24 / 31
第3章〜内乱の激化と流行病の発症〜
23.前の私と今の私
しおりを挟む何度も加筆修正してたら、わからなくなってきました。
意味がわからない所、おかしな所などありましたら、速攻で修正するのでコメントください。
アリシアナが見た内容
1枚目 普通の手紙
2枚目 後半がなければ普通の手紙
3枚目 宛名が消えたスキルについての手紙
ジークフリート達が見た手紙
1枚目 真っ白(DearとFromの文字だけが書いてある)
2枚目 文章量は少ないが内容は普通の手紙
3枚目 宛名が消えたスキルについての手紙
です、参考までに…。
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「2枚目だけは今のところ普通の手紙みたいだね。」
「そうですね。内容も少なめでしたしね。」
「それはどういうことですか?」
手紙を見てジーク様がつぶやいた内容にリオンも同意しているけど、私は2人が何を言っているのか理解が出来なかった。
だって私が読んだ時普通の手紙だったと感じたのは1枚目だけだったから。
2枚目に関しては、前半部分はともかく後半があんな内容だったし、それに短くもないと思う。むしろ後半も入れたら1枚目より長い。
私が読んでリオンに渡すまでの間に手紙の内容が変わったのかもと思い、もう一度手紙を受け取って見てみるがさっき見た時と同じ内容だった。
コレが普通の手紙…?いやいやいや。
「あぁ、シアには母上の事をちゃんと話した事が無かったですね。」
「いや、もともと話してた所で今のシアはどの道忘れてただろうから説明し直しだと思うよ。」
「それもそうですね。」
アリシアナは2人の会話を聞きながらこの食い違いを指摘するかどうか迷った。
アリシアナは2枚目の手紙の内容そのものを指して「どういうことですか?」と聞いたが、おそらく内容の違いなど知らないだろう2人が、アリシアナの疑問点はジークフリートの言った『普通の手紙』という言葉に対してだろうと思った事は想像がつく。母の手紙が普通の手紙で終わるはずがないという事実をアリシアナが知らないのだろうと。だが、ゲームの知識があるアリシアナにとってそれは常識レベルの事だった。
アリシアナは少し考えた結果、この誤解は自分にとって都合が良かったのでそのまま放置することにした。
というか、リオンの母上って事はアリシアナの産みの親って事よね。ゲームでも夢でも話に出てくるだけでよくは知らないのよね。かなり前に亡くなってる設定の悪役令嬢の母だから立ち絵すら無かったし、当然スチルにも出てこないから顔すら知らない。知ってる事と言えば『歩く爆弾』とか『微笑みの悪魔』とか、かなりアレな二つ名があったらしいって事くらい。
ちょっと待って。
私さっき『小さな母上みたい』って言われたわよね!?
それって、はた迷惑な所がよく似てると嫌味を言われてたって事?トラブルメーカーだと思われてる?失礼な!
一言文句を言ってやろうかと思ったけど勝てない喧嘩は売るべきでは無いと思ってやめた。私があのリオンに口喧嘩で勝てる道理はない。
私は諦めて大人しく母の話を聞くことにした。
もしかしたら知らない情報があるかもしれないし!
結論から言って、話してくれた内容に特別新しい事は何も無かった。
だが、どんな人柄だったのかはよくわかった。アリシアナの母はゲームでのアリシアナをしっかり者にした感じのようだ。
髪や目の色はそのままアリシアナと一緒だったらしいからアリシアナは母親似だったのね。きっとすごい美人だったんだろうなぁ。1度会ってみたかった。
ゲームのアリシアナは結構抜けているところがあったけど母のシーナさんはかなりしっかり者で同時にちゃっかりもしてたらしい。
まぁ、ゲームのアリシアナはそのぼんやりさが可愛くてヒロインより人気があったんだけど。ただし、ジークフリート王子ルートは除く。
ん?
