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7・魔王が来たりて編

第81話 たった一つの冴えた(スキルの)やり方

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『うおおおおーっ!!』

 ポンデリグが叫びながら、体の周りに金色のリングを出現させる。
 リングはたくさんのボール状のものに分離すると、俺たちに襲いかかってきた。
 一つ一つが拳の形をしている!

「ウグワー!?」「ふ、防げない!」「撤退だ、てったーい!!」

 各国の軍隊が慌てて距離を取る。
 魔王は強い。
 普通の軍隊じゃ相手にならないのだ。

「軍は訓練された常人の集まりだ。それぞれの力を束ねれば確かに強くなる。だがそれを一つ一つに分けて見れば、常人に過ぎない。常人では恐らく、魔王の攻撃に耐えられない」

 ゴウが冷静に分析しながら、黄金の拳を捌いている。

「ふん! みんな雑魚だからダメなんでしょ? 姫はこんなの楽勝だもの! ざーこ!」

 王女様が光の翼を広げて、ぐるぐる回転しながら次々に黄金の拳を切り裂いていく。
 ここで意外な活躍を見せたのはアンナだった。

 タッタカ走っていったと思ったら、黄金の拳を回避しながら、あっという間に魔王の眼の前にいる。

『なにっ!!』

「技巧神様の薫陶を受けてますから! 隙だらけよ! たあっ!」

 ポンデリグ目掛けて、技巧神の槍が突きこまれる。

『小癪な!』

 魔王が腕を振り下ろした。
 これをアンナは、ギリギリで避ける。
 やりを使って攻撃を逸らさせたらしい。

 やるなあ!

「ひええ! 技を使っても本当にギリギリ! こんなの、何度も続けられない!」

 悲鳴あげてる。
 それでも、魔王とやり合えるだけで凄い!

 次にヒュージが黄金の拳の雨を抜けていった。
 金属の蛇が幾つも、あいつの体を取り巻いていて、全身で触れたものを削ぎ落とす装置みたいになっている。

「おらおらおら! 俺が行くぜ俺が行くぜ!!」

『さきほど我が殴り飛ばした男か! 呆れたタフさだな!』

「俺は体内にも蛇を飼ってるからなあ! ダメージは回転で逃してるんだよぉ!」

 ポンデリグの拳と、ヒュージが正面からぶつかりあった。
 凄まじいパワーを、ヒュージは金属の蛇を大回転させて受け流し続けている。

「くっそ、進めねえ!! バカ過ぎるだろこのパワー!!」

『ぬぐはははははは! それ、押し切るぞ!!』

 回転する蛇と相対しても、全く削られた様子もない。
 魔王は笑いながら、どんどんとヒュージを押し込んでいく。

 だが、その隙間にゴウと王女様とアンナが飛び込んだ。

「連続コンボで行く! ふんっ!」

「姫が切り刻んでやるわ!」

「隙を見せたら即座に攻撃、技巧神様の教えです!」

 それぞれの攻撃のダメージは少なそうだ。
 だけど、確かに魔王は少しだけ後退した。

『ぬうう!! ちょこまかと面倒な! 我へ近づける者がこれほどいるとは……!!』

「近づく必要が無いのもいる!」

 俺はようやく準備が終わっていた。

 魔法の針の山の姿はもう無い。
 俺の背後に浮かぶのは、五本の魔剣。

 炎のレーヴァテイン。

『あんじょうよろしゅう……』

 氷のグラム。

『真なる攻撃目標を確認した。拘束する』

 風の天羽々斬。

『魔王か。相手にとって不足なし。我は完全体。この風で何もかも押し流してやろう』

 雷のクラレント。

『待ってたぜこの時をよーっ!! 俺が! このクラレント様が圧倒的な威力で勝負をつける時が! 今! ここにやって来た! 行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ! この最高の舞台で映える! 俺様が! 豪雷によるアツい一撃が! ついにこの星を救う! 第一部完!』

『はー、元気やなあ』『うるさいぞ黙れ』『喋り過ぎだぞ』『何だお前ら!?』

 あーっ、魔剣同士で喧嘩しないでくれ!
 そして無言なのは、鏡の魔剣。

「よし、いっぺんに突撃!!」

『ほな……』『凍結する』『吹き散らす!』『オラオラオラオラオラオラ! 行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ!!』

 にぎやかに突進する、四本の本物魔剣。

 クラレントが雷撃で、黄金の拳を次々に撃ち落とす。
 グラムが魔王の動きを止め、天羽々斬が魔王の勢いを殺す。

 そしてレーヴァテインは、魔王に腕に深く突き刺さり、燃え上がった。

『ぬおおおおおおおおっ!? 全てが伝説級の剣!! それが四本同時にだと!? 使い手が揃っていれば危ないところであった!』

 効いてる!
 だけど、決定打にはなってない。
 なるほど、使い手が揃ってたら勝ててたのか!

 俺は両替によって、呼び出す力を持っている。
 だけど、剣の使い手じゃない。

『お前が魔剣の召喚者か! ふんぬ!!』

 ポンデリグが拳を振り回した。
 衝撃波が生まれる!
 それは俺を粉砕しようと飛び込んできて……。

「うおおっ!!」

 俺が手にした鏡の魔剣は、的確にこれを受け止め、受け流した。
 必要な時に、確実に仕事をするのがこの魔剣っぽい。

『なるほど、身の守りのために汎用の魔剣を呼んでいたか……! それであれば素人だろうと、我の攻撃を防げよう! だがどうする?』

 魔王は周囲を睥睨する。
 仲間たちが絶えず攻撃を仕掛けている。
 それでも、魔王ポンデリグの凄まじいタフネスを削れない。

 周囲では、ぐったりした軍隊たち。
 みんな無力感に打ちひしがれている。

 俺の魔剣はダメージを与えられるが、それぞれが本来持つ最高のポテンシャルは発揮できない。

 これは……なかなかまずいのでは?
 長期戦になったら、絶対にやばい。

 魔王ポンデリグは、どう見たってタフネスが無限大だからだ。

「つまりさ」

 ここで声が聞こえた。
 後ろからだ。

 俺の後ろに立っている人なんか一人しかいない。

「ミスティ?」

「うん。私たちだけで頑張る必要、ないでしょウーサー。ここはみんなでやろう!」

「みんなで……!?」

 ミスティの手が、俺の手を包み込んだ。

「両替って、お金を物にするだけじゃないじゃない。物を物に変えて、ついには物から何かを呼び出せるようになって……。それでウーサー、スキル確認してみた?」

「最近はしてない!」

 こんな時に、彼女は何を言っているんだろう。
 だけど、とても大事なことを言っている気がした。

「ウーナギが世界中と繋げてくれてるよ。ウーサーのスキルなら、世界中のみんなとサイッコーの両替ができるかも!」

 最高の、両替……!?

 俺の視界にスキルの表示が出現する。


スキル:両替(究極段階)

・今までの全ての能力を有する。
・同意した者全ての意志を力に両替する。
・力を束ね、一つの力に両替する。

「みんなであの魔王、ぶん殴っちゃおうよ!!」

「なるほど、そういうことか!!」 
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