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1 究極黄金巫女
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俺は古代遺跡に今いる。辺りは暗く…埃がひどい。目が痒くなっている。ダンジョンだと思ったが、モンスターの類いはでない。随分と奥まで進んできた。ここが遺跡の最奥のようだ。今は謎の召喚陣の前にいる。怪しい。
何が出るか分からないのに魔力は通せないなと思ったのも束の間、俺の腕からオドが勝手に引きづり出されていく。
頭に神の声が響いた。
「セット…召喚プログラム起動…スレイブ 究極黄金巫女の召喚を開始する…」
何なんだ一体…究極黄金巫女?何者だ。
辺りは召喚の光に包まれる。虹色のスパークが巻き起こり召喚される。光が収まると目の前には金色のスケスケ衣装を身につけた金髪赤目の女の子。究極黄金巫女…と呼ばれていたな。
召喚されて不快そうな女の子が口を開く。
「おい!ポチの分際でボクを呼ぶとはどういう了見だ。場合によっては即座に死んで貰うことになるぞ。下郎め。」
「俺の名はケイジ。ここは古代遺跡だ。召喚陣の前に立ったら勝手に君の召喚が始まったんだ。俺のせいではない。召喚は事故みたいなものだ。」
「ふん!千里眼で見たところ嘘はついていないようだね。ボクの名前はミユキ・ギルディーン。古の時代あらゆる世界を征服していた伝説の巫女さ。本来の所在はアヴァロンにあるんだ。しかしここの粗末な召喚のせいで持っている宝貝…英雄の持つ武器の事…は黄金の刀一本。ゲートオブアヴァロンも稼働を停止している。どういう事なのか小一時間ほどポチに聞きたいね。ボクを召喚してどうしようって言うんだ。美しさの前に見惚れるのは許してやるとしよう。それ以外何を望むんだ。闘いか…もうとっくに人類史は崩壊しているようだが?」
「ミユキと読んでも?」
「深名は呼ばれるほど仲が良くない。不敬だぞ。ギルディーンと呼びたまえ。」
「ギルディーンか。俺は宛の無い旅を続けている。依頼で魔物を狩りながらな。だから何処に行くかは決めていないが俺に従ってくれると言うなら俺の旅について来てくれないか。君は相当格の高い英雄のようだな。失礼の無いように扱おう。」
「良いだろう。まずはこの埃だらけの汚らわしい遺跡から抜け出すとするか。」
俺と彼女は無言で古代遺跡を抜け出して行った。古代遺跡は所々建物が崩れており今にも倒壊しそうだ。足早に歩みを進める。まさかこんな形で旅の伴侶を手にいれるとは思わなかった。俺の放浪癖とも言える旅路には誰も今まで着いてこなかったのだ。一人旅は嬉しいようでとても寂しい。孤独な旅路だった。ギルディーンは俺にとって太陽になるかもしれない存在だった。そう願おう。我が旅路にも春が訪れても良いだろう。今は冬の季節だが、古代遺跡はノースランドという雪国の中でたまたま見つけて探索をしていたのだ。こんな収穫があるとは思わなかった。
遺跡の外に出ると吹雪か吹き付けてきた。俺は厚着だから大丈夫だが、スケスケの巫女服を着たギルディーンは平気なのだろうか。
彼女は見た感じ寒そうにはしていないが問いかけてみる。
「ギルディーン。この寒さなのにその格好で大丈夫なのか?」
「ボクかい?平気さ。この服を着ていれば何処にいても仄かに暖かいんだ。この服自体が宝貝と言えるだろう。」
そうかと俺は返す。もともと何となく遺跡に立ち寄っただけで旅支度はしていなかった。ノースランド王国に戻る事にしよう。ノースランドは漁業と農業が盛んな田舎の国である。魔物退治の依頼も程ほどにある。最近は三ヶ月ほど滞在していたが、今日はプラプラとたまたま王国の外を徘徊していたのだ。
何処にいく宛の無い放浪をするのが俺の癖だった。これからはそうもいかないかもしれないが。ギルディーンの前でそんな事をすると問い詰められそうである。場合によっては俺を殺害してくるだろう。どうやら並みの英雄ではないようだ。とんでもない者を召喚したものだ。俺はそんな事を考えながらノースランドまで歩いていった。ギルディーンも着いてくる。
