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セブンセンス法国編

第117話 休息・プレゼン・女子部屋探訪

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 一日の濃度が高かったせいで気付かなかったが、よく考えたらセブンセンス到着二日目なのである。
 すっかり日も暮れて、仕事どころではなくなった。

 夜こそ行動しやすいという説もあるが、俺は生身の人間なので、適切な休息を取らねばならない。
 知識神の神殿の休息所を貸してくれるという話があったので、ありがたくその好意を受け取ることにする。

 個人的には、慈愛神教団が運営する歓楽街で、えっちなお店に行ってみたかったが。
 今やると、アカネルに絶対押し倒される。
 俺は流される自信があるぞ!!

「はい、部屋は男女別々でーす」

「なんでですかー!!」

 アカネル、怒りの跳躍である。
 飛び跳ねて抗議する彼女を、色々察したナルカが途中でキャッチした。

「はーなーしーてー!」

「あと二人と一緒じゃないと色々まずいんだろ? あんただって抜け駆けしたら、後々人間関係気まずくなるよ?」

「うっ、冷静になって考えてみれば確かにそうです。仕方ありません。ここはルミイとカオルンのために我慢します」

「ナルカのファインプレーだ。大人だなあ……」

「あたいもまあ、教団の聖女だし。みんなの仲を仲裁したりとかしょっちゅうだからねえ」

 若いのに苦労人だった。
 こうして、安心できるところにアカネルを預け、俺とガガンで男部屋である。

 ベッドが二つ並んでいるだけの簡素な部屋で、小さい窓が二つ開いている。
 ランプを借りてきたので、これを明かりとして寝る前に今後について話し合うこととする。

『俺様も参加しよう。明日からの行動だな』

 オクタゴンが実体化し、ベッドに腰掛けた。
 ガガンは床に直接座っている。
 小さいベッドだと寝心地がよくないから、床に寝るんだそうだ。

「知識神の協力は得たが、戦神や技巧神はどうだ?」

『いかんな。連中は頭が硬い。向こうに神殿を設置したから、俺様が直接交渉できるようになったわけだが……。神殿を取り除け、お前も排除してやる、の一本やりだ。現状を理解していないな』

「なるほど、そいつは頭が痛いなあ」

「何を悩んでるんだ。相手が同意する気が無いんなら、ぶちのめして話を聞く気にしてやればいいんだ」

「それが一番簡単なんだが、そうするとほら、連中は意固地になりそうでな」

 戦神に技巧神、ここまでルサルカ教団と戦い続けて来ているし、手を結ぶ気は無いということなのか。
 それとも……。
 考えていても始まらないな。

 明日は彼らの様子を探ることにしよう。

「あいつら、ダラダラしてたらバルク王が攻めてきて滅ぼされるのに、よくやってるぜ」

 ガガンは理解できない、とばかりに肩をすくめた。

「それに、魔法帝国を狙っているのは凍土の王国ばかりじゃない。オレたちみたいなバーバリアンの集まりは、それこそどこにでもあるんだ。セブンセンスから海を隔てたところには、バイキングと呼ばれるバーバリアンが暮らしているし、ワンザブロー帝国の近くにはブッシュマンと言うバーバリアンがいる」

「世界中バーバリアンだらけじゃん。ヘルプ機能。魔法帝国の人口とバーバリアンの人口どっちが多い?」

『魔法帝国の人口は合計で125万人、バーバリアンの人口は1093万人です』

「桁が一つ多いじゃん」

 それはもう、魔法が消えちゃったら数の力で押しつぶされるのよ。
 この現実をプレゼンするしかないな。
 そしてその前に、戦神や技巧神が話を聞く態勢に持っていかねばならない。

「カチコミという名のプレゼンだな。正面から強く当たって、後は流れで進めて戦神そのものを呼び出そう」

『話が早いな。そうしよう。俺様もまだるっこしいのは苦手だ』

「いいないいな! やっぱ力押しだよ!」

 男たちの意見はまとまったのである。
 このあたりを伝えるため、女子部屋をノックする。

 そうすると、ほぼすっぽんぽんのナルカが出てきた。

「なんだい」

「ヒャアー」

 突然のことで、衝撃に飛び跳ねる俺。

「ナルカいけません! マスターには刺激が強すぎます! あー、おっきしてしまいました」

「大丈夫、俺は前かがみでも理性を保てる……。ナルカさんはあれかな? 裸で寝るタイプかな?」

「そうだよ? この方がぐっすり眠れるだろう? それで、何か用事かい? 夜這いだって言うならぶっ飛ばすよ!」

「明日からの活動についてお話を……」

「そうなのかい。じゃあお入りよ」

「ナルカさん、何か羽織ってもらえないかね……。俺の理性が削られていく……」

「仕方ない男だねえ……」

 雑にタオルケットみたいなのを体に巻きつけるナルカ。
 本当に雑に巻いてるんで、チラッチラ見える。
 うおお、気が散る。

「マスター! 当機能が目隠ししますから冷静に話して下さい!」

「そうするとアカネルのおっぱいが背中にめっちゃ当たるんだが」

「これはいいんです」

 いいのか。
 ともかく、戦神と技巧神に真っ向から勝負を仕掛けて、力を見せて話を聞いてもらうモードにするという案。
 これは分かりやすかったようで、ナルカも頷いていた。

「なるほどねえ。だけど、どうして最初からやらなかったんだい?」

「話し合いや裏から手を回して解決できるなら、そっちの方が楽だろ。それに知識神を懐柔できたから、背中を衝かれる心配がなくなった」

「なるほどだねえ……。あんた、頭も回るんだね」

「マスターはもともと、戦術や策謀を巡らせるタイプです! たまたま、自分が矢面に立たないと威力を発揮しない能力を得たから、自分で戦ってるだけで」

 アカネル、俺のことをよく理解してらっしゃる。
 そう、理想としては、責任を負わない軍師タイプでありたい俺なのである。

 だが、残念ながら正面切って戦い、あらゆる責任を負って各地のトップと正面切って渡り合う将軍タイプをやらざるをえない状況なのだ!
 今回もそうだろうな。
 オクタゴンを前面に出したらこの土地がアビサルワンズまみれになるし。

「よし! そうと決まれば話は早いね!」

 ナルカがパンっと手を叩いた。

「早く寝て、明日に備えようじゃないか! あんた、やるねえ。見直したよ。ま、アンデッドのことを大切に考えてくれてる時点で、並の男じゃないってあたいは思ってたけどね」

「むっ、ナルカから強い好意を感じます!」

「やめな! あたいの内心を勝手に代弁しないでおくれアカネル!」

 おお、ナルカが慌てて立ち上がった。
 そしてはらりと落ちるタオルケット。
 目の前に全裸。

「ウグワーッ!!」

「あっ、指の隙間からマスターがナルカの裸を凝視していました!!」

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