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第23話 西部砦:進攻開始
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帝都からやって来た魔王スキル持ちは、氷のような目をした女だった。
金色の髪に青い瞳。青色のドレスと、白銀の鎧を身に纏っている。
皇帝が手元に残した、懐刀とも言える一人である。
地上に残った魔王スキル持ちは、ロイヤルガードと呼ばれ、帝国の最強戦力として数えられる。
この大地を支配した帝国が、それだけの戦力を所有して何と戦おうというのか。
理解できるものはそういない。
異端審問官、ヴェラトールも理解できぬ者の一人だった。
だが、発現した魔王スキル持ちを、生まれたてとは言え撃破する存在!
それは間違いなく、帝国が恐れるべき存在であった。
魔王スキルから誕生したもの、それは即ち魔王である。
まかり間違っても、ただの人間が倒せる代物ではない。
それを倒すのだから、突破スキルを使う者たちはただの人間ではない。
明確な、帝国に対する脅威だ。
「報告しなさい、ヴェラトール」
「はっ、ロイヤルガード・キャロライン様」
己の娘ほどの年齢である彼女に、異端審問官は跪く。
地位の違いもある。
だが、有無を言わせぬ強烈なプレッシャーを、キャロラインという女は発していた。
「熱線を発する突破スキル持ち、巨大な飛翔体を生み出す突破スキル持ち、常識の埒外の感知能力の突破スキル持ち……この三名です」
「ふん……。陛下が仰いました。これより、その三名は突破スキル持ちでも神敵でもありません。帝国にとって最も忌まわしき存在、アストロノーツと呼称します」
「アストロノーツ……!?」
「それが、この星に降り立とうとした陛下を阻んだ、最後の敵の名です。陛下が支配し、我ら魔王の揺り籠としたこの星のあり方を砕かんとする敵。この私が、羽化した魔王の力で食い止めねばなりません」
キャロラインは、この場に居並ぶ兵士たちと魔女狩りを見回すと、鼻を鳴らした。
「このような烏合の衆でも、アストロノーツへの時間稼ぎにはなりましょう」
「なんだと……!?」
「この女……言わせていればつけあがりやがって」
何人かの血気盛んな魔女狩りが吹き上がった。
「おい、お前たち!」
ヴェラトールが止めようとするが、彼の言葉など聞かない。
飛び出して来た魔女狩りは、改造された犬を連れた者、周囲にダーツを浮かせた者、刃が埋め込まれた鞭を振るう者、投網を使う者。
かつて、オービターとエレジアを追い詰めた一団だ。
彼らは、オービターと戦って、あと一歩というところまで迫った自負があった。
故に、それが自分たちの手には負えぬと言われた事が納得できない。
「ふん……ここで、不満分子を排除しておいてもいいでしょう。どうせ、数が減ろうが何の痛痒にもなりませんから。ヴェラトール、そして戦う意志の無い者たち。下がりなさい。下がらねば死にますよ」
キャロラインは金色の髪を、風もないのに揺らがせながら宣言した。
「“我が戦いの結界を生み出しましょう。氷の結界よ”」
次の瞬間、キャロラインと逆らう魔女狩りたちの周囲を、氷のフィールドが包み込んだ。
白く、蒼く輝く世界の中で、キャロラインが笑う。
「おいでなさい。あなた方など、人間態の私で十分ですから」
「言わせておけば!」
「殺してやる!」
キャロラインへと襲いかかる魔女狩り。
ロイヤルガードは笑みを浮かべたまま、まるで舞踏会に参加した娘のように、見えぬ何者かの手を取り踊り始める。
彼女がステップを踏むと、大地が巻き上がって輝く飛沫が湧き上がる。
彼女がくるりと回ると、大気がよじれて嵐を巻き起こす。
嵐が輝きを取り込み、魔女狩りたちを巻き込んだ。
「な、なんだこれっ、体が凍りつっ」
「あ、あたしの鞭が砕けたっ!? そん、なっ」
魔女狩りの攻撃がキャロラインに届くことはない。
全ては凍りつき、嵐の前に砕け散る。
ほんの一時のできごとである。
青い結界が消えた後、佇むのはロイヤルガード一人。
魔女狩りの姿はどこにもない。
ただ、彼らの面影を残す氷の破片が周囲に飛び散るだけである。
「おお……」
ヴェラトールは呻いた。
これが、皇帝直轄のロイヤルガードの力……!!
何の詠唱もなく、上級魔法にも匹敵する力を発揮するとは。
しかも彼女は、魔王としての本体を露わにしていない。
即ち、手加減したままでもて誰の魔女狩りを、一度に複数人砕くだけの力を有しているのである。
異端審問官だけではなく、魔女狩りたちも、誰もが彼女に対して、一つの印象を抱いた。
化け物。
魔女の館と、アストロノーツを砕くため、魔王キャロラインが牙を剥くのだ。
「おらあ! ブリザードビーム!!」
「きゃー! できたー!! すっごーい!!」
またエレジアが抱きついてきたぞ!!
いいぞいいぞ!!
俺はあの後、吹雪の魔法を教えてもらったのだ。
自分の周りに猛吹雪を吹かせて相手にダメージを与える、広範囲魔法だな。
これをビームにしたんだが、まあそのまんまぶっ放すと、散り散りになってまとまらない。
ということで!
これは、ウォータービームを誘導として使ってみた。
すると、ウォータービームを凍りつかせながら突き進んでいくではないか。
そして、炸裂した部分で吹雪が展開した。
面白いなー!
魔法によって、全然タイプが変わる!
