上 下
1 / 42

第1話 不明スキル:ビーム

しおりを挟む
「スキル判明……ビーム、だと……!?」

 禍々しく輝いたスキル判定装置に、俺のスキルの名前が映し出される。
 周囲にどよめきが走る。

「なんだそれ」

「聞いたこと無いぞ」

「司祭様、これは……」

「うむ」

 村の司祭が、難しい顔をして俺を見下ろしている。

「ユニークスキルかと思って期待したが……。未知のスキルとはな。前例がないということは、記録される価値もないスキルなのだろう。だが、何が起こるのか分からない以上、村のしきたりに従う他あるまい。村長」

「ああ。オービター」

 村長が俺に言う。

「お前は村を追放だ。わけの分からん、使い所の不明なスキルを持つ者を村に置いておくわけにはいかん」

「なん……だと……?」

 俺は、村長の三男である。
 ここは、成人の儀式の場。

 この世界、エンブリオでは、人は成人すると同時にスキルを鑑定される。
 そして持っているスキルに見合った仕事をするようになるのだ。

 大体の人間は、農夫とか、◯◯職人とか、料理とかそういうのだ。
 レアな連中は、魔法や剣術スキルを持っていたりもする。

 さらにさらにレアなのは、ユニークスキルという連中。
 こいつらは一様に魔王スキルと呼ばれている。
 彼らは帝都に集められ、専門の学園に入って教育を受け、世界の明日を背負って立つ人材になるのだそうだ。

 俺も村長の三男坊という立場なので、将来など無いのと同じだ。
 なので、スキル鑑定に一縷いちるの望みを掛けていたのだが……。

 ユニークスキルの中には、外れスキルというやつがある。
 教会の記録に無い、意味不明なスキルである。

 これは大抵、意味のわからない言葉で構成されている。
 一体どうやって使えばいいのか、効果も何もかも分からない。

 都会では、そういうスキルの持ち主は幽閉されてしまうそうだ。
 田舎では殺されたりもするという。

「親父、俺を追放するのか?」

「ああ。危険かもしれん男を、我が息子とは言え置いておくことはできん。村のしきたりだ。命だけは奪わないことを喜んでくれ」

「嬉しいものかよ! 役立たずのスキルだと言われて、しかも追放だぞ!?」

 周囲には、見知った顔の大人たちがやってくる。
 彼らは一様に怯えた顔をして、農業用のフォークを握りしめていた。

「オービター! 頼むぞ、大人しく出ていってくれ」

「わけのわからない奴を住ませておくほど、村には余裕がないんだ」

「大人しくしろよ、暴れたら突き刺すからな!」

「くっそ、なんだよこの扱いは! 俺は村長の三男で……」

「オービター!」

 親父が吠える。

「お前は今から、わしの息子でもなんでもない! どこへなりと消えろ!」

「マジかよ……!!」

「まさか、不明スキルの持ち主が、わしの息子から出てしまうとは……。だが、三男だったことが不幸中の幸いだった」

 俺にとっちゃ、幸いでもなんでもない。
 そして、背後では新たな一人がスキル鑑定を受けている。

 そいつは、俺の幼馴染の娘、アセリナだ。
 彼女は俺を心配そうに見ながら、スキル鑑定装置に手を伸ばす。

 すると、鑑定装置が眩く輝いた。

「おお!」

「これは!」

「魔王スキルだ! 魔王スキルの持ち主が出たぞ!!」

 アセリナが目を見開き、画面を見つめている。

「我が村から、ついに魔王スキルの持ち主が! なんと嬉しいことだ!」

 親父も、俺のことを忘れてしまったかのように喜ぶ。
 アセリナは俺に振り返ることはなかった。

 俺はフォークを持った村人たちに囲まれながら、村の入口まで追いやられる。

「二度と戻ってくるなよ!」

「ああ、恐ろしい。昨日まで、不明スキルを持ったやつと暮らしていたってのか」

「よくぞ無事でいられたもんだ……」

「都では、収容所に入れた不明スキルの持ち主が暴れだしたらしいぞ」

「ああ、聞いたことがある。不明スキルの持ち主が集まって、山賊をやってるとか」

「おおくわばらくわばら。早く退治されて欲しいもんだ……」

 そこで、立ち止まっていた俺の背中にフォークが当たる。

「いてっ!」

「立ち止まるな! 出ていけ! いいか、お前、生き残ったからって、山賊に加わろうなんて考えるなよ!? 人に迷惑をかけるな!」

 村人たちが、まるで仇に接するような事を言う。
 こいつら……俺が不明スキルの持ち主だと分かった瞬間、こんな態度になりやがって。

「おら、出ていけ!」

「そら、そら! 突き刺すぞ!」

「いてえって! 刺さってる!」

 俺が抗議すると、奴らはなんとも醜い笑みを浮かべた。

「そいつは悪かったな! だけど、真っ当なスキル持ちの俺たちに手出しをするんじゃないぞ!」

「お前は危険な不明スキル持ちなんだ。人様に迷惑を掛けないように、普通の人に被害が出ないように、ひっそり死んでくれ」

 なんという身勝手か。
 俺の腹がムカムカした。

 じろりとそいつらの一人を睨む。
 俺の視線に魔法の力でもあれば、そいつの顔を焼いていた……。

 と思った時だ。
 俺が見ていたそいつの顔面に、黒い穴が空いた。

「あ……? あぎゃああああああ! いてえ! いてえ!」

「な、なんだ!? まさかこいつ!」

「スキルを使いやがった! この化け物! 化け物め!」

 くっそ!
 こいつら、てめえが殴られないと思って俺をいたぶってたくせに!
 だが、俺にも何が起こったのかは分からない。

 ムカムカする腹を抱えつつ、俺は村の外に飛び出したのだった。
 あばよ、くそったれな村。
 いつか、焼き尽くしてやる!

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【外伝】 白雪姫症候群 ースノーホワイト・シンドロームー

しらす丼
ファンタジー
『白雪姫症候群ースノーホワイト・シンドロームー』の裏側で起こる、アナザーストーリー。  三谷暁と過ごした危険度S級クラスの施設を離れた桑島キリヤは、共に施設を卒業した糸原優香と『白雪姫症候群ースノーホワイト・シンドロームー』に関わる事件と真実を追っていく物語――。 本編では語られなかった裏側と真実が展開し、キリヤと優香の成長と戦いの記録を描いていく。

世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する

ハーーナ殿下
ファンタジー
 青年ザガンは《武王》の称号をもつ最強の冒険者で、天神の啓示による世界順列でも最高位に君臨。しかし王都での上位ランカーとの殺伐とした、ランク戦の日々に疲れ果てていた。  そんなある日、《身代わりコピー人形》を手に入れ自由の身となる。自分の能力に99%激減リミッターをかけ、新人冒険者として辺境の村に向かう。そんなザガンのことを、村の若い冒険者たちはあざ笑う。  だが彼らは知らなかった。目の前にいるのが世界最強の男であることを。  これは99%激減でも最強クラスな男が、困っていた荒廃していた村を再建、高ランカーを押しのけて、新たな偉業を達成して物語である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...