ジークフリート王子ルートではどうだったのかって?ジークフリート王子ルートのアリシアナはたった1人で乙女ゲームをホラーゲームに変えていて『トラウマ製造機』と呼ばれSNSや動画なんかでよくネタになってた。
今にして思えばそれはド忘れでのうっかりではなく、ゲームのアリシアナも今の私と同じ記憶喪失で、最初から記憶がなかったから指摘されるまで気づけなかったのでは無いかと推測もできる。
そんな中唯一ちゃんと自分の記憶に残って覚えているジークフリート王子に執着しても不思議じゃないと思う。
この推測は真実に限りなく近いのではないかと考えている。なぜそこまでの確信ができたのかと言うと、断片的に以前の記憶を思い出したからだ。
3枚目の手紙に書いてあった【原始創造スキル】とやらの影響なのか、他に理由があるのかはわからないけど、この世界に来てからずっと寝る度に少しずつ夢にみる。
見る夢は時系列も結末も全てがバラバラな今より少し先の未来での出来事で、その記憶は間違いなく前の私のものだとわかるものだった。だがそれらの記憶は、思い出した事には思い出したが今の自分のだという実感がまるで湧かない。その為、過去の自分の行動を思い出したと言うより別の人の人生を知ったと言った方が正しいかもしれない。
昨晩の夢は今から約7年後の過去の出来事だった。
起きてすぐは意味が変わらなかったけど手紙を読むとその夢がどういう物なのかも理解が出来た。
そしてそれによってもうひとつわかった事がある。
1ヶ月と数日前に謎空間で見せられた光景とアリシアナの記憶という2つのピースに、手紙によるスキルの知識が合わさった事で私の中でようやくひとつ結論が出た。
いや、結論が出てしまったと言うべきだろうか。
アリシアナはこの世界の時の流れを改変してしまったのかもしれないという結論が。
それも1回や2回じゃなく何回もスキルを使って時間を巻き戻したみたいだ。今の私の記憶では詳しい回数まではわからないけど、そうじゃないと記憶の辻褄が合わない箇所が何個も出てくるからだ。
そしてこの結論が正しかった場合、私の記憶喪失は治らない可能性が高い。
3枚目の手紙通りこのスキルが大きな代償を伴うものだとして、世界全体いわばこの時空間そのものが対象の事象改変…いや、改竄と呼ぶべきこの行為の代償が簡単に払い終えられるとは思えない。今の私の頻発する記憶喪失もそのせいだと思う。実際昨日の出来事も1部忘れている様だから。
昨日の出来事で私が覚えているのはジーク様と魔力循環をしているところからでそれ以前は覚えてない。どうせ忘れるなら魔力循環の時の記憶も消して欲しかった。あの感覚に慣れてきた途中からはともかく最初のうちは死ぬほど恥ずかしかった。これでは、ジークフリート王子に執着して最後はうっとおしがられて殺されたゲームのアリシアナを笑えないなと自嘲めいた笑いがこぼれる。
そういえば手紙に書いてあったわね、『怒っていますか?憎んでいますか?恨んでいますか?』って。
全てわかってて私に後始末を押し付けたなら、さすがの私も思う所はある。
自分の中にあるどうしても消えない不安と恐怖。
今の自分の周りにいる人に感じる原因のわからない不信感。
この気持ちの理由を私はずっと異世界という知らない所に来た事と記憶喪失から来るものかと思っていた。
けど、そうじゃないのかもしれないと思えてきた。もちろんそれも理由の一つではあるのかもしれないが、それだけじゃなくて、アリシアナがずっと1人で抱えてきた感情がそのまま残っているからなのかもしれない。
ゲームでのアリシアナと今の私が全くの別人だという事。これは確かな証拠や根拠は今のところ何一つないがきっと真実だろうと確信がある。
アリシアナとして目覚めてからずっと頭の隅っこに追いやり否定し続けてきたがそろそろ認めなくてはいけない。私はアリシアナと違って死にたいわけじゃないから。
昨日、謎空間から出るために必要な行動が何となくわかったのと同じ様に今回のこれもそうなんだろうなと直感もある。
私に全て押し付けて消えた元のアリシアナはどうしてしまったのだろうか。
私は死んでアリシアナに転生したのでは無く、何らかの原因で空になったアリシアナの体に入り込んで乗っ取ってしまったのはまあ確定だろうけど、本当のこの体の持ち主であるはずのアリシアナはどこに行ってしまったのか。
もし本物のアリシアナが戻ってきた時私はどうなるのだろう。
「ひゃうっ!」
突然耳に息がかけられて変な声が出る。
突然なに!?…ってジーク様かい!