「じゃあね、じゃあね、初級魔法にスパークっていうのがあるんだけど、これと中級魔法のライトニングを合わせて……」
「いいな……!! そいつも練習してみよう!」
金色の髪に青い瞳。青色のドレスと、白銀の鎧を身に纏っている。
皇帝が手元に残した、懐刀とも言える一人である。
地上に残った魔王スキル持ちは、ロイヤルガードと呼ばれ、帝国の最強戦力として数えられる。
この大地を支配した帝国が、それだけの戦力を所有して何と戦おうというのか。
理解できるものはそういない。
異端審問官、ヴェラトールも理解できぬ者の一人だった。
だが、発現した魔王スキル持ちを、生まれたてとは言え撃破する存在!
それは間違いなく、帝国が恐れるべき存在であった。
魔王スキルから誕生したもの、それは即ち魔王である。
まかり間違っても、ただの人間が倒せる代物ではない。
それを倒すのだから、突破スキルを使う者たちはただの人間ではない。
明確な、帝国に対する脅威だ。
「報告しなさい、ヴェラトール」
「はっ、ロイヤルガード・キャロライン様」
己の娘ほどの年齢である彼女に、異端審問官は跪く。
地位の違いもある。
だが、有無を言わせぬ強烈なプレッシャーを、キャロラインという女は発していた。
「熱線を発する突破スキル持ち、巨大な飛翔体を生み出す突破スキル持ち、常識の埒外の感知能力の突破スキル持ち……この三名です」
「ふん……。陛下が仰いました。これより、その三名は突破スキル持ちでも神敵でもありません。帝国にとって最も忌まわしき存在、アストロノーツと呼称します」
「アストロノーツ……!?」
「それが、この星に降り立とうとした陛下を阻んだ、最後の敵の名です。陛下が支配し、我ら魔王の揺り籠としたこの星のあり方を砕かんとする敵。この私が、羽化した魔王の力で食い止めねばなりません」
キャロラインは、この場に居並ぶ兵士たちと魔女狩りを見回すと、鼻を鳴らした。
「このような烏合の衆でも、アストロノーツへの時間稼ぎにはなりましょう」
「なんだと……!?」
「この女……言わせていればつけあがりやがって」
何人かの血気盛んな魔女狩りが吹き上がった。
「おい、お前たち!」
ヴェラトールが止めようとするが、彼の言葉など聞かない。
飛び出して来た魔女狩りは、改造された犬を連れた者、周囲にダーツを浮かせた者、刃が埋め込まれた鞭を振るう者、投網を使う者。
かつて、オービターとエレジアを追い詰めた一団だ。
彼らは、オービターと戦って、あと一歩というところまで迫った自負があった。
故に、それが自分たちの手には負えぬと言われた事が納得できない。
「ふん……ここで、不満分子を排除しておいてもいいでしょう。どうせ、数が減ろうが何の痛痒にもなりませんから。ヴェラトール、そして戦う意志の無い者たち。下がりなさい。下がらねば死にますよ」
キャロラインは金色の髪を、風もないのに揺らがせながら宣言した。
「“我が戦いの結界を生み出しましょう。氷の結界よ”」
次の瞬間、キャロラインと逆らう魔女狩りたちの周囲を、氷のフィールドが包み込んだ。
白く、蒼く輝く世界の中で、キャロラインが笑う。
「おいでなさい。あなた方など、人間態の私で十分ですから」
「言わせておけば!」
「殺してやる!」
キャロラインへと襲いかかる魔女狩り。
ロイヤルガードは笑みを浮かべたまま、まるで舞踏会に参加した娘のように、見えぬ何者かの手を取り踊り始める。
彼女がステップを踏むと、大地が巻き上がって輝く飛沫が湧き上がる。
彼女がくるりと回ると、大気がよじれて嵐を巻き起こす。
嵐が輝きを取り込み、魔女狩りたちを巻き込んだ。
「な、なんだこれっ、体が凍りつっ」
「あ、あたしの鞭が砕けたっ!? そん、なっ」
魔女狩りの攻撃がキャロラインに届くことはない。
全ては凍りつき、嵐の前に砕け散る。
ほんの一時のできごとである。
青い結界が消えた後、佇むのはロイヤルガード一人。
魔女狩りの姿はどこにもない。
ただ、彼らの面影を残す氷の破片が周囲に飛び散るだけである。
「おお……」
ヴェラトールは呻いた。
これが、皇帝直轄のロイヤルガードの力……!!
何の詠唱もなく、上級魔法にも匹敵する力を発揮するとは。
しかも彼女は、魔王としての本体を露わにしていない。
即ち、手加減したままでもて誰の魔女狩りを、一度に複数人砕くだけの力を有しているのである。
異端審問官だけではなく、魔女狩りたちも、誰もが彼女に対して、一つの印象を抱いた。
化け物。
魔女の館と、アストロノーツを砕くため、魔王キャロラインが牙を剥くのだ。
「おらあ! ブリザードビーム!!」
「きゃー! できたー!! すっごーい!!」
またエレジアが抱きついてきたぞ!!
いいぞいいぞ!!
俺はあの後、吹雪の魔法を教えてもらったのだ。
自分の周りに猛吹雪を吹かせて相手にダメージを与える、広範囲魔法だな。
これをビームにしたんだが、まあそのまんまぶっ放すと、散り散りになってまとまらない。
ということで!
これは、ウォータービームを誘導として使ってみた。
すると、ウォータービームを凍りつかせながら突き進んでいくではないか。
そして、炸裂した部分で吹雪が展開した。
面白いなー!
魔法によって、全然タイプが変わる!
「じゃあね、じゃあね、初級魔法にスパークっていうのがあるんだけど、これと中級魔法のライトニングを合わせて……」
「いいな……!! そいつも練習してみよう!」
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