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第一部 剣なんて握ったことの無い俺がでまかせで妹に剣術を指導したら、最強の剣聖が出来てしまいました。

第37話 帰ってきたカイル その1

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 皆さんはもう既にお気づきのことと思いますが、

 只今、闘技場の真ん中でピッカーン!バッキーン!って、なんか凄いことをやったのは……

 何を隠そう私です。

 そうです。剣聖の兄、カイル=バレンティンです。




 ん?

 皆さんの知っている俺は……

 妹に嘘がバレるのが怖くて嘘をつき続けちゃう様なヘタレで……。そんでもって武芸なんか、からっきし出来ないのに、剣術の師匠を気取っちゃうようなどうしようも無い奴だと思っていませんか?

 さすがに、そこの所は否定しませんけどね。


 でもね、人は変われるんですよ。現に俺は変われたし………。

 まぁ、そんな微かに耳覚えのあるフレーズを使う気は毛頭ありませんがね。俺があの村と妹のもとから去って、もう六年以上。その間、俺だって何もしてこなかった訳じゃぁないってこと。

 この際だからはっきり言うけどさ。

「今の俺。結構強いよ」




 しかしです。

 そんな私。カイル=バレンティンも、とある事情で。今は必死になって会場の観客席から逃げているところでして……。

 思わず柄にもないことをやってしまって、まぁ何と言うか……俺。今、とっても慌てちゃってる状況です。



「おい、おっさん。一人でつべこべ言ってないでさっさと走れよ!」

 背中から聞こえるのは、あのエデン少年の声。彼もまた俺と一緒になって会場から逃げているんだけど、

 いったい、なんでかって?

 そりゃあもう、俺の妹レイラ=バレンティンが、ついさっきコロシアム全体に『千年九剣 第一層 超空間認識』の視線を飛ばしまくったからですよ。

「まずい!こちらの位置がバレるぞ」

 俺は咄嗟にエデンに向かってそう叫ぶと、二人して慌てて人混みの中に頭を隠した。

「バレる?いったい誰に?」

 たまらずにエデンが言う。まぁそりゃそうか。でも、妹と同じ第一層を使いこなす彼にそれがわからないはずはないんだけどな。

「お前は感じ無かったのか?剣聖が超空間認識を発動したぞ。」

「それは分かったけどさ、こんなに観客がいるんだぜ、俺達のことなんか、さすがに見えるはず無いよ」

 うんうん。普通はそう思うんだろうね。しかし、俺の妹はちょっと違うんだ。

「エデン。自分の尺度で考えるなよ。俺の妹の第一層はとんでもなく深いぞ。このスタジアムくらいは間違いなくカバー出来る」

「まさか?会場には万の数がいるんだぜ」

「それが出来るんだよ、あいつには。伊達に死神なんて呼び方はされてないってことだ」

「マジ?」

 エデン君。信じられないって表情だね。そりゃそうだ。使ってみて初めて分かる剣聖の異常さだね。

 そう言えば妹のやつは最初から広い空間を把握するのが好きだったっけ……。

「じゃぁ、おっさんがさっき指を弾いたのも見られてたってこと?」

 確かに、そこまで言われたら当然それが気になっちゃうでしょう。

 でもね、その前に一つ説明して置かなければならない事があるんです。

 エデンの言う通り、さっき俺はパチンって指を弾いたんですよ。

 世間では弾指とか指パッチンとかなんとか言うあれです。正確には指弾しだん。まぁ他にはレールガンなんて言い方もあるみたいだけど。名前なんてものが現象そのものを的確に表せるはわけでは無いわけで……。

 取り敢えず簡単に言うとですね。俺が指パッチンの要領で、あのドーマとか言うダークエルフの刀の刃に、ちょっとした小石をぶつけてやったと言う理由わけです。

 たかが小石と指パッチンを合わせただけなのに、なんだか見た目が凄いとか、威力がスゴいとか……。そんなことはこの際、記憶の片隅にでも置いておいて下さいな。


 だって俺はそれをたった一文字ひともじの漢字で説明しようとしているんですから。

 それはですね。

 き……なんです。

 え?なになに?よく聞こえなかったって?じゃぁもう一度言うよ。

 気……

 今度はわかりました?『気』ですよ。

 もちろん知ってるでしょ?あの戦闘力を百万って高めちゃうことの出来る摩訶不思議エネルギー『the 気』ってやつです。
 
 実は私。妹と離れ離れになってる間に『気』なんてものを使えるようになったんです。
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