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スローライフから逃げられると思うな編
第65話 香草焼きとちょっぴり迷宮探索
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『うっま』
「何食べても美味しいって言ってくれるの嬉しいけど、キャロルの感想は参考にならんな」
「ちょっと筋っぽいけど、お肉の切り方がいいのかな? きちんと噛み切れて後味さっぱりだよね」
『うむ、ジャイアントバットというものは脂が少ないのですな。肉の臭みは香草で消され、凝縮された旨味だけを味わえる。これはなかなか満足度が高いですな。恐るべし、ジャイアントバットの香草焼き』
『オー、ちょっと味がストロングですねー。これだけだとあまりたくさん食べられませーん』
「おお、そうそう。これ、主菜だけど味を和らげる意味で、米やパンが必要だよな」
うな重を作ると自動的に米が出現するから失念していたが、独自にパンや米を作れるようにしておかねばならんな。
『ピピー』
ポルポルが肉を砲口から食べて、飛び跳ねながら喜んでいる。
「ポルポル的にはちょうどいい味だったか。子どもたちが大好きな味かも知れない」
『パワーが満ちるみたいですな』
ここは既に建物の中……つまり迷宮の入り口なのだが、入ってこれない魔人たちがぎゅうぎゅうに固まっている。
俺たちを睨みつけているのだが、この顔を見ながら肉を食うのはなかなか美味い。
『あ、あいつらなんて度胸だ……』
『俺たちに見張られ、出ることも叶わない迷宮に押し込まれる状況で楽しそうに飯を食ってやがる』
「バカめ、教えてやろう」
悠然と魔人たちに近づく俺。
「俺はスローライフをしているだけだ。その途上にお前たちが現れただけなのだ……!! ライフイズ、スローラーイフ!!」
『な、なんて力ある言葉だ!』
「むしゃあっ」
『美味そうに肉を食ってやがる! 恐ろしい胆力だ!』
戦慄する魔人たち。
だが、この場を離れて俺たちが逃げ出しては大変だということで、監視しているしかないのだ。
「じゃあ、俺たちは迷宮探索に行くので」
『自分から迷宮に!?』
『死ぬ気か!』
『考え直せ!』
「出てこれないようにしてるのはお前らじゃないか。まあ、世の中はままならんものだ。さらば」
『引き返せー!』
『戻ってこーい!』
『おいおいおい、あいつらがまかり間違って迷宮を攻略したら大変なことになる! 我ら、廻天将軍様に殺されるぞ!』
『あわわわわ』
向こうも向こうで大変だな!
強く生きて欲しい。
「見送りみたいになっちゃったねえ」
『手出しできませんからな、あやつら。創造神の嫌がらせが効果を発揮していますな。……そう言えばこれ、タマル様二度目の迷宮ではありませんかな』
「ほんとだ。もっとたくさん潜ってる気になってた」
『なまじな迷宮よりも洒落にならない状況を次々くぐり抜けて来ましたからな』
「エルダードラゴンやばかったもんな。あ、退廃帝と逢魔卿の領内にも迷宮あるんだろ? 行ってないじゃん……」
『ほんとですな。そっちも攻略していかねばですなあ』
迷宮は確か、攻略するたびにこの世界を兄弟神の影響から解き放つ効果があるのだ。
つまり、人間が生活しやすい平和な世界……スローライフワールドがやってくるようになる。
俺が迷宮を踏破せぬ理由はない。
「じゃあスポットライトつけるねー。音楽かけるねー」
ノリノリのロックミュージックとともに、強烈な光で通路を照らしながら突き進んでいく。
ところがこの迷宮、以前に潜った大蟻地獄の迷宮とは勝手が違っていたのだ。
向こうは地の底だし、こっちは空の上。
同じはずがない。
例えば具体的には……。
「明るい!」
「明るい迷宮だなあ……。外の陽の光が普通に差し込んでくる……」
あちこちに隙間があって、光が入ってくるのだ。
左右にも可愛い窓がたくさん並んで……。
『これ、ポルポルの頭についているような砲台ですな』
「ほんとだ。迷宮というか空中要塞じゃないか」
砲台もちゃんと設置されている。
