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36、女神様が迷子です
しおりを挟む女神に会いに村に向かう俺たち。
レイラのいた村。
山奥の小さな村で名前すらない。
「レイラはこっちに来てから、ずっとあの村にいたの?」
「私が召喚されたのは、あの村にある女神様の家でしたから」
「じゃあこっちに来たら、いきなり目の前に女神様が居たんだ」
「そうですね。ただ、その時以外目にしてないんですけど、もう一人男性の方も居ましたよ」
もう一人?
「召喚されてすぐ気を失ったのであまりちゃんと覚えてないんですけど、黒い服を着た背の高い人でした」
「女神様って部下とかいたの?」
俺の迎えも自分で来たくらいだから、居ないと思ってた。
「私は見た事がないですね」
「だよな」
その黒ずくめ誰?
「まあ本人に聞けばいいか。依頼の決め方とか色々聞きたいことがある」
村はもう目と鼻の先。
「ニア様、私の勘なんですけど、多分依頼とかもろもろ考えてるのは女神様じゃないと思います」
「‥‥‥なんで?」
「私が部屋に閉じ籠ってる時、女神様『頼む、このままでは怒られるのじゃ!』って言ってました。誰かに指示を受けてたんじゃないですかね?」
誰に?
女神より偉い人ってなんだろう、わかんね。
「やっぱり本人に聞こう。考えてもわかんないや」
「ですね」
変わらず穏やかな村。
俺たちがそこに着いたのは心地の良い昼下がりだった。
「女神様居ますか?」
およそ女神の住む家には見えない、東屋に毛が生えたような家。
ここが女神様の家。
レイラの居た宿屋の側にある。
ノックしても声をかけても返事なし。
「お出かけ中ですかね」
それとなく扉に手をかけたら、軽い音と共に扉は開く。
「開いた」
「開きましたね」
「‥‥‥中で待とうか」
「ニア様、女性の部屋ですよ」
「怒られたら、鍵開いてたからオールウェルカムな家と勘違いしましたと言おう」
女神の部屋、興味深い。
凄いアイテムとかいっぱいあったりして。
「お邪魔しまーす」
薄暗い。
四畳半くらいの部屋の真ん中に、魔法陣のようなものが描かれている。
部屋の隅にテーブルが一つ。
生活感はまるでない。
「あの人どこで寝てるの?」
「女神様ですし寝ないんじゃないですか?」
まあ一理あるかも。
「これでレイラを召喚したのかな」
部屋の中央に描かれた模様。
「これでもかってくらい魔法陣ですね。でも私が召喚された時はなかったです」
「そうなの?」
「はい。そのあと部屋に入ってないので、いつからあるのかもわかんないです」
あの女神は何やってんだろうか。
変な黒魔術でも使ってんのかな?
「ニア様、これ!」
レイラが見つけたのはテーブルの上に置かれた手紙。
拝啓 ユウカとサトシ
やはり来たようじゃの。
来るのが遅いくらいじゃ。
ただ、妾は急用が出来た。
すぐ出かけるのでまた連絡する。
決して諦めず自分達を信じて進むのじゃ。
よろしく頼んだぞ。
追伸 今後は盾、盾が役に立つはずじゃ。
「‥‥‥何これ?」
「手紙ですね」
「逃げたな」
「逃げたんですか?」
やっぱり何か隠してやがったな。
「だってこのタイミングでいなくなるとか、おかしくないか?」
「盾って何ですかね?」
「盾と言えば‥‥‥盾だろ」
勇者の盾でもあるのかな?
俺たちは盾なんか装備していない。
盾で守りながら石を投げる、悪くはないな。
盾を見に店にでも──
盾‥‥縦?
縦読み?
『はやくたすけよ』
「‥‥‥まさかね」
「どうしましたニア様?」
「いや、何でもない」
ちょっとあまりにも幼稚過ぎて、バカバカしい気がした。
本当だとして誰から助けるんだよ。やっぱり魔王だろうか?
だとしたら進めばいずれ会えるかな。
なんだが釈然としないが、とりあえず俺の心に留めておこう。
「もう少し部屋を調べてみよう。何かわかるかもしれない」
「はい!」
結局、収穫はなし。
変な薬品とか何かの尻尾とか見たことないものばかり。
触るのが怖い。
あの人、やっぱり女神じゃなくて魔女なんじゃないの?
「仕方ない、女神様がいないんじゃ何も聞けない。王様に言って依頼で貰えるアイテムだけでも回収しよう」
「王様くれますかね?」
「女神様から承諾して貰った事にしよう」
「ニア様、悪い」
「後で謝る」
グズグズしてる場合じゃない。
「でも、そういうところも好きです」
告白されました。
「さあ、さっさと城に戻ろうか!」
「はい!」
部屋から出るレイラ。
奥にいた俺が後に続く。
──ん?
不意に足が触れた魔法陣が淡く光った気がした。
「ニア様?」
‥‥‥気のせいか?
「ああ、今行く」
女神様が行方不明になりました。
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