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第5章 祝福されるふたり
5-6 大波乱の舞踏会③
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舞踏会に向かう馬車の中。怪しい動きをしそうなルイーズに、エドワードは釘を刺さしている。
「そういえば、ルイーズの前にモーガンは訪ねて来なかったか?」
「ん? エドワードは知り合いだったの? 婚約を解消した日から姿を見ていないわ」
「それなら良かった。そうだっ、パトリシア嬢が何か言ってきても、俺を売るなよ。今日はルイーズから離れるつもりはないから、手袋を持ってきていない。本気で無理だ」
「まかせて。何も言わないのは、得意だから」
そう言い張ったルイーズを、エドワードは白い目で見ている。
王宮の扉の前、2人は目を見合わせ、「行くぞ」とうなずいてから、会場に入る。
すると、参加者の視線が一気に自分たちに集まった。
一体何がどうなっている? と理解が追い付かないルイーズは、目をパチクリさせ動揺を隠せない。
わけも分からず横を見ると、エドワードは、至って当然だろうという顔だ。
エドワードは、今日の舞踏会で婚約者のお披露目をすると触れ回っていた。けれど、どうせ名前を告げたところで大半の者は顔も知らないだろうと、パートナーが誰なのか明かしていなかった。
ルイーズが知らなかっただけで、エドワードの登場は、今日1番の注目の的になっている。
しかし、視線の中にちょっとした問題が混ざっているようだと感じるエドワードは、周囲を気にし始め、その人物が近くにいないか見回す。
エドワードが婚約者の名前を告げなかったことで、さまざまな憶測が飛び交った。実際、レベッカ王女はこの舞踏会の直前まで、その相手が自分だと勘違いをしていた。
エドワードの横に、見たことのない令嬢が豪華なドレスをまとい並んでいる。
その華やかな令嬢は、プラチナブロンドの髪が美しく、エドワードに親密そうに寄り添っているのだ。
誰だ、誰だと、参加者が目を凝らして見ていれば、正体に気付く者が次第に現れ始める。
「あれって、もしかして、エドワード様といつも一緒に訓練していた、あの子じゃない?」
「えーっ、あんなに綺麗な子じゃなかったでしょう」
「ちょっと見てよ、あのドレス……」
「それよりも、ネックレスの方が、もっとすごいものじゃない」
ヒソヒソと、ルイーズの話題が会場に広がり始める。
今まで目立たなかったルイーズが、みずみずしい肌艶で、以前より少し女性らしい体系になっていた。
なにより、豪華なドレスとキラキラと輝くダイヤの装飾品は、ルイーズの艶々としたプラチナブロンドの髪と共に、とりわけ目立つ。
彼女の美しさに目を見張り、悔しそうにしているのは、左目を眼帯で覆ったモーガンだ。
(これが、あのルイーズなのか……。あいつは、こんなに綺麗だったか……ウソだろう……。それにしても、エドワード様が、お気に入りだと言ったのは本当だったのか)
ルイーズは、チクチクと刺さる視線と、あちこちから聞こえるヒソヒソ話に、居心地の悪さを感じる。
「ねえ、何だかわたし、会場中の人たちに見られている気がするけど、どこか変なのかな」
「まさか。俺が仕立屋の女店主に餌食にされて選んだドレスだぞ、よく似合っていて綺麗だ。きっと、お前のことが羨ましくて、見ているんだろうさ」
「うらやましいって……わたしを? 王女様のことは知っていたけど、エドワードって、すごい有名人だったの……」
「今頃気付いたのか? 今まで、この舞踏会で何を見ていたんだ?」
「そりゃー、立食ブースの、おいしそうな料理に決まっているでしょう。周りのことなんて、よく分からないわよ」
「食い意地を張っているから、社交界の情報に取り残されるんだ。こらっ、恨めしそうにそっちを見るな! 舞踏会の料理にガッついているのは、ルイーズ以外いないだろう」
立食ブースを目で追っているルイーズを見て、エドワードがくすくすと笑い出す。
「だって、もったいないじゃない、せっかく誰かが作ってくれた料理なのに誰も食べないなんて。だからおいしく頂いていただけで、食い意地なんて……」
2人の世界で盛り上がっているところ、エドワードは、レベッカ王女が近づいてくることに気付く。
2人に文句がある。レベッカ王女の顔が、まさにそれを物語る。
それを見て、はぁ~と深いため息をついたエドワードが、緊張した面持ちに変わった。
やはりこの国の王女、美しい所作のカーテシーを見せ、威厳たっぷりに言い切る。
「エドワード……。あなたが婚約したなんて、知らなかったわ」
