上 下
366 / 517
年越し私のまったり編

第366話 年度末配信多窓伝説

しおりを挟む
 冬休みをいいことに、ベルっちと分離して、二手に分かれてダンジョン配信をしたよ!
 私はカナンさんと一緒に山梨までちょっとだけ遠征して、ダンジョン化したスキー場でデーモンと対決。

 ふふふ、私はスキーならちょっと滑れるのだ。
 ちょっと体を傾ける意外はそのままスキー板に任せてればいいからね!

 無限に続くようになった傾斜を、ひたすら最高速度で下り続けていたらモンスターが勝手に私に当たってピチューンと消えていく。

『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』×たくさん

※『高速なのにフラフラ蛇行するはづきっちのスキーは行き先が読めない!』『あれで転倒しないでずっと滑り続けるの、さすがの体幹だなあ』『カナンちゃんがサポートに回ってるんだろ?』『これは多窓する価値あるぜ』『はづきっち視点は速すぎて分かんないw』

 私も今、どれくらい速度が出てるか分からないからねー。
 で、前方の斜面がゴゴゴゴッと立ち上がり、雪崩が遡ってきた。
 これ、多分今回のダンジョンのデーモンっぽい?

 私は何の計算もなく、逆さ雪崩に正面からぶつかっていった。

「あちょー!」

 スキーのストックを構えて、前方にぶんぶん振り回した。
 そうしたら、そこに接触した雪崩がドバーン!と吹き飛んでいく。

『ウグワーッ!! ば、ばかなー!? 雪の魔精霊たるこのワシが、こんな意味の分からぬ輩にィィィィィッ!?』

 結局、逆さ雪崩を全部ストックで掘り返して、スキー場全体にばらまいたらダンジョン化は終わったのだった。
 こういう広い開けたところもダンジョンになっちゃうんですねえ。

「ちなみにダンジョン化の原因は、不倫旅行で来た奥さんを旦那さんが追っかけて来ちゃって修羅場になったことだったみたいです。怖いですねー」

※『現役女子高生になんて修羅場を見せつけてるんだよw!』『教育に悪いw』おこのみ『だがはづきっちは本人もムッツリ気質だからそういうのには詳しいはず! 俺もはづきっちには詳しいんだ!!』

 お、おこのみ~!
 こやつ、私をプロファイリングしてくる!
 魂がちょっと近いのかも知れない。

 カナンさんも、雪の魔精霊たちを退けたらしい。
 満足気に戻って来る。

 私はと言うと……。
 いきなり抵抗が消えたので、猛スピードで滑って行って、横にあった木にぶつかった。

「あひー」

 止まった!

※『はづきっちでなければ怪我をしているレベルの勢い!』『この人は特別に頑丈なので平気ですが、絶対にマネをしてはいけません!』

 注意喚起してくれるお前らありがとー。
 絶対に私のマネをしないでね!

「はづき、お疲れ様。こちらは片付いたぞ。魔精霊の親玉が二体いたようだな。同時撃破したからダンジョン化は解けたのだと思う。精霊の愛子が教えてくれたが、もう一人のはづきも神奈川の横須賀でデーモンを撃破したぞ。現地の配信者たちとコラボして、今は一緒に横須賀海軍カレーを食べてるそうだ」

「か、カレーずるい~!!」

 また一つになれば、カレーを食べた記憶は統合されるけどさ。
 私もカレーを食べたいに決まってるじゃないかー。

 なので、私はカナンさんと二人で、ロッジでカレーを食べて帰ったのだ。
 運動した後のカレーうまーい。

 冬休みは短いので、こんな風に手分けして色々配信をする。
 ダブル配信はアーカイブをぜひ見て欲しいなあ。

 多窓推奨だったりします。

 そして私も……。

「年末はどこの配信者も大忙しだよねえ」

 自宅のパソコンディスプレイを買い替えた私。
 今はなんと、正面と左右に三つのディスプレイがあるのだ!

 なぜかと言うと……。
 ながらで色々やるため。

「スレイヤーVさんの和装アバター上がりましたー! 送ります~!」

『ありがたい! 追加で振り込んでおくよ。君は仕事が早いなあ……。配信もしているのに』

「二人いますからねえ」

 配信はベルっちに任せ、私は別の作業とか。
 送られてくるメールをチェックして、フィギュアやプラモの仕上がりを見せてもらったり、イカルガの若手の人たちの相談に乗ったり、次の配信の計画を考えたり、アニメをチェックしたり、動画を見たり、大きい果物を作るパズルとか駅の異常を発見するループ系のブラウザゲーを延々とやったり。

 ディスプレイが多いと、これが全部できちゃうんだなあ!
 便利~。

「別にマルチタスクが得意なわけじゃないんだけど、ベルっちと分かれてから色々な事をいっぺんにやるのが楽になった気がする。あれかな。たくさんの情報を一気に処理しやすくなったとか」

 しょっちゅう分離と合体をして、記憶を統合してるもんねえ。

 スレイヤーVさん、黒胡椒スパイスちゃんや他の配信者さんと一緒に、バーチャル空間のダンジョンを四人で攻略するとか。
 年末の大規模コラボだねー。
 頑張ってほしい。

 元迷宮省長官にして、私の弟子だったり、絵的な意味では子供だったりする人なので!
 アバターを作ってくれた絵師さんを、配信者は性別関係なくママって呼んだりする文化なんだよね。

 彼にアバターを提供してから、ちょこちょこアバター作成依頼が来るんだけど。
 流石にそこまでは手が回りません!

 ということで、今はお断りさせてもらっている。
 私が引退したら受けられるようになるんじゃないかなー。

 あっ、そのうち、スレイヤーVさんと親子コラボをする約束もあるのだった。
 やることはたくさんだ……。

 そんな事を考えていたら、楽しみにしている配信が始まった。
 なうファンタジーのトライシグナルによる、歌枠。
 要はカラオケしてくれるやつ。

 当然カンナちゃんがいる!

「うおおおー! カンナちゃーん!!」

 この時ばかりは他の全ての窓を閉じて、全力応援する私なのだった。
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...