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第5章 祝福されるふたり
5-3 大好き......
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何故か分からないが、ダンスの振りを弟に教える羽目になった。それも相当な期待を向けられているルイーズ。
自分も分からないのに、出来るわけがない。
どうすべきかと、ルイーズは頭を抱ている。
そんなとき、「ルイーズ入るぞ」と言って、エドワードが突然部屋に現れた。
考えるより先、思わぬ味方の登場に、ルイーズはうれしくなり、彼の元に駆け寄っていく。
「会いたかった。でも、急に来てどうしたの?」
「約束のリンゴを持ってきた。アランにもわけてやれよ」
実は、それを見たときから気になって仕方ないのだ。紙袋から溢れんばかり大好きなリンゴ!
ルイーズは、目を輝かせエドワードから袋ごと受け取ろうとした。
けれど、自分を心配そうな顔で見るエドワードから、1個だけ「ほらっ」と受け取る。
ルイーズには重いだろうと、エドワードはリンゴの袋を自分で机の上に、そっと置き、自分を気づかってくれる。
そんなエドワードの優しさに、ルイーズは目を細めて笑う。
毎日一緒にいるのが当たり前、たった2日会わないだけで、寂しかった。
入れ替わり中、すっかりそれが当然だった2人は、互いに寄り添ってソファーに座る。
何も言わなくても、エドワードに腕を回され、ルイーズは彼の胸に体を預けている。
「うれしいわっ。リンゴって好きなのよね~」
それを言う前から、大好きだと、とっくに顔に書いてある。
手に持っている、真っ赤なリンゴをルイーズは、待ち切れない気持ちで見つめてしまう。
「リンゴくらいでこんなに喜べるなんて、ルイーズって、単純だな」
「おいしいものは何でも、ありがたいじゃない。一緒に食べましょう」
自分より、エドワードに先に食べてもらおうと、そのリンゴを彼に差し出す。
「あー、俺、リンゴは体に合わないんだ。さっき素手で持っただけで、指先が既にヒリヒリしている。他の回復魔法師2人もそうだから、多分俺の体質と何か関係あるんだろう。自分自身を治療出来ないのに、ほんの少しでも口にすれば、息が吸えなくなるくらいだから、食べられない。でも、ルイーズと入れ替わり中に、初めて食べたリンゴはおいしかったな」
そう言って、エドワードは、にへへッと笑う。
「大変っ! そうだったの。リンゴを抱えていたけど、苦しくなったりしていない?」
ルイーズは、自分の体を抱き締めていた、彼の腕を振り払う。
こうしてはいられないと、慌てて自分が持つリンゴを机に置き、彼の顔を不安そうに覗き込んでいた。
「それくらい大丈夫だ。なんか、ルイーズらしい反応で安心した。今、当主と話をしてきたから、舞踏会の日は俺が迎えにくる。そのまま俺のところで暮らすぞ」
「そうしたいけど、アランが……」
「明日から、アランの家庭教師が、この屋敷に来るから心配するな」
「本当にっ! うれしいわ。ありがとうエドワード。姉の威厳が保たれない極限だったのよ。あーこれで肩の荷が下りたわ」
自分の顔を見たときより、相当にうれしそうに歯を見せて笑うルイーズ。彼女を満面の笑みにさせているのがアランの家庭教師の話。
何だかそれはルイーズらしいと思いつつも、妬けてきたエドワードは、再びルイーズに腕を回しグッと抱き寄せる。
……でも少し機嫌が悪い。
「喜ぶところは、そこか? なあ、俺の所に来るのはどうでもいいのかよ!」
少し考えてみるルイーズ。エドワードが大好き。それを伝えたいのに、どうやっても拙ない言葉しか浮かばない。
自分に向かない、格好をつけるのは諦めることにした。
「ふふっ、もちろん、うれしいに決まっているでしょう。エドワードの部屋は広すぎて独りだと寂しかったけど、今度はエドワードとずっと一緒にいられるし」
「別の部屋を用意していたけど、ルイーズは、俺の部屋で過ごすつもりなのか?」
「えー駄目なの。エドワードと一緒だったら、いつも楽しいし心細くないもの」
ルイーズの言葉が、胸にジーンッと響いていたエドワードは、ほっこりと温かい気分になっていた。
回復魔法師の特性を、嫌悪されると気にしていたエドワードにとっては、自分を受け入れてくれるルイーズのような存在が現れるとは、思いもしていなかった。
「ルイーズが良いなら一緒の部屋で構わない。むしろ、ずっと近くにいたい。……何だろうな、一緒にいると癒される。しばらくこのまま……、ルイーズと、こうしていてもいいだろうか」
(何も考えずに、俺が誰かのそばにいられることなんて、なかったのにな……)
「ふふっ、もちろん。わたしも癒される気がするわ」
「くくっ、それは気のせいではないな。誰かに頬を叩かれたんだろう、指輪で傷ができていた」
2人はそのまま何も話さず、互いの存在を感じ合っている。
しばらくしてから、エドワードがおもむろに話し始める。
「そうだ、姉から何か返してもらったか?」
「いいえ、何か貸していたの?」
「まあな。ルイーズが興味のないものを貸したままだな」
何のことやらルイーズはさっぱり分かっていない顔をする。
なのに、それ以上エドワードは何も言わず仕舞い。
エドワードがサラッと話していたため、大したものではないのかと、あまり気にしていなかった。
自分も分からないのに、出来るわけがない。
どうすべきかと、ルイーズは頭を抱ている。
そんなとき、「ルイーズ入るぞ」と言って、エドワードが突然部屋に現れた。
考えるより先、思わぬ味方の登場に、ルイーズはうれしくなり、彼の元に駆け寄っていく。
「会いたかった。でも、急に来てどうしたの?」
「約束のリンゴを持ってきた。アランにもわけてやれよ」
実は、それを見たときから気になって仕方ないのだ。紙袋から溢れんばかり大好きなリンゴ!