「そうでしたか、陛下には報告していたのですが。こちらが婚約者のフォスター伯爵家のルイーズです、以後お見知りおきを」
ルイーズはエドワードから王女へ紹介され、精いっぱいの礼をしていた。けれど、そのぎこちない所作を見て、王女は顔を歪ませる。
「そういえば、ルイーズの前にモーガンは訪ねて来なかったか?」
「ん? エドワードは知り合いだったの? 婚約を解消した日から姿を見ていないわ」
「それなら良かった。そうだっ、パトリシア嬢が何か言ってきても、俺を売るなよ。今日はルイーズから離れるつもりはないから、手袋を持ってきていない。本気で無理だ」
「まかせて。何も言わないのは、得意だから」
そう言い張ったルイーズを、エドワードは白い目で見ている。
王宮の扉の前、2人は目を見合わせ、「行くぞ」とうなずいてから、会場に入る。
すると、参加者の視線が一気に自分たちに集まった。
一体何がどうなっている? と理解が追い付かないルイーズは、目をパチクリさせ動揺を隠せない。
わけも分からず横を見ると、エドワードは、至って当然だろうという顔だ。
エドワードは、今日の舞踏会で婚約者のお披露目をすると触れ回っていた。けれど、どうせ名前を告げたところで大半の者は顔も知らないだろうと、パートナーが誰なのか明かしていなかった。
ルイーズが知らなかっただけで、エドワードの登場は、今日1番の注目の的になっている。
しかし、視線の中にちょっとした問題が混ざっているようだと感じるエドワードは、周囲を気にし始め、その人物が近くにいないか見回す。
エドワードが婚約者の名前を告げなかったことで、さまざまな憶測が飛び交った。実際、レベッカ王女はこの舞踏会の直前まで、その相手が自分だと勘違いをしていた。
エドワードの横に、見たことのない令嬢が豪華なドレスをまとい並んでいる。
その華やかな令嬢は、プラチナブロンドの髪が美しく、エドワードに親密そうに寄り添っているのだ。
誰だ、誰だと、参加者が目を凝らして見ていれば、正体に気付く者が次第に現れ始める。
「あれって、もしかして、エドワード様といつも一緒に訓練していた、あの子じゃない?」
「えーっ、あんなに綺麗な子じゃなかったでしょう」
「ちょっと見てよ、あのドレス……」
「それよりも、ネックレスの方が、もっとすごいものじゃない」
ヒソヒソと、ルイーズの話題が会場に広がり始める。
今まで目立たなかったルイーズが、みずみずしい肌艶で、以前より少し女性らしい体系になっていた。
なにより、豪華なドレスとキラキラと輝くダイヤの装飾品は、ルイーズの艶々としたプラチナブロンドの髪と共に、とりわけ目立つ。
彼女の美しさに目を見張り、悔しそうにしているのは、左目を眼帯で覆ったモーガンだ。
(これが、あのルイーズなのか……。あいつは、こんなに綺麗だったか……ウソだろう……。それにしても、エドワード様が、お気に入りだと言ったのは本当だったのか)
ルイーズは、チクチクと刺さる視線と、あちこちから聞こえるヒソヒソ話に、居心地の悪さを感じる。
「ねえ、何だかわたし、会場中の人たちに見られている気がするけど、どこか変なのかな」
「まさか。俺が仕立屋の女店主に餌食にされて選んだドレスだぞ、よく似合っていて綺麗だ。きっと、お前のことが羨ましくて、見ているんだろうさ」
「うらやましいって……わたしを? 王女様のことは知っていたけど、エドワードって、すごい有名人だったの……」
「今頃気付いたのか? 今まで、この舞踏会で何を見ていたんだ?」
「そりゃー、立食ブースの、おいしそうな料理に決まっているでしょう。周りのことなんて、よく分からないわよ」
「食い意地を張っているから、社交界の情報に取り残されるんだ。こらっ、恨めしそうにそっちを見るな! 舞踏会の料理にガッついているのは、ルイーズ以外いないだろう」
立食ブースを目で追っているルイーズを見て、エドワードがくすくすと笑い出す。
「だって、もったいないじゃない、せっかく誰かが作ってくれた料理なのに誰も食べないなんて。だからおいしく頂いていただけで、食い意地なんて……」
2人の世界で盛り上がっているところ、エドワードは、レベッカ王女が近づいてくることに気付く。
2人に文句がある。レベッカ王女の顔が、まさにそれを物語る。
それを見て、はぁ~と深いため息をついたエドワードが、緊張した面持ちに変わった。
やはりこの国の王女、美しい所作のカーテシーを見せ、威厳たっぷりに言い切る。
「エドワード……。あなたが婚約したなんて、知らなかったわ」
「そうでしたか、陛下には報告していたのですが。こちらが婚約者のフォスター伯爵家のルイーズです、以後お見知りおきを」
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