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3・魔剣鍛冶の里編

第25話 極まれ、決まれ、スキルの力

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 巨大化したエグゾシーが大暴れ!
 畝る骨の巨体が、ぶつかった宿を次々に粉砕していく。

 あっ!
 あれは武装荷馬車の面々が泊まっているいかがわしい宿!
 
 そこに突進したエグゾシーは、見事にいかがわしい宿を破壊した。

「お、おっさんたちー!!」

 見た目はいかつかったが、色々教えてくれたフレンドリーな商人たちを思い浮かべる俺だ。

「ひっどい……! あいつ本当にサイテー!」

 ミスティも怒りで声を震わせた。
 するとである。

「ウグワー!」「ウグワー!」「ウグワー!」

 間抜けな悲鳴をあげつつ、モヒカンとヒゲとスキンヘッドの商人が、半裸で宿から転がり出てきた。
 背中には荷物を背負い、腕には宿のお姉さんを抱えている。

「危ねえ!! 外が騒がしいと思って、荷物をまとめておいて助かったぜ!」

「おっさんたち!」

 駆け寄る俺を見て、彼らは目を丸くした。

「おお、無事だったかお前ら!! ありゃなんだ」

 モヒカンがエグゾシーを指差すので、俺は丁寧に解説をした。
 最悪の傭兵集団、十頭蛇に所属する傭兵で、アンデッドを作り出して操り、その正体は魔神。

「属性盛り盛りじゃねえか」

「悪の親玉って感じだな!」

 ざわつく三人の商人なのだ。

「ウーサーがなんとか戦ってるんだけど……結構きっつくて」

「えっ、少年が戦ってるのか!?」

「大したもんだなあ」

「スキル能力ってのはすげえな」

 わいわい騒いでいたら、エグゾシーが当然のように気づいてこっちに襲いかかってきた。

『なんだその余裕っぷりはーっ!! 私がこの姿をしている時にそこまで間抜けな姿を見せた奴は初めてだぞーっ!!』

 なんだか知らないが、めちゃくちゃ怒ってる!
 俺たちは、ワーッと逃げた。
 武装荷馬車を確保し、途中でロバのライズと俺たちの荷馬車もゲットだ。

 里の中を走り回る俺たち。
 後を追いかけてくるエグゾシー。
 死の追いかけっこだ。

「それで、きついってどういうことだ!」

 武装荷馬車から身を乗り出したモヒカンが叫ぶ。
 車輪が地面を走るゴトゴト音に負けないためには、声を張り上げなければいけないのだ。

「俺の知ってる武器だと! あいつがでかすぎて通じない! 重すぎる武器だと俺が引っ張られる!」

「お前さん、まだ小柄だもんなあ! よっしゃ! じゃあこれだ!」

 モヒカンは荷物から何かを取り出した。
 それは……。
 見たことがある、禍々しい形のやつだった。

「大型フンガムンガだ! どう投げても敵に刺さるし、大きい赤ん坊くらいの重さがあるからでかいやつにだってダメージが行くぞ! 受け取れ!」

「あ、ありがとう! うわあ、危ねえ!」

 投げられたフンガムンガが、荷馬車にめり込んだ。

「ひえーっ! これ、超重いんだけど!」

 どうにか持ち上げて、目を白黒させるミスティ。
 なるほど、ちょうどいいくらいの重さかもしれない!

「値段は!?」

「金貨一枚だ!」

 高い!!
 だけど、それなら再現ができる!

 魔法の短剣では、高価で数が作れず、しかも軽いから威力が出ない。
 だが、このフンガムンガならいける。

「魔法の武器じゃない……?」

「元々呪術的な意味で使われてたらしいから、この形そのものが魔力を持っているとは言われてるぞ!」

「そうだったのか!! じゃあ安心だ! ミスティ、手綱は任せた!」

「えっ、あたし!? うひー! ライズ、頑張って走ってよねー!?」

「ぶもー」

 ロバのライズはやる気満々。
 宿で相当いい飼い葉を食べさせてもらったのかもしれない。

 俺は背後から襲ってくるエグゾシーに向かって立ち上がった。

「行くぞ!!」

『おおおおおおっ!! 捻り潰してくれるーっ!!』

 あいつ、巨大な蛇になってから頭が悪くなったみたいだ。
 姿によって、思考力が変わるのかもしれない。

 だとすると、今、まっすぐに突っ込んでくるだけのエグゾシーを相手どれるのはラッキーじゃないか!?

「両替!」

 魔法の針が周囲に飛び散り、金貨になって里に降り注ぐ。

 外に出てきていた里の人々は、これを見て歓声をあげた。

「お、俺の金貨だ!」

「あたいのだよ!」

 誰のものでもないよ!
 手を出したら危ないから下がってろ!
 というか、彼らが手出しする前に決める!

「両替! 戻ってこい!!」

 俺は手をかざす。
 飛び散った金貨は、その全てがフンガムンガになった。
 そして猛烈な勢いで回転しながら、荷馬車を目指して飛翔してくる。

 荷馬車を追いかけているのはエグゾシー。
 しかもかなりでかい。

 つまりフンガムンガは、荷馬車に到着する前に……。

 ガガガガガガガガガガガッと炸裂音がする。

『うがあああああああああっ!? なんだ! なんだぁぁぁぁぁっ!?』

 エグゾシーの叫び声が聞こえる。
 全身の骨に、大型フンガムンガが突き刺さったのだ。

 巨大な骨の蛇が、動きを遅くする。

 だけどまだ、倒すには至っていない。

「両替! フンガムンガから……魔法の短剣へ!!」

『ぐええええええええええっ!!』

 エグゾシーが絶叫した。
 やつに突き刺さったフンガムンガが、エグゾシーの骨を砕きながら、体内で魔法の短剣に変化しようとしているのだ。

 大型フンガムンガが金貨一枚。
 魔法の短剣が金貨二十枚。

 つまり、二十個のフンガムンガがエグゾシーの体を破壊し、体内で一つにまとまる!

『ぎゃああああああ! わたしが……! この魔神が、こんなところで、こんな小僧などにぃぃぃぃぃぃぃ!! おのれ、おのれえええええええっ!』

 叫ぶエグゾシーの胴体に大きな亀裂が走り……。
 ついに、粉々に砕けた。

 そこから全身にヒビが入り、己の自重と走行速度にやられ、骨の蛇は自ら壊れていったのだった。

 ぴゅんと取んでくる、輝く短剣。
 俺はどうにかそいつをキャッチした。

「よっし!! 十頭蛇撃破だーっ!!」

「やったー!!」

 ミスティが抱きついてくる。

 前の方では、モヒカンとヒゲとスキンヘッドの商人が、「ヒャッハー!!」と快哉をあげていたのだった。 
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