召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
18 / 196
ワンザブロー帝国編

第18話 呉越同舟とはこの事か

しおりを挟む
 ワンザブロー帝国の使節だと、どうして分かったか?
 それは、俺が召喚された時、あの空間にいた連中と似たような格好をしていたからだ。

 アイナシティは実にファンタジー世界している場所で、人々の服装はまあまあ簡素でシンプル。
 不自然なくらいおしゃれしている人間がいないのは、アイナよりも着飾ってはいけないとか、そういうルールがあるんだろう。
 お化粧とか髪型を凝ったりすらしてなくて、みんな似たような姿をしてるからな。

 つまり、アイナシティにおいて、最も映えるのはアイナでなくてはならないということだ。
 あの女、他人を自分の承認欲求を満たすための『いいね』としか思ってないんじゃないか疑惑がある。

 それに対して、眼の前にいる男たちはワンザブロー帝国特有の、自己主張が激しい魔法のローブを纏っている。
 なんか厨二感あふれるルーンが光り輝くローブは、なかなかカッコいい。
 俺も欲しい。

「お……お前はまさか……!!」

 俺とルミイを見て、男たちは震え上がった。

「滅びの塔を破壊してどこに行ったかと思ったら、こんなところにいたのか!」

「いたのだ」

 俺は頷いた。

「なんだかマナビさんが異常に落ち着いているので、わたしも落ち着いてきちゃいました……。あの、後ろにちょっと隠れていいです? わたし、この人たち苦手なんですけど」

「どうぞどうぞ」

 ということで、俺の後ろにササッと隠れるルミイなのだ。
 だが、シルエットがボリュームのあるふわふわヘアとふわふわローブ、横に伸びたとんがり耳なので、全然隠れられていないのではないか。
 ルミイを気にする俺は、すっかり目の前の使節を忘れてしまっていた。

「おい! おーい!」

「あっ、悪い悪い。意識が別の方向いてたわ」

「なんという図太さだ……」

「だが、これまでの召喚者で随一の図太さだからこそ、滅びの塔を突破できたとも言える」

 使節たちが何か言っている。
 これはもしや、こいつらはアイナと帝国の間を取り持つ役割を持っていて、しかし交渉が決裂したとか何かあったのではないか。

「俺たちを利用しようと言うのだな」

「な、なにぃーっ!!」

 俺がカマを掛けたら、奴らは一斉にびっくりした。

「あ、あいつの能力は心を読めることだったのか!」

「それで滅びの塔を……! なるほど、納得だ!」

 勝手に勘違いしてくれている。
 だが、こいつらの態度から状況は完全に理解した。
 使節団はしくじったのだ。

 で、アイナが敵に回った可能性がある状況になっている。
 使節はそれに対する方策も思いつかず、宿泊施設まで戻ってきたということではないだろうか。

 なるほどなるほど……。
 使えるなあ……。

 俺はニヤリと笑った。
 使節団がビクッとする。

「なんて邪悪な笑みだ……!」

「だが、アイナの領域で平然としていることを考えると、頼れるのはこの男しかいない……!」

「頼る!? 違うぞ、利用してやるのだ! 高貴なる魔法階級の我々が、魔力も持たぬ出来損ないの異世界召喚者などにおもねる必要は……」

 なんかムカつくことを言ったヤツがいたので、こいつは囮にしてひどいめに遭わせるとしよう。

「マナビさん、何か考えつきました?」

 ルミイが俺の肩に顎を乗せて来る。
 とんがり耳が俺の耳につんつん当たるのだ。
 これはくすぐったくて気持ち良い。

「ああ。今までは俺たちしかいなかったけど、こいつらのお陰でチュートリアルで試せるカードが増えた。これは攻略できちゃうなー」

「今、すっごく悪そうな声してますよ! でもそれって、マナビさんが勝てそうな時ですもんねえ」

「分かってこられましたか」

 そういうことになり、俺は帝国の使節連中と一時和解することにした。
 打倒アイナのためである。

 使節たちの持ってきた食料も、まとめてルミイが料理する。
 大きな鍋に、グツグツと煮込まれた極彩色の何かが出てきた。

 これを各々、皿に盛って食う。
 半固形状のような、繊維質のような……。

 うおっ、不思議な香りと不思議な味と不思議な食感!
 だが食えるぞ、もりもり食える。

 言うなれば……ちょっと漢方っぽい?

 帝国の連中は皆、首を傾げながら料理を食っていた。
 向こうにも存在しないタイプの食べ物だったか。

「エルフ流なんですよ。ハーブが無かったので魔法薬で代用しました」

「ほうほう。その魔法薬とは……」

「魔力回復の魔法薬です。料理に使うのと同じハーブが入ってるんですよ!」

「そうだったのかー」

 だけど、そのハーブ以外に余計なのが絶対入ってたよな。
 だからこそ、この不思議な味なのだ。

 ルミイはかなり大雑把なようだ。
 でも、ギリギリ食える味を作る辺りセンスいいぞ。

「俺は支持する!」

「やったあ!!」

 ルミイがガッツポーズをして大変カワイイのだ。
 よし、勝つぞ。
 このカワイイハーフエルフを、アイナとやらの下僕にするわけにはいかない。

 完膚なきまでに勝つ。

「じゃあ、腹も膨れたところでアイナについてとか、あの場にいたヘカトンケイルについて色々聞きたいんだけど」

「あ、ああ。情報提供しよう」

 帝国の使節たちが口を開き始めた。
 本気でアイナ対策を俺に任せるつもりだな。
 帝国は、あの女一人に打つ手なしなのだ。

 まあ、崩壊寸前の魔法文明の、分裂した七帝国の一つだもんなあ。
 それが最強の武器であるヘカトンケイルまで奪われたら、確かに対策は無いかもしれない。

 ……ヘカトンケイル……?
 いいな、これも使える。

 今までは与えられた状況を、チュートリアルモードで練習してクリアしていっていたが、今後は自分がやりやすい環境を作って、そこからチュートリアルするのがいいのではないだろうか。

「ヘルプ機能」

『なんでしょう』

「俺が作り上げた環境も、チュートリアルで練習可能なの?」

『可能です。その環境下で起こる状況も全てシミュレーションすることができます』

「いいね! じゃあそれで行こう」

 勝ち筋が見えた。
 明日、アイナを倒すことにしよう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

処理中です...