ルイーズは、目を輝かせエドワードから袋ごと受け取ろうとした。
けれど、自分を心配そうな顔で見るエドワードから、1個だけ「ほらっ」と受け取る。
ルイーズには重いだろうと、エドワードはリンゴの袋を自分で机の上に、そっと置き、自分を気づかってくれる。
そんなエドワードの優しさに、ルイーズは目を細めて笑う。
毎日一緒にいるのが当たり前、たった2日会わないだけで、寂しかった。
入れ替わり中、すっかりそれが当然だった2人は、互いに寄り添ってソファーに座る。
何も言わなくても、エドワードに腕を回され、ルイーズは彼の胸に体を預けている。
「うれしいわっ。リンゴって好きなのよね~」
それを言う前から、大好きだと、とっくに顔に書いてある。
手に持っている、真っ赤なリンゴをルイーズは、待ち切れない気持ちで見つめてしまう。
「リンゴくらいでこんなに喜べるなんて、ルイーズって、単純だな」
「おいしいものは何でも、ありがたいじゃない。一緒に食べましょう」
自分より、エドワードに先に食べてもらおうと、そのリンゴを彼に差し出す。
「あー、俺、リンゴは体に合わないんだ。さっき素手で持っただけで、指先が既にヒリヒリしている。他の回復魔法師2人もそうだから、多分俺の体質と何か関係あるんだろう。自分自身を治療出来ないのに、ほんの少しでも口にすれば、息が吸えなくなるくらいだから、食べられない。でも、ルイーズと入れ替わり中に、初めて食べたリンゴはおいしかったな」
そう言って、エドワードは、にへへッと笑う。
「大変っ! そうだったの。リンゴを抱えていたけど、苦しくなったりしていない?」
ルイーズは、自分の体を抱き締めていた、彼の腕を振り払う。
こうしてはいられないと、慌てて自分が持つリンゴを机に置き、彼の顔を不安そうに覗き込んでいた。
「それくらい大丈夫だ。なんか、ルイーズらしい反応で安心した。今、当主と話をしてきたから、舞踏会の日は俺が迎えにくる。そのまま俺のところで暮らすぞ」
「そうしたいけど、アランが……」
「明日から、アランの家庭教師が、この屋敷に来るから心配するな」
「本当にっ! うれしいわ。ありがとうエドワード。姉の威厳が保たれない極限だったのよ。あーこれで肩の荷が下りたわ」
自分の顔を見たときより、相当にうれしそうに歯を見せて笑うルイーズ。彼女を満面の笑みにさせているのがアランの家庭教師の話。
何だかそれはルイーズらしいと思いつつも、妬けてきたエドワードは、再びルイーズに腕を回しグッと抱き寄せる。
……でも少し機嫌が悪い。
「喜ぶところは、そこか? なあ、俺の所に来るのはどうでもいいのかよ!」
少し考えてみるルイーズ。エドワードが大好き。それを伝えたいのに、どうやっても拙ない言葉しか浮かばない。
自分に向かない、格好をつけるのは諦めることにした。
「ふふっ、もちろん、うれしいに決まっているでしょう。エドワードの部屋は広すぎて独りだと寂しかったけど、今度はエドワードとずっと一緒にいられるし」
「別の部屋を用意していたけど、ルイーズは、俺の部屋で過ごすつもりなのか?」
「えー駄目なの。エドワードと一緒だったら、いつも楽しいし心細くないもの」
ルイーズの言葉が、胸にジーンッと響いていたエドワードは、ほっこりと温かい気分になっていた。
回復魔法師の特性を、嫌悪されると気にしていたエドワードにとっては、自分を受け入れてくれるルイーズのような存在が現れるとは、思いもしていなかった。
「ルイーズが良いなら一緒の部屋で構わない。むしろ、ずっと近くにいたい。……何だろうな、一緒にいると癒される。しばらくこのまま……、ルイーズと、こうしていてもいいだろうか」
(何も考えずに、俺が誰かのそばにいられることなんて、なかったのにな……)
「ふふっ、もちろん。わたしも癒される気がするわ」
「くくっ、それは気のせいではないな。誰かに頬を叩かれたんだろう、指輪で傷ができていた」
2人はそのまま何も話さず、互いの存在を感じ合っている。
しばらくしてから、エドワードがおもむろに話し始める。
「そうだ、姉から何か返してもらったか?」
「いいえ、何か貸していたの?」
「まあな。ルイーズが興味のないものを貸したままだな」
何のことやらルイーズはさっぱり分かっていない顔をする。
なのに、それ以上エドワードは何も言わず仕舞い。
エドワードがサラッと話していたため、大したものではないのかと、あまり気にしていなかった。
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