「おい、ケイジ。どこまで歩いていくつもりだい。吹雪の中宛の無い放浪など許さないよ。答えろ。」
そう言うと刀を抜くギルディーン。随分と気が早いな。
「俺がこの辺りで拠点にしているノースランド王国に現在向かっている。後三時間ほどで着くよ。」
「こんな天候の中で良く古代遺跡なんかに行こうとしたね。君は正気かい?ケイジ。」
「良く言われる。放浪癖があるんだ。君と一緒にいると直さざるを得ないだろうな。」
「当たり前だ。こんな天候の中歩かされるなんて想定外だ。せめて宮殿の中で召喚するなりしてほしかったもんだね!」
そういいながら抜いていた刀をギルディーンは鞘に戻した。
恐ろしい娘だ。この短期間に激怒し刀まで抜いてくるとは…吹雪の中を歩かされたのが相当堪えたみたいだな。
俺は吹雪の中でゆっくりと足を進めていった。ギルディーンも後ろを着いてくる。体全体に薄いベールが掛かっているようにギルディーンの回りには雪が付着しなかった。
だったら怒ること無いじゃあないかと思うが、それでも怒りを買ってしまっているようである。生きている時も余程我が儘だったのだろう。
話を変えようか。そもそも人類史が崩壊してから一万年程経つと言われている。そこから人類が再興を果たしてから千年程たつか。元号はないが…その混迷の中を俺はその日暮らしをしていた。ほとほとの強さの妖魔を狩り、町から町へ放浪する毎日。決まったねぐらなど持たなかった。
たが、ここに来て落ち着いた生活をする必要があるかもしれない。ギルディーンは放浪する生活など耐えられないだろうし、耐える前に剣を抜いて、俺を切り結んでくるに違いない。
ふむ。旅の障害が増えたようなものだ。こんな事を考えていると見抜かれたら厄介だが、如何に古代の英雄とは言え人の心を読むことは出来ないだろう。
俺はギルディーンに声をかける。
「ギルディーン…君は何時の時代の英雄なんだ?」
「今は人類史が崩壊してから大分時間が経っているみたいだね。良いだろう。教えてあげよう。人類史崩壊の五千年前という昔の人間だ。今から一万五千年は昔だね。神代の頃だ。まだ人間と神が別たれていなかった時代。妖魔が跋扈もしていたね。その時代に世界を征服し納めていたんだ。生前から妖精郷にアクセスしていてね。今の時代はパスが繋がっていないけど…妖精郷の武器庫に様々な宝貝を保管しているんだ。どうだすごいだろう。誉め称えよ。とく許す!誉めよ!誉め称えよ。」
「そうか随分と昔の英雄だったんだな。しかしこの世界に再び生を受けて君はどうするつもりだい。人間にとっては黄昏の時代だ。人間を滅ぼさんとする魔王や妖魔が跋扈しているけどそれを倒すって感じでは無いよな?」
「ムム…そこまで神代回帰しているのか。まあ良いだろう。この世はボクの庭に他ならない。そこを荒らす妖魔がいれば討ち払ってくれよう。まあ異変解決は巫女としての仕事な訳でもあるしね。」
驚いた。意外とこの究極黄金巫女様は人間の代理者の立場を取るようだった。てっきり自分に関係ない人間どもの事など知らないと言い出すかと思っていた。
彼女は退屈そうに着いてくる。古代遺跡を出てから一時間半は経過していた。
寒い。体の芯まで冷える寒さだ。俺もスケスケだが常時暖かい服が欲しいものだと思った。手に握っているアサルトライフルを見てみる。黒くてゴツい。並みの妖魔なら即座にあの世送りの代物だ。俺は何時しか対物ライフルが欲しいと思っていたがとても銃の値段が高く手に届かなかった。
ギルディーンは刀で闘うんだろう。どんな闘い方をするのかは興味があったが、実際に戦ってみなければ分かるまい。
…ひたすら街道を歩き続ける。面白い物はないがこの道がノースランドまで一番近い道だった。
この吹雪の中歩くのは自殺行為だと思った。しかし今日最初に放浪しようと思った時は吹雪など無かったのだ。完全に天候を読み違えた。ここまで吹雪かれるとは聞いていなかった。まあ誰に聞いても教えてくれないのだが…黒歴史…人類史崩壊前をそう呼ぶ。黒歴史の産物には天気を予報するものがあるらしいが、それはラースフィールドの様なハイテク武装集団が持っているのだろう。流れの民生には関係の無い技術だった。
ホットミルクが飲みたい。こう思うと言うことは相当な末期症状だ。寒気に脳がやられてしまっているに違いない。ギルディーンが羨ましいな…ああ…苦しくて寒い……一瞬意識が途絶えかけた。この吹雪の中寝たら死ぬ。
「おい!ケイジ。大丈夫か?意識が飛んでいるようだが眠気覚ましをやろうか?」
そう言うとギルディーンは刀を抜きこちらにチラリと見せた。目には怪しい光が灯っている。
「ハッ意識がはっきりしたぞ。そんな風に驚かせるなよ。ギルディーン。」
「ちょっとしたサービスさ。放っておくと君は寝てしまうだろう。考え込みながら歩くとまた眠くなるぞ。定期的に目を覚ましてやろう。」
恐ろしい事を言うギルディーン。今の時刻で古代遺跡を出てから二時間半が経過していた。後三十分歩けばノースランドに辿り着く。もう少しだ。俺はギルディーンを気にしながら残りの道を歩くことにした。
ボクは英雄として召喚されてから三時間ほどが経過していた。結構怒りを堪えている。ケイジと言うこの男が何の目的もなく私を呼んだというのだ。それだけでも怒りに値するが、更に今は吹雪の中を歩かされている。私は金ぴかの巫女服の効果のお陰で何の問題もないが、ケイジが早くもくたばりかけている。
ここまで世話の焼ける男だとは思わなかった。先程、神雷刀を抜いて脅すことで目を覚まさせてやった。一々抜いたり戻したりするのも面倒臭いのでほどほどにしておきたい。
まったくボクの時代の臣下にこんな男がいたら即座に打ち首である。
はぁ何でこんな男の召喚に答えてしまったのだろう。ボクの記憶は前世で死んだ所で途絶えている。恐らくあの遺跡の召喚装置で何度も呼ばれているはずだが、とんとその記憶がないのだ。
本当なら何百人もボクを呼んでいる可能性もある。恐ろしいな。地上を創世の地獄にする事も可能になってしまうだろう。
英雄召喚装置…記憶の情報に与えられている限りで記そうと思う。
人類が進歩しても戦争はなくならなかった。黒歴史の最後の瞬間を迎えるまで数多の英雄のオドを活用するために違法召喚する装置が乱造されたのだ。神代の権能を持つ英雄同士の闘い…その駒としてボクも使役されていたようだ。
その装置を作り出した人間を突き止め腸を引きずり出してやりたい位頭に来ているのだ。
きっと人類史が崩壊した最終戦争も神々の神罰を英雄を通して行ったのだろうと思う。
神々の権能を乱用するような行為を天界が許すはずがない。
どうせ神罰に加えて、知能を退化させる大砲でも月から発射したのだろう。
月は神霊が物理的に占拠している。現世でも存在している神の国となっている。
そこには人間の及びもつかない秘宝や武具の数々を人間の信仰を犠牲に作り上げているのだ。
ほう…人類史崩壊からは神がしばらく地上に介入していたようだ。
そう言った天界のチップスとも言える情報も召喚時に与えられているのだ。
まあ今は旅の風来坊に呼ばれてしまった訳だし、マスターがくたばるまではスレイブに貶められたボクは消えることが出来ないので付き合ってやろうと思う。
が、ふざけた真似をしたり、態度が気にくわない時は何時でも契約を切る準備をしている。
ボクに指図が出来る人間等一人もいないのだ。何故ならボクは究極黄金巫女。全ての武を究め極めた存在だからだ。
ケイジはまあ何というか空っぽな男だ。欲望を感じない。ただふらふらとここまでやって来たような男だ。簡単に言うと面白みがないのだ。黒い髪に黒い目、そして黒いコート。黒づくめである。そんでもって獲物も黒い突撃銃だ。
まるで戦場を放浪する壊れた機械兵士だ。この体には黒歴史の記憶も流れ込んでいるらしい。機械兵士か…下らない。闘いを侮辱するような存在だ。
何故彼がここまで空っぽなのかボクは知らないが精々楽しませてもらおうと思う。
それがボクの臣下としての勤めである。
俺達は街道を歩き続けて約三時間。ようやくノースランドに辿り着いた。酒場と宿屋を兼ねている建物に向かう。町は吹雪の上に夕暮れ時と言うこともあり人通りの数は少なかった。
「これから何処に向かうんだい?ケイジ。」
「俺の取っている宿に向かう。今日はベットが二つの部屋だな。」
「ボクがいくら美しいからって変な事を考えるなよ。ケイジ。」
「了解だ。ギルディーン。君にそういう感情を抱いていない。」
「それはそれで女性に対して失礼というものだよ。まあお前のような男に言っても仕方がないか。」
話していると宿屋に到着した。
一階が酒場になっており、しっぽりと飲む客だけが集まっていた。今のところ酒場には用はない。依頼を受けたりする事がある時は厄介になっている。路銀が足りなくなる度に依頼を受けていた。今後は恐らくギルディーンの暇潰しもかねて依頼を受けさせられるであろう。まあ金はあるに越したことはないし、問題はなかった。
酒場のマスター兼宿屋の主でもある旦那が話しかけてきた。
「おい!あんた。いつも一人なのに今日は別嬪さんを連れているじゃないか?シングルベットで良いのか?熱いねえ!」
「何だ。この男は…と言いたいところだけど、これがボクを見た男のまともな反応だ。分かったかい?ケイジ。」
「ああ…普通はそういう反応なんだろうな。努力するよ。確かに君は美しい。」
旦那に向き直ると俺は言葉を紡いだ。
「旦那、シングルベットだと問題があるからツインベットにしてくれないか?金はキチンと払うさ。」
「そうかい。残念だけどツインベットにしてやろう。所で飯は食っているのか?」
「いやまだだ。頂こうか。ギルディーンは食事をするのか。」
「現界するにあたって魔力の補給源として食べる事には食べるね。まあ下賤な食事には変わりないだろうがボクも食べてやろう。」
「おい…旦那に聞こえないようにしてくれ。揉め事は勘弁だ。」
「そうだったね。声のトーンを落とすか。それになるべく君以外とは口を交わさないようにしよう。そもそもボクと喋る事自体が不敬千万である。」
そう言いながら待っていると夕食が運ばれてきた。パンとハンバーグのセットだ。ここでは一番オーソドックスな定食である。
俺とギルディーンは無言で食べた。俺にとっては旨いと思うが、遥か昔贅の限りをつくした彼女にとっては許せない食事かもしれなかった。
食べ終わると俺達は二階へ上がっていった。宿屋の部屋が二階にはある。
部屋は贅沢とは言えない場所でベットが二つあるだけだった。ギルディーンが騒ぐかと思ったが案外気を引かれないらしい。曰く。
「この世に呼ばれる事自体が究極の不敬であるから食事やベットの事で一々怒っている訳には行かない」そうだ。
ギルディーンは疲れを癒すために寝てしまった。俺ももうしばらくしたら寝ようと思うが…
ギルディーンは今後どうしようか?旅のパートナーとして放浪する事は認めてくれないだろう。目的地のある旅をすることだ。それに依頼をこなす事が必要になるだろう。
明らかにギルディーンの暇つぶしを用意しないと激怒を買う事になる。
やれやれ前途多難である。
今まではずっと一人で放浪の旅を続けていた。その期間は十年に及ぶと思う。孤児院を飛び出してから銃を片手にこのイスワルド全域を旅していたのだ。
何度も死にかけたし何回も幸運に恵まれたことがある。言うなれば普通の冒険者ライフだったという事だ。遺跡に入った事も一回ではなかったし、遺跡で金品を得る事もしょっちゅうだったと思う。
あの古代遺跡も金を目当てに侵入したわけだ。そうしたらどうした事か究極黄金巫女なんていう強力そうな英雄をスレイブとして連れ歩けるようになったのだ。
そもそも英雄召喚とはどういう仕組みなのだろう?
