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7・魔王が来たりて編

第76話 次は真打ち?

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『ブオオオオオオオ!!』

 レイガストが岩がこすり合わされるような音で叫ぶ。
 それと同時に、岩の巨人みたいなそいつの全身からモヤが吹き出した。

 モヤが辺りの岩や石に取り付き、動かし始めようとする……。

「うおーっ!!」

 それは、俺が振るった天羽々斬が烈風を起こし、全て吹き散らした。

『なんだと!!』

「次は俺だ!! くたばれ化け物が!!」

 ヒュージは金属の蛇を伸ばし、その上を走っていく。
 蛇の先に蛇を生み出し、その先にも蛇を生み出し。

 まるで蛇の坂道だ。
 駆け上がるヒュージの両腕を、金属製の蛇が甲高い音を立てて回転しながら包み込んでいる。

『小癪なちびめ! ここで捻り潰してやる!!』

 レイガストの腕が叩きつけられる。
 これをヒュージは、回転する蛇で受け止めた。
 すると……蛇の回転が、レイガストの腕を構成する岩石を削り取っていく。

『な、なにぃーっ!!』

「俺の力は回転! 磨き上げて蛇の形に昇華できるようにしたんだ! 振れるものを皆削ぎ落とすぞ! てめえも俺の回転でバラバラにしてやる!」

 ヒュージは歩いてもいないのに、レイガストに向かって進んでいく。
 よく見ると、蛇の坂道は無数の回転する蛇のリングで作られていた。
 これがヒュージを自動的に運んでいくのだ。

「やるなあ! じゃあ俺も頑張ろう! ナイト!」

「ひひーん!」

 俺は天羽々斬を魔法の針に戻した。

「お疲れ!」

『危機あらばまた呼ぶがよい』

「ありがとう! じゃあ、続いて砦!!」

 レイガストに向けて、倒れ込む巨大な砦が出現する。
 これ、バイキングの島で見たやつ。
 構造は木造だし、簡単に再現できそうだなと思ったらイケた。
 やっぱり値段がそんな高くないんだろうな。

『ブオオオオオオッ!!』

 レイガストが砦を乗っ取ろうとモヤを吐き出す。
 だけど、砦にモヤが取り憑いた瞬間には、もうそれを魔法の針に戻して手元に回収しているのだ。

 お前、俺の能力相手だと相性最悪だぞ!

 跳躍したナイトの足元になるように、次々見張り塔を生み出す。
 レイガストの頭よりも高いところを、俺たちは疾走しているわけだ。

 ヒュージの回転で真っ向から攻撃されつつ、レイガストはこちらを無視することもできない。

『なんだ! なんだ貴様らは!! この世界の全ての物品をしもべにし、ポンデリグ様に捧げようとしておったのに! その矢先で邪魔をする者たちに遭うとは!!』

「うるせえ! てめえの事情など知ったことか!! 死ねえ!!」

 ヒュージは血気盛んだなあ!
 全身に巨大な金属の蛇を纏って、猛烈に回転させながら突っ込んだ。

『ウグワーッ!?』

 回転する蛇は、言うなれば刃が付いた車輪みたいなものだ。
 レイガストの巨体を粉砕し、削ぎ落としていく。

 俺もまた、ナイトの跳躍と同時に魔法の針全てを変化させている。

「ハンマー!」

 その全てが、ハンマーになった。

「行け!! ハンマーの雨!!」

 降り注ぐハンマーの雨。
 レイガストの岩の体を砕き、奥深くに食い込む。

「両替! ブロードソード+8!」

 その全てがレイガストの体内を掘削しながらまとまり、数本のブロードソード+8になって戻ってきた。
 この間の、鏡の魔剣じゃない。

 だけど、カトー曰く世界最高の魔剣と言われるこいつが、何本も作れるくらいまで俺は腕を上げたのかもしれない。

『ウグワーッ!!』

 体内を俺に破壊され、同時に頭部をヒュージに粉砕され、レイガストは断末魔の叫びとともに爆散した。
 岩石が飛び散る。
 だけど、俺の周囲に来た魔剣が、盾のように働いてこれを防いだ。

 チリ一つこちらに飛んでこない。
 なんか凄いな。
 手も触れてないのに、自在に制御できる……。
 これがブロードソード+8……?

『ひひーん!』

「あ、着地着地!!」

 ナイトの足元に、大量の藁を生み出した。
 ボフッと着地するナイト。

「ウグワーッ」

 あっ、ヒュージが落下してきた。
 蛇ごと地面に激突し、ぼーんと弾んでまた吹っ飛んでいく。
 豪快な男だなあ。

 そしてすぐに、自分で走って戻ってきた。

「おう、見たか? あれが俺の力だ! 以前お前にやられたのは、正体不明の能力に驚いただけだからな! 今ならわかる。お前は物を媒介にして違うものを作り出す力だな? ……とんでもない奴だな……」

「冷静になっちゃった。ヒュージも強かったんじゃないか」

「俺は強いに決まってるだろう」

 自己肯定感高い人だ。

 しばらくすると、ミスティとニトリアとエグゾシーがやってきた。

『おうおう、やったのう。これで恐らく、降り立った魔将は全て片付けたはずじゃ。後は魔王が降りてくるのを待つばかりじゃのう』

「そうなんだ!」

『魔将の数は無尽蔵ではないからな。デカラビアで海を制御し、ベアードで敵を制圧し、レイガストで物質を支配しようとしたのじゃろう。この三体が十全に動いていたなら、ほぼほぼ侵略は完了しておる』

「ほんとだ!」

 魔王はとんでもないやつらを派遣していたんだな……。

「よくウーサー勝てたね!」

 ミスティが感心している。

『ウーサーの強みは、相手に応じて最適な戦いができることじゃな。魔将どもは全て、弱点を突かれて破れておる。魔王となればそうは行くまいよ。次なる策を練らねばな。そろそろリーダーを呼び出すか』

 呼び出されるんだ!?
 とにかく状況は一段落。

 今後の対策はエグゾシーに任せて、俺は一休みしたいなと思うのだった。
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