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27・いざ、砂漠の国へ
第81話 ヒートス到着
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岩石の合間合間に、背の低い木々が生えている。
その辺りになると土や砂の下がすく岩になるんだそうで、サンドワームが入ってこれない……いわば比較的安全な場所になるんだそうだ。
で、そこにあるこのたくさんの木々が……。
「あれがオブリーです!」
「あれが!! 絞れば美味しい油を出す夢の果実!!」
「急に興奮しだしたぞこいつ」
「あたしもちょっと興奮よ! 食べたーい!!」
キャロティがオブリーの木まで走っていった。
そこで実を摘んでいた女性がいて、彼女に何か訴えている。
女性はニコニコしながら実を一つくれた。
あーん、と口を開けて実をかじるキャロティは……。
「あひー! に、にがああああい!!」
悲鳴をあげたのだった。
「生だと苦いですが、火を通すと苦みが薄らぎ、味に深みが出てくるんですよ」
「早く言いなさいよー!!」
ニコニコする商人氏。
なるほど、これが初めてのお客さんにやるパターンみたいなものなんだな。
「それでキャロティ、口の周りはどう?」
「ちょっとベタベタしてるかも。これ油? ナザルの油と味が違うわね!」
「やはり!!」
主にアーランで使われる油は獣脂だからな……。
植物から取れる油もあるが、大量の草木から少しずつしか抽出できない。
なので、アーランで揚げ物というのは大変喜ばれるのだ……。
オブリーをかの国に紹介できれば、凄いことになりそうだが、途中までの道のりがあれほど危険だと、定期的な貿易が実に辛いことになるな。
僕らがいつでも護衛できるわけではないし。
「では皆さん、砂漠の王国ヒートスへどうぞ! ここまで来たら安全ですよ」
商人氏が荷馬車から降りて、どんどん進んでいく。
すると向こうから兵士たちが現れて、彼を出迎えた。
彼らは、たくさんの馬も一緒に戻ってきているのを見て目を丸くした。
「あれは……我らが牧場から盗まれた馬ではないか?」
「無事に戻って来るとは……!!」
「はい! 彼らの尽力で、盗賊のみを倒して馬を助け出すことができたのです!」
「おお……!!」
何やら歓迎されている風なので、僕は笑顔で手を振っておいた。
砂漠の王国の兵士たちは、全身を布で覆っており、目元だけが露出している。
日差しが強いこの国において、昼間は肌をさらさない方がいいらしい。
夜は寒くなる。だからこの布で覆った服装が合理的というわけだ。
武器は曲刀と弓。
軽装の兵士たちという感じだが、暑い国で重武装はできないし、重い武器や金属が多い武器の持ち運びも現実的ではない。
ここの軍隊は、こと砂漠の王国に限っては最強だろうなあ。
なるほど、平和なはずだ。
商人氏の紹介で、僕らは王国の中に案内してもらう。
「いやあ助かったぜ。さすがに金属の武器が熱くなって来てたところだったんだ。それにじりじりと体力を削られる暑さ。俺じゃなかったら倒れてたね」
バンキンが全然平気そうな顔をしながらそんな事を仰る。
こいつは無限に体力があるんじゃないかと言う疑惑があるからな。
そして常に異常に元気なキャロティが飛び跳ねながら入国していった。
僕はコゲタと並んで行くぞ。
砂漠の王国ヒートス。
土で作られた砂色の壁を超えると、その中はやっぱり砂色の街だった。
カラフルにしても、砂が吹き込んでくるからたちまち砂色になってしまうらしいな。
……と思ったら。
「入口の辺りは守りのために、わざと壊しやすく作りやすい土の建造物に限定しているんです」
「なるほど……。いきなり街がカラフルになった」
家々に刻まれた緻密な彫刻。
蒼を貴重として流し込まれている塗料が、街に色彩を作っている。
生前、こういう町並みを写真で見たことがある。
サマルカンドだ。
砂漠の中に出現した、芸術品みたいな都市。
それがこの世界、パルメディアにもあった。
じゃあ、なんでこんな凄い街が知られていないんだろうなあ……なんて思ったが。
そもそも、砂漠の王国までやってくるための労力がとんでもないんだった。
あんな危険をくぐり抜けて、ヒートスにやってこれる人間なんてほとんどおるまい。
商人氏がヒートスの商館へ行ったので、僕らはその外で待つことにした。
ここまでの護衛代を現地のお金でもらっている。
ボーナスは他国でも換金できる宝石で。
気前がいい国だなあ。
まあ、ボーナスを持ってくるまで僕らは日陰で待機していないといけないのだが。
「じゃあ待ってる間に何か食べますか」
「いいわね!」
「何を食う? 現地の食い物がいいな。おっ、串焼きが売ってるじゃん。……これなんだ?」
近くの露店にいた兄ちゃんが、串焼きを差し出してにっこり笑った。
「サソリの串焼きだよ。美味いよ」
「あひー!!」
キャロティが飛び上がって悲鳴をあげた。
うんうん、ゲテモノだもんな!
普通のサソリはアーランではマイナーだが、迷宮に出現する鋼のサソリは冒険者にとって恐ろしいモンスターだ。
ってことで、サソリをよく思ってる冒険者はいない。
だが、この国では普通のサソリは食べちゃうんだな。
「どーれ」
「ナザル、あんた正気!?」
「コゲタも!」
「ダメよコゲタ、ペッしなさい!」
ウサギの人が色々やかましいな!
だが、僕とコゲタは食の冒険を厭わない。
そこに新たな発見があるかも知れないからだ!
どーれ。
カリッとかじって、懐かしい味を感じる。
あっ、これ、エビの殻の味だあ。かき揚げに入ってる小エビの味がどこまでも続く、歯ごたえと香ばしさの塊だ。
こいつは美味しいなあ。絶対に酒に合う。
それにこれ、塩の他に違ったコクを感じる。
これはもしかして……。
「オブリーオイルで炒めたんだ! 美味いだろう? オブリーはヒートスにとって命の果実なのさ!」
露店の兄ちゃんが自慢げに言うのだった。
なるほど!!
これがオブリーの味か!!
コゲタはご満悦で、サソリの串焼きをカリカリ食べて、「コゲタこれすきー!」と感想を口にするのだった。
その辺りになると土や砂の下がすく岩になるんだそうで、サンドワームが入ってこれない……いわば比較的安全な場所になるんだそうだ。
で、そこにあるこのたくさんの木々が……。
「あれがオブリーです!」
「あれが!! 絞れば美味しい油を出す夢の果実!!」
「急に興奮しだしたぞこいつ」
「あたしもちょっと興奮よ! 食べたーい!!」
キャロティがオブリーの木まで走っていった。
そこで実を摘んでいた女性がいて、彼女に何か訴えている。
女性はニコニコしながら実を一つくれた。
あーん、と口を開けて実をかじるキャロティは……。
「あひー! に、にがああああい!!」
悲鳴をあげたのだった。
「生だと苦いですが、火を通すと苦みが薄らぎ、味に深みが出てくるんですよ」
「早く言いなさいよー!!」
ニコニコする商人氏。
なるほど、これが初めてのお客さんにやるパターンみたいなものなんだな。
「それでキャロティ、口の周りはどう?」
「ちょっとベタベタしてるかも。これ油? ナザルの油と味が違うわね!」
「やはり!!」
主にアーランで使われる油は獣脂だからな……。
植物から取れる油もあるが、大量の草木から少しずつしか抽出できない。
なので、アーランで揚げ物というのは大変喜ばれるのだ……。
オブリーをかの国に紹介できれば、凄いことになりそうだが、途中までの道のりがあれほど危険だと、定期的な貿易が実に辛いことになるな。
僕らがいつでも護衛できるわけではないし。
「では皆さん、砂漠の王国ヒートスへどうぞ! ここまで来たら安全ですよ」
商人氏が荷馬車から降りて、どんどん進んでいく。
すると向こうから兵士たちが現れて、彼を出迎えた。
彼らは、たくさんの馬も一緒に戻ってきているのを見て目を丸くした。
「あれは……我らが牧場から盗まれた馬ではないか?」
「無事に戻って来るとは……!!」
「はい! 彼らの尽力で、盗賊のみを倒して馬を助け出すことができたのです!」
「おお……!!」
何やら歓迎されている風なので、僕は笑顔で手を振っておいた。
砂漠の王国の兵士たちは、全身を布で覆っており、目元だけが露出している。
日差しが強いこの国において、昼間は肌をさらさない方がいいらしい。
夜は寒くなる。だからこの布で覆った服装が合理的というわけだ。
武器は曲刀と弓。
軽装の兵士たちという感じだが、暑い国で重武装はできないし、重い武器や金属が多い武器の持ち運びも現実的ではない。
ここの軍隊は、こと砂漠の王国に限っては最強だろうなあ。
なるほど、平和なはずだ。
商人氏の紹介で、僕らは王国の中に案内してもらう。
「いやあ助かったぜ。さすがに金属の武器が熱くなって来てたところだったんだ。それにじりじりと体力を削られる暑さ。俺じゃなかったら倒れてたね」
バンキンが全然平気そうな顔をしながらそんな事を仰る。
こいつは無限に体力があるんじゃないかと言う疑惑があるからな。
そして常に異常に元気なキャロティが飛び跳ねながら入国していった。
僕はコゲタと並んで行くぞ。
砂漠の王国ヒートス。
土で作られた砂色の壁を超えると、その中はやっぱり砂色の街だった。
カラフルにしても、砂が吹き込んでくるからたちまち砂色になってしまうらしいな。
……と思ったら。
「入口の辺りは守りのために、わざと壊しやすく作りやすい土の建造物に限定しているんです」
「なるほど……。いきなり街がカラフルになった」
家々に刻まれた緻密な彫刻。
蒼を貴重として流し込まれている塗料が、街に色彩を作っている。
生前、こういう町並みを写真で見たことがある。
サマルカンドだ。
砂漠の中に出現した、芸術品みたいな都市。
それがこの世界、パルメディアにもあった。
じゃあ、なんでこんな凄い街が知られていないんだろうなあ……なんて思ったが。
そもそも、砂漠の王国までやってくるための労力がとんでもないんだった。
あんな危険をくぐり抜けて、ヒートスにやってこれる人間なんてほとんどおるまい。
商人氏がヒートスの商館へ行ったので、僕らはその外で待つことにした。
ここまでの護衛代を現地のお金でもらっている。
ボーナスは他国でも換金できる宝石で。
気前がいい国だなあ。
まあ、ボーナスを持ってくるまで僕らは日陰で待機していないといけないのだが。
「じゃあ待ってる間に何か食べますか」
「いいわね!」
「何を食う? 現地の食い物がいいな。おっ、串焼きが売ってるじゃん。……これなんだ?」
近くの露店にいた兄ちゃんが、串焼きを差し出してにっこり笑った。
「サソリの串焼きだよ。美味いよ」
「あひー!!」
キャロティが飛び上がって悲鳴をあげた。
うんうん、ゲテモノだもんな!
普通のサソリはアーランではマイナーだが、迷宮に出現する鋼のサソリは冒険者にとって恐ろしいモンスターだ。
ってことで、サソリをよく思ってる冒険者はいない。
だが、この国では普通のサソリは食べちゃうんだな。
「どーれ」
「ナザル、あんた正気!?」
「コゲタも!」
「ダメよコゲタ、ペッしなさい!」
ウサギの人が色々やかましいな!
だが、僕とコゲタは食の冒険を厭わない。
そこに新たな発見があるかも知れないからだ!
どーれ。
カリッとかじって、懐かしい味を感じる。
あっ、これ、エビの殻の味だあ。かき揚げに入ってる小エビの味がどこまでも続く、歯ごたえと香ばしさの塊だ。
こいつは美味しいなあ。絶対に酒に合う。
それにこれ、塩の他に違ったコクを感じる。
これはもしかして……。
「オブリーオイルで炒めたんだ! 美味いだろう? オブリーはヒートスにとって命の果実なのさ!」
露店の兄ちゃんが自慢げに言うのだった。
なるほど!!
これがオブリーの味か!!
コゲタはご満悦で、サソリの串焼きをカリカリ食べて、「コゲタこれすきー!」と感想を口にするのだった。
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