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27・いざ、砂漠の国へ
第78話 出発だ
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「ご主人おたすけ~」
「ちょっとくらいもふもふさせなさいよ! 減るもんじゃなし! いいでしょ!」
あっ、コゲタがキャロティに追いかけられている!
グイグイ来るキャロティはちょっと苦手みたいだな。
僕はコゲタをキャッチして抱き上げた。
「キャロティ、うちのコゲタを追い回さないでもらえるかな」
「何よ! 同じパーティの仲間何だし、少しくらいスキンシップしてもいいでしょ!」
ウェアラビットこと、ウサギ人の彼女は「当たり前でしょー」みたいな感じで言い放つ。
なんと自信満々なんだ。
そんな風に遊んでいる僕らをよそに、バンキンが雇い主の商人と交渉をしている。
交渉というか挨拶だな。
僕らは今回の報酬でそこまで不満があるわけじゃない。
外国に行ければそれでいいんだから。
だが、一応は報酬の交渉の真似事をしておいたほうが舐められないというものだ。
今、バンキンが雇い主と丁々発止のやり取りを繰り広げている。
なんぼでも妥協できるんだが、ポーズだけね。
結局、固定報酬の1%アップで妥結したようだ。
雇い主、交渉の勝利を確信してにんまり笑っている。
僕ら、そのままの報酬で良かったのがちょっぴりだけ増えてにんまり笑う。
「えー、それでは出発します。漬物を狙って襲ってくる悪漢、モンスターは数知れずです。頼みますよ皆さん」
商人の人は、ちょっとムチムチした若めのおじさん。
護衛が見つからぬ間アーランに滞在したせいで、美味しいものを食べまくって太ってしまったのだそうだ。
「旅は大変危険ですからね。私は心労で痩せることでしょう。そのダイエット効果を狙っています。ですが、皆さんが大活躍することで、私は太ったまま国に帰還できます。そうなるとどうなると思いますか? 私は大変自慢できるのです! 旅から帰ってきても太っているのは、優秀な護衛を連れている証明ですし、それは即ち旅の荷物の多くが残っている証ですからね!」
「強烈な人だなあ……。あ、よろしくお願いします。ナザルです。油の魔法を使います」
「これはこれはご丁寧に。油? 奇しくも我が国には油煮という料理がありますね。これは運命かも知れません」
その油煮狙いですよ!!
コゲタが僕の真似をして、「コゲタ!」と自己紹介した。
商人の人はしゃがんで、「よろしくコゲタくん」とコゲタと握手してくれる。
一人前扱いされて、コゲタは目をキラキラさせてムフーっと鼻息も荒い。
いい人なんじゃないかこの人は。
その後、対抗心を燃やしたキャロティが手を差し出して、また商人と握手していた。
もういいんじゃないか?
「俺とも握手する?」
「じゃあせっかくなので」
結局全員と握手したよ。
そして旅立つ僕らなのだった。
荷馬と、荷車に満載された漬物の瓶。
「この瓶が破壊されないように護衛するのが僕らの仕事だ。頑張って行こう!」
「おう!」
「おー!」
「わん!」
いいお返事だ!
アーランを後にして、ひたすら北上していく。
三人ともシルバー級だし、しかもクァールを撃破したパーティだ。
商人氏は大船に乗ったつもりでいてほしい。
一日目。
ゆったりと時は過ぎた。
街道を北上していくのだが、アーラン付近は治安がいいらしい。
「アーランは冒険者の街ですからね。腕のたつ冒険者が周囲を徘徊しているので、おいそれと盗賊も手出しできないのです」
僕らをワンダリングモンスターみたいに言う人だなあ。
だが、アーランが規格外なのは確かだ。
僕の知り合いだけでゴールド級とプラチナ級がごろごろいるからな。
リップルなんかが出てきたら、エルダードラゴンレベルでもどうにかされてしまう。
いつもはほわほわしているドロテアさんだって、プラチナ級冒険者だったギルマスの相方をやってた人だ。
あの人は絶対に強い。
「ほんじゃあ、どこまで行ったらモンスターとか盗賊とか出てくるのよ?」
「そこの丘で一泊するつもりですが、その向こうからですね。視界からアーランが消えたところからが物騒になって来ます」
「なるほどー。悪党にとって、アーランは恐ろしいところなんだな。コゲタ、怪しいやつのにおいはしないかい?」
コゲタを高く掲げると、彼は左右を見回しながら鼻をくんくんさせた。
「いない! においしない!」
「コボルドの鼻は確かだからな。そいつが言うなら間違いないだろ」
バンキンも納得したようだ。
そんなわけで、僕らは丘の上で一泊することとなる。
ここはアーランから十キロちょい離れたところだが……。
まだ、遺跡の上に存在する王国、アーランが見えている。
だが、確かに丘を下ってしまえば視界に入らなくなる。
ここが最後の安全地帯ということだろう。
僕は揚げ物を作り、商人氏に振る舞った。
「旅先で揚げ物を食べられるなんて! なんて贅沢なんだ……。さすがアーラン」
「そいつはナザルが特別なだけだなあ……」
好評なようで何より。
何か言いながらも、バンキンも大いに揚げ物を楽しんだ。
主に、干し肉などを揚げたのだが……。
ほどよく油を吸うのでジューシーに。ちょっと胃に持たれるかも知れない。
キャロティは野菜揚げをサクサク食べた。
ウサギ人はあまり肉を食べないからね。
どこかのヴォーパルバニーとは大違いだ。
こうして楽しい食事を終え、三交代制で火の番を行い。
何事もなく朝を迎える僕らだった。
なお、コゲタはずっとすやすや寝ていて、明け方当番なキャロティの頃にハッと目覚めたらしい。
僕が起きたら、キャロティと和解しており、もふもふを許す程度には仲良くなっていたのだった。
夜に何があったんだ。
気になる……。
「ちょっとくらいもふもふさせなさいよ! 減るもんじゃなし! いいでしょ!」
あっ、コゲタがキャロティに追いかけられている!
グイグイ来るキャロティはちょっと苦手みたいだな。
僕はコゲタをキャッチして抱き上げた。
「キャロティ、うちのコゲタを追い回さないでもらえるかな」
「何よ! 同じパーティの仲間何だし、少しくらいスキンシップしてもいいでしょ!」
ウェアラビットこと、ウサギ人の彼女は「当たり前でしょー」みたいな感じで言い放つ。
なんと自信満々なんだ。
そんな風に遊んでいる僕らをよそに、バンキンが雇い主の商人と交渉をしている。
交渉というか挨拶だな。
僕らは今回の報酬でそこまで不満があるわけじゃない。
外国に行ければそれでいいんだから。
だが、一応は報酬の交渉の真似事をしておいたほうが舐められないというものだ。
今、バンキンが雇い主と丁々発止のやり取りを繰り広げている。
なんぼでも妥協できるんだが、ポーズだけね。
結局、固定報酬の1%アップで妥結したようだ。
雇い主、交渉の勝利を確信してにんまり笑っている。
僕ら、そのままの報酬で良かったのがちょっぴりだけ増えてにんまり笑う。
「えー、それでは出発します。漬物を狙って襲ってくる悪漢、モンスターは数知れずです。頼みますよ皆さん」
商人の人は、ちょっとムチムチした若めのおじさん。
護衛が見つからぬ間アーランに滞在したせいで、美味しいものを食べまくって太ってしまったのだそうだ。
「旅は大変危険ですからね。私は心労で痩せることでしょう。そのダイエット効果を狙っています。ですが、皆さんが大活躍することで、私は太ったまま国に帰還できます。そうなるとどうなると思いますか? 私は大変自慢できるのです! 旅から帰ってきても太っているのは、優秀な護衛を連れている証明ですし、それは即ち旅の荷物の多くが残っている証ですからね!」
「強烈な人だなあ……。あ、よろしくお願いします。ナザルです。油の魔法を使います」
「これはこれはご丁寧に。油? 奇しくも我が国には油煮という料理がありますね。これは運命かも知れません」
その油煮狙いですよ!!
コゲタが僕の真似をして、「コゲタ!」と自己紹介した。
商人の人はしゃがんで、「よろしくコゲタくん」とコゲタと握手してくれる。
一人前扱いされて、コゲタは目をキラキラさせてムフーっと鼻息も荒い。
いい人なんじゃないかこの人は。
その後、対抗心を燃やしたキャロティが手を差し出して、また商人と握手していた。
もういいんじゃないか?
「俺とも握手する?」
「じゃあせっかくなので」
結局全員と握手したよ。
そして旅立つ僕らなのだった。
荷馬と、荷車に満載された漬物の瓶。
「この瓶が破壊されないように護衛するのが僕らの仕事だ。頑張って行こう!」
「おう!」
「おー!」
「わん!」
いいお返事だ!
アーランを後にして、ひたすら北上していく。
三人ともシルバー級だし、しかもクァールを撃破したパーティだ。
商人氏は大船に乗ったつもりでいてほしい。
一日目。
ゆったりと時は過ぎた。
街道を北上していくのだが、アーラン付近は治安がいいらしい。
「アーランは冒険者の街ですからね。腕のたつ冒険者が周囲を徘徊しているので、おいそれと盗賊も手出しできないのです」
僕らをワンダリングモンスターみたいに言う人だなあ。
だが、アーランが規格外なのは確かだ。
僕の知り合いだけでゴールド級とプラチナ級がごろごろいるからな。
リップルなんかが出てきたら、エルダードラゴンレベルでもどうにかされてしまう。
いつもはほわほわしているドロテアさんだって、プラチナ級冒険者だったギルマスの相方をやってた人だ。
あの人は絶対に強い。
「ほんじゃあ、どこまで行ったらモンスターとか盗賊とか出てくるのよ?」
「そこの丘で一泊するつもりですが、その向こうからですね。視界からアーランが消えたところからが物騒になって来ます」
「なるほどー。悪党にとって、アーランは恐ろしいところなんだな。コゲタ、怪しいやつのにおいはしないかい?」
コゲタを高く掲げると、彼は左右を見回しながら鼻をくんくんさせた。
「いない! においしない!」
「コボルドの鼻は確かだからな。そいつが言うなら間違いないだろ」
バンキンも納得したようだ。
そんなわけで、僕らは丘の上で一泊することとなる。
ここはアーランから十キロちょい離れたところだが……。
まだ、遺跡の上に存在する王国、アーランが見えている。
だが、確かに丘を下ってしまえば視界に入らなくなる。
ここが最後の安全地帯ということだろう。
僕は揚げ物を作り、商人氏に振る舞った。
「旅先で揚げ物を食べられるなんて! なんて贅沢なんだ……。さすがアーラン」
「そいつはナザルが特別なだけだなあ……」
好評なようで何より。
何か言いながらも、バンキンも大いに揚げ物を楽しんだ。
主に、干し肉などを揚げたのだが……。
ほどよく油を吸うのでジューシーに。ちょっと胃に持たれるかも知れない。
キャロティは野菜揚げをサクサク食べた。
ウサギ人はあまり肉を食べないからね。
どこかのヴォーパルバニーとは大違いだ。
こうして楽しい食事を終え、三交代制で火の番を行い。
何事もなく朝を迎える僕らだった。
なお、コゲタはずっとすやすや寝ていて、明け方当番なキャロティの頃にハッと目覚めたらしい。
僕が起きたら、キャロティと和解しており、もふもふを許す程度には仲良くなっていたのだった。
夜に何があったんだ。
気になる……。
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