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初夏な私の下準備編

第446話 落下までの猶予は一時間!伝説

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 飛行船ダンジョンに入り込んだ私とバングラッド氏。
 お互い通常モードになって行動するのだ。
 私の武器はバーチャルゴボウ。

「なうファンタジーさんに作ってもらったのがスタートだけど、思えば幾多のバージョンアップを重ねてずっとともに戦ってきてるなあ」

※『最近のバーチャルゴボウはVR空間でも使えるもんな』『本物のゴボウと比べると穏やかなパワーだし』『伸びるし』

「そうそう! この間本物のゴボウを抜いたら本当に恐ろしいことになってて……」

『もがー!!』

「あちょっ」

『ウグワワーッ!!』

「周辺への被害が大きすぎるので、ゴボウは開けた場所以外は封印かな~と。皆さんで美味しく召し上がって、ゴボウでダンジョン耐性をつけておいてください」

※『話の合間に壁からめちゃくちゃ物騒な見た目のモンスター飛び出してこなかった!?』『一瞥(いちべつ)もせずに叩き潰すはづきっちであった……』『無法過ぎるw』

 バングラッド氏もまた、六本の腕にそれぞれ剣を装備し、襲いかかるモンスターをバッタバッタ切り倒しながら突き進んでいる。
 この人は正統派な強さなんだけど、それでいて変形していろいろなモードになったりするという搦め手も得意なんだよなあ。

「私もですね、負けずに突き進もうと思います。こう、私はちょっと火力が高いだけで特別な技を使えるタイプではなくてですね」

『もがーっ!!』『もががーっ!!』

※『あっ、はづきっちの左右から巨大なモンスターが!』

「あちょちょ!」

『ウグワーッ!?』『ウグワワーッ!?』

※『鎧袖一触w!!』『バーチャルゴボウが一瞬二本になったかと思うようなゴボウ捌き!!』『同時に左右のモンスターを撃破したな……』『タツジン!!』

「こうですね、地道にやっていこうかなと思います。強いとは言っても人間のレベルでございますので」

※『いやいやいやいやw』『隣で無双している多腕の魔人な人を手数で押すじゃないですかー』もんじゃ『はづきっちの受けは、受け、流し、弾き、巻き込みを同時にやってくるからな。どんな体幹だろうが、スライムだろうが一瞬で姿勢を崩される』『不定形生物が体勢を崩すっておかしくないですか!?』

 こうして私たち、どんどん突き進む。
 あっという間に操縦席に到着です。

 ダンジョン化して広がっているとは言え、外から見える遊覧席は小さい。
 モンスターもそんなに強くないので、二人がかりなら十分くらいですねー。

※『異常な進行速度でダンジョン第一層が攻略されてしまった』『二人で一層のボスモンスターみたいなのを一発殴って消滅させたな……』『オーバーキル過ぎるw』

 そうしたら、そこで異常発生!

『むっ、きら星はづきよ! このダンジョンの動きが加速したぞ。どうやらこいつは螺旋を描きながら、通常よりも早く都市に落下するつもりのようだ』

「あっ、急がないとですね! えっと、どれくらいで落ちるかなー。じゃあ一時間くらいで設定しておきますね」

※『危機的状況を目分量でw!』『頼むぞはづきっち! 俺都心で仕事してるからな!』『私たちの命運ははづきっちに掛かってる~!』

「頑張ります!」

 私はぐっと腕まくりして力こぶのポーズ。
 あれっ!?
 普通に力こぶができる……!!

 これじゃあ私がマッチョみたいじゃないか。

『何を自分の腕を見てフクザツそうな顔をしているのだ。よし、再び合体だ。行くぞ!』

「ほいほいー」

 私がバンザイのポーズをしたら、背中にバングラッド氏がウイング状になって合体した。
 はづきウイング再び!

 ベルっちモードになると、お互いのコントロールが入れ替わるし、実は合体に見えて分離状態に近い。
 私のフルパワーではなくなるわけです。

 どうも、私が本体である以上、私を完全に取り込んでベルっちオンリーで活動……みたいなのはできないみたいだし。

 なので、攻撃力最強形態がこのバングラッドウイング!
 ビューンと飛んでいくのだ。

 遊覧席から風船の中へ。
 そこにも席とかが設けられていて、モンスターが大量にいた。
 私たちを待ち構えていたのかしら。

 これ、小さい街の人口くらいいるように見えるんですが。

※もんじゃ『そうか! ダンジョンを都心に落とすことで、そこからいつでもダンジョンハザードを発生させられるのか! 空から落ちてくるダンジョンハザードは防ぎようがない!』『はえ~、邪悪~!』『よく考えてるなあ』

「なるほどですねー。空の上のダンジョンだと、通常兵器は効かないから配信者に頼るしかですけど、配信者はあまり飛べないしダンジョンを外から壊すのは難しいですもんねえ」

※『はづきっちにも難しいのか』

「いや、やれますけど輪切りにしたらモンスターが上から都心にばらまかれるんで……」

 コメント欄が※『あーw』『やばいやばいやばいw』『なるほどなあw』と納得。
 まあ、こう言う構造だって分かったから言えることなんだけど。
 カッとなって外から叩いてたらヤバかったですね!

 襲ってくるたくさんのモンスターたち。
 私は慎重に慎重にバーチャルゴボウの長さを計算して……。

「このくらいの長さかな? よし、これならダンジョンの中で収まる……あちょっ」

 近寄ってくるモンスターをチョップで数十匹薙ぎ払いつつ、バーチャルゴボウを伸長させたのだ。

「えー、それじゃあ倒しますね。あちょー!」

 ぶんぶんぶんっとバーチャルゴボウを振り回すと、私目掛けて殺到してたモンスターが、だいたい九割九分九厘薙ぎ払われて『ウグワーッ!?』と消滅した。
 飛行船ダンジョンの壁面にはギリギリ届かない!
 計算はベストですねー。

『強いだけならいくらでもいるが、きら星はづきの恐ろしさはこの計算高さだな! 自らの火力を精密に計算し、敵を殲滅する最小限の戦力で振り回して周辺の被害を抑える。意図的にこれができる敵がどれほど恐ろしいか……』

 バングラッド氏が盛り上げてくれますねえ!
 でも、彼のサポートがあったから今回のダンジョンはリミット一時間の内、53分残して攻略完了かも。

※『速い速い速いw!!』『ダンジョン突入から二十分で終わりそうとか誰が予想したよ』『もうこれ、まとめ動画じゃんw』

「いやあ最適解で動き過ぎました。あっ、でも生き残りが……」

 風船部分の中央に浮かんでいるのがいる。

『うぐぐぐぐ、おのれ……。チョロいバイトだと思ってたのに、初回にしてきら星はづきに当たるとは……! こいつ、イカサマのコネ女じゃなかったのかよ! こんなつええなんて聞いてねえよ! 嘘つき!! 俺を騙しやがって!!』

「トゲトゲのハリセンボンみたいなデーモンですね。魔将? 私のことをご存知のようで……」

『俺はなあ! てめえの傍若無人が許せなくてコメントしまくったら、なんか突然魂を吸われたみたいになって入院して、戻ってきたらてめえがまた活躍してて、ムカつくからあちこちでてめえの悪い噂をしまくったらまた魂吸われて入院して……』

「あっ、もしやアンチの方!? いつも式神の燃料としてお世話になっております」

 私はペコペコした。
 彼らなくして、ブタさん式神は成立しなかったもんね。

『うおおお! 好きで魂を吸われてるんじゃねえええええ!! 許せねえ! 俺は間違ってないのに世間はお前の味方をして! だから俺は割の良いバイトをしながらお前をここでぶっ倒し』

「えー、じゃあ倒しますね。あちょっ」

『あっちょっまっウグワーッ!?』

 伸ばしたバーチャルゴボウで突かれて、ハリセンボンみたいな魔将がぱぁんと割れた。
 そうしたら、飛行船がぐんぐん縮んでいく。
 とんでもない広さだったのが、割と常識的な大きさに変わっていくのだ。

『ダンジョンが消滅したのだな。しかし、なかなか気になることを言っていたではないか。魔王め、きら星はづきを恨む人間たちから新たな魔将を作り出しているな……!』

「新展開ですねえー。あ、じゃあここで配信終わるのもあれですので、告知をします。イカルガから配信者たちのアクスタコレクションが出てですね、あとはボイスの販売が……」

 ゆっくりともとの軌道に戻っていく飛行船の中で、私は宣伝をするのだった。
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