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第5章 祝福されるふたり

5-25 最愛の妻が、1番大切だから③ 

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 帰りの馬車、ルイーズはエドワードの体に身をゆだねると、温かい彼の腕で、しっかりと抱きしめられていた。

「どうして陛下の前で、わたしを降ろさなかったの、そうすれば……」
「俺の中の1番がルイーズだから当然だ。俺の子を身ごもって、体調が悪い妻以上に優先することは、あるわけないだろう。一応、それが許される立場にあるからな」

「……、エドワードのことを困らせたくないのに、いつも上手うまくいかない。今日だって最後までいたかったんだけど……」

「あの場から早々に帰ってこられたんだ、俺は困っていないから気にするな。それに、元気に小さな心臓が動いているのが、はっきり分かったのを早く伝えたかった。ルイーズが辛そうなのに、俺は何度かにやけてしまって、……ごめんな」

 堪え切れないルイーズの感情があふれ、ルイーズの頬をポロポロと涙が伝う。
「……どうしようエドワード。わたし、色んなことがうれし過ぎて、涙が止まらない……」

 ルイーズの髪をなでながら目を細めて優しく頬笑んだエドワードは、このまま、もう少し、幸せな気持ちに浸りたかった。
 ルイーズに伝えにくい話をするまで、しばしのを置いた。

「……今から謝っておくが、あの場にいた2人……。今ごろ会場で、とんでもないことを勝手に決めているだろう。それで……、明日あすからはルイーズの元に、チョコレート以外の送りものが届くかもしれない」

「……ははは」
 乾いた笑い声を上げたルイーズは、既に今日の時点で妊娠が知れ渡るのだと察した。
 淑女らしくないと言われることに抵抗があったルイーズ。
 こんなに喜んでいる彼が良いなら「まあいいか」と、気にするのを諦めた。


**
 ……そして、そのころの王宮の大広間。

「今日を心待ちにしていたのに!」
 泣きそうな声で叫んだ1人の侯爵。
 彼は、エドワードの様子を見てから頼み込もうとするうちに、完全に出遅れた。
 慌てて列の最後尾に並んだが、そうこうしているうちに、ふたりが帰ってしまったのだ。

 ……焦る侯爵が周囲を見渡せば、頬笑みを浮かべるフォスター伯爵が視界に入る。
 笑い事じゃないと激昂げっこうする侯爵から、ルイーズの父が詰め寄られた。
「どうして、エドワード様が途中で帰ったのだ!」
「……いや、ルイーズは子どもを身ごもっているから、それで」
 おろおろとする気の弱いフォスター伯爵は、息子のアランから聞きかじっていた話を、さらりとしゃべって逃げたのだ。

 それを耳にし、愕然がくぜんとする人物たちが次々と現れた。
 何か手を打たねば、次の舞踏会にルイーズが出席しない。
 エドワードが1人で舞踏会へ来ても、治療の交渉を出来るわけがない。
 せっかくルイーズへチョコレートを送ったのに水の泡だ。
 期待からの反動で、膝をついて項垂うなだれた。

 ……それなのに、周囲を見渡せば、大喜びの参加者が自慢げに、エドワード様のことを周囲に触れ回っているのだ。
 出遅れた自分には、機会がなかった。
 そう思った人物たちが、……あっと言う間に大暴動を起こす。

 国王陛下と宰相が、その場を収めようと「はいはい、分かった」と、適当に定例の舞踏会の開催時期を変更した。
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