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打ち上げ! 私のロケット編

第387話 宇宙から音楽をお届け伝説

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 発射されたロケットの中。
 窓がないので、ゴゴゴゴゴーっという音だけ聞こえる。
 あっ、正面にモニターが設置されてるじゃないですか。

「えーとですね、Gがきついので短めに言いますけど、前に発射テストしたときはモニターが無くてですね、何も無い中で打ち上げられてて、これは絵的に映えないなーとか思ってたんですけど」

※『めっちゃ喋っとるやないかいw!』『これ、はづきっちじゃなかったら声も出せないよな』『さすが魔王だわ』

「今はベルっちと合体してるので、割とGの中でも楽ですねー。ただ、試験の時よりGがきついです。あの時はバーチャル空間だったから、実際にはイメージのGでしたもんねー」

※おこのみ『あまりGがかかりすぎるとセンシティブな部分が潰れないか心配過ぎる』『Gよ早く途切れてくれえ』『ほんとぶれないなセンシティブ勢』『他の配信だとBANされてるような連中が居着いてて、でも不思議な自治体制を築いてるんだよね』

 ほんとにね!
 というかおこのみは、私の最初の配信からいたよ!
 私の配信者生活はセンシティブとは切っても切り離せないのだ。

 とかお喋りをしてたら、スパッと楽になった。

「あっ、宇宙ですねー。上昇する途中のモニター見てなかったので、後でアーカイブを振り返る配信しますね」

※『人類初のエーテル宇宙到達の最初のセリフがそれかw!』『「あっ、宇宙ですねー」なんて映えない言葉なんだw』

 た、確かに~。
 でも、私に今更気の利いた言葉を言えと言われても、言語化センスが無いもので……。

「ここからは金魚鉢を被ってですね。これ、通常だと全面が反射して私の顔が見えなくなるんで、Aフォンで特殊な感じで処理をして透過したように見せておきますね。えー、これで大丈夫」

 私はベルトを解いて立ち上がった。
 このベルトも、バーチャルの時と違ってもうちょっと太くてしっかりしたものになってる。

 おっと、ふわーっと体が浮く。

「おおーっ、無重力」

※『本当に宇宙に来たんだなあ』『はづきっち、世界だけでは飽き足らずついに地球の外にまで!』『フットワーク軽いからどこにでも行くんだよねw』

「うんうん、色んなところに行けて楽しいです。えー、モニターは宇宙を映し出してるんですが、その一角に恒星が見えてて、あれが火の大魔将。で、そこからどんどん火の眷属が出てきてると。あ、エアロック開けまーす」

 エアロック、構造的な問題で自動式にはなっていないのだ!
 手動ね。
 なので、私以外には使えない。
 ガラッと開けて、狭ーい減圧室に移動。

『はづきさん、そこでハンドルをぐるぐる回してください』

「はーい」

 種子島さんからの指示をもらって、減圧ハンドルを回した。
 空気が抜けていくー。

 完全に抜けたところで、扉を開く。
 かなり凄い抵抗があったけど、私が「あちょー!」と気合を入れたらバリバリバリッと音がして開いた。

 何かが流れ込んでくる感じがある。
 あ、これが本物のエーテルかあ。
 本当に水みたいなんだ。

※『宇宙が渦巻いてる……』『本当に真空じゃないんだ……』『ちょっと黄色く見えない?』

 エーテルは光を受けると黄色く反射するのかも。

『もがーっ!!』

 やって来た私に気づいて、火の眷属がどんどん寄ってくる。
 私はこれを、「あちょ!」とチョップで撃退した。

『ウグワーッ!!』

※『チョップ一閃、ガーゴイルみたいな燃え上がるモンスターが真っ二つだ!』『威力がおかしいのよw』

「いやあ、時間を掛けてられないので……! あ、ベルっちお願い! 露払いを~」

『ほいほい』

 すぽーんと分かれたベルっち。
 彼女も、羽の生えた宇宙服姿になっていた。

『じゃあ適当に飛び回って眷属をやっつけるから、ここからどうするか決めといて!』

「はーい。ロケットの燃料はよし。ここで再点火して加速して恒星にぶつけるか、私が向こうまで泳いでいくか……」

『あー、なんかどんどん集まってくる。火の大魔将が完全にこっちに気付いたっぽい? 世界に降りていくぶんがこっちに来るよ』

「なるほどー、それは面倒……。どうしたものかなあ」

 私が考えていたら、ザッコを通じて連絡があった。

『先輩! うちとカモちゃんとウェスパースさんでいいのを作ったので! 送ります!』

 おお!
 先日のアバターロケットでエーテル回収作戦のやつ?
 
「ありがたいー。持つべきものは後輩ですねえ」

 ニコニコしながら、ファイルをダウンロードした。
 すると、Aフォンから巨大な平たい惣菜パンが出現する。
 こ、これはピタパン!!
 中にぎっしりと肉餡が詰まってるみたいです。

 そして、ピタパンの周りを雀牌が回っている。
 このバランス取りをウェスパース氏がしてるんだろうな。

「これをどうすれば……」

※『宇宙のサーフボード……!!』『はづきっち、乗れー!』『乗るしか無いぜ、このビッグウェーブに!』もんじゃ『エーテルの海は無風……凪のような状態。大きな波を起こすには……』

「あ、なーるほど!! お前ら、助言感謝~!」

 私はピタパンのボードに飛び乗る。

「ベルっち! 全力全開で周りの眷属やっつけちゃって!」

『かしこまり!』

 ベルっちが加速した。
 彼女が本気になると、そりゃあもう速い速い。
 空腹になる一歩手前くらいまでパワーを使って、視界いっぱいを飛び回る。
 ぶつかった眷属が、片っ端からふっ飛ばされて花火みたいに弾けていった。

『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』×たくさん!

 エーテルの海が揺れる。

「ゴーゴーゴー!」

 この流れに乗って、私はブタさんを出現させ、ピタパンを押してもらう。
 ちょっと動きがついたら、それでOK。
 サーフボードは乗ったことがないけど、まあなんとかなるでしょう。

 おお、フラフラする~。
 ここはごきげんな音楽によるフォローが欲しい……。

「Aフォン、なんか適当な音楽をかけてー」

 音楽アプリが起動した。
 流れ出すのは……。
 あっ! 私の持ち歌じゃないですか!!

※『うおおおおおおお』『うおおおおおおおお』『ここで勝利確定ミュージック!』『宇宙で音が聞こえるのかよ!』もんじゃ『エーテルの海は波を起こす……つまり、音を広げる力を持っていると考えていい!』『あれっ!? 空からもはづきっちの歌が聞こえる……』『こっちもだ!』『聞こえる!』

※『听到!』『Je peux l'entendre!!』『hear it!?』

 なんか世界中に聞こえ始めたみたいですね!?
 よく分からんけど、ちょっとノリノリになってきたからよし!

 私のピタパンボードは今、波打つエーテルの海に飛び出していったのだった。

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