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渦巻く策謀と、いつもの私編
第418話 きら星はづきの正体を探らないで伝説
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すっかり学校に慣れた頃合いの一年生たちが、近頃クラスの周囲に出没している。
何かを探しているようだけど……。
彼女たちが私と、「おはようございまーす」と会釈してすれ違った。
私も最高学年としての貫禄が出てきてるので、「お、お、おはよう~」と返す。
そして通り過ぎた一年生たちが、「ねー、どこにいるんだろうね、きら星はづきちゃん!」「本当ならこの学校の三年生なんでしょ? 会いたーい!」とか言うのだ!
危うく、あひー、と悲鳴を上げるところであった!
恐ろしい恐ろしい。
新入生というものはどうして、学園の秘密を探ろうとするのか……。
「あー、はづきちゃん探し、今年の一年もやってるのかー」
「やや、状況に詳しそうなぼたんちゃん」
「そりゃあもう、はづきちゃん関連の情報はたくさん集めているし、インターネットだけじゃない学校の内外のこともよーく存じ上げてます。全部はづきちゃんを守るために」
「おほー、ありがたい」
「そのおほーはまずいでしょ」
ぼたんちゃんが私の唇に人差し指を当ててきた。
リスナーも親しい配信者さんも、おほーはいかんでしょ、ってみんな言うんだけどなんか嬉しそうなんだよな。
なぜだ。
思わず出ちゃうんだよねえ。
ちなみにぼたんちゃんは私の唇に当てていた指を、ニコニコしながらさすってる。
で、移動を終えた私達は、二人で食堂に向かいながら小声でおしゃべりする。
今は昼時。
この時間帯の我が学園は、大変賑やかなんでヒソヒソ話が外に聞こえることがない。
「一年生の子が何度かはづきちゃんの秘密に迫りそうになって、それをバッチリシャットアウトしてきたんだよ。はづきちゃんが世界の命運を掛けて戦っているのに、小娘の好奇心っていう理由だけでそれを邪魔するなんでいかんでしょ」
「そういうものですかねえ」
「そういうものよ」
断言するぼたんちゃんなのだった。
私は今日は食堂の日。
ここでは運動部の女子用に、大盛りの定食も出してくれてる。
私は迷わず、大盛りのカツ丼定食に唐揚げを八個つけた。
あとポテトサラダのラージ。
本来ならみんなでシェアすること前提のサイズだけど、私は一人で食べるね。
「はづきちゃんはそういう食べ方をするからすぐにバレそうになる……」
「ハッ」
そ、そうだったのかー!!
ぼたんちゃんに指摘されるまで全く気付けなかった。
あまりにも盲点……!!
それはそうとして、食堂の適当な席に座って食べ始める。
隣の一年生女子が目を丸くしている。
「すっごい……」
「それであのボディ……」
なんか別の所に注目されてる気が……。
パクパクと、唐揚げをおかずにカツ丼を食べて、ポテトサラダもバランスよくいただき。
15分ほどで綺麗に食べ終わった。
適量適量。
他に人がいる場所では、ぼたんちゃんもきら星はづき関連の話はしてこない。
受験だとか、推薦だとかの話ばかり。
なるほどですねえ。
私、推薦みたいなのはこう、海外からのお誘いが来てるので……。
アメリカとイギリスとインドと中国から。
今のところはイギリスかなー。
だが!
そういう推薦の話も目立つのでしてはいけないのである!
うあー、何の話もできないじゃないですかー。
生活の全てをまあまあ配信で赤裸々にしてるんで、外ではできない話が多すぎる私。
仕方ないので、最近のアニメの話なんかをした。
忙しくて、あんまりアニメ見れてないな……。
まずい、まずいぞ。
ビクトリアが出演してる作品しかチェックしてない。
それもまあ、三ヶ月くらい前に撮り終わってるそうなんだけど。
「あ、あの先輩」
「ひゃ、ひゃい!」
いきなり話しかけられたので、私はピョーンと椅子ごと飛び上がるところだった。
飛び上がったらバレていたに違いない。
危ない危ない。
「そのう……。やっぱりたくさん食べて、運動とかしてらっしゃるんですか? それでその、しっかりしたお体を」
「あー、そういう」
話しかけてきた一年生は、細身の子だ。
背筋がシャンとしてるんで、スポーツをやってるんだと思う。
だけどウェイトを気にしているというのは、もしかして格闘技かしら?
「えっと、い、いっぱい食べて、それで体を動かさないと肉はつかないので……。私は入学前はあんまり動いてなかったからちょっと太ってて、それで入学後に動いたので、全部筋肉とかに……」
「な、なるほどー! 先輩は何のスポーツをやってらっしゃるんですか?」
うっ!!
答えづらい質問!
だけどここではぐらかすのは、私の良心が許さない。
「ス、スポーツチャンバラみたいなのです」
「おおーっ!!」
納得したみたいだった。
友達と一緒に、「スポーツチャンバラならウェイトを増やして鍔迫り合いに持ち込む手も……」「柔道にも活かせるね!」とか言っている。
柔道部だったか。
スポーツする人はたくさん食べられないといけないぞ。
「す、少しずつ回数たくさん食べてカロリーをとるといいですよ……」
「あ、なるほどです! 私、一度にいっぱい食べられなくて……。でも、回数増やせばいけますもんね! ありがとうございます!!」
私は回数を増やしつつ、一回一回でもそれなりに食べてるけどね!
こうして、正体を悟られること無く先輩らしいアドバイスができた私なのだった。
去り際に一年生たちが、「優しい先輩だったねー」「ねー。今度スポーツチャンバラの試合をチェックして探してみようよ」「なんか雰囲気とか、きら星はづきちゃんに似てた気がするんだよねー」「まっさかー」
あひー!!
う、うかつにアドバイスもできないではないか!
これを見ていたぼたんちゃんが、なんか妙にニコニコしているのだった。
何かを探しているようだけど……。
彼女たちが私と、「おはようございまーす」と会釈してすれ違った。
私も最高学年としての貫禄が出てきてるので、「お、お、おはよう~」と返す。
そして通り過ぎた一年生たちが、「ねー、どこにいるんだろうね、きら星はづきちゃん!」「本当ならこの学校の三年生なんでしょ? 会いたーい!」とか言うのだ!
危うく、あひー、と悲鳴を上げるところであった!
恐ろしい恐ろしい。
新入生というものはどうして、学園の秘密を探ろうとするのか……。
「あー、はづきちゃん探し、今年の一年もやってるのかー」
「やや、状況に詳しそうなぼたんちゃん」
「そりゃあもう、はづきちゃん関連の情報はたくさん集めているし、インターネットだけじゃない学校の内外のこともよーく存じ上げてます。全部はづきちゃんを守るために」
「おほー、ありがたい」
「そのおほーはまずいでしょ」
ぼたんちゃんが私の唇に人差し指を当ててきた。
リスナーも親しい配信者さんも、おほーはいかんでしょ、ってみんな言うんだけどなんか嬉しそうなんだよな。
なぜだ。
思わず出ちゃうんだよねえ。
ちなみにぼたんちゃんは私の唇に当てていた指を、ニコニコしながらさすってる。
で、移動を終えた私達は、二人で食堂に向かいながら小声でおしゃべりする。
今は昼時。
この時間帯の我が学園は、大変賑やかなんでヒソヒソ話が外に聞こえることがない。
「一年生の子が何度かはづきちゃんの秘密に迫りそうになって、それをバッチリシャットアウトしてきたんだよ。はづきちゃんが世界の命運を掛けて戦っているのに、小娘の好奇心っていう理由だけでそれを邪魔するなんでいかんでしょ」
「そういうものですかねえ」
「そういうものよ」
断言するぼたんちゃんなのだった。
私は今日は食堂の日。
ここでは運動部の女子用に、大盛りの定食も出してくれてる。
私は迷わず、大盛りのカツ丼定食に唐揚げを八個つけた。
あとポテトサラダのラージ。
本来ならみんなでシェアすること前提のサイズだけど、私は一人で食べるね。
「はづきちゃんはそういう食べ方をするからすぐにバレそうになる……」
「ハッ」
そ、そうだったのかー!!
ぼたんちゃんに指摘されるまで全く気付けなかった。
あまりにも盲点……!!
それはそうとして、食堂の適当な席に座って食べ始める。
隣の一年生女子が目を丸くしている。
「すっごい……」
「それであのボディ……」
なんか別の所に注目されてる気が……。
パクパクと、唐揚げをおかずにカツ丼を食べて、ポテトサラダもバランスよくいただき。
15分ほどで綺麗に食べ終わった。
適量適量。
他に人がいる場所では、ぼたんちゃんもきら星はづき関連の話はしてこない。
受験だとか、推薦だとかの話ばかり。
なるほどですねえ。
私、推薦みたいなのはこう、海外からのお誘いが来てるので……。
アメリカとイギリスとインドと中国から。
今のところはイギリスかなー。
だが!
そういう推薦の話も目立つのでしてはいけないのである!
うあー、何の話もできないじゃないですかー。
生活の全てをまあまあ配信で赤裸々にしてるんで、外ではできない話が多すぎる私。
仕方ないので、最近のアニメの話なんかをした。
忙しくて、あんまりアニメ見れてないな……。
まずい、まずいぞ。
ビクトリアが出演してる作品しかチェックしてない。
それもまあ、三ヶ月くらい前に撮り終わってるそうなんだけど。
「あ、あの先輩」
「ひゃ、ひゃい!」
いきなり話しかけられたので、私はピョーンと椅子ごと飛び上がるところだった。
飛び上がったらバレていたに違いない。
危ない危ない。
「そのう……。やっぱりたくさん食べて、運動とかしてらっしゃるんですか? それでその、しっかりしたお体を」
「あー、そういう」
話しかけてきた一年生は、細身の子だ。
背筋がシャンとしてるんで、スポーツをやってるんだと思う。
だけどウェイトを気にしているというのは、もしかして格闘技かしら?
「えっと、い、いっぱい食べて、それで体を動かさないと肉はつかないので……。私は入学前はあんまり動いてなかったからちょっと太ってて、それで入学後に動いたので、全部筋肉とかに……」
「な、なるほどー! 先輩は何のスポーツをやってらっしゃるんですか?」
うっ!!
答えづらい質問!
だけどここではぐらかすのは、私の良心が許さない。
「ス、スポーツチャンバラみたいなのです」
「おおーっ!!」
納得したみたいだった。
友達と一緒に、「スポーツチャンバラならウェイトを増やして鍔迫り合いに持ち込む手も……」「柔道にも活かせるね!」とか言っている。
柔道部だったか。
スポーツする人はたくさん食べられないといけないぞ。
「す、少しずつ回数たくさん食べてカロリーをとるといいですよ……」
「あ、なるほどです! 私、一度にいっぱい食べられなくて……。でも、回数増やせばいけますもんね! ありがとうございます!!」
私は回数を増やしつつ、一回一回でもそれなりに食べてるけどね!
こうして、正体を悟られること無く先輩らしいアドバイスができた私なのだった。
去り際に一年生たちが、「優しい先輩だったねー」「ねー。今度スポーツチャンバラの試合をチェックして探してみようよ」「なんか雰囲気とか、きら星はづきちゃんに似てた気がするんだよねー」「まっさかー」
あひー!!
う、うかつにアドバイスもできないではないか!
これを見ていたぼたんちゃんが、なんか妙にニコニコしているのだった。
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