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終末の王編

第156話 帝都からのフードコート

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 途中、支配の騎士と遭遇した。
 だが、死の騎士が俺たちと一緒だったので、これは仲間だなと判断したらしい。

 そのまま上空を通り過ぎていった。
 自動的な機械みたいなのは、融通が効かないよな。

 やがて帝都が見えてくる。
 ガラスのように透き通った塀を持つ都市で、ガラスの中に魔導機械みたいなのが漂っている。
 多分機械ではなく、フォーホース帝国なりの魔法で作られたゴーレムみたいなものなんだろうが……。

「魔力切れで止まっちゃったんだな。魔力の星が落ちたのは本当に大変なことなんだなあ」

 俺はしみじみと呟いた。
 世界は変わってしまっているのである。

 スリッピー帝国を出た直後に、このフォーホース帝国に来ていたら、もっと地獄みたいな状況であったことだろう。
 それが今では、四騎士以外に邪魔するものがおらず、帝都の守りもザルである。

 ほら、普通に門から入れた。

 死の騎士が一緒なのでフリーパスになっただけかも知れないが。

「あれっ、死の騎士だ」

「どうしたどうした」

 ちょっと偉そうな騎士がバタバタ走ってきた。 
 全身を魔法の武装で包んでいる。
 魔法が使えなくなっても、これならそれなりの戦闘力を発揮できるであろう。

「死の騎士の馬が壊れてな。修理してもらうために連れてきた」

「死の騎士を連れてきた!? こいつは千年以上前に作られた自動防衛装置で、我々の言うことは聞かないはずだが……」

 ほうほう、つまり、四騎士はこの時代の人間の技術とは違うやり方で作られているわけか。
 だが、馬はそうではなかったらしい。

「馬は直せるな」

「連れてきてありがとう。どこの村の者だ? 礼金を出そう」

「マジで? あ、俺は国外から来た異世界召喚者なんだが」

「はあはあ、国外から来た異世界召喚者…………………………なにーっ!!」

 騎士たちがぴょーんと飛び上がって驚いた。
 凄いリアクションだ。

「そ、そ、それは本当か!」

「本当だぞ。カオルン、翼広げて」

「分かったのだー!」

 真・カオルンに変身だ!
 こうなると、カオルンは髪色までちょっと変わるのである。

「それにほら、ハーフエルフ」

「ハーフエルフですよー」

 ルミイが耳を引っ張ってみせた。

「こっちの馬はアンデッドホースだし」

「ぶるる」

「彼女はルサルカ神の聖女だ」

「これ、聖印だよ」

 証拠を突きつけたら、二人の騎士は真っ青になった。

「た、大変なことになってしまった! 我らを守る四騎士が機能していないということではないか! これは皇帝陛下に報告せねば……! ああいや、あの御方はそういう役割なだけの人だから無駄だ……」

「いや待て! 既に侵入を許してしまった! どうしよう……。お、お前たち、害意とかは無いか? 無いよな? 無いと言ってくれ」

「無いぞ」

 なんか哀れになって来たので、無いことを正直に伝えた。
 すると彼らはあからさまにホッとする。
 大丈夫だろうか、このお人好しぶりで。

「マスターがらしくない感じで心配してますね」

「だってアカネル、こんな人のいい連中、この世界に来て初めて見たんだぞ。そりゃあ心配になるよ。悪意しかない地獄みたいな世界かと思ってたのに」

「恐らく、異世界召喚者と平行世界の結界と四騎士による守りがあまりにも万全であったため、外部からの侵入を許さないままずっと平和だったのでしょう。平和だと、人間は良からぬことを考えるものですが、何らかの方法でそれも克服したものと思われます」

「ある意味理想郷だったわけか。鎖国の先に真に平和な世界を作ってたんだなあ」

 俺は大変感心した。
 二人の騎士はわあわあと言い合っていたが、すぐに結論が出たらしい。

「一応皇帝陛下にお伝えしてくるから、ちょっとそこで待っててくれ!」

「私がお前たちを食事ができる場所まで案内する。着いてきてくれ」

 というわけで。
 俺たちは騎士に先導され、食事処までやって来た。

 お店がある。
 パッと見は広い庭園みたいな作りをしていて、そこここに店舗が立ち並び、庭園内の好きなところに座って買ってきた食事をできるようになっているのだ。
 フードコートじゃん。

 ちなみに、食べ物は全て無料。
 というか、帝都はお金が流通してないらしい。

 みんな仕事をするために仕事をしており、あらゆるサービスもインフラも無料なのだ。
 人の善意だけで回っている国……!!

「なんだここ。本当にパルメディアなのか? こんな国が存在してていいのか?」

「通過してきた外部の街もお金は存在しましたが、よく考えたら全ての商品が同じ値段でしたね……」

 アカネルがヘルプ機能で、過去の映像を出してくる。

「フォーホース帝国は完全に共同体としての国家になっていて、個々人の利害を排するシステムを作り上げています。平和で、争いがなく、変化もありません。その代わり、進歩することもありません」

 つまりこの国、何百年も今のままの姿で、何一つ変わらないまま続いているというわけだ。
 一体全体、なぜこういう国を作ったのか。
 何か意図があったりするのか。

 そして死の騎士の馬を修理する手段が残っているのかどうか……。
 考えていたら腹が減ってきたので、食事にする。

 発酵させないナンみたいなパンと、香辛料で焼いた肉と、野菜の入ったスープが出てきた。
 この国の食べ物のレパートリーはさほど多くないようで、これ以外には豆のスープと肉のスープがあるだけらしい。
 これもまた、何百年も全く同じレシピで作り続けているのだとか。

 はー。
 気が遠くなる。
 良し悪しは別として、俺はカルチャーショックを受けた。

 なお、死の騎士の馬はすぐに直った。
 修理技術すら、何百年も変わらずに継承され続けていたらしい。

 死の騎士は元気に空へと飛び立っていったのである。
 ラバーが空に向かって「ひひーん」と鳴くと、空からは『キュイーン』と機械馬の声が返ってきたのだ。
 友情はあった……!

 なんか感慨深いものを感じるなあ……。

「あれ破壊したの、マナビだからね?」

 ナルカが突っ込んだ。
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