変な声を出すはめになった元凶である王子様は私の反応がおかしかったのかお腹を抱えて笑っている。
わー珍しい。あのジークフリート王子がお腹を抱えて笑ってるよ。ってそうじゃない!
どうやらまた周りを忘れて自分の思考に気を取られていた私を正気に戻す為…という大義名分の元、ジーク様にからかわr…遊ばr…もといイタズラされた様だ。
うわぁー…いや、確かにほったらかした私も悪いけどさ!貴族の令嬢にこれはないでしょ!ゲームでもイタズラ好きだったけどこんな小さな頃からイタズラ好きだっんかい!
両手の魔力循環の意味教えてくれなかった時といい、何度も人で遊びやがって。………………………………………………いつか、絶対、やり返す。
私がキッと睨みつけるとそれがまたお気に召したのか、それはそれはいい笑顔でニッコリ微笑んだ後、クスクス笑い続けるジーク様。
この王子様、まるで堪えてない。それどころかまたされそうな勢いだ。
笑い続けるジーク様を見て私はゲームとはイタズラのタイプが違う気がするとふと思う。まだ子供だからかな?ゲームではもう少し人を小馬鹿にしたような感じだったはず。
「ぷっ………殿下、妹で遊ばないでください。他にも、ふふっ、方法はあったでしょうに…ふっ。」
こっちもかいっ!兄なら止めなさいよ!
笑いを堪えながら言われても説得力は皆無でしょうが。いや全然堪えきれてないわね。
「くくくっ…シア大丈夫?」
ひとしきり笑うと、首を傾げてこちらを見つめるジーク様。
綺麗なサラサラの漆黒の髪を揺らし端正な顔に(意地の悪い)微笑を浮かべてこちらを見つめる姿はそれだけ見れば誰もが見惚れる美少年だ。
だけどこんなジーク様は私がアリシアナになって初めて見る、気がする。ゲームでヒロイン達によくしてたから知識として知ってはいたけど、なんだかんだ言っても私には優しい王子様モードが大きく崩れることは無かったから。
(あー、こんな意地悪い笑顔でも相変わらずキラッキラの超イケメンで腹が立つわね!)
アリシアナは今も尚笑い続けるその笑顔を見て、昨日の夢を思い出した。
その夢で前の自分を何度も殺したあの王子と目の前の人が同じ人物だと思うと少しもやっとした。
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
お読みくださりありがとうございます。
3
お気に入りに追加
1,697
あなたにおすすめの小説
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
伯爵閣下の褒賞品
夏菜しの
恋愛
長い戦争を終わらせた英雄は、新たな爵位と領地そして金銭に家畜と様々な褒賞品を手に入れた。
しかしその褒賞品の一つ。〝妻〟の存在が英雄を悩ませる。
巨漢で強面、戦ばかりで女性の扱いは分からない。元来口下手で気の利いた話も出来そうにない。いくら国王陛下の命令とは言え、そんな自分に嫁いでくるのは酷だろう。
互いの体裁を取り繕うために一年。
「この離縁届を預けておく、一年後ならば自由にしてくれて構わない」
これが英雄の考えた譲歩だった。
しかし英雄は知らなかった。
選ばれたはずの妻が唯一希少な好みの持ち主で、彼女は選ばれたのではなく自ら志願して妻になったことを……
別れたい英雄と、別れたくない褒賞品のお話です。
※設定違いの姉妹作品「伯爵閣下の褒章品(あ)」を公開中。
よろしければ合わせて読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる