84 / 88
第5章 祝福されるふたり
5-25 最愛の妻が、1番大切だから③
しおりを挟む
帰りの馬車、ルイーズはエドワードの体に身をゆだねると、温かい彼の腕で、しっかりと抱きしめられていた。
「どうして陛下の前で、わたしを降ろさなかったの、そうすれば……」
「俺の中の1番がルイーズだから当然だ。俺の子を身ごもって、体調が悪い妻以上に優先することは、あるわけないだろう。一応、それが許される立場にあるからな」
「……、エドワードのことを困らせたくないのに、いつも上手くいかない。今日だって最後までいたかったんだけど……」
「あの場から早々に帰ってこられたんだ、俺は困っていないから気にするな。それに、元気に小さな心臓が動いているのが、はっきり分かったのを早く伝えたかった。ルイーズが辛そうなのに、俺は何度かにやけてしまって、……ごめんな」
堪え切れないルイーズの感情が溢れ、ルイーズの頬をポロポロと涙が伝う。
「……どうしようエドワード。わたし、色んなことがうれし過ぎて、涙が止まらない……」
ルイーズの髪をなでながら目を細めて優しく頬笑んだエドワードは、このまま、もう少し、幸せな気持ちに浸りたかった。
ルイーズに伝えにくい話をするまで、しばしの間を置いた。
「……今から謝っておくが、あの場にいた2人……。今ごろ会場で、とんでもないことを勝手に決めているだろう。それで……、明日からはルイーズの元に、チョコレート以外の送りものが届くかもしれない」
「……ははは」
乾いた笑い声を上げたルイーズは、既に今日の時点で妊娠が知れ渡るのだと察した。
淑女らしくないと言われることに抵抗があったルイーズ。
こんなに喜んでいる彼が良いなら「まあいいか」と、気にするのを諦めた。
**
……そして、そのころの王宮の大広間。
「今日を心待ちにしていたのに!」
泣きそうな声で叫んだ1人の侯爵。
彼は、エドワードの様子を見てから頼み込もうとするうちに、完全に出遅れた。
慌てて列の最後尾に並んだが、そうこうしているうちに、ふたりが帰ってしまったのだ。
……焦る侯爵が周囲を見渡せば、頬笑みを浮かべるフォスター伯爵が視界に入る。
笑い事じゃないと激昂する侯爵から、ルイーズの父が詰め寄られた。
「どうして、エドワード様が途中で帰ったのだ!」
「……いや、ルイーズは子どもを身ごもっているから、それで」
おろおろとする気の弱いフォスター伯爵は、息子のアランから聞きかじっていた話を、さらりと喋って逃げたのだ。
それを耳にし、愕然とする人物たちが次々と現れた。
何か手を打たねば、次の舞踏会にルイーズが出席しない。
エドワードが1人で舞踏会へ来ても、治療の交渉を出来るわけがない。
せっかくルイーズへチョコレートを送ったのに水の泡だ。
期待からの反動で、膝をついて項垂れた。
……それなのに、周囲を見渡せば、大喜びの参加者が自慢げに、エドワード様のことを周囲に触れ回っているのだ。
出遅れた自分には、機会がなかった。
そう思った人物たちが、……あっと言う間に大暴動を起こす。
国王陛下と宰相が、その場を収めようと「はいはい、分かった」と、適当に定例の舞踏会の開催時期を変更した。
「どうして陛下の前で、わたしを降ろさなかったの、そうすれば……」
「俺の中の1番がルイーズだから当然だ。俺の子を身ごもって、体調が悪い妻以上に優先することは、あるわけないだろう。一応、それが許される立場にあるからな」
「……、エドワードのことを困らせたくないのに、いつも上手くいかない。今日だって最後までいたかったんだけど……」
「あの場から早々に帰ってこられたんだ、俺は困っていないから気にするな。それに、元気に小さな心臓が動いているのが、はっきり分かったのを早く伝えたかった。ルイーズが辛そうなのに、俺は何度かにやけてしまって、……ごめんな」
堪え切れないルイーズの感情が溢れ、ルイーズの頬をポロポロと涙が伝う。
「……どうしようエドワード。わたし、色んなことがうれし過ぎて、涙が止まらない……」
ルイーズの髪をなでながら目を細めて優しく頬笑んだエドワードは、このまま、もう少し、幸せな気持ちに浸りたかった。
ルイーズに伝えにくい話をするまで、しばしの間を置いた。
「……今から謝っておくが、あの場にいた2人……。今ごろ会場で、とんでもないことを勝手に決めているだろう。それで……、明日からはルイーズの元に、チョコレート以外の送りものが届くかもしれない」
「……ははは」
乾いた笑い声を上げたルイーズは、既に今日の時点で妊娠が知れ渡るのだと察した。
淑女らしくないと言われることに抵抗があったルイーズ。
こんなに喜んでいる彼が良いなら「まあいいか」と、気にするのを諦めた。
**
……そして、そのころの王宮の大広間。
「今日を心待ちにしていたのに!」
泣きそうな声で叫んだ1人の侯爵。
彼は、エドワードの様子を見てから頼み込もうとするうちに、完全に出遅れた。
慌てて列の最後尾に並んだが、そうこうしているうちに、ふたりが帰ってしまったのだ。
……焦る侯爵が周囲を見渡せば、頬笑みを浮かべるフォスター伯爵が視界に入る。
笑い事じゃないと激昂する侯爵から、ルイーズの父が詰め寄られた。
「どうして、エドワード様が途中で帰ったのだ!」
「……いや、ルイーズは子どもを身ごもっているから、それで」
おろおろとする気の弱いフォスター伯爵は、息子のアランから聞きかじっていた話を、さらりと喋って逃げたのだ。
それを耳にし、愕然とする人物たちが次々と現れた。
何か手を打たねば、次の舞踏会にルイーズが出席しない。
エドワードが1人で舞踏会へ来ても、治療の交渉を出来るわけがない。
せっかくルイーズへチョコレートを送ったのに水の泡だ。
期待からの反動で、膝をついて項垂れた。
……それなのに、周囲を見渡せば、大喜びの参加者が自慢げに、エドワード様のことを周囲に触れ回っているのだ。
出遅れた自分には、機会がなかった。
そう思った人物たちが、……あっと言う間に大暴動を起こす。
国王陛下と宰相が、その場を収めようと「はいはい、分かった」と、適当に定例の舞踏会の開催時期を変更した。
10
お気に入りに追加
378
あなたにおすすめの小説
王子の恋愛を応援したい気持ちはありましてよ?