条件も無しに究極黄金巫女の様なスレイブを何体も召喚できる装置…謎に包まれている。世界には他にも召喚装置があるのかもしれない。
黒歴史の兵器として彼女達は呼び出されていたのかもしれない。神々に匹敵する能力を武器に戦場を流離い死ぬ事も赦されずに闘う彼女達…ゾッとする想像だった。
でもそれが正しいのならば全てが終わってしまった暗黒時代の今になって召喚されて現世を彷徨うほうが彼女にとってはましかもしれない。戦争の道具にはならない。
一個の個人として活動する事が出来るのだ。といっても戦いを求めるようでは戦争の兵器と変わりがないが…
俺は考えても無駄なので寝る事にした。明日からはまた依頼を受ける毎日が始まるだろう。そこで究極黄金巫女の力を見せてもらう事にしよう。
何が出るか分からないのに魔力は通せないなと思ったのも束の間、俺の腕からオドが勝手に引きづり出されていく。
頭に神の声が響いた。
「セット…召喚プログラム起動…スレイブ 究極黄金巫女の召喚を開始する…」
何なんだ一体…究極黄金巫女?何者だ。
辺りは召喚の光に包まれる。虹色のスパークが巻き起こり召喚される。光が収まると目の前には金色のスケスケ衣装を身につけた金髪赤目の女の子。究極黄金巫女…と呼ばれていたな。
召喚されて不快そうな女の子が口を開く。
「おい!ポチの分際でボクを呼ぶとはどういう了見だ。場合によっては即座に死んで貰うことになるぞ。下郎め。」
「俺の名はケイジ。ここは古代遺跡だ。召喚陣の前に立ったら勝手に君の召喚が始まったんだ。俺のせいではない。召喚は事故みたいなものだ。」
「ふん!千里眼で見たところ嘘はついていないようだね。ボクの名前はミユキ・ギルディーン。古の時代あらゆる世界を征服していた伝説の巫女さ。本来の所在はアヴァロンにあるんだ。しかしここの粗末な召喚のせいで持っている宝貝…英雄の持つ武器の事…は黄金の刀一本。ゲートオブアヴァロンも稼働を停止している。どういう事なのか小一時間ほどポチに聞きたいね。ボクを召喚してどうしようって言うんだ。美しさの前に見惚れるのは許してやるとしよう。それ以外何を望むんだ。闘いか…もうとっくに人類史は崩壊しているようだが?」
「ミユキと読んでも?」
「深名は呼ばれるほど仲が良くない。不敬だぞ。ギルディーンと呼びたまえ。」
「ギルディーンか。俺は宛の無い旅を続けている。依頼で魔物を狩りながらな。だから何処に行くかは決めていないが俺に従ってくれると言うなら俺の旅について来てくれないか。君は相当格の高い英雄のようだな。失礼の無いように扱おう。」
「良いだろう。まずはこの埃だらけの汚らわしい遺跡から抜け出すとするか。」
俺と彼女は無言で古代遺跡を抜け出して行った。古代遺跡は所々建物が崩れており今にも倒壊しそうだ。足早に歩みを進める。まさかこんな形で旅の伴侶を手にいれるとは思わなかった。俺の放浪癖とも言える旅路には誰も今まで着いてこなかったのだ。一人旅は嬉しいようでとても寂しい。孤独な旅路だった。ギルディーンは俺にとって太陽になるかもしれない存在だった。そう願おう。我が旅路にも春が訪れても良いだろう。今は冬の季節だが、古代遺跡はノースランドという雪国の中でたまたま見つけて探索をしていたのだ。こんな収穫があるとは思わなかった。
遺跡の外に出ると吹雪か吹き付けてきた。俺は厚着だから大丈夫だが、スケスケの巫女服を着たギルディーンは平気なのだろうか。
彼女は見た感じ寒そうにはしていないが問いかけてみる。
「ギルディーン。この寒さなのにその格好で大丈夫なのか?」
「ボクかい?平気さ。この服を着ていれば何処にいても仄かに暖かいんだ。この服自体が宝貝と言えるだろう。」
そうかと俺は返す。もともと何となく遺跡に立ち寄っただけで旅支度はしていなかった。ノースランド王国に戻る事にしよう。ノースランドは漁業と農業が盛んな田舎の国である。魔物退治の依頼も程ほどにある。最近は三ヶ月ほど滞在していたが、今日はプラプラとたまたま王国の外を徘徊していたのだ。
何処にいく宛の無い放浪をするのが俺の癖だった。これからはそうもいかないかもしれないが。ギルディーンの前でそんな事をすると問い詰められそうである。場合によっては俺を殺害してくるだろう。どうやら並みの英雄ではないようだ。とんでもない者を召喚したものだ。俺はそんな事を考えながらノースランドまで歩いていった。ギルディーンも着いてくる。
