上 下
150 / 152
52・コゲタ、特訓する

第150話 魔法先生キャロティ!

しおりを挟む
「次はあたしね!!」

「お手柔らかにお願いしますよ……」

 バンキンに前衛の基礎みたいなのを教えてもらった後。
 今度は魔法の才能を見てもらおうということになり、僕は己の伝手を使った。

 そうしたら来るのはもちろん、こうなるね!
 ウェアラビットのシルバー級魔法使い、キャロティだ。

「キャロティー!」

「コゲタ元気だった? 夏毛になってさっぱりしたわねー!」

 背丈が近いキャロティにもふもふサれているコゲタ。
 彼からすると、キャロティは年の近い友達みたいなイメージなんだろうか?

「リップルに頼まなかったのは正解だわ。あれ、無限の魔力っていうギフト持ちだから、多分!」

「無限の魔力持ち!!」

「魔法使いの間では有名よ? これまでの英雄パーティの冒険の中で、魔法使いリップルが魔力切れになった記録が一つもないもの。パルメディアを襲った闇精霊との戦い……英雄パーティ最後の冒険の時も、魔力カウンターの魔法をずっと連発し続けてたらしいし。あれって一発で並の魔法使いなら魔力すっからかんになるのよねー」

「なるほどなあ。つまり天才型ということか。その点、キャロティは努力型だもんな」

「そうよー。種族的に魔法使いに向いてないのに、気合で魔法使いになったんだから!!」

 胸を張るキャロティなのだった。
 この自信満々な姿に、コゲタがわからないなりにわーっと盛り上がって拍手する。
 肉球拍手だからポムポムポムって音がするね。

「じゃあやるわよコゲタ! あ、バンキンから聞いたわよ! 姿勢がよくってセンスあるみたいじゃない! 姿勢は魔法も大事よー! 詠唱は背筋がシャキーンとしてたほうができるから!! あっナザル!! お弁当はお野菜中心でお願い!!」

 賑やかだなあ……。
 
「いい? 魔力が少ない種族だから魔法使いに向いてないって言われるけど、嘘だからね! 実は魔力の量ってどの種族もスタート一緒だから! 性格の問題だから!!」

 へえー!
 そうだったのか……!!
 つまり、落ち着きがない種族は精神集中して魔法を使うところまで行かないから、魔法使いに不向きと言われているだけということか。

「じゃあ集中するわよー! まずは瞑想して自分の中の魔力と向き合うところからだからね!」

「あい!」

 二人並んで座禅を組み始めた。
 この世界でも、精神集中は座禅なんだなあ。
 まあ、二人とも足が短い種族だからあぐらになってるんだけど。

 では、豆腐を用意してお待ちしていよう……。

 二人で集中している。
 キャロティは別にやらなくてもいいんだが、一応こうやって瞑想することで、魔力の上限をちょっぴり上げる効果が期待できるらしい。

 コゲタがむずむずしている。
 コボルドはじっとしているのが苦手なんだなあ……。

 だが、コゲタは頑張った。
 我慢して我慢して……。

「うーん! うーんうーんうーん!」

 唸ってる!
 めっちゃ唸ってる!

「あらコゲタ! コボルドでそれだけ我慢できるのは立派ね! あたしなんか最初はちょっとしか瞑想できなかったわ!」

「そお!? コゲタすごい!?」

 あーっ、精神集中が解けてしまった!
 キャロティ、策士だなあ……。

「あ、でもどうだった? コゲタってまぶたの裏にね、こう、たくさんの水がゆらゆらーってしてるみたいなの見えた?」

「おみずみえた……? みえた?」

「これはまだ見えてないかなー。あ、でもちょっと見えてるかなー」

 キャロティの教え方は傍から見ていて難しい。
 僕は魔法使いの基礎なんてものは全くやってないからね。
 油使いは他にいないので、完全に独学なのだ。

 お昼ころまで、二人は瞑想し続けたのだった。
 おっ、最長記録。
 三十分はいけたんじゃないか。

「ちょっとみえたかもー」

「ほんと!? 凄いじゃんコゲタ、才能あるわ! コボルドの子は何回か見たことあるけど、みんな全然見えてこなかったわよ!」

「そお!? やったー!」

「ナザルと一緒に行動してるから、もしかしてその余波を受けてるのかしら……」

 ありうる。
 僕の油使いが魔法なのかどうかはさておき。
 いや、精神集中も必要としないしな。なんだこれは。ギフトか。

「なんかねー、きらきらっとしたおみずがみえた!」

「きらきらした水……? なんかあんまゆらゆらしてなくて、タプタプってしてなかった?」

「してたー!」

「油だー!」

「なんだってー!?」

 つまり、油使いの影響を受けて、コゲタは別方向の魔力に覚醒したことになるわけだ。
 ただ、ギフトは世界に一人だから……。

「どんな魔法が使えるんだろう?」

「魔力イメージが油だってことでしょ? よくあるわよ! たくさんの水を見ない砂漠の人なら、砂がイメージになったりするらしいし!」

「あ、そういうこと」

 つまり、コゲタは自分の一番イメージしやすいものとして魔力を捉えたということだ。
 才能があるわけだね。

「それじゃ、お昼食べてから続きをやりましょ!」

 そういうことになった。
 本日は野菜メインのお弁当だ。

 キャロティは野菜ソテーと豆腐ステーキ。
 コゲタは僕オリジナルの麻婆豆腐。
 ハーブとピーカラとひき肉を使えば、それっぽいのができるのだ。

 なお、コゲタは辛いの苦手だからピーカラはちょっぴりだけね。
 そしてお砂糖をイン。

 脳を使って糖分を欲していたコゲタには、「おいしー!」と大好評だったのだった。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

私の魔力を全て奪って婚約破棄するようですが、奪えるのは1週間だけです

天宮有
恋愛
 婚約者ジェイクが、魔法が使えなくなった私セリスに婚約破棄を言い渡してくる。  私の妹ローナを新たな婚約者にするために、ジェイクが私の魔力を奪ったことは把握していた。  奪えるのは1週間だけだと知っていたから、私は冷静に婚約破棄を受け入れる。  魔力を奪ってくる婚約者なんて、私の方からお断りだ。  そして数日後――ジェイクは真相を知ることとなる。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~

k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
 幸福が訪れると噂されるホテルで働いていた主人公は理不尽な理由で解雇された。  会社の寮に住んでいた彼はすぐに退居することになったが、児童養護施設で育った彼には帰る家がなかった。  彼はネットに記載してある田舎への移住をし、数年後には持ち家になるという広告を見かける。  少し怪しいと思っていたものの、癒しを求めていざ移住を決意する。  ただ、家の中に知らない幼女がいた。  すぐに近所の住人に聞くと、どうやら座敷わらしがいるらしい。  危ない存在でもないと思った彼は、しばらくはその家に住むことにした。  んっ……?  この座敷わらし……。  思ったよりも人懐っこいぞ?  なぜか座敷わらしと仲良くなる主人公。  気づいた頃にはたくさんの妖怪が集まってきた。  不思議な家と妖怪?達と繰り広げるほのぼのスローライフ。 ※なろう、カクヨムにも投稿

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

処理中です...