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第17話 突破スキル:世界の殻
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「ありがとうございます! ここ最近はいなかったのに、また魔女狩りの活動が活発になってきていて」
村人から礼を言われつつ、そんな話を聞く。
それはもしかして、俺とエレジアが奴らに目をつけられたからか?
ただ、話を聞くとそればかりでは無いようだ。
どうやら村の中に、魔王スキルを持つ者が生まれたらしい。
魔女狩りはその人物を奪取すべく動いているのだろう、ということだった。
「魔王スキルってのは、結局何なんだ?」
ひとまず事件を解決した俺たちは、魔女の館に戻ることになる。
館では、エレジアがむくれていた。
「ずるい」
「へ?」
「ずるい、ずるいわ。ずーっとオービターだけが外に出て、私は外に出られて無いんだもの。大魔女様も意地悪だし、ホイホイ出ていくオービターもオービターだよ」
「あっ、なんかごめん」
へこへこ謝ることになった。
「もういい! 次は! 何があっても私を外に連れてって!」
エレジア自ら俺に連れ出して欲しいだって!?
「喜んで!!」
俺は宣言した。
すると彼女が、にっこり笑う。
「さっきの村ね、しばらくは見回りすることになったの。っていうのも、魔女狩りが倒されたことで次の魔女狩りが来るかもしれないんだって」
「ええ……それじゃあ、いつまでも仕事が終わらないじゃないか」
「そうだねえ。だけど、二回くらい撃退すると、帝国は損切りをするんだって」
「損切り?」
「その地域を攻撃するのは、今は割に合わないから、棚上げするの」
「なるほど……。相手が呆れるまで戦って、手を引かせるのか」
考えてみたら、魔女狩りが無限にいるわけでもないもんな。
あんな変なスキルを持った連中が、ゴロゴロいてたまるか。
というか、俺たちの不明スキルと、魔女狩りのスキルの違いはどこにあるんだ?
大魔女ならその辺り詳しいんだろうか?
後で聞いてみよう。
魔女の館に来てからも、大魔女は館の奥に籠もっていて出てこないのだ。
だから、顔合わせができない。
しかし意外なことに、機会はすぐに訪れるのだった。
「魔王スキルの持ち主がいると言いましたね。では、魔女狩りはその人物を確保するまで攻撃をやめないでしょう」
姿を現した大魔女は、そう断言した。
「損切りはしないのか?」
俺の質問に、彼女はベールの奥で頷いたようだった。
「魔王スキルこそが、帝国が存在する理由だから、彼らは諦める事はありえません。帝国の支配下にある村ならば、魔王スキルの持ち主を供出させることができるでしょう。ですが、かの村は独立を保っています。強制できぬのならば、奪うまで」
「そこまでこだわるのか。……あと、一つ質問いい?」
俺が挙手すると、エレジアが笑った。
「ほんと、オービターって物怖じしないよねえ」
「空気が読めないんだ」
ストークがぶつぶつ言った。
大魔女としては、質問はどんと来い、と言うスタンスの様子。
「どうぞ」
「魔女狩りの奴らのスキルって、やっぱ凄く変わってて、あれも不明スキルみたいに見えるんだけどさ。俺らの不明スキルと何が違うの?」
「良い質問です」
大魔女が微笑んだのが分かった。
「魔女狩りのそれはユニークスキル。可能性の行き止まりにあるものです。あれは、ああいう力を示すだけで終わってしまっているスキル。人の手に、そしてこの星の手に収まるスキルなのです」
「星?」
星って、空に瞬いているあれだろ。
この星ってなんだ?
「不明スキルは、彼らがそう呼んでいるに過ぎません。それらの全ては、突破する可能性を持つスキル。成長し続けることで、世界を覆う殻を破り、世界の外へと我らを連れ出してくれるスキル。故に、突破スキルと呼ぶのです」
「突破……!! そういや、魔女狩りもなんか、俺のスキルを見てそう言ってたような……」
俺たちの力は、世界の外に飛び出すための力。
だから、魔女狩りはこれを恐れてる。
っていうか、魔女狩りが魔女を狩るのは、俺たちみたいなのを育てさせないため。
つまり本質的に、あいつらの狙いは俺たちだとも言えるのだ。
「だったら……世界の殻を破られたくない、帝国ってのは一体何なんだ? それって国なのか……?」
「本質的な質問ですね」
笑う大魔女。
ちなみにここまでの情報は、魔女たちにも初耳だったらしい。
エレジアが、ほえー、とか、ふえー、とか言っている。
「オービター。帝国とは、本来世界の敵であるものです」
「……!? 帝国が世界を支配してるみたいなもんだろ。なんで?」
「世界が帝国に破れ、支配されたからです。この世界は一度、支配されて終わっているのです」
とんでもない話だった。
村へと再度降り立つために、大魔女は全ての不明スキル……いや、突破スキル持ちを選択した。
つまり、俺とレンジとストークの三人が同時に出るのだ。
大丈夫かな……。
正直、俺たちは性格も方向性もバラバラだから、一つにまとまらなそうな気がするんだが。
「魔王スキルとは、帝国が世界にばらまいた種。その種子が発芽した姿です。帝国とは何か? それは、恐るべき種子を育て上げ、卵とする組織。なぜ世界の壁を越えられたくないのか? それは、世界の壁を越え、外の世界に影響を及ぼすのは、帝国のみで良いと彼女が考えているからです」
彼女?
まあいいか。
大魔女は色々と詳しいらしい。
だが、正直な話あまりにも情報量が多すぎて、俺の頭ではついていけない!
またちょっとずつ聞いていこうっと。
「さあ、行くよオービター! 久しぶりの外だー!」
晴れ晴れとした顔のエレジア。
まあ、彼女が嬉しそうならそれでいいか!
村人から礼を言われつつ、そんな話を聞く。
それはもしかして、俺とエレジアが奴らに目をつけられたからか?
ただ、話を聞くとそればかりでは無いようだ。
どうやら村の中に、魔王スキルを持つ者が生まれたらしい。
魔女狩りはその人物を奪取すべく動いているのだろう、ということだった。
「魔王スキルってのは、結局何なんだ?」
ひとまず事件を解決した俺たちは、魔女の館に戻ることになる。
館では、エレジアがむくれていた。
「ずるい」
「へ?」
「ずるい、ずるいわ。ずーっとオービターだけが外に出て、私は外に出られて無いんだもの。大魔女様も意地悪だし、ホイホイ出ていくオービターもオービターだよ」
「あっ、なんかごめん」
へこへこ謝ることになった。
「もういい! 次は! 何があっても私を外に連れてって!」
エレジア自ら俺に連れ出して欲しいだって!?
「喜んで!!」
俺は宣言した。
すると彼女が、にっこり笑う。
「さっきの村ね、しばらくは見回りすることになったの。っていうのも、魔女狩りが倒されたことで次の魔女狩りが来るかもしれないんだって」
「ええ……それじゃあ、いつまでも仕事が終わらないじゃないか」
「そうだねえ。だけど、二回くらい撃退すると、帝国は損切りをするんだって」
「損切り?」
「その地域を攻撃するのは、今は割に合わないから、棚上げするの」
「なるほど……。相手が呆れるまで戦って、手を引かせるのか」
考えてみたら、魔女狩りが無限にいるわけでもないもんな。
あんな変なスキルを持った連中が、ゴロゴロいてたまるか。
というか、俺たちの不明スキルと、魔女狩りのスキルの違いはどこにあるんだ?
大魔女ならその辺り詳しいんだろうか?
後で聞いてみよう。
魔女の館に来てからも、大魔女は館の奥に籠もっていて出てこないのだ。
だから、顔合わせができない。
しかし意外なことに、機会はすぐに訪れるのだった。
「魔王スキルの持ち主がいると言いましたね。では、魔女狩りはその人物を確保するまで攻撃をやめないでしょう」
姿を現した大魔女は、そう断言した。
「損切りはしないのか?」
俺の質問に、彼女はベールの奥で頷いたようだった。
「魔王スキルこそが、帝国が存在する理由だから、彼らは諦める事はありえません。帝国の支配下にある村ならば、魔王スキルの持ち主を供出させることができるでしょう。ですが、かの村は独立を保っています。強制できぬのならば、奪うまで」
「そこまでこだわるのか。……あと、一つ質問いい?」
俺が挙手すると、エレジアが笑った。
「ほんと、オービターって物怖じしないよねえ」
「空気が読めないんだ」
ストークがぶつぶつ言った。
大魔女としては、質問はどんと来い、と言うスタンスの様子。
「どうぞ」
「魔女狩りの奴らのスキルって、やっぱ凄く変わってて、あれも不明スキルみたいに見えるんだけどさ。俺らの不明スキルと何が違うの?」
「良い質問です」
大魔女が微笑んだのが分かった。
「魔女狩りのそれはユニークスキル。可能性の行き止まりにあるものです。あれは、ああいう力を示すだけで終わってしまっているスキル。人の手に、そしてこの星の手に収まるスキルなのです」
「星?」
星って、空に瞬いているあれだろ。
この星ってなんだ?
「不明スキルは、彼らがそう呼んでいるに過ぎません。それらの全ては、突破する可能性を持つスキル。成長し続けることで、世界を覆う殻を破り、世界の外へと我らを連れ出してくれるスキル。故に、突破スキルと呼ぶのです」
「突破……!! そういや、魔女狩りもなんか、俺のスキルを見てそう言ってたような……」
俺たちの力は、世界の外に飛び出すための力。
だから、魔女狩りはこれを恐れてる。
っていうか、魔女狩りが魔女を狩るのは、俺たちみたいなのを育てさせないため。
つまり本質的に、あいつらの狙いは俺たちだとも言えるのだ。
「だったら……世界の殻を破られたくない、帝国ってのは一体何なんだ? それって国なのか……?」
「本質的な質問ですね」
笑う大魔女。
ちなみにここまでの情報は、魔女たちにも初耳だったらしい。
エレジアが、ほえー、とか、ふえー、とか言っている。
「オービター。帝国とは、本来世界の敵であるものです」
「……!? 帝国が世界を支配してるみたいなもんだろ。なんで?」
「世界が帝国に破れ、支配されたからです。この世界は一度、支配されて終わっているのです」
とんでもない話だった。
村へと再度降り立つために、大魔女は全ての不明スキル……いや、突破スキル持ちを選択した。
つまり、俺とレンジとストークの三人が同時に出るのだ。
大丈夫かな……。
正直、俺たちは性格も方向性もバラバラだから、一つにまとまらなそうな気がするんだが。
「魔王スキルとは、帝国が世界にばらまいた種。その種子が発芽した姿です。帝国とは何か? それは、恐るべき種子を育て上げ、卵とする組織。なぜ世界の壁を越えられたくないのか? それは、世界の壁を越え、外の世界に影響を及ぼすのは、帝国のみで良いと彼女が考えているからです」
彼女?
まあいいか。
大魔女は色々と詳しいらしい。
だが、正直な話あまりにも情報量が多すぎて、俺の頭ではついていけない!
またちょっとずつ聞いていこうっと。
「さあ、行くよオービター! 久しぶりの外だー!」
晴れ晴れとした顔のエレジア。
まあ、彼女が嬉しそうならそれでいいか!
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