「おい、ケイジ。どこまで歩いていくつもりだい。吹雪の中宛の無い放浪など許さないよ。答えろ。」
そう言うと刀を抜くギルディーン。随分と気が早いな。
「俺がこの辺りで拠点にしているノースランド王国に現在向かっている。後三時間ほどで着くよ。」
「こんな天候の中で良く古代遺跡なんかに行こうとしたね。君は正気かい?ケイジ。」
「良く言われる。放浪癖があるんだ。君と一緒にいると直さざるを得ないだろうな。」
「当たり前だ。こんな天候の中歩かされるなんて想定外だ。せめて宮殿の中で召喚するなりしてほしかったもんだね!」
そういいながら抜いていた刀をギルディーンは鞘に戻した。
恐ろしい娘だ。この短期間に激怒し刀まで抜いてくるとは…吹雪の中を歩かされたのが相当堪えたみたいだな。
俺は吹雪の中でゆっくりと足を進めていった。ギルディーンも後ろを着いてくる。体全体に薄いベールが掛かっているようにギルディーンの回りには雪が付着しなかった。
だったら怒ること無いじゃあないかと思うが、それでも怒りを買ってしまっているようである。生きている時も余程我が儘だったのだろう。
話を変えようか。そもそも人類史が崩壊してから一万年程経つと言われている。そこから人類が再興を果たしてから千年程たつか。元号はないが…その混迷の中を俺はその日暮らしをしていた。ほとほとの強さの妖魔を狩り、町から町へ放浪する毎日。決まったねぐらなど持たなかった。
たが、ここに来て落ち着いた生活をする必要があるかもしれない。ギルディーンは放浪する生活など耐えられないだろうし、耐える前に剣を抜いて、俺を切り結んでくるに違いない。
ふむ。旅の障害が増えたようなものだ。こんな事を考えていると見抜かれたら厄介だが、如何に古代の英雄とは言え人の心を読むことは出来ないだろう。
俺はギルディーンに声をかける。
「ギルディーン…君は何時の時代の英雄なんだ?」
「今は人類史が崩壊してから大分時間が経っているみたいだね。良いだろう。教えてあげよう。人類史崩壊の五千年前という昔の人間だ。今から一万五千年は昔だね。神代の頃だ。まだ人間と神が別たれていなかった時代。妖魔が跋扈もしていたね。その時代に世界を征服し納めていたんだ。生前から妖精郷にアクセスしていてね。今の時代はパスが繋がっていないけど…妖精郷の武器庫に様々な宝貝を保管しているんだ。どうだすごいだろう。誉め称えよ。とく許す!誉めよ!誉め称えよ。」
「そうか随分と昔の英雄だったんだな。しかしこの世界に再び生を受けて君はどうするつもりだい。人間にとっては黄昏の時代だ。人間を滅ぼさんとする魔王や妖魔が跋扈しているけどそれを倒すって感じでは無いよな?」
「ムム…そこまで神代回帰しているのか。まあ良いだろう。この世はボクの庭に他ならない。そこを荒らす妖魔がいれば討ち払ってくれよう。まあ異変解決は巫女としての仕事な訳でもあるしね。」
驚いた。意外とこの究極黄金巫女様は人間の代理者の立場を取るようだった。てっきり自分に関係ない人間どもの事など知らないと言い出すかと思っていた。
彼女は退屈そうに着いてくる。古代遺跡を出てから一時間半は経過していた。
寒い。体の芯まで冷える寒さだ。俺もスケスケだが常時暖かい服が欲しいものだと思った。手に握っているアサルトライフルを見てみる。黒くてゴツい。並みの妖魔なら即座にあの世送りの代物だ。俺は何時しか対物ライフルが欲しいと思っていたがとても銃の値段が高く手に届かなかった。
ギルディーンは刀で闘うんだろう。どんな闘い方をするのかは興味があったが、実際に戦ってみなければ分かるまい。
…ひたすら街道を歩き続ける。面白い物はないがこの道がノースランドまで一番近い道だった。
この吹雪の中歩くのは自殺行為だと思った。しかし今日最初に放浪しようと思った時は吹雪など無かったのだ。完全に天候を読み違えた。ここまで吹雪かれるとは聞いていなかった。まあ誰に聞いても教えてくれないのだが…黒歴史…人類史崩壊前をそう呼ぶ。黒歴史の産物には天気を予報するものがあるらしいが、それはラースフィールドの様なハイテク武装集団が持っているのだろう。流れの民生には関係の無い技術だった。