さすがに壊れていて、押しても叩いても、うんともすんとも言わない。
「ならばこれは回収だよな」
ひょいっとアイテムボックスに収納した。
『新しいレシピが生まれた!』
「きたきた! これは砲台が復活してしまうな。飛空艇が空中戦艦のようになってしまう……」
▶DIYレシピ
※ジャイアントクラッカー
素材:壊れた砲台
「……クラッカー……?」
一瞬、腑に落ちない心持ちになる俺。
だがすぐに理解した。
「スローライフに武器は不要。そういうことなんだな? よし、これは飛空艇に設置しよう。紐を引っ張れば相手をびっくりさせるくらいできるだろ。飛空艇の装備が充実したと言っていい」
『おっ、タマル様の中で完結しましたかな』
「したした。すぐ試してみたいな。だけど迷宮の攻略後かなこれは……」
馬車でパカポコと進むのである。
スポットライトは一応照らし、音楽も掛けているものの……。
「何も出てこないねえ」
「うむ、肩透かしなくらい何も来ない」
迷宮序盤、平和なものである。
なんでこんなに平和なんだ?
感じた疑問の答えは、すぐに判明した。
「あー、これは」
そこは、迷宮の大部分がぶっ壊れて、穴になっていたのである。
もちろん、穴の底には空と地上が広がっている。
「多分ここがあの遺跡があったとこだな。何かあって崩れ落ちて、デッドランドマウンテンに行ったんだろう。遺跡に歴史ありだなあ……」
「でもどうするの? これだと先に行けなくない?」
『この遺跡の入口は、ここで終わりということでしょうな。幸いほら、飛空艇がここから出られそうではありませんかな』
「だな。ジャイアントクラッカーを装備しつつ、また飛空艇に乗り込むか!」
ちなみに満腹になったキャロルは、爆睡していた。
どおりで静かなはずである。
▶DIYレシピ
ジャイアントクラッカー
「何食べても美味しいって言ってくれるの嬉しいけど、キャロルの感想は参考にならんな」
「ちょっと筋っぽいけど、お肉の切り方がいいのかな? きちんと噛み切れて後味さっぱりだよね」
『うむ、ジャイアントバットというものは脂が少ないのですな。肉の臭みは香草で消され、凝縮された旨味だけを味わえる。これはなかなか満足度が高いですな。恐るべし、ジャイアントバットの香草焼き』
『オー、ちょっと味がストロングですねー。これだけだとあまりたくさん食べられませーん』
「おお、そうそう。これ、主菜だけど味を和らげる意味で、米やパンが必要だよな」
うな重を作ると自動的に米が出現するから失念していたが、独自にパンや米を作れるようにしておかねばならんな。
『ピピー』
ポルポルが肉を砲口から食べて、飛び跳ねながら喜んでいる。
「ポルポル的にはちょうどいい味だったか。子どもたちが大好きな味かも知れない」
『パワーが満ちるみたいですな』
ここは既に建物の中……つまり迷宮の入り口なのだが、入ってこれない魔人たちがぎゅうぎゅうに固まっている。
俺たちを睨みつけているのだが、この顔を見ながら肉を食うのはなかなか美味い。
『あ、あいつらなんて度胸だ……』
『俺たちに見張られ、出ることも叶わない迷宮に押し込まれる状況で楽しそうに飯を食ってやがる』
「バカめ、教えてやろう」
悠然と魔人たちに近づく俺。
「俺はスローライフをしているだけだ。その途上にお前たちが現れただけなのだ……!! ライフイズ、スローラーイフ!!」
『な、なんて力ある言葉だ!』
「むしゃあっ」
『美味そうに肉を食ってやがる! 恐ろしい胆力だ!』
戦慄する魔人たち。
だが、この場を離れて俺たちが逃げ出しては大変だということで、監視しているしかないのだ。
「じゃあ、俺たちは迷宮探索に行くので」
『自分から迷宮に!?』
『死ぬ気か!』
『考え直せ!』
「出てこれないようにしてるのはお前らじゃないか。まあ、世の中はままならんものだ。さらば」
『引き返せー!』
『戻ってこーい!』
『おいおいおい、あいつらがまかり間違って迷宮を攻略したら大変なことになる! 我ら、廻天将軍様に殺されるぞ!』
『あわわわわ』
向こうも向こうで大変だな!
強く生きて欲しい。
「見送りみたいになっちゃったねえ」
『手出しできませんからな、あやつら。創造神の嫌がらせが効果を発揮していますな。……そう言えばこれ、タマル様二度目の迷宮ではありませんかな』
「ほんとだ。もっとたくさん潜ってる気になってた」
『なまじな迷宮よりも洒落にならない状況を次々くぐり抜けて来ましたからな』
「エルダードラゴンやばかったもんな。あ、退廃帝と逢魔卿の領内にも迷宮あるんだろ? 行ってないじゃん……」
『ほんとですな。そっちも攻略していかねばですなあ』
迷宮は確か、攻略するたびにこの世界を兄弟神の影響から解き放つ効果があるのだ。
つまり、人間が生活しやすい平和な世界……スローライフワールドがやってくるようになる。
俺が迷宮を踏破せぬ理由はない。
「じゃあスポットライトつけるねー。音楽かけるねー」
ノリノリのロックミュージックとともに、強烈な光で通路を照らしながら突き進んでいく。
ところがこの迷宮、以前に潜った大蟻地獄の迷宮とは勝手が違っていたのだ。
向こうは地の底だし、こっちは空の上。
同じはずがない。
例えば具体的には……。
「明るい!」
「明るい迷宮だなあ……。外の陽の光が普通に差し込んでくる……」
あちこちに隙間があって、光が入ってくるのだ。
左右にも可愛い窓がたくさん並んで……。
『これ、ポルポルの頭についているような砲台ですな』
「ほんとだ。迷宮というか空中要塞じゃないか」
砲台もちゃんと設置されている。
さすがに壊れていて、押しても叩いても、うんともすんとも言わない。
「ならばこれは回収だよな」
ひょいっとアイテムボックスに収納した。
『新しいレシピが生まれた!』
「きたきた! これは砲台が復活してしまうな。飛空艇が空中戦艦のようになってしまう……」
▶DIYレシピ
※ジャイアントクラッカー
素材:壊れた砲台
「……クラッカー……?」
一瞬、腑に落ちない心持ちになる俺。
だがすぐに理解した。
「スローライフに武器は不要。そういうことなんだな? よし、これは飛空艇に設置しよう。紐を引っ張れば相手をびっくりさせるくらいできるだろ。飛空艇の装備が充実したと言っていい」
『おっ、タマル様の中で完結しましたかな』
「したした。すぐ試してみたいな。だけど迷宮の攻略後かなこれは……」
馬車でパカポコと進むのである。
スポットライトは一応照らし、音楽も掛けているものの……。
「何も出てこないねえ」
「うむ、肩透かしなくらい何も来ない」
迷宮序盤、平和なものである。
なんでこんなに平和なんだ?
感じた疑問の答えは、すぐに判明した。
「あー、これは」
そこは、迷宮の大部分がぶっ壊れて、穴になっていたのである。
もちろん、穴の底には空と地上が広がっている。
「多分ここがあの遺跡があったとこだな。何かあって崩れ落ちて、デッドランドマウンテンに行ったんだろう。遺跡に歴史ありだなあ……」
「でもどうするの? これだと先に行けなくない?」
『この遺跡の入口は、ここで終わりということでしょうな。幸いほら、飛空艇がここから出られそうではありませんかな』
「だな。ジャイアントクラッカーを装備しつつ、また飛空艇に乗り込むか!」
ちなみに満腹になったキャロルは、爆睡していた。
どおりで静かなはずである。
▶DIYレシピ
ジャイアントクラッカー
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