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34・久々の地上だ!
第102話 親友来たりてそろそろ外に出るか……?
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「やあやあ我が友よ!」
「そのわざとらしい物言い……。シズマか! 帰ったのか!」
「ああ、もちろんだとも! 持ち帰ってきたぞ、アイスファイアを! いや、こう名付けよう。雪下にんにく! こいつはにんにくでいい!!」
バーン!と見せてくれるのは、まさににんにくなのだった。
どうやら北国で、雪の下に埋もれて育っていたらしい。
掘り返して食べようとする動物を、その猛烈な消毒パワーで撃破する植物であり、ワンダバーではこれを栽培していたらしい。
「おお!! よくやってくれたシズマ!! 流石だ……!!」
「ナザルもトマトを見つけたそうじゃないか。おお、まさにこれはトマト!! ちょっとちっちゃいが、料理の幅が大きく広がるな……!!」
二人でわいわいと盛り上がっていると、農夫と職人たちが集まってきて、「ナザルさんが二人になったみたいだ」「変な人はまだまだいるんだなあ」「だが、それだけに常識人にはできないことをやってくれそうだぞ」
的確な評価をしているな。
その通りだ!
なお、外から戻ってきたコゲタは、シズマについてきたらしいギャルっぽいゴールド級女子に遊んでもらっている。
「ちーっす、ナザりん。あのさ、うちらも苦労してこのにんにく? っつーのを持ってきたわけなんでさ。特別なご褒美が欲しいなーって」
「特別なご褒美!?」
なんとエッチな響きを感じる言葉であろうか。
だが、僕は今やグルメ脳である。
トマドを一つもいで、スッと差し出した。
「どうぞどうぞ」
「うひょー! これこれ! ウワサには聞いてたけど、だーれも食べたことないって言ってたやつ! うちが一番乗り! あーん……んおー! すっぺー! パねー! マジでウケるんだけど!」
わあわあ騒ぎながら完食してしまった。
この世界で、なぜギャルみたいな女子が発生したんだろう。
謎だ。
僕の表情を読み取ったらしく、シズマが教えてくれた。
「彼女は南方大陸から流れ着いた一族の生まれなんだ。だから俺等とは文化が違う。彼女の母親もばあちゃんもギャルだぞ」
「なにぃ」
凄い一族がいたもんだ。
つまりこれ、方言なんだな。
「うちはアーシェ。よろー」
「よろー」
握手をする僕らだった。
とりあえず、エッチな意味ではなくて良かった。
僕の対応、百点。
なお、外に出ると、第三階層名物のモンスターが湧いていた。
リビングメイルだね。
畑まで入ってくる事はないので、放置してると勝手に帰っていくのだが。
アーシェがこれめがけて、弓矢を放っていた。
何もないところから矢が出てくるのね。
で、アホみたいな速さで射つ。
そしてそれが全部リビングメイルに突き刺さって貫通する。
貫通した先に矢がない。
「彼女は弓だけあれば、風の魔力で矢を使って放つことができるんだ。ヤバいぞ」
「ああ。朽ちてるとはいえ金属鎧をガンガン貫通してるからな。もうガトリングガンだろあれ」
「怖いよなー」
異世界人から来た二人で、アーシェの強さに感心するのだった。
ゴールド級冒険者は、全員が常人では辿り着けない高みにいる化け物だという話だったが、本当だなあ。
「なんつーか、動き鈍いしぶっちゃけ的じゃね?」
ついに粉々にされたリビングメイルなのだった。
どうやら彼女、複数本の魔法の矢を連射も可能らしく。
今のは全然手加減しているらしい。
キャロティの超上位互換みたいな娘だな……!
「本気になると光の矢になる。アーシェは魔人の血が隔世遺伝したタイプらしくてな」
「ははー」
「ちょっとー! うちの手の内をばらすのやめてくんない? ま、ナザりんだったら大丈夫だと思うけどー」
距離感近いな彼女!
これは勘違いさせてしまう系女子だ。
年頃の男子は大変だろうなあ。
「ところでナザルよ。そろそろ外に出ないのか?」
「外か……」
あまり日にちを数えていなかったが、多分ここに潜ってから三ヶ月は経過しているはずだ。
そろそろほとぼりも冷めた頃であろうか。
「ではちょっと出るとするか……。乾燥状態のトマドもそろそろ尽きた可能性があるし。殿下のところに新作トマドを補充に行く感じで」
「お前、本当に王家とねんごろになってるんだなあ……。俺にはない社会性というやつだ」
「前世で散々社会性を磨いてきたからね」
「……もしかして、生前は俺よりも年上……?」
「多分僕は、前世の年齢を足すとシズマの父親より年上だぞ」
「ひえー! 年代を超えた友!」
「友よ!」
二人で熱く握手するのだ。
これを見ながら、アーシェがヘラヘラ笑っていた。
ふと思うのだが、彼女、もしかしてシズマを主人公とした時のヒロインなのではないか。
あり得る……。
そんな青春はシズマに任せるとして、僕はきっと革新的味に飢えている王子のために外界へ飛び出すとしようではないか。
「よしコゲタ、久しぶりに外に出るぞ」
「お外! でるー!」
コゲタがぴょんぴょん跳ねた。
僕と行くなら、どこでも嬉しいみたいだ。
かわいいやつめー!
そして僕らは外に出た。
そうしたら……。
「さっむ!!」
三ヶ月前までは夏だったのに、すっかり外は寒くなっていた。
そりゃあそうか!
アーランは今まさに、冬を迎えようとしているのだ!
比較的温暖な時が多いアーランも、冬となれば寒くなるのだ。
それはつまり……。
オブリーの油煮、即ちアヒージョが最高に美味い季節がやって来たとも言えるだろう!!
「そのわざとらしい物言い……。シズマか! 帰ったのか!」
「ああ、もちろんだとも! 持ち帰ってきたぞ、アイスファイアを! いや、こう名付けよう。雪下にんにく! こいつはにんにくでいい!!」
バーン!と見せてくれるのは、まさににんにくなのだった。
どうやら北国で、雪の下に埋もれて育っていたらしい。
掘り返して食べようとする動物を、その猛烈な消毒パワーで撃破する植物であり、ワンダバーではこれを栽培していたらしい。
「おお!! よくやってくれたシズマ!! 流石だ……!!」
「ナザルもトマトを見つけたそうじゃないか。おお、まさにこれはトマト!! ちょっとちっちゃいが、料理の幅が大きく広がるな……!!」
二人でわいわいと盛り上がっていると、農夫と職人たちが集まってきて、「ナザルさんが二人になったみたいだ」「変な人はまだまだいるんだなあ」「だが、それだけに常識人にはできないことをやってくれそうだぞ」
的確な評価をしているな。
その通りだ!
なお、外から戻ってきたコゲタは、シズマについてきたらしいギャルっぽいゴールド級女子に遊んでもらっている。
「ちーっす、ナザりん。あのさ、うちらも苦労してこのにんにく? っつーのを持ってきたわけなんでさ。特別なご褒美が欲しいなーって」
「特別なご褒美!?」
なんとエッチな響きを感じる言葉であろうか。
だが、僕は今やグルメ脳である。
トマドを一つもいで、スッと差し出した。
「どうぞどうぞ」
「うひょー! これこれ! ウワサには聞いてたけど、だーれも食べたことないって言ってたやつ! うちが一番乗り! あーん……んおー! すっぺー! パねー! マジでウケるんだけど!」
わあわあ騒ぎながら完食してしまった。
この世界で、なぜギャルみたいな女子が発生したんだろう。
謎だ。
僕の表情を読み取ったらしく、シズマが教えてくれた。
「彼女は南方大陸から流れ着いた一族の生まれなんだ。だから俺等とは文化が違う。彼女の母親もばあちゃんもギャルだぞ」
「なにぃ」
凄い一族がいたもんだ。
つまりこれ、方言なんだな。
「うちはアーシェ。よろー」
「よろー」
握手をする僕らだった。
とりあえず、エッチな意味ではなくて良かった。
僕の対応、百点。
なお、外に出ると、第三階層名物のモンスターが湧いていた。
リビングメイルだね。
畑まで入ってくる事はないので、放置してると勝手に帰っていくのだが。
アーシェがこれめがけて、弓矢を放っていた。
何もないところから矢が出てくるのね。
で、アホみたいな速さで射つ。
そしてそれが全部リビングメイルに突き刺さって貫通する。
貫通した先に矢がない。
「彼女は弓だけあれば、風の魔力で矢を使って放つことができるんだ。ヤバいぞ」
「ああ。朽ちてるとはいえ金属鎧をガンガン貫通してるからな。もうガトリングガンだろあれ」
「怖いよなー」
異世界人から来た二人で、アーシェの強さに感心するのだった。
ゴールド級冒険者は、全員が常人では辿り着けない高みにいる化け物だという話だったが、本当だなあ。
「なんつーか、動き鈍いしぶっちゃけ的じゃね?」
ついに粉々にされたリビングメイルなのだった。
どうやら彼女、複数本の魔法の矢を連射も可能らしく。
今のは全然手加減しているらしい。
キャロティの超上位互換みたいな娘だな……!
「本気になると光の矢になる。アーシェは魔人の血が隔世遺伝したタイプらしくてな」
「ははー」
「ちょっとー! うちの手の内をばらすのやめてくんない? ま、ナザりんだったら大丈夫だと思うけどー」
距離感近いな彼女!
これは勘違いさせてしまう系女子だ。
年頃の男子は大変だろうなあ。
「ところでナザルよ。そろそろ外に出ないのか?」
「外か……」
あまり日にちを数えていなかったが、多分ここに潜ってから三ヶ月は経過しているはずだ。
そろそろほとぼりも冷めた頃であろうか。
「ではちょっと出るとするか……。乾燥状態のトマドもそろそろ尽きた可能性があるし。殿下のところに新作トマドを補充に行く感じで」
「お前、本当に王家とねんごろになってるんだなあ……。俺にはない社会性というやつだ」
「前世で散々社会性を磨いてきたからね」
「……もしかして、生前は俺よりも年上……?」
「多分僕は、前世の年齢を足すとシズマの父親より年上だぞ」
「ひえー! 年代を超えた友!」
「友よ!」
二人で熱く握手するのだ。
これを見ながら、アーシェがヘラヘラ笑っていた。
ふと思うのだが、彼女、もしかしてシズマを主人公とした時のヒロインなのではないか。
あり得る……。
そんな青春はシズマに任せるとして、僕はきっと革新的味に飢えている王子のために外界へ飛び出すとしようではないか。
「よしコゲタ、久しぶりに外に出るぞ」
「お外! でるー!」
コゲタがぴょんぴょん跳ねた。
僕と行くなら、どこでも嬉しいみたいだ。
かわいいやつめー!
そして僕らは外に出た。
そうしたら……。
「さっむ!!」
三ヶ月前までは夏だったのに、すっかり外は寒くなっていた。
そりゃあそうか!
アーランは今まさに、冬を迎えようとしているのだ!
比較的温暖な時が多いアーランも、冬となれば寒くなるのだ。
それはつまり……。
オブリーの油煮、即ちアヒージョが最高に美味い季節がやって来たとも言えるだろう!!
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