ホットミルクが飲みたい。こう思うと言うことは相当な末期症状だ。寒気に脳がやられてしまっているに違いない。ギルディーンが羨ましいな…ああ…苦しくて寒い……一瞬意識が途絶えかけた。この吹雪の中寝たら死ぬ。
「おい!ケイジ。大丈夫か?意識が飛んでいるようだが眠気覚ましをやろうか?」
そう言うとギルディーンは刀を抜きこちらにチラリと見せた。目には怪しい光が灯っている。
「ハッ意識がはっきりしたぞ。そんな風に驚かせるなよ。ギルディーン。」
「ちょっとしたサービスさ。放っておくと君は寝てしまうだろう。考え込みながら歩くとまた眠くなるぞ。定期的に目を覚ましてやろう。」
恐ろしい事を言うギルディーン。今の時刻で古代遺跡を出てから二時間半が経過していた。後三十分歩けばノースランドに辿り着く。もう少しだ。俺はギルディーンを気にしながら残りの道を歩くことにした。
ボクは英雄として召喚されてから三時間ほどが経過していた。結構怒りを堪えている。ケイジと言うこの男が何の目的もなく私を呼んだというのだ。それだけでも怒りに値するが、更に今は吹雪の中を歩かされている。私は金ぴかの巫女服の効果のお陰で何の問題もないが、ケイジが早くもくたばりかけている。
ここまで世話の焼ける男だとは思わなかった。先程、神雷刀を抜いて脅すことで目を覚まさせてやった。一々抜いたり戻したりするのも面倒臭いのでほどほどにしておきたい。
まったくボクの時代の臣下にこんな男がいたら即座に打ち首である。
はぁ何でこんな男の召喚に答えてしまったのだろう。ボクの記憶は前世で死んだ所で途絶えている。恐らくあの遺跡の召喚装置で何度も呼ばれているはずだが、とんとその記憶がないのだ。
本当なら何百人もボクを呼んでいる可能性もある。恐ろしいな。地上を創世の地獄にする事も可能になってしまうだろう。
英雄召喚装置…記憶の情報に与えられている限りで記そうと思う。
人類が進歩しても戦争はなくならなかった。黒歴史の最後の瞬間を迎えるまで数多の英雄のオドを活用するために違法召喚する装置が乱造されたのだ。神代の権能を持つ英雄同士の闘い…その駒としてボクも使役されていたようだ。
その装置を作り出した人間を突き止め腸を引きずり出してやりたい位頭に来ているのだ。
きっと人類史が崩壊した最終戦争も神々の神罰を英雄を通して行ったのだろうと思う。
神々の権能を乱用するような行為を天界が許すはずがない。
どうせ神罰に加えて、知能を退化させる大砲でも月から発射したのだろう。
月は神霊が物理的に占拠している。現世でも存在している神の国となっている。
そこには人間の及びもつかない秘宝や武具の数々を人間の信仰を犠牲に作り上げているのだ。
ほう…人類史崩壊からは神がしばらく地上に介入していたようだ。
そう言った天界のチップスとも言える情報も召喚時に与えられているのだ。
まあ今は旅の風来坊に呼ばれてしまった訳だし、マスターがくたばるまではスレイブに貶められたボクは消えることが出来ないので付き合ってやろうと思う。
が、ふざけた真似をしたり、態度が気にくわない時は何時でも契約を切る準備をしている。
ボクに指図が出来る人間等一人もいないのだ。何故ならボクは究極黄金巫女。全ての武を究め極めた存在だからだ。
ケイジはまあ何というか空っぽな男だ。欲望を感じない。ただふらふらとここまでやって来たような男だ。簡単に言うと面白みがないのだ。黒い髪に黒い目、そして黒いコート。黒づくめである。そんでもって獲物も黒い突撃銃だ。
まるで戦場を放浪する壊れた機械兵士だ。この体には黒歴史の記憶も流れ込んでいるらしい。機械兵士か…下らない。闘いを侮辱するような存在だ。
何故彼がここまで空っぽなのかボクは知らないが精々楽しませてもらおうと思う。
それがボクの臣下としての勤めである。
俺達は街道を歩き続けて約三時間。ようやくノースランドに辿り着いた。酒場と宿屋を兼ねている建物に向かう。町は吹雪の上に夕暮れ時と言うこともあり人通りの数は少なかった。
「これから何処に向かうんだい?ケイジ。」
「俺の取っている宿に向かう。今日はベットが二つの部屋だな。」
「ボクがいくら美しいからって変な事を考えるなよ。ケイジ。」
「了解だ。ギルディーン。君にそういう感情を抱いていない。」
「それはそれで女性に対して失礼というものだよ。まあお前のような男に言っても仕方がないか。」
話していると宿屋に到着した。
一階が酒場になっており、しっぽりと飲む客だけが集まっていた。今のところ酒場には用はない。依頼を受けたりする事がある時は厄介になっている。路銀が足りなくなる度に依頼を受けていた。今後は恐らくギルディーンの暇潰しもかねて依頼を受けさせられるであろう。まあ金はあるに越したことはないし、問題はなかった。
酒場のマスター兼宿屋の主でもある旦那が話しかけてきた。
「おい!あんた。いつも一人なのに今日は別嬪さんを連れているじゃないか?シングルベットで良いのか?熱いねえ!」
「何だ。この男は…と言いたいところだけど、これがボクを見た男のまともな反応だ。分かったかい?ケイジ。」
「ああ…普通はそういう反応なんだろうな。努力するよ。確かに君は美しい。」
旦那に向き直ると俺は言葉を紡いだ。
「旦那、シングルベットだと問題があるからツインベットにしてくれないか?金はキチンと払うさ。」
「そうかい。残念だけどツインベットにしてやろう。所で飯は食っているのか?」
「いやまだだ。頂こうか。ギルディーンは食事をするのか。」
「現界するにあたって魔力の補給源として食べる事には食べるね。まあ下賤な食事には変わりないだろうがボクも食べてやろう。」
「おい…旦那に聞こえないようにしてくれ。揉め事は勘弁だ。」
「そうだったね。声のトーンを落とすか。それになるべく君以外とは口を交わさないようにしよう。そもそもボクと喋る事自体が不敬千万である。」
そう言いながら待っていると夕食が運ばれてきた。パンとハンバーグのセットだ。ここでは一番オーソドックスな定食である。
俺とギルディーンは無言で食べた。俺にとっては旨いと思うが、遥か昔贅の限りをつくした彼女にとっては許せない食事かもしれなかった。
食べ終わると俺達は二階へ上がっていった。宿屋の部屋が二階にはある。
部屋は贅沢とは言えない場所でベットが二つあるだけだった。ギルディーンが騒ぐかと思ったが案外気を引かれないらしい。曰く。
「この世に呼ばれる事自体が究極の不敬であるから食事やベットの事で一々怒っている訳には行かない」そうだ。
ギルディーンは疲れを癒すために寝てしまった。俺ももうしばらくしたら寝ようと思うが…
ギルディーンは今後どうしようか?旅のパートナーとして放浪する事は認めてくれないだろう。目的地のある旅をすることだ。それに依頼をこなす事が必要になるだろう。
明らかにギルディーンの暇つぶしを用意しないと激怒を買う事になる。
やれやれ前途多難である。
今まではずっと一人で放浪の旅を続けていた。その期間は十年に及ぶと思う。孤児院を飛び出してから銃を片手にこのイスワルド全域を旅していたのだ。
何度も死にかけたし何回も幸運に恵まれたことがある。言うなれば普通の冒険者ライフだったという事だ。遺跡に入った事も一回ではなかったし、遺跡で金品を得る事もしょっちゅうだったと思う。
あの古代遺跡も金を目当てに侵入したわけだ。そうしたらどうした事か究極黄金巫女なんていう強力そうな英雄をスレイブとして連れ歩けるようになったのだ。
そもそも英雄召喚とはどういう仕組みなのだろう?
条件も無しに究極黄金巫女の様なスレイブを何体も召喚できる装置…謎に包まれている。世界には他にも召喚装置があるのかもしれない。
黒歴史の兵器として彼女達は呼び出されていたのかもしれない。神々に匹敵する能力を武器に戦場を流離い死ぬ事も赦されずに闘う彼女達…ゾッとする想像だった。
でもそれが正しいのならば全てが終わってしまった暗黒時代の今になって召喚されて現世を彷徨うほうが彼女にとってはましかもしれない。戦争の道具にはならない。
一個の個人として活動する事が出来るのだ。といっても戦いを求めるようでは戦争の兵器と変わりがないが…
俺は考えても無駄なので寝る事にした。明日からはまた依頼を受ける毎日が始まるだろう。そこで究極黄金巫女の力を見せてもらう事にしよう。
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