記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
文字の大きさ
大中小
56 / 112
第2章 あなたは暗殺者⁉
崩壊の予感①(フィリベール)
しおりを挟む
◇◇◇SIDEフィリベール
宗教信仰の強いルダイラ王国。その中でも特に信者が多いのがカトリック教徒である。
その中枢となる中央教会は、王政と並ぶほど権力を有し、見くびることはできない。
本来、王室とは別の組織にもかかわらず、聖女が王族であるが故、陛下と中央教会は必要以上に結びつきが強い。
大司教のガラス玉に至っては、大司教の主張のまま、陛下は法律まで制定したのだ。
正直なところ、私はそれに納得していない。
ボンボンと生産できる魔力の結晶に、不要な付加価値を付け、中央教会の支配を強めつつあるのだから。自身が王位に就けば見直すつもりだ。
その中央教会へ馬車で向かう途中。げんなりする感情から、はぁ~あと深いため息が溢れた。
ジュディットを追い出した後になって、次から次へと明るみに出る不愉快な事象の数々。
婚約者がこなしていた膨大な政務に、結界に、黒魔術を実行した犯人。挙げ句の果てに、何も知らずに禊ぎの儀まで交わしたーー……。ああぁぁあ~うんざりだ。
何がどうなっているのかと混迷をきたし、頭をくらくらさせながら中央教会へ到着した。
教会の裏手から関係者用通路を突き進むと、なぜかそこには、王宮の騎士団の姿がある。
は? 私に泉の魔物退治を押し付けておきながら何をしているのかと、眉をひそめる。
顔ぶれからすると第二部隊だろう。
だが、ジュディットと恋愛関係にあると聞きかじった、シモンという名の隊長の姿は見当たらない。
騎士らと目が合う。そうすれば彼らも私を認識し、ハッとした顔を浮かべる。にもかかわらず敬礼一つしないため、やつらへのいらだちが増す。
「おい、お前たちは魔物の討伐に向かったのではないのか? ここで何をしている」
「お、王太子殿下! 殿下こそ泉を任されたはずでは⁉」
「それは別の者に頼んだ。私はお前らに、とやかく言われる立場にない。質問にさっさと答えろ!」
「はい。申し訳ありませんでした。我々は陛下の命令で聖女リナ様が祈祷室から出てこないように見張っております」
「ハァッ⁉ 何をふざけたことをしている。リナは私の婚約者だ! すぐに開放せよ。これは私の命令だ!」
「なりません。一度この部屋から出してしまえば、どこへ逃げ出すか分からないと、陛下から厳命が出ております」
騎士二人がかりで私の前に立ちふさがり、行く手を阻む。
王太子に向かい、なんと無礼なやつらだと叱責しようとした矢先。横から大司教が声をかけてきた。
自分から姿を見せてくれるとは話が早い。喜ばしい状況に口角を上げる。
「王太子殿下。この場で大きな声を出すのはお止めください。不安を感じる国民が、ただでさえ救いを求めて教会に来ているんですから。殿下の声が国民の不安をあおりますぞ」
「リナが拘束されていると知り、大人しく引き下がれるわけないだろう」
「あの聖女を祈祷室から出したところで、人前に出られる姿はしておりませんぞ。今まで、偽装魔法を使って誤魔化していたんでしょうが、魔力が枯渇していてはそれもできませんからな」
「それは……」
「明朝、回復した魔力を無駄な偽装魔法に使って欲しくはありませんからね。それくらいならせめて、祈祷室に留め置く方が、国民のためになると国王陛下が判断されたのですぞ」
言わんとしていることは理解できるが、問題はもう一つある。
そこを解決しなければ、私が動くに動けない。
「それでは王宮に発生した瘴気だまりはどうするつもりだ!」
「それは王太子殿下の責任でしょう。黒魔術を使っていた者を聖なる泉に入れたのは、ご自身なんですから。どうにかしてください。黒魔術が瘴気の原因になるからこそ、禁術として違法にしているのはご存じでしょう。そんな人物を泉に入れるなんて、どうかしていますぞ!」
「煩いッ! いいからガラス玉を寄越せ! リナを連れていき、泉を浄化させる」
「無理です。昨日、最後の一つをリナ殿にお渡ししましたから。きつく忠告したのに一日で使い終わりよって。それだって殿下へ会いに行くために偽装魔法を使ったせいでしょう」
「はぁ⁉︎ 最後の一個とはどういう意味だ! あのガラス玉を作っているのは大司教自身だろう!」
「殿下……。あなたの婚約者様だったのに、そんなこともご存じなかったのですね」
哀れみの視線を向けられた。
いくらなんでも侮辱しすぎだ。不愉快極まりないとカッとする。
宗教信仰の強いルダイラ王国。その中でも特に信者が多いのがカトリック教徒である。
その中枢となる中央教会は、王政と並ぶほど権力を有し、見くびることはできない。
本来、王室とは別の組織にもかかわらず、聖女が王族であるが故、陛下と中央教会は必要以上に結びつきが強い。
大司教のガラス玉に至っては、大司教の主張のまま、陛下は法律まで制定したのだ。
正直なところ、私はそれに納得していない。
ボンボンと生産できる魔力の結晶に、不要な付加価値を付け、中央教会の支配を強めつつあるのだから。自身が王位に就けば見直すつもりだ。
その中央教会へ馬車で向かう途中。げんなりする感情から、はぁ~あと深いため息が溢れた。
ジュディットを追い出した後になって、次から次へと明るみに出る不愉快な事象の数々。
婚約者がこなしていた膨大な政務に、結界に、黒魔術を実行した犯人。挙げ句の果てに、何も知らずに禊ぎの儀まで交わしたーー……。ああぁぁあ~うんざりだ。
何がどうなっているのかと混迷をきたし、頭をくらくらさせながら中央教会へ到着した。
教会の裏手から関係者用通路を突き進むと、なぜかそこには、王宮の騎士団の姿がある。
は? 私に泉の魔物退治を押し付けておきながら何をしているのかと、眉をひそめる。
顔ぶれからすると第二部隊だろう。
だが、ジュディットと恋愛関係にあると聞きかじった、シモンという名の隊長の姿は見当たらない。
騎士らと目が合う。そうすれば彼らも私を認識し、ハッとした顔を浮かべる。にもかかわらず敬礼一つしないため、やつらへのいらだちが増す。
「おい、お前たちは魔物の討伐に向かったのではないのか? ここで何をしている」
「お、王太子殿下! 殿下こそ泉を任されたはずでは⁉」
「それは別の者に頼んだ。私はお前らに、とやかく言われる立場にない。質問にさっさと答えろ!」
「はい。申し訳ありませんでした。我々は陛下の命令で聖女リナ様が祈祷室から出てこないように見張っております」
「ハァッ⁉ 何をふざけたことをしている。リナは私の婚約者だ! すぐに開放せよ。これは私の命令だ!」
「なりません。一度この部屋から出してしまえば、どこへ逃げ出すか分からないと、陛下から厳命が出ております」
騎士二人がかりで私の前に立ちふさがり、行く手を阻む。
王太子に向かい、なんと無礼なやつらだと叱責しようとした矢先。横から大司教が声をかけてきた。
自分から姿を見せてくれるとは話が早い。喜ばしい状況に口角を上げる。
「王太子殿下。この場で大きな声を出すのはお止めください。不安を感じる国民が、ただでさえ救いを求めて教会に来ているんですから。殿下の声が国民の不安をあおりますぞ」
「リナが拘束されていると知り、大人しく引き下がれるわけないだろう」
「あの聖女を祈祷室から出したところで、人前に出られる姿はしておりませんぞ。今まで、偽装魔法を使って誤魔化していたんでしょうが、魔力が枯渇していてはそれもできませんからな」
「それは……」
「明朝、回復した魔力を無駄な偽装魔法に使って欲しくはありませんからね。それくらいならせめて、祈祷室に留め置く方が、国民のためになると国王陛下が判断されたのですぞ」
言わんとしていることは理解できるが、問題はもう一つある。
そこを解決しなければ、私が動くに動けない。
「それでは王宮に発生した瘴気だまりはどうするつもりだ!」
「それは王太子殿下の責任でしょう。黒魔術を使っていた者を聖なる泉に入れたのは、ご自身なんですから。どうにかしてください。黒魔術が瘴気の原因になるからこそ、禁術として違法にしているのはご存じでしょう。そんな人物を泉に入れるなんて、どうかしていますぞ!」
「煩いッ! いいからガラス玉を寄越せ! リナを連れていき、泉を浄化させる」
「無理です。昨日、最後の一つをリナ殿にお渡ししましたから。きつく忠告したのに一日で使い終わりよって。それだって殿下へ会いに行くために偽装魔法を使ったせいでしょう」
「はぁ⁉︎ 最後の一個とはどういう意味だ! あのガラス玉を作っているのは大司教自身だろう!」
「殿下……。あなたの婚約者様だったのに、そんなこともご存じなかったのですね」
哀れみの視線を向けられた。
いくらなんでも侮辱しすぎだ。不愉快極まりないとカッとする。
0
お気に入りに追加
393
あなたにおすすめの小説
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
王子様に恋をした【完結】
Saeko
恋愛
趣味は料理の平凡OLの私が王子様に恋をした。
彼とお付き合いをして一生懸命尽くしてきた王子様は、実は御曹司だった。
身分違いの恋が成就と思いきや、彼は幼なじみの令嬢とご婚約‼︎
ショックで立ち直れない私は、フラフラと道路に飛び出してしまい…
※改訂版 完結致しました。
※数話ですが、加筆も致しました。
※誤字脱字は、極力無いよう見直しを致しましたが、それでも漏れはあるかと思います。何卒御容赦下さいませ。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる