上 下
79 / 111
第一部 剣なんて握ったことの無い俺がでまかせで妹に剣術を指導したら、最強の剣聖が出来てしまいました。

第78話 カイル Millennium nine swords その1

しおりを挟む

 さて。ここで一度思い出してほしいのですが……。邪神テスカポリカをドーマの身体に封印したのはいったい誰だったのでしょうか。

 稀代の魔術師エイドリアン……?。いえ、彼女も手伝いはしましたけど、あともう一つあったでしょ。

 ほら。

 神竜ククルカン。

 え?それがどうしたって?

 いやいや、良く見て下さい。ですよ……何か思い出しませんか?

 神竜……………しんりゅう…………神龍………?

 そう。シェンロンです!!



 まぁ、そんな訳で……。

 目を覚ますと、俺は絶世の美女3人に囲まれていた……。どういう訳か、仰向けに寝かされた俺の顔を覗き込むようにして美女3人が取り囲んでいた。

 あまりにも目覚めた瞬間に3人の顔が目に入って来たものだから……俺は一瞬「ハーレムモードに突入か?」とも思ったりもしたけれど。

 でも、この3人じゃぁねぇ……。

 一人はもちろん俺の妹レイラだ。こいつったら俺が目を開けたとたんに大声で泣き出しちゃって。もしかして……俺が死んだって勘違いしちゃった?涙で顔がボロボロじゃないか。ちょっと気を失ってたぐらいで……大げさなんだよな。

 もう一人は……。あまり顔に見覚えがないけど、こんな特徴ありまくりの容姿じゃあ、嫌でも直ぐに誰だか分かっってしまう。褐色の肌に尖った耳とくれば……。あのダークエルフのドーマしかいない。初めてまじまじと顔を見たが、さすがにエルフ族、こいつもなかなかの美女である……。が!しれっと腹ん中で邪神を飼ってたとんでもなくやべぇ奴だ。

 そして最後は、泣く子も黙る稀代の魔術師エイドリアン。こいつったら本当に見た目とスタイルだけはバツグンなんだよね……。まぁ、喋らなければねぇ……充分メインヒロイン張れたかも知れないのにねぇ。本当に残念なメイドだと思う。

 と、まぁ。そんな3人に俺は囲まれちゃってたわけなんだけど……。正直言うと、ぽっかりと記憶が飛んでまして……何がなんだかさっぱりだったんだ。

「お前たち……3人揃って俺を覗き込んで、いったいどうしたんだ?」

 もちろん俺は目を覚まして直ぐにそう言った。

 でも………。

 妹はワンワン泣くばかりで話にならないし……。じゃあ、ダークエルフはと言うと……邪神の時なら良く目は合ったけど、まともな姿ではほぼ初対面。ということで、結局エイドリアンが答えてくれました。

 ちょっと上から目線の呆れ顔で……。

「何を言ってるんです。あなたはさっきまで死んでたんですよ」

 まぁ俺も、なんとなくそうなんじゃないかとは思ってはいました。

 あの時、全ての気を妹に託したあと、俺は真っ白になってましたから。そう言えば、「もう俺には思い残すことは無い……」なんて格好いい事も思っていた様な気がします。

 でも、

 まさか本当に生き返えることが出来るなんて……俺は夢にも思わないわけです。たとえあいつが神龍シェンロンだったとしても、は手元に揃っていないんですから……。

 そんなくだらない事を考えながらも、いまいち頭の整理が追いつかない俺ではあったけれど……「ほら。早く剣聖ちゃんに、ただいまって言ってあげなさい」エイドリアンにそう言われて、俺はやっとその言葉を妹に言っていない事に気が付いた。

 そして俺は、改めて成長した妹の顔を覗き込む。

 もちろん幼かったあの頃の面影は有る。泣きじゃくってはいるが、その眼差しは今だって修行に励んでいたあの頃のままだ。

 でも、今の妹は俺が知らない部分もたくさん持っている。高くなった背丈もそうだが、極限まで研ぎ澄まされた剣技や、騎士団長となって少し貫禄のある言葉遣いもそう。それらはみんな俺と離れてから彼女自身の選択で手に入れた物なのだ。

 理由は何であれ……。俺がみっともなく妹から逃げていた間に、彼女はもう自分の足で歩き始めていたのだ。

 だって剣聖だよ……。騎士団長だよ……。

 はたして俺はこれからも妹の師匠であることができるのだろうか……。俺の頭の中には、前世で会得した至高の剣技の数々がいっぱい入っているというのに。今の彼女がそれを必要としてくれるだろうか……。

 そんな不安など無い……と言えば嘘になる。

 だが、それも妹が自分で決めればいい事だ。妹はあの幼かった妹ではなく、今ではもう一人前の大人おとななのだ
 
 一度死んで、生き返った者は、その後の世界が変わって見えるらしい。まぁ俺もそういう事なのだろう。ひょっとしたら明日にはまたあの捻くれた俺に戻っているかも知れないが……それはまたあとの話だ。

 そんなことにようやく気がついて、今の俺は思いのほか心の中が澄みわたっていた。だからこそ、ようやく心の底から俺は妹にその言葉を言うことが出来たんだ。

「ただいまレイラ……」

「うん、おかえりお兄ちゃん……」

「あぁ……。心配をかけた」

 たったそれだけのやり取り。

 俺達兄妹の再会は、結局のところ感動のハグでは無かったけれど……

 妹のぐしゃぐしゃの顔が、パッっと笑顔に変わった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
【弱体術師】に選ばれし者、それは最弱の勇者。 それに選ばれてしまった高坂和希は王国から迫害を受けてしまう。 唯一彼の事を心配してくれた小鳥遊優樹も【回復術師】という微妙な勇者となってしまった。 なのに昔和希を虐めていた者達は【勇者】と【賢者】と言う職業につき最高の生活を送っている。 理不尽極まりないこの世界で俺は生き残る事を決める!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...