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終末の王編
第168話 理不尽アタックからの理想の世界
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シクスゼクス国境付近で、魔族の軍勢と遭遇した。
間者何かを使って、スリッピー帝国が魔導王に攻められそうだという情報を入手したのだろうか。
これでは挟撃である。
スリッピー帝国危うし!
それはそれとして邪魔だったので、真正面から押し通った。
コンボの達人が飛び出していって、道を切り開いていく。
カオルンは空の魔族を一掃する。
タフネスが高そうなのはナルカが一撃で倒した。
『これはひどい』
状況を眺めていたユーリンが感想を口にした。
「お分かりいただけただろうか。戦いとはもう相性ゲーでしかないということを」
『君たちに対して、数で対抗するのが無駄だということはよく分かった。魔族の軍勢がアリの群れを踏み潰すように蹴散らされていく……』
「コンボの達人をどうにかするには、単体の強さがないと無理だ。カオルンをどうにかするなら、空を飛べる上でやっぱり単体が強いのがベストで、ナルカに対してはまあ、コンボの達人とカオルンを封じた上で数で攻めるしか無いだろうな」
つまり完璧な布陣である。
達人とカオルンが敵の軍勢を引き受けてくれるから、その間にナルカが相手のメイン戦力を一撃死させる。
これが現在の俺たちの戦い方だ。
俺はまったりとこれを眺めているだけでいい。
楽ちん楽ちん。
『では万一、彼らで止められぬ相手が現れたら』
「そこが俺の出番だよ」
完璧な布陣なのである。
戦っている仲間が、敵の軍勢を押し返していくのに合わせ、バギーがのんびり進んでいく。
ルミイなど、水で戻した保存食をむしゃむしゃやりながら運転しているではないか。
余裕である。
もう、あひーとか叫んでたルミイはいない。
おっと、コンボの達人に爆散させられたトロルの腕が飛んできた。
ボンネットを掠めて地面に落ちる。
「あひー!」
ルミイが悲鳴をあげた。
「場馴れしてきたと思ったのにまだ『あひー』って言うのか」
「びっくりしたんですよう!」
それは仕方ない。
正面へひたすら突き進んでいると、軍勢を抜けた。
後ろから攻撃されないように、カオルンが暴れている。
少ししたら戻ってくる手筈だ。
ルミイはナルカと運転を交代し、俺の後ろに乗り込もうとして……。
馬上では落ち着いて食事できないことに気付いたらしい。そのまま助手席に残ってしまった。
戻ってきた達人は、後部座席でエリイにくっつかれて「うーわー」とか言っている。
今回、俺の後ろに座るのはアカネルだ。
「マスター、戦況の俯瞰図ですが、これでシクスゼクスの侵攻軍は損耗率40%です。撤退していきます」
「間の悪い奴らだったよな。あと一日遅ければ俺たちと遭遇しなかったのに」
「こちらがイレギュラー過ぎるんです。普通こんな少人数で大軍に勝る相手を想定しません」
「異世界召喚者とかいる世界なのにな」
「シクスゼクスでも、異世界召喚者を想定しているとは思いますよ。ですが、世界最強クラスの異世界召喚者と、魔神将と神の力を受け継いだ空飛ぶ戦士と、死の神に魔眼を与えられた必殺の力を持つ聖女が同時に来ると想定する人はいません」
「それはそう」
俺は大変納得した。
理不尽アタックじゃん。
「しかも後詰でマスターがいますから、ルインマスターでも連れてこない限りは無理です。そのルインマスターは連れてくることができない、制御不能な存在ですから、この状況への対処はそもそも不可能なんです」
「これはひどい」
アカネルが、おまいう、という顔をした。
彼女、俺が賢者モードである間は本当に賢者なんだよなあ。
こうして国境を越え、海岸線を走ってイースマスへ。
邪神オクタゴンが統治するかの都市は、今日も平和であった。
やって来た俺たちを、暖かく出迎えるアビサルワンズと、ルサルカ教団の人々。
「お帰りなさい!」
「長旅疲れたでしょう」
「新作のフィッシュバーガーです」
なんと、魚を使った食事に造詣の深いルサルカ教団協賛、揚げた魚をバーガーにした新メニューなのである。
これを甘酸っぱいクリーミーなソースで食う。
美味い。
「ルサルカ教団では、シンプルな塩味の料理ばかりだったと聞いたが」
街に入ってすぐに振る舞われたフィッシュバーガーを美味しくいただいている俺たち。
ナルカが頷いた。
「そうだけどね。このソースはイースマスのものだろう? それに、イースマスは油で揚げる料理が多いじゃないか。これを見て、教団の仲間が、それなら魚を揚げたらどうだろうって考えたのさ」
海辺なのに、今まで揚げた魚をパンで挟む発想が出てこなかった都市、イースマス!
まあ、ここはオクタゴンが創造しうる料理しか生まれない環境だったから仕方ない。
そこへルサルカの信徒たちが現れ、双方の料理がマリアージュを起こし、このフィッシュバーガーが誕生したのだ。
サクサクで大変美味い。
何百年も揚げ物を作り続けているイースマスは、フライ系の料理の熟練度がめちゃくちゃに高いのだ。
その辺のバーガーショップでも、最高のカリッと具合になった中身ホクホクのフライドポテトが当然のように出る。
よく見たら、このアメリカンファストフード的な美食の都で、ルサルカ教団の人々の恰幅が大変よろしくなってきているような……。
「みんな! ちょっとたるんでるんじゃないかい! イースマスの周りをランニングしておいで!」
危機感を覚えたらしいナルカが、彼らに発破を掛けたのだった。
ドミニク司祭の次に地位が高いナルカにそう言われたら仕方ない。
ルサルカ教団の一同が、わいわいとランニングに出ていった。
興味を持ったらしきアビサルワンズも、このランニングに参加する。
マラソン大会になってしまったな。
『なんという平和な都市なのだ……。人と異形の者が手を取り合い、文化的な都で暮らしている……。なるほど、こんな世界を見ていれば、強大な力を持つ異世界召喚者が我欲ではなく、世界を守ろうと考えるのも理解できる』
ユーリン、カルチャーショックである。
ここ、ある意味理想郷だからな。
「お分かりいただけただろうか」
俺は最近よく口にするフレーズを告げるのだった。
間者何かを使って、スリッピー帝国が魔導王に攻められそうだという情報を入手したのだろうか。
これでは挟撃である。
スリッピー帝国危うし!
それはそれとして邪魔だったので、真正面から押し通った。
コンボの達人が飛び出していって、道を切り開いていく。
カオルンは空の魔族を一掃する。
タフネスが高そうなのはナルカが一撃で倒した。
『これはひどい』
状況を眺めていたユーリンが感想を口にした。
「お分かりいただけただろうか。戦いとはもう相性ゲーでしかないということを」
『君たちに対して、数で対抗するのが無駄だということはよく分かった。魔族の軍勢がアリの群れを踏み潰すように蹴散らされていく……』
「コンボの達人をどうにかするには、単体の強さがないと無理だ。カオルンをどうにかするなら、空を飛べる上でやっぱり単体が強いのがベストで、ナルカに対してはまあ、コンボの達人とカオルンを封じた上で数で攻めるしか無いだろうな」
つまり完璧な布陣である。
達人とカオルンが敵の軍勢を引き受けてくれるから、その間にナルカが相手のメイン戦力を一撃死させる。
これが現在の俺たちの戦い方だ。
俺はまったりとこれを眺めているだけでいい。
楽ちん楽ちん。
『では万一、彼らで止められぬ相手が現れたら』
「そこが俺の出番だよ」
完璧な布陣なのである。
戦っている仲間が、敵の軍勢を押し返していくのに合わせ、バギーがのんびり進んでいく。
ルミイなど、水で戻した保存食をむしゃむしゃやりながら運転しているではないか。
余裕である。
もう、あひーとか叫んでたルミイはいない。
おっと、コンボの達人に爆散させられたトロルの腕が飛んできた。
ボンネットを掠めて地面に落ちる。
「あひー!」
ルミイが悲鳴をあげた。
「場馴れしてきたと思ったのにまだ『あひー』って言うのか」
「びっくりしたんですよう!」
それは仕方ない。
正面へひたすら突き進んでいると、軍勢を抜けた。
後ろから攻撃されないように、カオルンが暴れている。
少ししたら戻ってくる手筈だ。
ルミイはナルカと運転を交代し、俺の後ろに乗り込もうとして……。
馬上では落ち着いて食事できないことに気付いたらしい。そのまま助手席に残ってしまった。
戻ってきた達人は、後部座席でエリイにくっつかれて「うーわー」とか言っている。
今回、俺の後ろに座るのはアカネルだ。
「マスター、戦況の俯瞰図ですが、これでシクスゼクスの侵攻軍は損耗率40%です。撤退していきます」
「間の悪い奴らだったよな。あと一日遅ければ俺たちと遭遇しなかったのに」
「こちらがイレギュラー過ぎるんです。普通こんな少人数で大軍に勝る相手を想定しません」
「異世界召喚者とかいる世界なのにな」
「シクスゼクスでも、異世界召喚者を想定しているとは思いますよ。ですが、世界最強クラスの異世界召喚者と、魔神将と神の力を受け継いだ空飛ぶ戦士と、死の神に魔眼を与えられた必殺の力を持つ聖女が同時に来ると想定する人はいません」
「それはそう」
俺は大変納得した。
理不尽アタックじゃん。
「しかも後詰でマスターがいますから、ルインマスターでも連れてこない限りは無理です。そのルインマスターは連れてくることができない、制御不能な存在ですから、この状況への対処はそもそも不可能なんです」
「これはひどい」
アカネルが、おまいう、という顔をした。
彼女、俺が賢者モードである間は本当に賢者なんだよなあ。
こうして国境を越え、海岸線を走ってイースマスへ。
邪神オクタゴンが統治するかの都市は、今日も平和であった。
やって来た俺たちを、暖かく出迎えるアビサルワンズと、ルサルカ教団の人々。
「お帰りなさい!」
「長旅疲れたでしょう」
「新作のフィッシュバーガーです」
なんと、魚を使った食事に造詣の深いルサルカ教団協賛、揚げた魚をバーガーにした新メニューなのである。
これを甘酸っぱいクリーミーなソースで食う。
美味い。
「ルサルカ教団では、シンプルな塩味の料理ばかりだったと聞いたが」
街に入ってすぐに振る舞われたフィッシュバーガーを美味しくいただいている俺たち。
ナルカが頷いた。
「そうだけどね。このソースはイースマスのものだろう? それに、イースマスは油で揚げる料理が多いじゃないか。これを見て、教団の仲間が、それなら魚を揚げたらどうだろうって考えたのさ」
海辺なのに、今まで揚げた魚をパンで挟む発想が出てこなかった都市、イースマス!
まあ、ここはオクタゴンが創造しうる料理しか生まれない環境だったから仕方ない。
そこへルサルカの信徒たちが現れ、双方の料理がマリアージュを起こし、このフィッシュバーガーが誕生したのだ。
サクサクで大変美味い。
何百年も揚げ物を作り続けているイースマスは、フライ系の料理の熟練度がめちゃくちゃに高いのだ。
その辺のバーガーショップでも、最高のカリッと具合になった中身ホクホクのフライドポテトが当然のように出る。
よく見たら、このアメリカンファストフード的な美食の都で、ルサルカ教団の人々の恰幅が大変よろしくなってきているような……。
「みんな! ちょっとたるんでるんじゃないかい! イースマスの周りをランニングしておいで!」
危機感を覚えたらしいナルカが、彼らに発破を掛けたのだった。
ドミニク司祭の次に地位が高いナルカにそう言われたら仕方ない。
ルサルカ教団の一同が、わいわいとランニングに出ていった。
興味を持ったらしきアビサルワンズも、このランニングに参加する。
マラソン大会になってしまったな。
『なんという平和な都市なのだ……。人と異形の者が手を取り合い、文化的な都で暮らしている……。なるほど、こんな世界を見ていれば、強大な力を持つ異世界召喚者が我欲ではなく、世界を守ろうと考えるのも理解できる』
ユーリン、カルチャーショックである。
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「お分かりいただけただろうか」
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