もふっとしたクリームパン
恋愛
ふわっとしたなんちゃって中世っぽい世界観です。*この話に出てくる国名等は適当に雰囲気で付けてます。
『私の名はジオルド。国王の息子ではあるが次男である為、第二王子だ。どんなに努力しても所詮は兄の控えでしかなく、婚約者だって公爵令嬢だからか、可愛げのないことばかり言う。うんざりしていた所に、王立学校で偶然出会った亜麻色の美しい髪を持つ男爵令嬢。彼女の無邪気な笑顔と優しいその心に惹かれてしまうのは至極当然のことだろう。私は彼女と結婚したいと思うようになった。第二王位継承権を持つ王弟の妻となるのだから、妻の後ろ盾など関係ないだろう。…そんな考えがどこかで漏れてしまったのか、どうやら婚約者が彼女を見下し酷い扱いをしているようだ。もう我慢ならない、一刻も早く父上に婚約破棄を申し出ねば…。』(注意、小説の視点は、公爵令嬢です。別の視点の話もあります)
*本編8話+オマケ二話と登場人物紹介で完結、小ネタ話を追加しました。*アルファポリス様のみ公開。
*よくある婚約破棄に関する話で、ざまぁが中心です。*随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
旦那様は転生者!
初瀬 叶
恋愛
「マイラ!お願いだ、俺を助けてくれ!」
いきなり私の部屋に現れた私の夫。フェルナンド・ジョルジュ王太子殿下。
「俺を助けてくれ!でなければ俺は殺される!」
今の今まで放っておいた名ばかりの妻に、今さら何のご用?
それに殺されるって何の話?
大嫌いな夫を助ける義理などないのだけれど、話を聞けば驚く事ばかり。
へ?転生者?何それ?
で、貴方、本当は誰なの?
※相変わらずのゆるふわ設定です
※中世ヨーロッパ風ではありますが作者の頭の中の異世界のお話となります
※R15は保険です
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~
なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。
そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。
少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。
この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。
小説家になろう 日間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 週間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 月間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 四半期ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 年間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 総合日間 6位獲得!
小説家になろう 総合週間 7位獲得!
【完結】ベニアミーナ・チェーヴァの悲劇
佳
恋愛
チェーヴァ家の当主であるフィデンツィオ・チェーヴァは暴君だった。
家族や使用人に、罵声を浴びせ暴力を振るう日々……
チェーヴァ家のベニアミーナは、実母エルミーニアが亡くなってからしばらく、僧院に預けられていたが、数年が経った時にフィデンツィオに連れ戻される。
そして地獄の日々がはじまるのだった。
※復讐物語
※ハッピーエンドではありません。
※ベアトリーチェ・チェンチの、チェンチ家の悲劇を元に物語を書いています。
※史実と異なるところもありますので、完全な歴史小説ではありません。
※ハッピーなことはありません。
※残虐、近親での行為表現もあります。
コメントをいただけるのは嬉しいですが、コメントを読む人のことをよく考えてからご記入いただきますようお願いします。
この一文をご理解いただけない方のコメントは削除させていただきます。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
離縁の脅威、恐怖の日々
月食ぱんな
恋愛
貴族同士は結婚して三年。二人の間に子が出来なければ離縁、もしくは夫が愛人を持つ事が許されている。そんな中、公爵家に嫁いで結婚四年目。二十歳になったリディアは子どもが出来す、離縁に怯えていた。夫であるフェリクスは昔と変わらず、リディアに優しく接してくれているように見える。けれど彼のちょっとした言動が、「完璧な妻ではない」と、まるで自分を責めているように思えてしまい、リディアはどんどん病んでいくのであった。題名はホラーですがほのぼのです。
※物語の設定上、不妊に悩む女性に対し、心無い発言に思われる部分もあるかと思います。フィクションだと割り切ってお読み頂けると幸いです。
※なろう様、ノベマ!様でも掲載中です。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる