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18・呉越同舟焼き鳥パーティー

第50話 情報収集終わり、任務も完了!

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 じゅうじゅうと鳥肉の焼ける音がする。
 香ばしい香りが辺りに漂う。

 兵士たちがゴクリと唾を飲んだ。
 美味いぞ……!
 期待してもらっていい。

 すると、彼らはどこからか酒を取り出すではないか。
 気付け用の強い酒かな?

 焼き鳥に酒……。
 もう宴会みたいなことになってしまう予感しかしない。

「も、もっと鳥が多いほうがいいよな? 俺獲ってくる!」

「俺も!」

 どうやら狩人の心得があるのが二人いたらしい。
 ありがたい!

「頼むぞ。酒の肴は多いほどいい」

「おう!!」

 元気に返事をし、彼らは藪の中に消えていった。
 なんとやる気に満ちているのか。

 美味いものの力は偉大である。
 とりあえず焼き上がった内蔵なんかは、鉄分を含んでいるので怪我人に食わせる。

「ああ~体が求めてる味~」

 絶頂しそうな顔でハツを焼いたやつとかを食べている。
 存分に食ってくれ。
 レバー焼きも食え!

「あんた、いい人だな……」

 兵士たちの隊長が、すっかり僕に心を許した顔をしている。
 男は胃袋を掴まれると弱いのだ。

「なに、困った時はお互い様さ」

 僕は一切何も困っていないのだが、その場のノリでそんな事を言った。
 実際には、僕の料理を美味い美味いと食ってくれる人々がいることが嬉しいのである。

 あとは興味本位で、彼らが酔っ払ったらもっと色々な情報を吐かないかなーと。

 狩人たちが戻ってきたぞ。
 成果は二羽……おっと、余計な客まで連れてきた。
 オウルベアだ。

『もがーっ!!』

 僕は立ち上がり、オウルベア目掛けて走った。

「二人共、前に跳べ!!」

「「うおおおーっ!!」」

 狩人二人が前方に身を投げだしたところで、僕の油が彼らの上を飛んでいった。
 オウルベアの顔面にへばりつく。
 そして足元にも油。

『もぎゃばばばばば!!』

 モンスターは叫びながらもがき、足元の摩擦もなくなったのですっ転んだ。
 じたばたとのたうち回る。
 僕は油を敷きながら、オウルベアをつま先でコンコン蹴りつつ……。
 崖の方に押してやった。

 つるーっと滑っていく。

 落ちた。
 油は回収っと。

 これを見て、兵士たちがゾッとしたような表情になっている。

「な、なんだあれ……。油を自在に操ってる……?」

「俺たちを全滅させかけたオウルベアを子供扱いだ……」

 僕は振り返り、彼らに言い訳をした。

「楽しい食事が台無しになるところだった! 偶然転んだオウルベアは谷底へ真っ逆さまだ! 良かった! これで食事に専念できるね!」

 兵士たちは、お、おうと頷く。
 考えないことにしたようだ。
 その後、羽をむしられて血抜きされた鳥を解体し、山程焼き鳥ができた。

 葉っぱを皿にし、みんなでこれをつまむ。
 ハーブや唐辛子もどきが効いていて実に美味い。

 僕も酒を分けてもらってちょっと飲んだ。
 あ、こりゃあ美味い。
 市販の水で薄めた安酒じゃない。
 兵士の実家かどこかで作ったやつじゃないか?

 雑味はあるが、それがいいアクセントになっている蒸留酒だ。
 大いに飲んで食べて、ほどよい酩酊感を味わった。
 一定以上のアルコールは体内で油のカプセルに包み込み、明日出す……。

 極めれば油使いはこんなこともできるのだ。

 さて、そろそろ兵士たちの呂律が怪しくなってきたぞ。

「それで実際のところ、ファイブスターズは何が狙いなのよ」

 僕が聞いてみると、すっかり僕をリスペクトしている狩人な兵士がぺらぺらと喋ってくれる。

「いや聞いた話なんすけどね。ツーテイカーが本格的にアーランの盗賊ギルドに戦争を仕掛けるつもりで、それで半グレ連中を使って撹乱を仕掛けたらしくて。で、まだ中にいるからそこから情報を得てるって言ってるんすけど」

「あー、冒険者ギルドに依頼が届かなかった事件、ツーテイカーの仕業だったのか!」

 色々繋がっているもんだ。
 他に、氷の国ワンダバーは凍らない港を求めている。
 アーランの南方は断崖絶壁だが、一応海だ。
 ここを狙っていたりもするのかも知れない。

 武力によらず、中から攻略してくるつもりなのか……。
 妥当なやり方なんじゃないか。

 そしてこれ以上の話は聞けなそうだった。
 兵士たちの隊長は酔いつぶれており、他の兵士もぐうぐういびきをかいて眠っている。

「これくらいかな。よし、コゲタ。僕らの仕事を果たしに行こう」

「わん!」

 焼き鳥でお腹がいっぱいのコゲタが機嫌よく応じた。
 兵士たちをまたいで、旗のある方向に真っ直ぐ。

 体に油をまとえば、茂みだってぬるぬると突破できる。
 茂みを抜けた先に、旗が立っていた。
 ここに立てた冒険者、よくやったもんだ。

 僕は旗の布を、持ってきたものと交換する。
 これでメンテは終了。 
 魔力を含んだ布が、アーランの監視役魔法使いの目の代わりになってくれることだろう。

「ご主人、お仕事終わり?」

「ああ、終わりだ! 帰るぞコゲタ!」

「帰ろ帰ろ!」

 尻尾をふるコゲタを連れて、僕は帰還することにしたのだった。
 いやしかし、思わぬ収穫を得た仕事だった。
 ファイブスターズが一枚岩ではないことは知っていたが、その中でも立場が弱い国、この冷戦に乗じて内部から攻めている国、あるいは直接殴ってきそうな国と色々あった。

 この情報は、盗賊ギルドのアーガイルさんに売って幾ばくかの酒代にしてもいいかも知れないな……。
 その時はもちろん、油でアルコールを包むなんてマネはしない。

「大いに酔うぞ!」

「ご主人、お酒くさくなる?」

「あっ。臭くなるまでは飲まないからね……」

 犬がいると健康になるなあ……。
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