召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
158 / 196
終末の王編

第158話 解き明かす謎からの世界の真実

しおりを挟む
『魔法文明と呼ばれる時代になっておろう。だが、そんなものはない』

 いきなりショッキングな発言来た。
 しかし、謁見の間の連中は特にショックを受けている風でもない。

 彼ら、マニュアルに従って役割を果たしていただけだものな。
 魔力の星が落ちても生活が変わっていないっぽい様子が、混乱の無い生活ぶりからも伺える。

「つまりこの国、魔力の星の恩恵を極力排除して運営されてたってことか」

『そうだ』

「うおっ! 記録だと思ってたら返答してくるのかよ」

 俺はかなりびっくりした。
 鏡に映し出された男は、じっと俺を見ている。

『私は魔導石の中に、私の記憶と意識を焼き付けた。フォーホース地方を管理する魔導石が、即ち私と言っていい。異世界から来た者よ。私はお前のような存在を得るために、彼らに命じて何度も異世界召喚を行わせた。各国にその技術を伝え、異世界召喚を行わせた』

「世界の答え合わせが始まっていくな」

 映像になっている男は、恐らくは魔導王と同じ時代を生きていた魔法使いだ。
 魔力の星など無くても、自力で魔法を使うことができた魔法使い。

 で、そいつは魔導王の存在に危機感を覚えていたと。
 だから、魔導王が魔力の星を開発し、地上が無限の魔力に満たされた時も、あえてそれを利用しないシステムを作り上げた。

 魔導石というのがそれで、そう言えばスリッピー帝国も似たようなものを使っていたような……。

『あれは我が地方から輸出されている。それをスリッピー帝国が加工し、使用している。魔導石は平行世界から魔力を汲み上げ、結晶化させたものだ』

「当機能の中にも魔導石がありますよ」

「アカネルが衝撃的な事を言ってきた。つまりこの国、ある意味ではアカネルの生みの親でもあったわけか」

「そうなりますね。彼は古代の魔法使いユーリン。ヘルプ機能によると、彼こそが異世界召喚技術を生み出した天才だと言われています。己の人格と記憶を魔導石に移し替えながら、ずっと研究を続けたようです」

『そうだ』

「いちいち律儀に返答してくるぞ」

『魔導王は私が召喚した。最初に召喚した四騎士を、彼は圧倒し、その力を見せつけた。魔導王の力とは、魔法そのものだ。想像し、創造しうるありとあらゆる魔法は、彼によって行使される。魔導王は世界に無限の魔力をもたらすと言って、魔力の星を作り上げた。あらゆる魔法の使い手である彼をもって、数十年を掛けてだ。その気になれば世界を束ねる神にもなれた男が、慈善行為か? いや、違うだろう』

「一人で話が完結してるじゃん」

「マスター、ツッコミは無粋ですよ」

『あれは、人間たちが無限の魔力を用いて何をするのかを見ているのだ。私が魔導石に意識を宿したように、あの男もまた、自らの肉体を捨て、意識を魔力の星に移し替えた。私はそう睨んでいる』

 なるほどなあ。
 ユーリンとしては、自分がこの世界に呼び込んでしまった怪物である、魔導王を放っておけなかったのだろう。
 それで、フォーホース帝国を作って魔導王を監視することにした。

 この国が謎に包まれていて、外部からの侵入を許さなかったのは、ここがいつか再来する魔導王に対抗するための場所だったからだ。
 多分な。

「その辺りどうなの、アカネル」

「間違いありません。国全体が、魔導王に対抗するための仕掛けになっています。従来の魔法とは全く違う理論で作られています」

「ははあ。ということは、ユーリンは魔導王が絶対に戻ってくると確信してるんだな。そして繰り返される異世界召喚の中で、魔導王に対抗できるやつが出てくるのを待ってたと。俺と、オクタゴンと、コンボの達人か?」

「三人も同じ時代に出てきましたね。オクタゴンはずいぶん前だと思いますけど」

 そうなるな。

『時は来た。それだけだ』

「以前の俺みたいな事言ってるな。だが確かにそうとしか言いようがない。で、俺に何を期待するんだ。俺は異世界召喚について色々知るためにこっちに来たんだが……」

『知識は開示しよう。魔導王めの魔力を目減りさせるために私が仕掛けた策だ。案の定、魔力の星はその魔力を枯渇させて堕ちたか。こうなれば、魔導王が出てくるより他ない。奴の計画は水の泡だ』

「マスター、こうは言っていますが、ユーリンは魔導王の計画について正確には知らないようです」

「ほんとかあ」

 なんとなく推測してるだけか。
 だが、確証が無いからと何もしないよりはずっとマシだろう。

「魔導王が何するのか知ってる?」

『人間に魔力を与え、試した。試しの結果作り出された世界を、あの男はずっと見ていた。そして、人間に価値なしと判断したなら……再臨した魔導王は人間を滅ぼすだろう』

「神様みたいなことするじゃん」

「魔導王についてヘルプ機能で調べました。神と言っていい権能を持っていますね。大陸一つを空に浮かび上がらせる、その大陸を成形して星の形にし、中央には幾多の魔法使いを魔力化して束ね、核としています。魔力の星は、魔導王が住んでいた大陸そのものだったようです」

「とんでもねー。なるほど、オクタゴンが現在進行系っぽい感じで、最強の異世界召喚者に魔導王の名前を上げた理由がよくわかった」

 真の敵は魔導王、というわけである。
 まだ影も形も無いんだが。

 いや、俺に気づかないところで、徐々に影響を及ぼしてたりするんだろうか?
 ちょっと、そこのところを調べねばなのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき
ファンタジー
初級冒険者ドルマには特技があった。 それは、巻き込まれたもの全てを昏倒させるくっさいくっさい息、バッドステータスブレス。 かつてモンスターにやられた時に身に着けたこれが、彼の唯一にして最大の技だった。 彼はともに村を出た仲間たちとともに冒険者となり、依頼でピンチに陥る。 そこで放たれたバッドステータスブレスは、凄まじい威力を発揮する。 モンスターは全滅! 仲間も全滅! ということで、どうにか生きていた仲間たちから、くさい息は追放ですわーっ!!と追放されてしまう。 失意のドルマは、大騎士を目指す風変わりな少女エリカと出会う。 騎士は強いのでくさい息も我慢できると、エリカはドルマを仲間にする。 新の仲間を得たドルマは、数々の冒険の中、己の力を自覚した。 それは受けた敵の技をラーニングする、伝説の職業青魔道士。 敵が強ければ強いほどドルマも強くなる。 どんな危機でも、エリカの笑顔があれば頑張れる。 今ここに幕開く、ドルマの充実冒険ライフ! ……は、傍からは新たなる英雄の道行にしか見えなかったりするのだ。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

処理中です...