召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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ワンザブロー帝国編

第18話 呉越同舟とはこの事か

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 ワンザブロー帝国の使節だと、どうして分かったか?
 それは、俺が召喚された時、あの空間にいた連中と似たような格好をしていたからだ。

 アイナシティは実にファンタジー世界している場所で、人々の服装はまあまあ簡素でシンプル。
 不自然なくらいおしゃれしている人間がいないのは、アイナよりも着飾ってはいけないとか、そういうルールがあるんだろう。
 お化粧とか髪型を凝ったりすらしてなくて、みんな似たような姿をしてるからな。

 つまり、アイナシティにおいて、最も映えるのはアイナでなくてはならないということだ。
 あの女、他人を自分の承認欲求を満たすための『いいね』としか思ってないんじゃないか疑惑がある。

 それに対して、眼の前にいる男たちはワンザブロー帝国特有の、自己主張が激しい魔法のローブを纏っている。
 なんか厨二感あふれるルーンが光り輝くローブは、なかなかカッコいい。
 俺も欲しい。

「お……お前はまさか……!!」

 俺とルミイを見て、男たちは震え上がった。

「滅びの塔を破壊してどこに行ったかと思ったら、こんなところにいたのか!」

「いたのだ」

 俺は頷いた。

「なんだかマナビさんが異常に落ち着いているので、わたしも落ち着いてきちゃいました……。あの、後ろにちょっと隠れていいです? わたし、この人たち苦手なんですけど」

「どうぞどうぞ」

 ということで、俺の後ろにササッと隠れるルミイなのだ。
 だが、シルエットがボリュームのあるふわふわヘアとふわふわローブ、横に伸びたとんがり耳なので、全然隠れられていないのではないか。
 ルミイを気にする俺は、すっかり目の前の使節を忘れてしまっていた。

「おい! おーい!」

「あっ、悪い悪い。意識が別の方向いてたわ」

「なんという図太さだ……」

「だが、これまでの召喚者で随一の図太さだからこそ、滅びの塔を突破できたとも言える」

 使節たちが何か言っている。
 これはもしや、こいつらはアイナと帝国の間を取り持つ役割を持っていて、しかし交渉が決裂したとか何かあったのではないか。

「俺たちを利用しようと言うのだな」

「な、なにぃーっ!!」

 俺がカマを掛けたら、奴らは一斉にびっくりした。

「あ、あいつの能力は心を読めることだったのか!」

「それで滅びの塔を……! なるほど、納得だ!」

 勝手に勘違いしてくれている。
 だが、こいつらの態度から状況は完全に理解した。
 使節団はしくじったのだ。

 で、アイナが敵に回った可能性がある状況になっている。
 使節はそれに対する方策も思いつかず、宿泊施設まで戻ってきたということではないだろうか。

 なるほどなるほど……。
 使えるなあ……。

 俺はニヤリと笑った。
 使節団がビクッとする。

「なんて邪悪な笑みだ……!」

「だが、アイナの領域で平然としていることを考えると、頼れるのはこの男しかいない……!」

「頼る!? 違うぞ、利用してやるのだ! 高貴なる魔法階級の我々が、魔力も持たぬ出来損ないの異世界召喚者などにおもねる必要は……」

 なんかムカつくことを言ったヤツがいたので、こいつは囮にしてひどいめに遭わせるとしよう。

「マナビさん、何か考えつきました?」

 ルミイが俺の肩に顎を乗せて来る。
 とんがり耳が俺の耳につんつん当たるのだ。
 これはくすぐったくて気持ち良い。

「ああ。今までは俺たちしかいなかったけど、こいつらのお陰でチュートリアルで試せるカードが増えた。これは攻略できちゃうなー」

「今、すっごく悪そうな声してますよ! でもそれって、マナビさんが勝てそうな時ですもんねえ」

「分かってこられましたか」

 そういうことになり、俺は帝国の使節連中と一時和解することにした。
 打倒アイナのためである。

 使節たちの持ってきた食料も、まとめてルミイが料理する。
 大きな鍋に、グツグツと煮込まれた極彩色の何かが出てきた。

 これを各々、皿に盛って食う。
 半固形状のような、繊維質のような……。

 うおっ、不思議な香りと不思議な味と不思議な食感!
 だが食えるぞ、もりもり食える。

 言うなれば……ちょっと漢方っぽい?

 帝国の連中は皆、首を傾げながら料理を食っていた。
 向こうにも存在しないタイプの食べ物だったか。

「エルフ流なんですよ。ハーブが無かったので魔法薬で代用しました」

「ほうほう。その魔法薬とは……」

「魔力回復の魔法薬です。料理に使うのと同じハーブが入ってるんですよ!」

「そうだったのかー」

 だけど、そのハーブ以外に余計なのが絶対入ってたよな。
 だからこそ、この不思議な味なのだ。

 ルミイはかなり大雑把なようだ。
 でも、ギリギリ食える味を作る辺りセンスいいぞ。

「俺は支持する!」

「やったあ!!」

 ルミイがガッツポーズをして大変カワイイのだ。
 よし、勝つぞ。
 このカワイイハーフエルフを、アイナとやらの下僕にするわけにはいかない。

 完膚なきまでに勝つ。

「じゃあ、腹も膨れたところでアイナについてとか、あの場にいたヘカトンケイルについて色々聞きたいんだけど」

「あ、ああ。情報提供しよう」

 帝国の使節たちが口を開き始めた。
 本気でアイナ対策を俺に任せるつもりだな。
 帝国は、あの女一人に打つ手なしなのだ。

 まあ、崩壊寸前の魔法文明の、分裂した七帝国の一つだもんなあ。
 それが最強の武器であるヘカトンケイルまで奪われたら、確かに対策は無いかもしれない。

 ……ヘカトンケイル……?
 いいな、これも使える。

 今までは与えられた状況を、チュートリアルモードで練習してクリアしていっていたが、今後は自分がやりやすい環境を作って、そこからチュートリアルするのがいいのではないだろうか。

「ヘルプ機能」

『なんでしょう』

「俺が作り上げた環境も、チュートリアルで練習可能なの?」

『可能です。その環境下で起こる状況も全てシミュレーションすることができます』

「いいね! じゃあそれで行こう」

 勝ち筋が見えた。
 明日、アイナを倒すことにしよう。
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