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スローライフが攻めてきたぞーっ編

第3話 それゆけ、スケルトン軍団

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 到着したら、確かに村が焼かれているところだ。
 こりゃあいかん。
 俺の中にも正義感というものがある。

「ホネノサンダー、頼むぞ!」

『カタカタカタ!』

 駆けるホネノサンダー!
 荷馬車が大いに揺れて尻が痛い。
 村から飛び出してきた血まみれの男が、

「た、助けてくれえ! ぎゃあ! スケルトンの馬とスケルトン!」

 と叫んでぶっ倒れた。
 あ、そうだった。
 人恋しさからスケルトンを普通に仲間にしていたが、よく考えたらこいつらはモンスターだったな。

「大丈夫、俺は人間だ。何があった?」

「お、おお、あんたはネクロマンサーなのか……!? それでもいい、助けてくれ! 魔人旅団が……」

「うわあ強そうな名前」

 俺は一気に怖気づいた。
 そもそも俺は異世界に、スローライフをするために転生してきたのであって、戦うためではない。
 なんとか戦わずに済ませられないものか。

 考える俺の目の前、それも荷馬車の中に、突然輝くものが出現した。
 長方形をしており、その先端は斜めにカットされ、映像を映し出している。

 あっ。
 コンビニにある色々できる端末じゃんこれ。

 触れると、

『ゴッドモジュールへようこそ。ファーストアプローチでUGWポイントを付与します』
『ウグワーッ! ファーストアプローチをしました! UGWポイント100ptゲットです!』
『本日はどういった御用でしょうか?

▶ポイントで買物をする
 ポイントで召喚を行う』

「召喚?」

『ポイントを使って住人を召喚します。あなたは必要な媒介を持っていません』

「じゃあ召喚は無理か。買い物?」

『ポイントを使って便利なアイテムを買い物します』

「じゃあ、それで……。何があるかな……」


▶エーテルバスターキャノン 8000pt
 ふわふわベッド 250pt
 骨のベル 100pt
 レシピセット 300pt

 
「ベッド欲しいなあ。ふわふわベッドで」

『カタカタ!』

「分かってるぞ骨次郎! だが! 俺は! スローライフをしに来たんだ!! なに、戦力!? ならば骨を全部使って骨のベルにしてやる!!」

 ということでDIY開始である。
 カンカンやって、骨のベルを6つ作った。
 鳴らすと、骨三郎と骨四郎と骨五郎と骨六郎と骨七郎と骨八郎が出現する。

「よーし、行くのだ俺の軍勢!」

『カタカタ!!』

「やっぱりネクロマンサーなのでは……?」

 男の人に疑問を呈されつつ、俺は村に突撃したのだった。
 さて、魔人旅団とやらはどこだ。
 怖いなあ怖いなあ……と思いつつ馬車を走らせると……。

 い た !
 黒いマントに黒い兜を被った一団だ。
 異常に腕が肥大していたり、翼があったり、頭が二つあったりする。

 人じゃないでしょ。
 そいつらは、俺がスケルトン7体を率いてやってきたのを見て一瞬動きが止まった。

『スケルトンを率いている……。我らの知らぬ魔人侯か……!?』

 戸惑ってる戸惑ってる。
 魔人候とやらが何なのかは分からないが、多分こういう化け物どもの親玉みたいなものなんだろう。

「いかにも……」

 俺は荷馬車に立ち上がり、それっぽく返した。

『見た目が貧相では?』

『いや、魔人侯を見た目で判断してはいけないぞ。第二形態を持っているのだろう』

『なるほど……。一見して只人だが、只人がスケルトンを率いることは不可能。それも見よ。透けている』

『透けルトン、なんつってな』

 魔人旅団がよってたかって、ダジャレを言ったやつを殴った。
 あー、鼻血を吹いてぶっ倒れちゃったよ。

『半実体スケルトン……。スカルガイストに違いあるまい。ホースタイプもいる。もしや……あなたはこの地域を治める魔人侯か?』

「いかにも……」

 なんか喋ったら絶対ボロが出るので最小限の会話で片付けるぞ。

『やはり……。退くぞ。我らは遠出しすぎたようだ。羅刹侯爵に報告せねば。新たな魔人侯が降り立たれた……!』

 そう言うと、魔人旅団の面々はぞろぞろ引き上げていった。
 闇のような肌色をした馬に乗っているな。
 そいつが風のような速度で走る。

「骨、集合ー」

『カタカタ!』

 骨が集まってきた。

「良かったなあ……」

『カタカタ』

 みんな頷いた。
 ハッタリでどうにかなった。
 いやあ、良かった良かった。

 ばらばらと生き残った人間たちが出てくる。
 誰も彼も、なんか絶望した顔だ。

「そ、そんな……。せっかくここまで逃げてきて村を作ったのに、新しい魔人侯だなんて」

「おしまいだ……。もう終わりだ……」

「みんな、逃げるんだ! もう少し先まで!」

「そ、そうだそうだ! 逃げるべ逃げるべ!」

 あー、村の人が逃げていってしまう。
 みんなこの状況に慣れていたのか、そそくさと荷造りをし、村を捨てていってしまった。

 よくよく見れば、村もテントの集まりではないか。
 ここもどこからか逃げてきた連中が作った、テント村だったんだな……。

『カタカタ!』

「えっ、骨次郎、食べ物見つけたのか!? えらい」

 他の骨たちは、また戦いが来たときのために骨のベルに戻っていった。
 これは荷馬車に搭載しておく。
 見つかった食料は、干し肉とビスケットと水だった。

 十分である。
 むしゃむしゃやっていたら、足元で、

『うう……』

 とかうめき声が上がった。

「あっ、お前はさっきダジャレを言って仲間にタコ殴りにされていた魔人!!」

『馬も持っていかれました。一人でこの怪我で外に出ると死ぬので、私を部下にしてくれませんか魔人侯様。ええと……名前は……』

「タマルだ」

『魔人侯タマル様! 我が名は魔人兵ラムザー。多腕型の魔人です。忠誠を誓います』

「あ、そう? じゃあ忠誠を受け入れます……」

 俺が頷いたら、響き渡る音声!

『ウグワーッ! 住人が増えました! 100ptゲットです!』

「なん……だと……!? ま、まさか俺は、新たな仲間を得て、着実にスローライフの道を歩んでいると言うのか……?」

 大変なことに気づいてしまった。

 UGWポイント
 150pt
 
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