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渦巻く策謀と、いつもの私編
第419話 魔王は動き、イノシカチョウは企画する伝説
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中国のある省にて。
兵士たちが皆、地に伏せている。
悠然とその場に立つのはただ一人。
オレンジの髪をサイドテールにした少女だ。
『ははーん、魔力に乏しいこの世界の人間が? 武器に魔力宿して掛かってくるっていう? その工夫、なかなかいんじゃね? あたしは好きだよー』
満足気に彼女は笑う。
『この世界ってさ、手を出した時には人間に全然魔力なくってさ。あー、一瞬で終わるわって虚無ったんだよね。だけどちまちま頑張ってここまで来たってことっしょ? いーじゃんいーじゃん』
彼女の背後では、周辺一帯を包みこむ新たなダンジョンが生まれつつある。
倒れた兵士たちの一割ほどが、そこに飲み込まれていった。
「た、助けて……!」「なんだこれは!」「こんなのはいやだあ!」
叫び声が聞こえるが、それはすぐに人ならざるものの咆哮に変わっていく。
兵士たちは震え上がった。
そう。
この場に死者はいない。
ダンジョンを踏破した兵士たちの前に突如現れた少女は、宣戦布告をしてきたのだった。
自らの背後に、巨大な触手の塊のようなものを呼び出した少女。
兵士たちは攻撃を行った。
触手の塊に、それは通用したのだが……。
少女に触れられるところまで近づけた兵士はいない。
そして、少女が軽く指をスナップさせた瞬間、衝撃波がまき起こり、全ての兵士をなぎ倒した。
少女は……魔王マロングラーセは、とても優しく繊細に、誰一人として人間が死なない力加減で攻撃を放ったのだった。
『期待じゃん? これからもなんか見つけて育ってくれるかもーっていう。あ、このダンジョンはあたしからのプレゼント。まあまあ歯ごたえあるから、しばらくこれで鍛えてって。みんなが頑張ってくれるほど、あたしはたくさんたくさん楽しめるし』
にやーっと魔王は笑った。
その背後に、縦に七つの頭が並んだ、身長5mのローブ姿が出現する。
『マロン様! またお一人で遊びに来られて! この地が崩壊したらどうなされるおつもりですか! もったいないでしょう!』
『わーってるって。ほら見て見て。一人も死んでないし。一割だけ削り取ってこっちの眷属にしといたし。やっぱ、細く長くお付き合いっしょ。今後ともよろしく~』
にこやかに別れの言葉を告げ、魔王マロングラーセは去った。
その姿は映像と音声で記録されたが……。
政府はこの情報を秘匿する事を選んだ。
兵士によってダンジョンを踏破するという、自国の計画が頓挫したと思われる危険があったからだ。
故に、各国の対策は大きく遅れることになる。
※
「というわけでですねー。うちが計画したのは、四人でできるスポーツ配信!」
もみじちゃんがどこからか、フリップを取り出してきた。
ペラっとめくると、そこになんか書いてある!
「じゃじゃーん! 四人で登山計画~!」
「な、なんとー!」
私が大変びっくりしたので、もみじちゃんは満面の笑顔になった。
満足したらしい。
だけど本当に驚いた。
登山だってー!?
そう言えば、海は行ったけど山には行ってないなあ。
今回の計画は、私とイノシカチョウの三人で、高尾山に登って配信しようというものだった。
なるほどー、それは面白いかもしれない。
「いーんじゃない? 登山なら、極端なスポーツの得意不得意とか関係ないし。あたしも割と好きだよ登山!」
はぎゅうちゃんも賛成っと。
ぼたんちゃんは?
「日帰り? 日帰りだったら早朝から出ないとね。でも終日配信するのは現実的じゃないかも? あ、そうだ、私たちのチャンネルでリレーしながら配信していくのがいいわね」
凄くやる気だ!
では私も全力で挑まねばなりますまい。
「お弁当は任せていただきたい。Aフォンを駆使して手作りのお料理をたくさん用意します」
私の宣言に、みんながおおーっとどよめいた。
なんか嬉しそうにしている。
うんうん、喜んでもらえるのは大変嬉しい。
よーし、山程なんか作っていくぞ!
作りすぎても私が食べるからセーフだし。
こうして、今後の計画が決まった。
いつ登るという話に関しては、常に混み合っている山だし、GW前にしとこうということで決定した。
私ともみじちゃんは即座に高尾山の登山関係管理をしているところに連絡を取った。
こういうのはスピードこそ力だからね!
直接行くのは時間が掛かるんで、アポを取ってからネット越しの相談だよ。
まあ、1週間後の話なんで、先方にはすっごく急だったとは思う。
最初は渋ってたんだけど、もみじちゃんが私の名前を出した瞬間、先方の担当者さんの顔色が変わった。
すぐに上に連絡を取って、一発OKが出たみたい。
「いやー、やっぱり先輩のネームバリューは最強だなあ」
「そお? そうなのかなあ……」
「先輩は己の影響力にあまりにも無頓着過ぎるんですよー」
言われてしまった!
せやろか。
だけど、これで問題になるポイントはクリアしたのだ。
後は私とイノシカチョウ、お互いのアカウントで宣伝するだけ。
もう、めちゃくちゃ反応があった。
普通に土曜日に配信するんで、その日に合わせて高尾山に来る人もたくさんいるみたい。
これは凄い大混雑になるぞー。
山が人の重みでちょっと低くなるのではないか。
私がそんな危惧を口にしたら、イノシカチョウの三人はナイスジョーク!と爆笑したのだった。
ちょっと本気だったんだけど!
