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29・オブリー、アーランへ!
第87話 植えよ、オブリー!
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僕が帰ってきたという話をどこで聞きつけたのか、翌朝にはすぐ第二王子の使いがやって来た。
どうやら盗賊ギルドのアーガイルさんも用があったようだが、「王族の使いだと? ナザル、お前何をやらかしたんだ」とかドン引きして去っていったのだった。
まさか僕が、デュオス殿下から信頼を得て、寒天スイーツ担当になっているとは思うまい。
いや、普通思わないよな……。
ということで。
僕は職人とともに、満を持して第二王子の邸宅へ向かうのだった。
「うおお、緊張する……!!」
「安心して欲しい。第二王子は僕のパトロンであり、最大の理解者だ……。いや、ある特殊な方向だけの理解者なんだが」
「突然頼りなくなった!」
「僕を信じて欲しい」
「一緒に旅をするうちに、ナザルさんのそういう言葉は信じられないなと思うようになった……」
「今度は大丈夫だから」
「信頼できない人の物の言い方だ……!」
変な学習をしてしまったな。
だが、今回は本当に本当なのだ!
ガクブルする職人を伴い、僕は城門にやってくる。
僕の顔を見ると、兵士たちはすぐに扉を開けてくれた。
第二王子の使いも一緒だしね。
それに、僕の容姿は特徴的だからすぐに覚えてもらえる。
使いの人のおかげで、すぐに邸宅へも通してもらえた。
以前にあった、僕を待たせるという段階を踏まない。
「報告して参ります! 少々お待ち下さい!」
早口でそう言った後、使いの人は小走りで去っていった。
そしてすぐに戻って来る。
思っていた以上に少々だった!
「デュオス殿下がお会いになります! どうぞ!」
「殿下、やる気満々だな……! まあ、食はこの世界最高の娯楽だもんな。僕についてきてくれ。あと、一応凄くかしこまっておくようにね」
「お、おう!」
職人は緊張する猶予も与えられない!
むしろいいことじゃないか。
僕は彼を伴い、一番奥まった第二王子たちの居間へと案内してもらった。
第二王子デュオスと、奥方と、お嬢さんが勢揃いだ。
「来たか、ナザル! そなたが残していってくれた寒天料理は素晴らしかった……。そして、風の噂にそなたは新たな食を求めて旅に出たと聞いた! 報告をせよ!」
「はっ!」
「後ろの男のことは後で聞く」
本当に僕の話を聞きたくて仕方ないんだな。
ありがたい!
僕は一礼した後、カップを出してもらった。
「では御覧ください。僕が身につけた新たな力です」
何もないところから、琥珀色に輝くオイルが溢れ出す。
カップに注がれたそれは、素晴らしい香りを部屋中に放った。
「おお……!! そなたの油が進化したのだな!」
「さすが殿下、理解がお早い……!! どうぞ、これにパンを浸してお召し上がりください」
「油に直接か!? ふむ……どれ……?」
王家に収められる、明らかに高級なパンが出てきた。
これをコックがちょうどいいサイズに切り分け……。
第二王子一家は、それをカップを満たすオブリーオイルに軽く浸してから食べた。
「おっほ……!」
「んまあー!」
「お口の中に、とても素晴らしい香りが広がっていくわ……! なに? なあにこの油!」
「オブリーオイルにございます。これはですね、砂漠の王国ヒートスで育てられている作物で、実を絞ることでこの素晴らしい油が得られるのです」
「なんと! これを栽培できるというのか!? ではもしや」
「はっ、ここで彼を紹介しましょう。彼こそ、オブリーを育てるための職人です。ヒートスより来てもらいました。そしてオブリーの苗木もございます。育つには少々時間が掛かるでしょうが、何年かすれば……何年?」
「そうだな……そうですね……。あの苗木であれば来年には最低限の量を収穫できるようになります。大きく育てたものも混じっていますので」
「おおー!」
デュオス王子が歓声をあげた。
「寒天でなかったのは残念だが、それでも、新たな油がアーランにもたらされたというのは大きい! 期待しているぞ、ナザル! 無論、栽培のための場を用意し、資金は提供しよう。そこの男。頼むぞ……!」
「は、ははーっ!!」
職人が平伏した。
なんか耳まで赤くなっている。
緊張とともに、ちょっと興奮しているようだ。
外国の王族とは言え、やんごとなき存在にこれだけの期待を掛けられることはないからな……。
どうだ、僕を信用して良かっただろう。
その後、オブリーオイルの油煮が供され、第二王子一家は大いに盛り上がったのだった。
もうね、僕の作った料理限定で毒見が存在しないからね。
めちゃめちゃに信頼されているよ……!!
こうして、オブリーの栽培が始まった。
どうやら遺跡の中は、その作物に最適化された気候に変化するらしく。
オブリーは素晴らしい速度で育ち始めているようだ。
生育を助ける魔法が掛かっているのかも知れない。
職人は弟子を雇うことになり、オブリー畑は複数の職人たちの管理下に置かれることとなった。
いやあ……市場にオブリーが出回るのが楽しみだ……。
それまではしばらく、僕がオブリーオイルを出してデュオス殿下に振る舞うことになりそうだが。
どうやら盗賊ギルドのアーガイルさんも用があったようだが、「王族の使いだと? ナザル、お前何をやらかしたんだ」とかドン引きして去っていったのだった。
まさか僕が、デュオス殿下から信頼を得て、寒天スイーツ担当になっているとは思うまい。
いや、普通思わないよな……。
ということで。
僕は職人とともに、満を持して第二王子の邸宅へ向かうのだった。
「うおお、緊張する……!!」
「安心して欲しい。第二王子は僕のパトロンであり、最大の理解者だ……。いや、ある特殊な方向だけの理解者なんだが」
「突然頼りなくなった!」
「僕を信じて欲しい」
「一緒に旅をするうちに、ナザルさんのそういう言葉は信じられないなと思うようになった……」
「今度は大丈夫だから」
「信頼できない人の物の言い方だ……!」
変な学習をしてしまったな。
だが、今回は本当に本当なのだ!
ガクブルする職人を伴い、僕は城門にやってくる。
僕の顔を見ると、兵士たちはすぐに扉を開けてくれた。
第二王子の使いも一緒だしね。
それに、僕の容姿は特徴的だからすぐに覚えてもらえる。
使いの人のおかげで、すぐに邸宅へも通してもらえた。
以前にあった、僕を待たせるという段階を踏まない。
「報告して参ります! 少々お待ち下さい!」
早口でそう言った後、使いの人は小走りで去っていった。
そしてすぐに戻って来る。
思っていた以上に少々だった!
「デュオス殿下がお会いになります! どうぞ!」
「殿下、やる気満々だな……! まあ、食はこの世界最高の娯楽だもんな。僕についてきてくれ。あと、一応凄くかしこまっておくようにね」
「お、おう!」
職人は緊張する猶予も与えられない!
むしろいいことじゃないか。
僕は彼を伴い、一番奥まった第二王子たちの居間へと案内してもらった。
第二王子デュオスと、奥方と、お嬢さんが勢揃いだ。
「来たか、ナザル! そなたが残していってくれた寒天料理は素晴らしかった……。そして、風の噂にそなたは新たな食を求めて旅に出たと聞いた! 報告をせよ!」
「はっ!」
「後ろの男のことは後で聞く」
本当に僕の話を聞きたくて仕方ないんだな。
ありがたい!
僕は一礼した後、カップを出してもらった。
「では御覧ください。僕が身につけた新たな力です」
何もないところから、琥珀色に輝くオイルが溢れ出す。
カップに注がれたそれは、素晴らしい香りを部屋中に放った。
「おお……!! そなたの油が進化したのだな!」
「さすが殿下、理解がお早い……!! どうぞ、これにパンを浸してお召し上がりください」
「油に直接か!? ふむ……どれ……?」
王家に収められる、明らかに高級なパンが出てきた。
これをコックがちょうどいいサイズに切り分け……。
第二王子一家は、それをカップを満たすオブリーオイルに軽く浸してから食べた。
「おっほ……!」
「んまあー!」
「お口の中に、とても素晴らしい香りが広がっていくわ……! なに? なあにこの油!」
「オブリーオイルにございます。これはですね、砂漠の王国ヒートスで育てられている作物で、実を絞ることでこの素晴らしい油が得られるのです」
「なんと! これを栽培できるというのか!? ではもしや」
「はっ、ここで彼を紹介しましょう。彼こそ、オブリーを育てるための職人です。ヒートスより来てもらいました。そしてオブリーの苗木もございます。育つには少々時間が掛かるでしょうが、何年かすれば……何年?」
「そうだな……そうですね……。あの苗木であれば来年には最低限の量を収穫できるようになります。大きく育てたものも混じっていますので」
「おおー!」
デュオス王子が歓声をあげた。
「寒天でなかったのは残念だが、それでも、新たな油がアーランにもたらされたというのは大きい! 期待しているぞ、ナザル! 無論、栽培のための場を用意し、資金は提供しよう。そこの男。頼むぞ……!」
「は、ははーっ!!」
職人が平伏した。
なんか耳まで赤くなっている。
緊張とともに、ちょっと興奮しているようだ。
外国の王族とは言え、やんごとなき存在にこれだけの期待を掛けられることはないからな……。
どうだ、僕を信用して良かっただろう。
その後、オブリーオイルの油煮が供され、第二王子一家は大いに盛り上がったのだった。
もうね、僕の作った料理限定で毒見が存在しないからね。
めちゃめちゃに信頼されているよ……!!
こうして、オブリーの栽培が始まった。
どうやら遺跡の中は、その作物に最適化された気候に変化するらしく。
オブリーは素晴らしい速度で育ち始めているようだ。
生育を助ける魔法が掛かっているのかも知れない。
職人は弟子を雇うことになり、オブリー畑は複数の職人たちの管理下に置かれることとなった。
いやあ……市場にオブリーが出回るのが楽しみだ……。
それまではしばらく、僕がオブリーオイルを出してデュオス殿下に振る舞うことになりそうだが。
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