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初夏な私の下準備編

第448話 混乱の世の中といつも通りのイカルガ伝説

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 各地で新型の魔将が出現しているみたいなのだ。
 これは日本だけではなく世界各国なんだけど、魔王が求人を出してるという噂がありまして。

 しかも、世界各国の物価に対応して、フルタイムで月20日働ければ悪くない手取りになるように計算された時給が支払われる。
 一体何が起こっているんだー!

「配信者はお金出してホイホイやらせるわけにいかないですもんねー」

 最近は私の専属マネージャーみたいになってるルンテさんが、お肉を焼きながら言うのだった。
 お母さんたるカナンさん、自由に日本中を飛び回っては旅先で配信したりダンジョン攻略しており、ルンテさんは最近忙しくて、ずっとついてまわることができない状態に!
 結果的に私の担当になって、こうやって時々打ち合わせでご飯に行くのだ。

「そうだよねえ……。配信者はその人の自主性に任せる……! あと、魔王が雇った魔将ってあれバイト魔将? 使い捨てじゃなく?」

「はづきさんがやっつけた魔将は人間に戻らなかったんでしょう? じゃあ使い捨てだと思います」

「はへー、悪辣ー」

「あっお肉焼けましたどうぞどうぞ」

「あっあっどうもどうも」

 本日はお高めの個室焼き肉に来ております!
 配信で稼いだお金は世の中に還元しないとね。

 外はしとしとと雨が降る中、いつでも焼き肉は美味しい。
 私はタレ、白飯に焼き肉をステップさせたあと、パクっと食べて、ご飯をもりもり食べた。
 至福~。

 この幸せな世界を絶対に守らねばならない。
 強く心に誓うのだった。

「はづきさん、これでカルビ終わりでーす。次何いきます?」

「豚とマルチョウ!」

「はーい」

 ルンテさんはバリバリ働いてくれるなあ!
 お若いからよく食べるので、私の食道楽に付き合ってくれるのだ。
 まあ八割くらい私が食べちゃうんだけど。

「勇者パーティは次の講師を招いて配信してますね」

「うんうん、いろいろなタイプを招いて配信者としてぐんぐん成長するコンテンツですから! これで世界の人達に愛着を持ってもらいつつ、魔王にぶつけようというですね」

「世界が用意した対魔王決戦兵器ですねえ。こちらの世界だからこそできたアクションだと思います。ファールディアでは無理でしたねえ。みんなバラバラで」

 人間族は、自分たちとは異なる亜人と呼ばれる種族を見下していたし、他の種族の人たちも人間を敵視したりしていたと。
 だから協力体制になることなく各個撃破されたし、人間は傲慢さに付け込まれて内側から滅ぼされた。

 もうファールディアには、純粋な人間は一人もいない。
 全部滅びたか、魔王の尖兵に変わり果てているらしい。

 大変だあ。

「おまたせしました、上豚バラとマルチョウ、シマチョウでございます」

「待ってましたー! あ、コーラお代わりお願いします……。あとご飯も大盛りで……」

「私はウーロン茶お代わりでー」

「かしこまりました」

 届いたお肉とホルモンをバリバリ焼き始める。
 ホルモンは濃いめのタレをつけて食べるのだ。

 あー、焼き肉はいつどうやって食べても美味しいのだ。
 お高いお店の焼き肉はこのように大変美味しいし、お安いお店の焼き肉もまた気軽に美味しさを楽しめて素晴らしいのだ。

「これこそ、この世界……地球は日本の強さですよね」

「おっ、いきなりどうしましたかルンテさん」

 お代わりのご飯が来たので、これに脂したたるマルチョウとシマチョウをしっかり焼いてタレをたっぷり付けてオンザライス!
 もりもりもりーっと食べる。 
 ホルモンは噛み切るタイミングが難しいと言うけど、味が消えた頃合いで飲み込むのがよろしい。

 美味しい美味しい美味しい。

「ご飯が美味しいのは強いですよ」

「確かにー!」

 おっと、箸でルンテさんを指し示しそうになってしまった!
 お行儀が悪い。

「それに娯楽がたくさんあるし、人と人の好みは違っていても、同じものが好きな人たちで国を超えて繋がりあえるでしょう? これこそ、魔王が想定していなかったこの世界の強さなのだと思います」

「なるほどー。あっ、ルンテさん、豚が焼けました……」

「ああ、これはどうもどうも、イカルガトップ配信者の方にお肉を分けてもらうとは」

 ルンテさんはご飯控えめで、お肉と野菜焼きで食べていくスタイル。

「パンがあれば乗せて食べるんですが、それだとお肉があまり食べられないんですよ」

「確かに~!」

「文化圏の違いというやつですねえ。でも葉っぱで巻いてお肉食べるの好きですよ。これもまたこの世界の強さですよね。様々な可能性を飲み込んでくれる。だから、たくさんの要素を合わせて魔王と戦えるんですよ」

「技術力と現代魔法の申し子ユーシャちゃん、プレイングと呪術とか個人スキルの結晶タリサちゃん、ケンタウロスのゼルガーさんとのコンビで種族を超えた関係の可能性モリトンさん、敵の力を取り込んで使うシェリーに、古代の魔法の力を蘇らせるスパイスちゃん。わけの分からないカイワレ。なるほどねえ」

「それを聞くと想像以上に勇者パーティはカオスですよね。このカオス、混沌こそが世界の強さそのものだと思います」

「確かに~! あ、お代わり注文するね」

 お肉は食べ終わった!
 ご飯もなくなった!

「はづきさんは、インターネットの申し子みたいなところが強さの源泉だと思いますねえ」

「えっ、私がインターネッツ!?」

 私だけなんか良く分からないところから生えてきたみたいじゃないですかー!

「世界のどこにでも行って、誰とでもつながって、世界中の応援を受ける希望の象徴!」

「あひー! あまり褒めないでください……!!」

「お待たせしましたー。ご注文をどうぞ」

「あっ、ではでは、ご飯大盛りとコーラと」

「私はウーロン茶とサンチュ追加。野菜焼きも」

「じゃあじゃあ、牛タンと豚タンと上ハラミとソーセージ……」

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