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終末の王編
第170話 前夜からの女神が命について語る
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決戦前夜的な夜は更けていく。
カオルンはコンボの達人とエリイを交えて、模擬戦を行っているそうだ。
アカネルとナルカは、ユーリンとオクタゴンを交えて作戦会議。
俺はルミイと夜戦。
いや、俺だけ欲望まみれでどうなんだって話なんだが、まあいいじゃないか……。
「マ、マナビさん……。大事な夜なのに、わたしたち……体力使い切っちゃって良かったんでしょうか……」
「よくなかったかもしれん……」
二人でベッドの上、大の字になっているのである。
精も根も尽き果てた。
もう寝るしか無い。
ルミイは着実に体力を上げてきているなあ、と感心していたところである。
『いいかね?』
宿の鏡に、いきなりユーリンが出た。
「うわーっ」
「あひーっ」
慌てる俺たち。
『なに、気にしないでいい。生命の営みは大切なものだ。君はそうやって英気を養い、戦いに勝ってきたのだろう。英雄は色を好むものだぞ』
「真面目な物言いで受け入れられると、ちょっと不思議な気持ちになってくるな……」
ユーリンはプライベートな事情には干渉しないということであろう。
彼は作戦会議の内容を話してくれた。
『明日より、アビサルワンズ、ルサルカ教団の連合軍でスリッピー帝国へ進軍する。側方より、フォーホース魔法師団も合流だ。ここでスリッピー帝国を援護する。事前の根回しは私がやっておこう』
「鏡面を飛び回れるユーリンは便利だなあ」
千年ぶりとかに復活したユーリン。
実に精力的に動き回っている。
俺はと言うと、今現在は絶賛精力を使い切ってるんだけどな。はっはっは。
「なるほどー。じゃあ、パパとママにも連絡して手伝ってもらいましょうか。あと、セブンセンスの人たちも手を貸してくれそうです」
『助かる。シクスゼクスの魔族を牽制もしなければならない。バーバリアンとエルフたちにはそちらを頼めるだろうか? 手薄になったイースマスを攻撃されては叶わない。だが、バーバリアンとエルフたちでは、魔導王に対して有効な攻撃を加えられないだろう』
「そりゃまたどうして」
『魔導王は、魔力を用いない攻撃への対抗手段を無数に用意している。同時に、魔法に対する防御も極めて強い。私は魔法師団に、魔導王を倒すために練り上げられた魔法儀式をマスターさせている。アビサルワンズはそもそも使う力の体系が異なり、ルサルカ教団は魔力を纏ったアンデッドとともにある』
「はあはあ。つまり、どれもが魔導王の行使する魔法とは違うから、勝負になりえるわけか。同質の力じゃ相手にもならない、と」
『理解が早くて助かる。では私は早速スリッピー帝国へ連絡を行う。君は朝までゆっくり英気を養ってくれたまえ』
「行ってしまった」
「またします?」
「さすがに無理ではないか」
「ですよねー」
寝よう寝よう、という話になって、俺とルミイでぐうぐう寝たのだ。
朝、ダイナーの席で、カオルンとアカネルから猛抗議を受けた。
ごめんごめん。
ハーレムは奥さんたちを平等に扱わねばならない……!
だが、体力的な相性の問題で、どうしてもルミイに比重が偏るな。
ここで、第一夫人であるルミイの提案だ。
「多分この調子だと、わたしすぐに赤ちゃんできると思うんで、そしたら二人がマナビさんと遊び放題ですよ!」
「なるほどなのだ! その考えは無かったのだなー」
「そう考えると平等ともいえますね」
あっ、二人がルミイにあっさり丸め込まれた。
ナルカは、あたいは蚊帳の外でござい、という顔でこれを眺めているのだが、隣にルサルカ神がすすすっと寄ってきたのである。
『それで、ナルカはどうなのですか? あなたはルサルカ教団と、バーバリアンをつなぐ架け橋となる存在なのですから、進展があると神は嬉しいのですよ』
「ええーっ!? あ、あたいはそうだったんですか!? てっきりマナビの旅を助けるために同行しているものだとばかり……」
『これからの時代、世界を支配するようになるのはバーバリアンの力です。彼らの中から信仰者も生まれてくることでしょう。早い段階で、彼らと友誼を結んでおくことは教団のためにもなることなのですよ』
さすが神様だなあ。
儚げな美少女にしか見えないが、その物言いは未来を見据えたしっかりとしたものである。
ナルカはうむむむむ、と唸った。
「じゃあ、あたいは別にヴァンパイアにならなくても?」
『あれはドミニクたちが自主的にやってくれたことです。ですがわたくしは、信者たちが限りある命をなげうって、わたくしに奉仕するための存在になることを望みません。生命はそれだけで美しく、他に代えがたいものなのです』
そこまで言ってから、女神はじっと、自分が任命した聖女の目を見つめた。
『ナルカ』
「は、はい!」
ルサルカはナルカの手をギュッと握った。
座っていてすら体格が全然違うので、ナルカが姉、ルサルカが妹くらいに見えるのだが……。
力関係は全然逆だ。
『命を紡ぎ、命を繋いで下さい。あなただけではなく、あなたに続く多くの信者たちの未来が開けるのです。あなたはたくさんの命を世界に広げられる可能性を背負っているのです。わたくしが任じた聖女としての、最も尊き使命です』
「ルサルカ様……!」
ナルカが目をうるうるさせている。
感動しているな。
自分が信仰している神様から直々に労われ、激励されたら感涙するだろう。
あと、ルサルカ神もいいこと言う。
ドミニク司祭の人柄は、間違いなくこの神様の下で培われたんだな。
めちゃくちゃに倫理とかがしっかりしているルサルカ教団なのだ。
ここでルサルカ神が俺を向く。
『ということで、ナルカと命を育んで下さいね。それから、お隣でハンバーガーをたくさん食べてらっしゃるバーバリアンの姫、ナルカをよろしくお願いします』
「アッハイ」
「ふぁい」
ルミイはもぐもぐしながら返事しちゃいけません。
「そっか……。あたいにはこんな大切な使命があったんだ……! そうだね……!」
なんかナルカは決意とモチベーションで瞳をめらめら燃え上がらせ、俺を見つめるのだった。
来るか……!?
『兄弟、その前に出発だぞ』
海の神オクタゴンが水を差しに来たのだった。
カオルンはコンボの達人とエリイを交えて、模擬戦を行っているそうだ。
アカネルとナルカは、ユーリンとオクタゴンを交えて作戦会議。
俺はルミイと夜戦。
いや、俺だけ欲望まみれでどうなんだって話なんだが、まあいいじゃないか……。
「マ、マナビさん……。大事な夜なのに、わたしたち……体力使い切っちゃって良かったんでしょうか……」
「よくなかったかもしれん……」
二人でベッドの上、大の字になっているのである。
精も根も尽き果てた。
もう寝るしか無い。
ルミイは着実に体力を上げてきているなあ、と感心していたところである。
『いいかね?』
宿の鏡に、いきなりユーリンが出た。
「うわーっ」
「あひーっ」
慌てる俺たち。
『なに、気にしないでいい。生命の営みは大切なものだ。君はそうやって英気を養い、戦いに勝ってきたのだろう。英雄は色を好むものだぞ』
「真面目な物言いで受け入れられると、ちょっと不思議な気持ちになってくるな……」
ユーリンはプライベートな事情には干渉しないということであろう。
彼は作戦会議の内容を話してくれた。
『明日より、アビサルワンズ、ルサルカ教団の連合軍でスリッピー帝国へ進軍する。側方より、フォーホース魔法師団も合流だ。ここでスリッピー帝国を援護する。事前の根回しは私がやっておこう』
「鏡面を飛び回れるユーリンは便利だなあ」
千年ぶりとかに復活したユーリン。
実に精力的に動き回っている。
俺はと言うと、今現在は絶賛精力を使い切ってるんだけどな。はっはっは。
「なるほどー。じゃあ、パパとママにも連絡して手伝ってもらいましょうか。あと、セブンセンスの人たちも手を貸してくれそうです」
『助かる。シクスゼクスの魔族を牽制もしなければならない。バーバリアンとエルフたちにはそちらを頼めるだろうか? 手薄になったイースマスを攻撃されては叶わない。だが、バーバリアンとエルフたちでは、魔導王に対して有効な攻撃を加えられないだろう』
「そりゃまたどうして」
『魔導王は、魔力を用いない攻撃への対抗手段を無数に用意している。同時に、魔法に対する防御も極めて強い。私は魔法師団に、魔導王を倒すために練り上げられた魔法儀式をマスターさせている。アビサルワンズはそもそも使う力の体系が異なり、ルサルカ教団は魔力を纏ったアンデッドとともにある』
「はあはあ。つまり、どれもが魔導王の行使する魔法とは違うから、勝負になりえるわけか。同質の力じゃ相手にもならない、と」
『理解が早くて助かる。では私は早速スリッピー帝国へ連絡を行う。君は朝までゆっくり英気を養ってくれたまえ』
「行ってしまった」
「またします?」
「さすがに無理ではないか」
「ですよねー」
寝よう寝よう、という話になって、俺とルミイでぐうぐう寝たのだ。
朝、ダイナーの席で、カオルンとアカネルから猛抗議を受けた。
ごめんごめん。
ハーレムは奥さんたちを平等に扱わねばならない……!
だが、体力的な相性の問題で、どうしてもルミイに比重が偏るな。
ここで、第一夫人であるルミイの提案だ。
「多分この調子だと、わたしすぐに赤ちゃんできると思うんで、そしたら二人がマナビさんと遊び放題ですよ!」
「なるほどなのだ! その考えは無かったのだなー」
「そう考えると平等ともいえますね」
あっ、二人がルミイにあっさり丸め込まれた。
ナルカは、あたいは蚊帳の外でござい、という顔でこれを眺めているのだが、隣にルサルカ神がすすすっと寄ってきたのである。
『それで、ナルカはどうなのですか? あなたはルサルカ教団と、バーバリアンをつなぐ架け橋となる存在なのですから、進展があると神は嬉しいのですよ』
「ええーっ!? あ、あたいはそうだったんですか!? てっきりマナビの旅を助けるために同行しているものだとばかり……」
『これからの時代、世界を支配するようになるのはバーバリアンの力です。彼らの中から信仰者も生まれてくることでしょう。早い段階で、彼らと友誼を結んでおくことは教団のためにもなることなのですよ』
さすが神様だなあ。
儚げな美少女にしか見えないが、その物言いは未来を見据えたしっかりとしたものである。
ナルカはうむむむむ、と唸った。
「じゃあ、あたいは別にヴァンパイアにならなくても?」
『あれはドミニクたちが自主的にやってくれたことです。ですがわたくしは、信者たちが限りある命をなげうって、わたくしに奉仕するための存在になることを望みません。生命はそれだけで美しく、他に代えがたいものなのです』
そこまで言ってから、女神はじっと、自分が任命した聖女の目を見つめた。
『ナルカ』
「は、はい!」
ルサルカはナルカの手をギュッと握った。
座っていてすら体格が全然違うので、ナルカが姉、ルサルカが妹くらいに見えるのだが……。
力関係は全然逆だ。
『命を紡ぎ、命を繋いで下さい。あなただけではなく、あなたに続く多くの信者たちの未来が開けるのです。あなたはたくさんの命を世界に広げられる可能性を背負っているのです。わたくしが任じた聖女としての、最も尊き使命です』
「ルサルカ様……!」
ナルカが目をうるうるさせている。
感動しているな。
自分が信仰している神様から直々に労われ、激励されたら感涙するだろう。
あと、ルサルカ神もいいこと言う。
ドミニク司祭の人柄は、間違いなくこの神様の下で培われたんだな。
めちゃくちゃに倫理とかがしっかりしているルサルカ教団なのだ。
ここでルサルカ神が俺を向く。
『ということで、ナルカと命を育んで下さいね。それから、お隣でハンバーガーをたくさん食べてらっしゃるバーバリアンの姫、ナルカをよろしくお願いします』
「アッハイ」
「ふぁい」
ルミイはもぐもぐしながら返事しちゃいけません。
「そっか……。あたいにはこんな大切な使命があったんだ……! そうだね……!」
なんかナルカは決意とモチベーションで瞳をめらめら燃え上がらせ、俺を見つめるのだった。
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