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終末の王編

第155話 プログラム書き換えとウマの友達

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「戻ってきたぞ」

「おかえりなさーい。マナビさん、あれどうするんですか?」

 死の騎士は上空で、今まさにその権能を使おうとしている。
 だが、あの死をばらまく能力を、不可視の虫によるものであると俺が規定してしまっている。
 言うなればナルカの力の上位互換なんだが、形がはっきりしてしまえばどうとでも対応できるのだ。

 問題は……。
 みだりに四騎士を破壊すると、フォーホース帝国の守りが薄くなることだなー。

 街の連中を見ていると明らかに善良である。
 これはつまり、バーバリアンと接すること無く、平和に内部で暮らしてきたからではないのか。
 今まで見てきた魔法使いたちの中で、一番性格が良さそうまである。

 流石に善良な連中がひどい目にあうのは俺の好みでは無いし、なんだかんだ言って結構な量の水とかを提供してもらったので、死の騎士完全破壊は勘弁してやろう。

「……ということだ」

「おー、そんなことできるのだ?」

「カオルンの疑問も最もであろう。だが、俺のチュートリアルかつチート能力は敵を倒すためのものではないぞ。その状況を切り抜けるためのもので……」

 さっき、ナルカとチートモードをやって来た中で、俺は色々考えていたのだ。

「チートモードの派生で行けるだろう。死の騎士を無力化するぞ。ナルカ、虫の撃退は頼む」

「任せな! 練習したんだから楽勝さ!」

 ナルカが走り出す。
 一見、何も無いところに向かってダーツを放っている。

 だが、ダーツが向かった場所で火花が飛び散る。
 不可視の虫みたいなものが、ダーツで貫かれて破壊されているのだ。

「ほい、カオルン、俺を空に連れてって」

「分かったのだ!」

 カオルンに後ろから抱きつかれて、空に持っていってもらう。

 死の騎士はすぐに反応し、こっちに多分虫を差し向けているであろう。
 だが、これは全てナルカが撃ち落とす。

 おっ、ルミイが真似して風の精霊魔法を使っている。
 彼女には見えてないはずだが、精霊が融通を効かせて虫に魔法を当ててくれているのだな。

 俺は無事だ。
 そして、死の騎士は無表情なまま近づいてくる。

 あれは感情とかプログラムされてない、防衛システムみたいなもんだなー。
 じゃあ、どこで停止するのか。

「チートモード」

 チートモード世界に突入した。
 で。

「ヘルプ機能。どこをぶっ叩く?」

『飛翔能力はホースゴーレムが担当しています。落下した衝撃で死の騎士は破壊され、自動修復までしばらく掛かります』

「おう、そうか。じゃあ、こいつに俺たちは敵じゃないってプログラムできる?」

『可能です。手順を表示します』

 オッケー。
 俺は何度かカオルンと練習をした後、元の世界に戻る……こらこらカオルン! 誰もいないからってチュッチュするのはおやめなさい!
 昨夜たくさん励んで賢者になっていなければ危ないところだった。

 戻ってきた俺である。
 死の騎士を完全破壊してしまわないよう、優しく馬の首をネクタイブレードで刎ねた。
 落下する死の騎士。

 大地にぶつかって、バラバラになった。

「すっげえ壊れたんだけど、あれ大丈夫?」

『魔力を含んだ攻撃で破壊されない限り、再生します。落下ダメージは魔力を持っていませんので再生します』

「そんなものか……」

 落ちた死の騎士の近くに着地し、俺はそいつをつついた。

「プログラムは」

「あ、当機能が担当します」

 アカネルがトコトコ走ってきた。
 そして、彼女の指先から漆黒の光ファイバーみたいなのが飛び出した、ガラス質のものに変化する。

「こういうの見てると、アカネルは機械なんだなーって分かるな」

「当機能はいつも機械だって言ってます」

 会話しつつ、アカネルは死の騎士の頭に指先を突っ込んだ。
 ビクンと動く死の騎士の頭。

「書き換えます。……書き換えました」

「早いなー。2秒くらいで終わった」

「アカシックレコード直結ですからね。これくらいは簡単です。ついでに、当機能たちを支援するようにしておきました」

「それを2秒で! アカネルのメインステージはこっちだったんだなあ。今までは戦場があまりにも悪すぎた」

「お分かりいただけましたか!」

 アカネルがニコニコする。
 みんな戦場が違うのだなあ。
 ゴーレムとかみたいな、人造物がたくさん出てくる状況なら、アカネルはまさに無敵だろう。

 しばらくすると、死の騎士のバラバラだったボディが動き出して、自動的にくっついた。
 起き上がった死の騎士は、俺たちに向かって跪く。

「まあまあ、立ち上がって楽にしてくれよ」

 死の騎士は頷き、立ち上がった。

「愛想がないな……。こいつ、もしかして知性が無かったりする?」

「ありませんね。自動機械の類です。知性のようなものを付与されていません」

「そりゃあ味気ないなあ」

「神が知性を強化したラバーや、マスターの権能とアカシックレコードが組み合わさって生まれた当機能は例外中の例外です。基本的にこんなものです」

 俺が例外に触れすぎていたらしい。
 とりあえず、死の騎士の馬が壊れてしまったので、俺はヘルプ機能を用いて適当な感じで直した。
 ヘルプ機能には組み立て説明書まで出てくるんだな。

「飛べなくなってしまったな……。なんとなく首を飛ばしたのが失敗だった。よし、死の騎士ついてこい。帝都に行って馬を修理しよう」

 コクリと頷く死の騎士。
 馬を走らせてトコトコとついてきた。

「ぶるる!」

『キュイーン』

 むっ!
 ラバーが馬仲間ができたことを、ちょっと喜んでいるようだ。
 機械の馬に鼻先を寄せて、つんつんしている。

 機械の馬はあくまで機械なので、全く反応はしないが……。 
 あ、いや、反応はしてるな。
 ラバーの方向に首を向けて、『キュイーン』とか音を立てた。

「ひひーん」

「おー、ラバーが喜んでいる。友達を見つけてしまったなあ」

 こうして死の騎士まで従えて、俺たちは一路帝都を目指すのである。

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