兵士たちが皆、地に伏せている。
悠然とその場に立つのはただ一人。
オレンジの髪をサイドテールにした少女だ。
『ははーん、魔力に乏しいこの世界の人間が? 武器に魔力宿して掛かってくるっていう? その工夫、なかなかいんじゃね? あたしは好きだよー』
満足気に彼女は笑う。
『この世界ってさ、手を出した時には人間に全然魔力なくってさ。あー、一瞬で終わるわって虚無ったんだよね。だけどちまちま頑張ってここまで来たってことっしょ? いーじゃんいーじゃん』
彼女の背後では、周辺一帯を包みこむ新たなダンジョンが生まれつつある。
倒れた兵士たちの一割ほどが、そこに飲み込まれていった。
「た、助けて……!」「なんだこれは!」「こんなのはいやだあ!」
叫び声が聞こえるが、それはすぐに人ならざるものの咆哮に変わっていく。
兵士たちは震え上がった。
そう。
この場に死者はいない。
ダンジョンを踏破した兵士たちの前に突如現れた少女は、宣戦布告をしてきたのだった。
自らの背後に、巨大な触手の塊のようなものを呼び出した少女。
兵士たちは攻撃を行った。
触手の塊に、それは通用したのだが……。
少女に触れられるところまで近づけた兵士はいない。
そして、少女が軽く指をスナップさせた瞬間、衝撃波がまき起こり、全ての兵士をなぎ倒した。
少女は……魔王マロングラーセは、とても優しく繊細に、誰一人として人間が死なない力加減で攻撃を放ったのだった。
『期待じゃん? これからもなんか見つけて育ってくれるかもーっていう。あ、このダンジョンはあたしからのプレゼント。まあまあ歯ごたえあるから、しばらくこれで鍛えてって。みんなが頑張ってくれるほど、あたしはたくさんたくさん楽しめるし』
にやーっと魔王は笑った。
その背後に、縦に七つの頭が並んだ、身長5mのローブ姿が出現する。
『マロン様! またお一人で遊びに来られて! この地が崩壊したらどうなされるおつもりですか! もったいないでしょう!』
『わーってるって。ほら見て見て。一人も死んでないし。一割だけ削り取ってこっちの眷属にしといたし。やっぱ、細く長くお付き合いっしょ。今後ともよろしく~』
にこやかに別れの言葉を告げ、魔王マロングラーセは去った。
その姿は映像と音声で記録されたが……。
政府はこの情報を秘匿する事を選んだ。
兵士によってダンジョンを踏破するという、自国の計画が頓挫したと思われる危険があったからだ。
故に、各国の対策は大きく遅れることになる。
※
「というわけでですねー。うちが計画したのは、四人でできるスポーツ配信!」
もみじちゃんがどこからか、フリップを取り出してきた。
ペラっとめくると、そこになんか書いてある!
「じゃじゃーん! 四人で登山計画~!」
「な、なんとー!」
私が大変びっくりしたので、もみじちゃんは満面の笑顔になった。
満足したらしい。
だけど本当に驚いた。
登山だってー!?
そう言えば、海は行ったけど山には行ってないなあ。
今回の計画は、私とイノシカチョウの三人で、高尾山に登って配信しようというものだった。
なるほどー、それは面白いかもしれない。
「いーんじゃない? 登山なら、極端なスポーツの得意不得意とか関係ないし。あたしも割と好きだよ登山!」
はぎゅうちゃんも賛成っと。
ぼたんちゃんは?
「日帰り? 日帰りだったら早朝から出ないとね。でも終日配信するのは現実的じゃないかも? あ、そうだ、私たちのチャンネルでリレーしながら配信していくのがいいわね」
凄くやる気だ!
では私も全力で挑まねばなりますまい。
「お弁当は任せていただきたい。Aフォンを駆使して手作りのお料理をたくさん用意します」
私の宣言に、みんながおおーっとどよめいた。
なんか嬉しそうにしている。
うんうん、喜んでもらえるのは大変嬉しい。
よーし、山程なんか作っていくぞ!
作りすぎても私が食べるからセーフだし。
こうして、今後の計画が決まった。
いつ登るという話に関しては、常に混み合っている山だし、GW前にしとこうということで決定した。
私ともみじちゃんは即座に高尾山の登山関係管理をしているところに連絡を取った。
こういうのはスピードこそ力だからね!
直接行くのは時間が掛かるんで、アポを取ってからネット越しの相談だよ。
まあ、1週間後の話なんで、先方にはすっごく急だったとは思う。
最初は渋ってたんだけど、もみじちゃんが私の名前を出した瞬間、先方の担当者さんの顔色が変わった。
すぐに上に連絡を取って、一発OKが出たみたい。
「いやー、やっぱり先輩のネームバリューは最強だなあ」
「そお? そうなのかなあ……」
「先輩は己の影響力にあまりにも無頓着過ぎるんですよー」
言われてしまった!
せやろか。
だけど、これで問題になるポイントはクリアしたのだ。
後は私とイノシカチョウ、お互いのアカウントで宣伝するだけ。
もう、めちゃくちゃ反応があった。
普通に土曜日に配信するんで、その日に合わせて高尾山に来る人もたくさんいるみたい。
これは凄い大混雑になるぞー。
山が人の重みでちょっと低くなるのではないか。
私がそんな危惧を口にしたら、イノシカチョウの三人はナイスジョーク!と爆笑したのだった。
ちょっと本気だったんだけど!
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