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35・冬のお仕事
第104話 寒い中を出動だぞ
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三ヶ月もギルドを留守にしていたので、戻ってきて早々にエリィに怒られてしまった。
「死んだかと思ったじゃないですか! それにシルバー級が受ける季節ごとの義務仕事が溜まってますよ!」
「うわっ、それがあった!!」
「大変だなあナザル」
他人事みたいな顔をするシズマなのだった。
こいつの場合はゴールド級だから、もっとヘビーな任務をやってるはずなのになあ。
「それで、何をやればいいんだい?」
「ええとですねー。あ、これです、これ」
以来の用紙を持ってくるエリィ。
そこに書かれていたのは、アーランの巡回任務だった。
夕暮れから、夜、明け方になるまでの間、アーランを歩き回るんだと。
「こりゃあどうして、こんな任務があるんだ?」
「それはですね。冬は外部から、雪のモンスターが街中に入り込むことがあるんです。それを発見、可能ならば撃退するという任務になります。雪のモンスターは雪雲に乗って現れますから……」
「なるほど、そりゃあ厄介だ」
基本的に冬場は、冒険者はあまり街の外に出ない。
山や大森林に入ったら、下手をすると遭難するし凍死する可能性もある。
なので、冒険者はアーランの中か、アーラン周辺ですぐに戻れる辺りをウロウロするのだ。
あるいは、遺跡内に入って農場の手伝いをする場合もある。
どちらにせよ、冬の冒険者はとてもおとなしい。
アーランの冬は短いが、その間は稼ぎも途絶えたり減ったりするしで、あまり好かれていない季節なのだ。
「噂をしたら、空が曇ってきた……」
任務を受けて、外に出る僕。
夕方までは宿で寝るとしようと思っていたらだ。
肌寒いアーランが、さらに寒くなってきた気がする。
おお嫌だ嫌だ。
早く帰ろう。
宿の店先では、コボルドを連れた宿泊客がいた。
彼のコボルドと、見覚えのあるコボルドが何か話し込んでいる。
「コゲタ、ただいまー」
声を掛けたら、見覚えのある方がくるっと振り返ってぴょーんと飛び跳ねた。
「ご主人~!」
「コゲタのご主人、アーランの外の人?」
「ご主人はご主人~! コゲタ、ご主人好き!」
「そかー。アララもご主人好き!」
いえーい、と二匹でハイタッチしている。
これを宿泊客がニコニコしながら眺めているのだ。
僕は彼に会釈して、コゲタを連れて部屋に戻った。
「コゲタ。今夜は朝までお仕事だ。一緒にアーランの街中を歩き回ることになるぞ」
「おおー。たくさんおさんぽ!」
「そうなるなあ。寒くならないようにちゃんと服を着込んで行かないとな。それに、夜の仕事だからしっかりと今から寝ておかないと」
「おひるね?」
「そのようなものだ」
ということで。
宿のおかみさんに、日暮れ頃に食事を作ってもらうのと、お弁当を作ってもらうお願いをした。
そこで寝るわけだ。
お湯を少しもらって、顔とか体を拭いて、寝る。
コゲタは昼間におかみさんに洗われたようで、いい匂いがする。
それにコゲタと一緒に寝ているとポカポカしているからたいへん暖かくて良い。
冬場は重宝するぞ、コボルド。
ぐっすりと眠り、日が落ちる寸前でおかみさんが起こしに来てくれて目覚められた。
「気をつけるんだよ。街中とは言え、夜は物騒だからねえ。とは言っても、冬には悪党どもも震えてベッドの中かも知れないねえ」
「いやあ全くそのとおりです」
もらったお弁当は、パンに塩とピーカラをまぶしたやつだ。
寒いときも、辛いもので温まるというわけだな。
コゲタ用には、干し肉をくれた。
そして2人分の水筒。
では任務へ出発だ。
パーティを組んで挑む者が多いが、僕はコゲタと二人連れ。
冒険者的にはソロと言う扱いになる。
「雪だー!」
すっかり、外は雪が降り積もっていた。
とは言っても厚みにして一センチそこそこか。
コゲタははしゃぎながら、雪の上をザクザク駆け回っている。
こんなこともあろうかと、コボルド用の靴を買っておいて良かった。
雪の上は肉球だと寒いからね。
「うあー」
コゲタが滑ってすてーんと転んだ。
「おーい、大丈夫かー」
僕はコゲタを助け起こしに行く。
この様子を、道行く人々が微笑ましげに見ているのだ。
まさかこんな僕らが、アーランの平和を守るために夜回りする冒険者だとは思うまい。
さて、コゲタを放って置くとどこまでも走っていきそうなので、しっかりと手を繋いでのんびり歩くことにするのだ。
日がすっかり暮れてしまったが、まだまだアーランは賑やかだ。
というのも、あちこちの軒先に魔法の明かりを灯して歩くのは、初心者魔法使いのいい稼ぎになる仕事なのだ。
なので、アーランの夜は街灯が多い。
道が明るければ、それだけ犯罪者やらが出てきづらくなる。
表通りをこうやって歩いていると、ファンタジー世界だとは思えぬほど明るい夜が僕らを迎え入れてくれるのである。
「よし、ちょっとスープパスタで体を温めて行くか!」
「ごはんたのしみ!」
「うんうん、体が温まる食事は一番の娯楽だ」
コボルド可の食堂でスープパスタをともに食べて、エネルギーを充填。
周りでは、一日の仕事を終えて酒盛りをする男たちが賑やかだ。
彼らの仕事はこれで終わり。
僕らの仕事はこれからだ。
寝る前には、雪雲がアーランの上空に掛かっていたから……。
雪から降りてくるというモンスターは、今夜あたりどこかにやって来ているかも知れない。
軽く食休みしたら、また任務に戻るとしようではないか。
「死んだかと思ったじゃないですか! それにシルバー級が受ける季節ごとの義務仕事が溜まってますよ!」
「うわっ、それがあった!!」
「大変だなあナザル」
他人事みたいな顔をするシズマなのだった。
こいつの場合はゴールド級だから、もっとヘビーな任務をやってるはずなのになあ。
「それで、何をやればいいんだい?」
「ええとですねー。あ、これです、これ」
以来の用紙を持ってくるエリィ。
そこに書かれていたのは、アーランの巡回任務だった。
夕暮れから、夜、明け方になるまでの間、アーランを歩き回るんだと。
「こりゃあどうして、こんな任務があるんだ?」
「それはですね。冬は外部から、雪のモンスターが街中に入り込むことがあるんです。それを発見、可能ならば撃退するという任務になります。雪のモンスターは雪雲に乗って現れますから……」
「なるほど、そりゃあ厄介だ」
基本的に冬場は、冒険者はあまり街の外に出ない。
山や大森林に入ったら、下手をすると遭難するし凍死する可能性もある。
なので、冒険者はアーランの中か、アーラン周辺ですぐに戻れる辺りをウロウロするのだ。
あるいは、遺跡内に入って農場の手伝いをする場合もある。
どちらにせよ、冬の冒険者はとてもおとなしい。
アーランの冬は短いが、その間は稼ぎも途絶えたり減ったりするしで、あまり好かれていない季節なのだ。
「噂をしたら、空が曇ってきた……」
任務を受けて、外に出る僕。
夕方までは宿で寝るとしようと思っていたらだ。
肌寒いアーランが、さらに寒くなってきた気がする。
おお嫌だ嫌だ。
早く帰ろう。
宿の店先では、コボルドを連れた宿泊客がいた。
彼のコボルドと、見覚えのあるコボルドが何か話し込んでいる。
「コゲタ、ただいまー」
声を掛けたら、見覚えのある方がくるっと振り返ってぴょーんと飛び跳ねた。
「ご主人~!」
「コゲタのご主人、アーランの外の人?」
「ご主人はご主人~! コゲタ、ご主人好き!」
「そかー。アララもご主人好き!」
いえーい、と二匹でハイタッチしている。
これを宿泊客がニコニコしながら眺めているのだ。
僕は彼に会釈して、コゲタを連れて部屋に戻った。
「コゲタ。今夜は朝までお仕事だ。一緒にアーランの街中を歩き回ることになるぞ」
「おおー。たくさんおさんぽ!」
「そうなるなあ。寒くならないようにちゃんと服を着込んで行かないとな。それに、夜の仕事だからしっかりと今から寝ておかないと」
「おひるね?」
「そのようなものだ」
ということで。
宿のおかみさんに、日暮れ頃に食事を作ってもらうのと、お弁当を作ってもらうお願いをした。
そこで寝るわけだ。
お湯を少しもらって、顔とか体を拭いて、寝る。
コゲタは昼間におかみさんに洗われたようで、いい匂いがする。
それにコゲタと一緒に寝ているとポカポカしているからたいへん暖かくて良い。
冬場は重宝するぞ、コボルド。
ぐっすりと眠り、日が落ちる寸前でおかみさんが起こしに来てくれて目覚められた。
「気をつけるんだよ。街中とは言え、夜は物騒だからねえ。とは言っても、冬には悪党どもも震えてベッドの中かも知れないねえ」
「いやあ全くそのとおりです」
もらったお弁当は、パンに塩とピーカラをまぶしたやつだ。
寒いときも、辛いもので温まるというわけだな。
コゲタ用には、干し肉をくれた。
そして2人分の水筒。
では任務へ出発だ。
パーティを組んで挑む者が多いが、僕はコゲタと二人連れ。
冒険者的にはソロと言う扱いになる。
「雪だー!」
すっかり、外は雪が降り積もっていた。
とは言っても厚みにして一センチそこそこか。
コゲタははしゃぎながら、雪の上をザクザク駆け回っている。
こんなこともあろうかと、コボルド用の靴を買っておいて良かった。
雪の上は肉球だと寒いからね。
「うあー」
コゲタが滑ってすてーんと転んだ。
「おーい、大丈夫かー」
僕はコゲタを助け起こしに行く。
この様子を、道行く人々が微笑ましげに見ているのだ。
まさかこんな僕らが、アーランの平和を守るために夜回りする冒険者だとは思うまい。
さて、コゲタを放って置くとどこまでも走っていきそうなので、しっかりと手を繋いでのんびり歩くことにするのだ。
日がすっかり暮れてしまったが、まだまだアーランは賑やかだ。
というのも、あちこちの軒先に魔法の明かりを灯して歩くのは、初心者魔法使いのいい稼ぎになる仕事なのだ。
なので、アーランの夜は街灯が多い。
道が明るければ、それだけ犯罪者やらが出てきづらくなる。
表通りをこうやって歩いていると、ファンタジー世界だとは思えぬほど明るい夜が僕らを迎え入れてくれるのである。
「よし、ちょっとスープパスタで体を温めて行くか!」
「ごはんたのしみ!」
「うんうん、体が温まる食事は一番の娯楽だ」
コボルド可の食堂でスープパスタをともに食べて、エネルギーを充填。
周りでは、一日の仕事を終えて酒盛りをする男たちが賑やかだ。
彼らの仕事はこれで終わり。
僕らの仕事はこれからだ。
寝る前には、雪雲がアーランの上空に掛かっていたから……。
雪から降りてくるというモンスターは、今夜あたりどこかにやって来ているかも知れない。
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