爵は、ある日リメリアに離婚を言い渡した。
彼にとって、自分以上に評価されているリメリアは邪魔者だったのだ。
だが、リメリアという強力な存在を失った伯爵は、落ちぶれていくことになった。彼女の影響力を、彼はまったく理解していなかったのだ。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
姉の持ち物はすべて妹のもの。それなのに、玉の輿!? 旦那様を渡しなさいよ!
青の雀
恋愛
第1話
妹レイナは、なんでも私のものを欲しがる。ドレスでもアクセサリーでも。
「お姉さまの幸せは、妹レイナの幸せ。」をモットーに。
婚約者を寝取られ、差し上げたにもかかわらず、次の婚約者にまでちょっかいを出した妹。王女殿下の怒りを買い…。
第2話
公爵令嬢が婚約者の王太子の誕生日会で男爵令嬢を虐めていたと冤罪をでっちあげ婚約破棄される。
公爵令嬢は、「どうぞ、ご勝手に」とさっさと破棄を受け入れる。
慌てる国王陛下と王妃殿下、その理由は…。
セクションの意味がわかりませんか?一般的だと思って使用していました。第〇条のことをいいます。お小さい方が読まれることが多いのかしら。一般教養で普通に習うことです。法律用語の使い方を知らない人が読まれているようです。正しい法律用語を覚えられるように書いていく所存です。
永く書き過ぎました。今日で終話とさせていただきます。
また、いつかどこかで。
他サイトで継続して書いています。探してみてください。HN,タイトル違うからわからないかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる