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終末の王編
第159話 初代皇帝からの世情の話
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こうして、フォーホース帝国に滞在することになった。
この国の人間たちは、基本的に初代皇帝に管理されるロボットみたいなもんである。
なので、俺の話し相手は初代皇帝ユーリンとなる。
彼はこの時のためにずっと魔力を溜めていたようで、帝国内のあらゆる鏡をジャックしてそこに出現、俺とお喋りをする。
魂があるAIという感じだ。
魔導石に自分の記憶と意識をプログラミングしておいた的なものらしい。
『なるほど。君の能力は世界のあり方そのものを思う方向に変化させてしまうものか。それならば魔導王にも対抗ができるだろう。ようやく、私の念願は叶う時がやって来たのだ』
「別に、俺は魔導王を倒すためにこの世界に来たんじゃないけどな」
『構わない。結果として、この世界を破壊しようとする魔導王と君はぶつかりあうだろう。君はこの世界で得たものがあり、それを失いたくないと考えている。コントロール不能なコンボの達人と、そもそも世界を一つ作ってしまえるオクタゴンとは危機感が違う』
「うむ。こっちの世界に奥さんを作ってしまったからな。必死で世界を守らざるをえない。確かに魔導王の相手は俺だわ」
守るべきものがあると、行動に制限がかかるな!
他にもこの世界で仲良くした連中がたくさんいる。
そいつらを守ってやりたい的な意識もある。
「で、どうやって世界のことを知るんだ? ユーリンは鏡から出てこれないだろ」
『私が生きていた時代に、魔力消費を抑えながら意識を永らえるにはこれしか無かった。今は魔導機械があるだろう。あれに魔導石を積み、そこに私の意識の一部を分けることはできる』
「それで移動するってわけか?」
『既にスリッピー帝国などに移動している。一度、意識が完全に途絶えたことがあり、その時には私が一時的に覚醒したがな』
あー、あの時の。
それって、アカネルがスリッピー帝国の全機能を停止させた時であろう。
「じゃあもしかして、アカネルが意識を持って実体化したのって」
『そこの娘の中にも、私の意識の欠片がある。同調することができれば、そこの娘の見聞きしたものが私にも分かるようになるだろう』
「だって。どう?」
「お断りします。プライベートです」
隣で聞いていたアカネルが、両手でバツを作ってみせた。
「マスターとの夜のあれとかこれとかを覗き見られるなんて、恥ずかしくて機能停止します」
「そっちかあ」
ここ最近も、フォーホース帝国をランニングしては体力づくりに余念のないアカネル。
そこまで情熱を傾けるとは。
『冗談だ。君たちが乗ってきたバギーがあるだろう? あれにも小型の魔導石がある。私はあれに同調し、そこから知覚を得ることが可能だ。ほう、ルインマスターか。世界を破壊するほどの竜が降り立っていたのだな……。よく世界が滅ぼされなかったものだ』
普通に驚いてるなユーリン。
あれほどヤバいドラゴンが召喚されたのは、彼としても計算外だったんだろう。
『それから……。シクスゼクスか。彼らは魔導王を片付けた後、全世界が対峙する敵となるだろう。とは言っても、魔族もまたこの世界の住人だ。これは人と人の争いになる』
「俺たちの旅を遡ってるぞ」
「あのバギー、カスタムしながらずっと乗ってますからね」
そうそう。
ワンザブロー帝国で接収した魔導バギーなのだった。
ユーリンが見る光景はスリッピー帝国へ移り、そこではスリーズシティに停車した後、移動させられて整備される光景ばかりだったようだ。
アカネルのやらかしはバレなかった。
最後にワンザブロー帝国。
ユーリンが絶句した。
『なんたることだ。魔導王が築き上げたあの都がこんな無惨な姿に。そして無惨な姿だったものがさらに無惨なことになって滅びたというわけか。ワンザブロー帝国の者たちは何をしていたのだ。責任者を出せ』
ぷりぷり怒ってる。
俺たちが見たワンザブロー帝国の姿は、既に変わり果てたものだったらしい。
そりゃまあ、ヒャッハーが跳梁跋扈し、魔法使いにあらずんば人にあらず、というディストピアでアポカリプスめいた、今思うと一番終わってる世界だったからな。
全てを見終わったユーリンは、鏡の中で天を仰いでため息をついた。
『君たち、世界の一番みっともない部分だけを見続けながら旅をしていたのではないか?』
「そうかもしれない」
俺が出会ったパルメディアの偉い連中は、みんな醜態を晒しまくっていた。
自己保身とか、自分のプライドばかりの奴らなんだよな。
そりゃあ、魔法帝国時代が終わってしまうのも分かる気がする。
フォーホース帝国は四騎士の活躍でまだ独立を守れているが、大義みたいなものを見失っていた他国はひどいものらしい。
バーバリアンや魔族が帝国の外から押し寄せてきて、その辺りを占領し、どんどん国を作っていっているとか。
ワンザブロー帝国があったところは完全に、バーバリアンと魔族が群雄割拠する戦国時代みたいになっているし、ツーブロッカー帝国も最近滅ぼされたそうだ。
「まだ行ってないのに滅ぼされたのか」
『故に、ツーブロッカー帝国の難民を保護し始めている。存外に多いぞ』
「難民受け入れられる余裕あるの?」
『労働力として働いてもらう。畑の生産力を向上させる必要があったからな』
翌日。
俺たちに配給される食事の量は明らかに増えていた。
これは、初代皇帝ユーリンが命じたことなのだ。
俺たちこそがやがて現れるであろう、魔導王に対抗する唯一の手立てだから、ちゃんと食べさせて栄養を蓄えさせようというのだろう。
ルミイが大変喜んだ。
「ここはいいところですねえ! 味のバリエーションが無いのは、凍土の王国もそうだったんでわたしは我慢できます!」
「カオルンも気にならないのだ!」
「当機能は栄養さえあればいいですから」
「あたいも問題ないね」
うちの嫁たち+1は、食べ物にうるさくないな!
俺もその辺は同意だったので、文句も言わず朝昼晩と似たようなものを食べた。
そして、フォーホース帝国滞在中は、ユーリンから過去の話を聞きながら都市の中を散策するのである。
帝都はとにかく、広さだけはある。
住民たちは常に何らかの仕事をしていて、全てが手作業だ。
技術力は高くないように見えるな。
『魔力の星がある頃から、こういう暮らしをさせている。魔力の星に頼ることは、即ち後の崩壊を招くことが分かりきっていたからだ』
「その通りだなあ」
ワンザブロー帝国は滅び、ツーブロッカー帝国も滅び、フィフスエレ帝国も滅んだ。
スリッピー帝国は魔導機械のお陰で、バーバリアンや魔族と拮抗できている。
セブンセンス法国も、信仰の力で問題なし。
シクスゼクスに至っては、そもそもが魔族の傀儡国家である。
ついに皇帝バフォメスは、我こそが魔族の王、魔王であると宣言したらしい。
宣言したのをあちこちに使者を出して伝えたそうなので、案外律儀なのかもしれない。
そのお陰で、あちこちにいた魔族たちがシクスゼクスに集まっているとか。
なお、シクスゼクスの海辺の一角に、彼らが手出しできないイースマスという都市があってだな……。
海を司る二柱の神が、ガッツリタッグを組んで、権能100%維持した状態で守ってるので、魔族も手出しできないのだ。
「そうだ。ユーリン。そのうちイースマスに連れて行ってやろう。魔導王をぶっ倒したら、あんたも千年ぶりに暇になるだろ」
『なんだと? その発想は無かったな……』
戦後の事を考えておくのは、生きるモチベーションになるぞ!
この国の人間たちは、基本的に初代皇帝に管理されるロボットみたいなもんである。
なので、俺の話し相手は初代皇帝ユーリンとなる。
彼はこの時のためにずっと魔力を溜めていたようで、帝国内のあらゆる鏡をジャックしてそこに出現、俺とお喋りをする。
魂があるAIという感じだ。
魔導石に自分の記憶と意識をプログラミングしておいた的なものらしい。
『なるほど。君の能力は世界のあり方そのものを思う方向に変化させてしまうものか。それならば魔導王にも対抗ができるだろう。ようやく、私の念願は叶う時がやって来たのだ』
「別に、俺は魔導王を倒すためにこの世界に来たんじゃないけどな」
『構わない。結果として、この世界を破壊しようとする魔導王と君はぶつかりあうだろう。君はこの世界で得たものがあり、それを失いたくないと考えている。コントロール不能なコンボの達人と、そもそも世界を一つ作ってしまえるオクタゴンとは危機感が違う』
「うむ。こっちの世界に奥さんを作ってしまったからな。必死で世界を守らざるをえない。確かに魔導王の相手は俺だわ」
守るべきものがあると、行動に制限がかかるな!
他にもこの世界で仲良くした連中がたくさんいる。
そいつらを守ってやりたい的な意識もある。
「で、どうやって世界のことを知るんだ? ユーリンは鏡から出てこれないだろ」
『私が生きていた時代に、魔力消費を抑えながら意識を永らえるにはこれしか無かった。今は魔導機械があるだろう。あれに魔導石を積み、そこに私の意識の一部を分けることはできる』
「それで移動するってわけか?」
『既にスリッピー帝国などに移動している。一度、意識が完全に途絶えたことがあり、その時には私が一時的に覚醒したがな』
あー、あの時の。
それって、アカネルがスリッピー帝国の全機能を停止させた時であろう。
「じゃあもしかして、アカネルが意識を持って実体化したのって」
『そこの娘の中にも、私の意識の欠片がある。同調することができれば、そこの娘の見聞きしたものが私にも分かるようになるだろう』
「だって。どう?」
「お断りします。プライベートです」
隣で聞いていたアカネルが、両手でバツを作ってみせた。
「マスターとの夜のあれとかこれとかを覗き見られるなんて、恥ずかしくて機能停止します」
「そっちかあ」
ここ最近も、フォーホース帝国をランニングしては体力づくりに余念のないアカネル。
そこまで情熱を傾けるとは。
『冗談だ。君たちが乗ってきたバギーがあるだろう? あれにも小型の魔導石がある。私はあれに同調し、そこから知覚を得ることが可能だ。ほう、ルインマスターか。世界を破壊するほどの竜が降り立っていたのだな……。よく世界が滅ぼされなかったものだ』
普通に驚いてるなユーリン。
あれほどヤバいドラゴンが召喚されたのは、彼としても計算外だったんだろう。
『それから……。シクスゼクスか。彼らは魔導王を片付けた後、全世界が対峙する敵となるだろう。とは言っても、魔族もまたこの世界の住人だ。これは人と人の争いになる』
「俺たちの旅を遡ってるぞ」
「あのバギー、カスタムしながらずっと乗ってますからね」
そうそう。
ワンザブロー帝国で接収した魔導バギーなのだった。
ユーリンが見る光景はスリッピー帝国へ移り、そこではスリーズシティに停車した後、移動させられて整備される光景ばかりだったようだ。
アカネルのやらかしはバレなかった。
最後にワンザブロー帝国。
ユーリンが絶句した。
『なんたることだ。魔導王が築き上げたあの都がこんな無惨な姿に。そして無惨な姿だったものがさらに無惨なことになって滅びたというわけか。ワンザブロー帝国の者たちは何をしていたのだ。責任者を出せ』
ぷりぷり怒ってる。
俺たちが見たワンザブロー帝国の姿は、既に変わり果てたものだったらしい。
そりゃまあ、ヒャッハーが跳梁跋扈し、魔法使いにあらずんば人にあらず、というディストピアでアポカリプスめいた、今思うと一番終わってる世界だったからな。
全てを見終わったユーリンは、鏡の中で天を仰いでため息をついた。
『君たち、世界の一番みっともない部分だけを見続けながら旅をしていたのではないか?』
「そうかもしれない」
俺が出会ったパルメディアの偉い連中は、みんな醜態を晒しまくっていた。
自己保身とか、自分のプライドばかりの奴らなんだよな。
そりゃあ、魔法帝国時代が終わってしまうのも分かる気がする。
フォーホース帝国は四騎士の活躍でまだ独立を守れているが、大義みたいなものを見失っていた他国はひどいものらしい。
バーバリアンや魔族が帝国の外から押し寄せてきて、その辺りを占領し、どんどん国を作っていっているとか。
ワンザブロー帝国があったところは完全に、バーバリアンと魔族が群雄割拠する戦国時代みたいになっているし、ツーブロッカー帝国も最近滅ぼされたそうだ。
「まだ行ってないのに滅ぼされたのか」
『故に、ツーブロッカー帝国の難民を保護し始めている。存外に多いぞ』
「難民受け入れられる余裕あるの?」
『労働力として働いてもらう。畑の生産力を向上させる必要があったからな』
翌日。
俺たちに配給される食事の量は明らかに増えていた。
これは、初代皇帝ユーリンが命じたことなのだ。
俺たちこそがやがて現れるであろう、魔導王に対抗する唯一の手立てだから、ちゃんと食べさせて栄養を蓄えさせようというのだろう。
ルミイが大変喜んだ。
「ここはいいところですねえ! 味のバリエーションが無いのは、凍土の王国もそうだったんでわたしは我慢できます!」
「カオルンも気にならないのだ!」
「当機能は栄養さえあればいいですから」
「あたいも問題ないね」
うちの嫁たち+1は、食べ物にうるさくないな!
俺もその辺は同意だったので、文句も言わず朝昼晩と似たようなものを食べた。
そして、フォーホース帝国滞在中は、ユーリンから過去の話を聞きながら都市の中を散策するのである。
帝都はとにかく、広さだけはある。
住民たちは常に何らかの仕事をしていて、全てが手作業だ。
技術力は高くないように見えるな。
『魔力の星がある頃から、こういう暮らしをさせている。魔力の星に頼ることは、即ち後の崩壊を招くことが分かりきっていたからだ』
「その通りだなあ」
ワンザブロー帝国は滅び、ツーブロッカー帝国も滅び、フィフスエレ帝国も滅んだ。
スリッピー帝国は魔導機械のお陰で、バーバリアンや魔族と拮抗できている。
セブンセンス法国も、信仰の力で問題なし。
シクスゼクスに至っては、そもそもが魔族の傀儡国家である。
ついに皇帝バフォメスは、我こそが魔族の王、魔王であると宣言したらしい。
宣言したのをあちこちに使者を出して伝えたそうなので、案外律儀なのかもしれない。
そのお陰で、あちこちにいた魔族たちがシクスゼクスに集まっているとか。
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