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夏めく私の充電編
第234話 エルフさんとイカルガエンタ伝説
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エルフさんはイカルガエンターテイメントが引き受けることになったらしい。
ライブダンジョンの社長のWAGOOというひとと、兄が話し合って決めたみたい。
通信会議を終えた兄が、なんか凄いガッツポーズをして出てきた。
「斑鳩さんがどんどんやり手になっていく……。素敵」
受付さんの目がハートマークになっている。
……あれ?
なんか指輪増えてません?
「ふふふ、遠からぬうちに私をお義姉さんと呼ばせて見せましょう……」
不敵に笑う受付さんなのだった。
ついにやったのか!!
事務所はやり手ばかりの伏魔殿だなあ……と思いながら、私は隣のスタジオにいるエルフのカナンさんを呼びに行った。
彼女はここで、もみじちゃんに現代社会の説明を受けている。
もみじちゃんがバーチャライズしてエルフになるので、なんだか親近感を覚えるらしい。
「あなたたちがバーチャライズと呼ぶそれは、異世界でのあなた方の姿を映し出す鏡面魔法の一種だ。選択されたあなたがたの姿は、間違いなくそう見えるものになっている」
「ほえー、そうなんですねー」
もみじちゃんが聞き役に回っているぞ!
「こんにちはー」
私がスタジオに入ったら、エルフさんはすぐに見分けてくれた。
「その精霊の形ははづきね。色々話がついたのでしょう? この世界は私たちを迎え入れてくれるの?」
「そこはですね、うちの世界も人口とかヤバいんで、どんどん移民してもらいましょうって話になってます」
日本語とか常識とか法律とか勉強してもらわないとですけど。
カナンさんはエルフの一族の戦闘リーダーみたいな人で、モンスターを集落から遠ざけるために戦っていたら、こっちに迷い込んでしまったんだって。
どうやらあのダンジョンになった町、奥のほうがエルフの集落に繋がってるらしいよ!
これを聞いた迷宮省の人が、あちこちの事務所を引き連れて岩手県に向かった。
ライブダンジョンはDIzさんがまたジオシーカーで飛んでいった。
エルフさんたちを青田買いするつもりなのだ!
各事務所からエルフがデビューするぞお。
もちろん、配信に向いてないエルフもいるだろうということで、こう言う人達は社会を構成する側に回ってもらうそうだ。
多分、私が睨んだところ、各事務所一人がデビューするかどうか、くらいかなあ。
「配信というのか? それを用いることで、人の信仰の力を集めてかの魔王と戦う力とする。合理的なシステムだ。魔法の力が弱いであろうこの世界がかの者たちに対抗できていたのは、まさにその力なのだろう……」
「はあはあ」
「はづき先輩もう聞いてませんね! 良く分からない話になるとすぐ思考停止するー」
もみじちゃんにポコポコ叩かれた。
「あーごめんごめん。じゃあせっかくなんでラーメン食べに行きましょう」
「なんでせっかくでラーメン!?」
もみじちゃん、ツッコミが遠慮なくなってきたなあ。
いいぞいいぞ。
こうして、カナンさんを連れてラーメンを食べに来た。
エルフの人は、外見で配信者だってバレちゃうから外で活動する時は逆にバーチャライズする。
今は普通の外人さんの見た目になってる。
「ラーメンというのか? むむっ、この鼻孔をくすぐる香りは……」
「お出汁の香りですねー。カナンさんはお肉食べられるんですか」
「ああ、肉は食べる。ドルイドのクラスの者は年にしばらく肉を口にしない期間があるな。かつて存在していた私の世界の人間たちは、エルフは肉を口にしないと言っていた。これはドルイドに会った者がそういう話を広めたのだろう」
「はあはあ」
「はづき先輩が適当に聞いてるけど、色々大事な情報が出てきてる気がするなあ……」
訪れたのは、事務所の近くのラーメン屋さん。
昔ながらのお店で、いわゆる醤油ラーメン系のお店。
私は麺大盛りチャーシュー麺を頼んだ。
もみじちゃんはレディスサイズのメンマラーメン。
カナンさんには……。
「スペシャルラーメンがおすすめですね。味玉とナルトがついてくるので……」
「なるほど、分かった。……この二本の棒で食べるのか?」
「あ、そこは難しいよね。済みません大将、外人さんなのでお箸分からないので、フォーク下さい」
「はいよ」
「はづき先輩、こういうひとり飯しやすそうなところだとコミュ力高くなりますよね」
「美味しく食べるためだからね……!!」
ラーメンができるまでの間、「我々は魔王と戦っていた。エルフに執着するのは、闇に堕ちたエルフ、魔将ペルパラスだ。やつは必ず私たちを追ってこちらの世界に現れる。おお、目の前で料理を見られるんだな」「そうなんですよー。食欲をそそられますよね」などと他愛もない会話をした。
カウンター席ばかりだから、大将がラーメンを作る姿が見られるのは楽しい。
うちだとこういう本格的ラーメン食べられないもんね。
「うう、すごく重要な情報がさらさらでてきてる気がする~」
「もみじちゃん……じゃない、外ではシカコ氏! 眉間にシワを寄せてたらラーメン美味しくなくなるよー」
特製の醤油ダレにちょっと特製油を加えて、出汁の効いたお湯を注ぐ。
そこに自家製中細ちぢれ麺。
ネギ、メンマ、ナルト、味玉、チャーシュー、海苔がたっぷり。
スペシャルラーメンの完成だ!
続いて、私たちのラーメンも到着した。
「では食べ方をお見せします。こう手繰って、こう!」
ずるるるるーっ。
「おお! 音を立てて食べていいものなのか! 私たちの集落では、余計な音を立てるとモンスターが寄ってくると言われていた……」
「町の中にはあんまりモンスターいないからねー」
ダンジョンになったら出てくるけど。
もみじちゃんは麺を二三本ずつ、ちゅるるっとすすっている。
かわいい。
カナンさんはフォークで麺をキャッチすると、口に運んだ。
「あふい(あつい)!」
はふはふして麺を噛み切り、飲み込んだ。
「思った以上に熱いスープに浸かっていたのだな……。だけど、贅沢に塩が使われていて、不思議な味の深みがある。うん、これは美味い……」
お気に入りいただけたようだ。
私もにっこり。
結局その日、カナンさんは麺をすすることはできなかった。
あれ、特殊技能なんだなあ……!
ライブダンジョンの社長のWAGOOというひとと、兄が話し合って決めたみたい。
通信会議を終えた兄が、なんか凄いガッツポーズをして出てきた。
「斑鳩さんがどんどんやり手になっていく……。素敵」
受付さんの目がハートマークになっている。
……あれ?
なんか指輪増えてません?
「ふふふ、遠からぬうちに私をお義姉さんと呼ばせて見せましょう……」
不敵に笑う受付さんなのだった。
ついにやったのか!!
事務所はやり手ばかりの伏魔殿だなあ……と思いながら、私は隣のスタジオにいるエルフのカナンさんを呼びに行った。
彼女はここで、もみじちゃんに現代社会の説明を受けている。
もみじちゃんがバーチャライズしてエルフになるので、なんだか親近感を覚えるらしい。
「あなたたちがバーチャライズと呼ぶそれは、異世界でのあなた方の姿を映し出す鏡面魔法の一種だ。選択されたあなたがたの姿は、間違いなくそう見えるものになっている」
「ほえー、そうなんですねー」
もみじちゃんが聞き役に回っているぞ!
「こんにちはー」
私がスタジオに入ったら、エルフさんはすぐに見分けてくれた。
「その精霊の形ははづきね。色々話がついたのでしょう? この世界は私たちを迎え入れてくれるの?」
「そこはですね、うちの世界も人口とかヤバいんで、どんどん移民してもらいましょうって話になってます」
日本語とか常識とか法律とか勉強してもらわないとですけど。
カナンさんはエルフの一族の戦闘リーダーみたいな人で、モンスターを集落から遠ざけるために戦っていたら、こっちに迷い込んでしまったんだって。
どうやらあのダンジョンになった町、奥のほうがエルフの集落に繋がってるらしいよ!
これを聞いた迷宮省の人が、あちこちの事務所を引き連れて岩手県に向かった。
ライブダンジョンはDIzさんがまたジオシーカーで飛んでいった。
エルフさんたちを青田買いするつもりなのだ!
各事務所からエルフがデビューするぞお。
もちろん、配信に向いてないエルフもいるだろうということで、こう言う人達は社会を構成する側に回ってもらうそうだ。
多分、私が睨んだところ、各事務所一人がデビューするかどうか、くらいかなあ。
「配信というのか? それを用いることで、人の信仰の力を集めてかの魔王と戦う力とする。合理的なシステムだ。魔法の力が弱いであろうこの世界がかの者たちに対抗できていたのは、まさにその力なのだろう……」
「はあはあ」
「はづき先輩もう聞いてませんね! 良く分からない話になるとすぐ思考停止するー」
もみじちゃんにポコポコ叩かれた。
「あーごめんごめん。じゃあせっかくなんでラーメン食べに行きましょう」
「なんでせっかくでラーメン!?」
もみじちゃん、ツッコミが遠慮なくなってきたなあ。
いいぞいいぞ。
こうして、カナンさんを連れてラーメンを食べに来た。
エルフの人は、外見で配信者だってバレちゃうから外で活動する時は逆にバーチャライズする。
今は普通の外人さんの見た目になってる。
「ラーメンというのか? むむっ、この鼻孔をくすぐる香りは……」
「お出汁の香りですねー。カナンさんはお肉食べられるんですか」
「ああ、肉は食べる。ドルイドのクラスの者は年にしばらく肉を口にしない期間があるな。かつて存在していた私の世界の人間たちは、エルフは肉を口にしないと言っていた。これはドルイドに会った者がそういう話を広めたのだろう」
「はあはあ」
「はづき先輩が適当に聞いてるけど、色々大事な情報が出てきてる気がするなあ……」
訪れたのは、事務所の近くのラーメン屋さん。
昔ながらのお店で、いわゆる醤油ラーメン系のお店。
私は麺大盛りチャーシュー麺を頼んだ。
もみじちゃんはレディスサイズのメンマラーメン。
カナンさんには……。
「スペシャルラーメンがおすすめですね。味玉とナルトがついてくるので……」
「なるほど、分かった。……この二本の棒で食べるのか?」
「あ、そこは難しいよね。済みません大将、外人さんなのでお箸分からないので、フォーク下さい」
「はいよ」
「はづき先輩、こういうひとり飯しやすそうなところだとコミュ力高くなりますよね」
「美味しく食べるためだからね……!!」
ラーメンができるまでの間、「我々は魔王と戦っていた。エルフに執着するのは、闇に堕ちたエルフ、魔将ペルパラスだ。やつは必ず私たちを追ってこちらの世界に現れる。おお、目の前で料理を見られるんだな」「そうなんですよー。食欲をそそられますよね」などと他愛もない会話をした。
カウンター席ばかりだから、大将がラーメンを作る姿が見られるのは楽しい。
うちだとこういう本格的ラーメン食べられないもんね。
「うう、すごく重要な情報がさらさらでてきてる気がする~」
「もみじちゃん……じゃない、外ではシカコ氏! 眉間にシワを寄せてたらラーメン美味しくなくなるよー」
特製の醤油ダレにちょっと特製油を加えて、出汁の効いたお湯を注ぐ。
そこに自家製中細ちぢれ麺。
ネギ、メンマ、ナルト、味玉、チャーシュー、海苔がたっぷり。
スペシャルラーメンの完成だ!
続いて、私たちのラーメンも到着した。
「では食べ方をお見せします。こう手繰って、こう!」
ずるるるるーっ。
「おお! 音を立てて食べていいものなのか! 私たちの集落では、余計な音を立てるとモンスターが寄ってくると言われていた……」
「町の中にはあんまりモンスターいないからねー」
ダンジョンになったら出てくるけど。
もみじちゃんは麺を二三本ずつ、ちゅるるっとすすっている。
かわいい。
カナンさんはフォークで麺をキャッチすると、口に運んだ。
「あふい(あつい)!」
はふはふして麺を噛み切り、飲み込んだ。
「思った以上に熱いスープに浸かっていたのだな……。だけど、贅沢に塩が使われていて、不思議な味の深みがある。うん、これは美味い……」
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結局その日、カナンさんは麺をすすることはできなかった。
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