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夏めく私の充電編

第231話 きら星はづきと魔将の癒着疑惑が消し飛ぶ伝説

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 きら星はづきが魔将と癒着!?
 戦わない配信者の存在意義とは!!

 みたいなセンセーショナルなニュースが一瞬流れたけど、なんか翌日には別の私のニュースで上書きされてた。

『きら星はづき、始球式で150km/hのストレート!! ノーバン(当たり前だ)でストライク! こんな強肩の女子高生がどこに隠れていたのか……!!』

 めちゃくちゃ話題になってる。

 なので、みんなに反応などを聞いて見るべく雑談配信とかするのだ。

「お前らこんきらー。今日は雑談配信なんですけどー。私が魔将とつるんでるみたいなニュースあったでしょ。もうないけど」

※『こんきらー』『こんきらー』『アンチが流したニュースなw』『週刊醜聞がガーッと発表してたなあ』『あれ読んで腸(はらわた)煮えくり返ってたけど、その日の夜のはづきっちの始球式で腸冷えくり返ったわ』

「あれねー。バッティングもしてたから、ピッチングの練習もしてみたんだよね。フォームとか野球に詳しいスタッフさんに教えてもらって、まだストレートとシンカーしか投げられないんですけど」

※『シンカー!?』『なんちゅう球を覚えてるのw!』『そんな女子高生見たこと無いわw』『何キロ出るの?』

「えっと、シンカーはなんか体が横に回転するんですけど、こっちの方が投げやすくて155km出ますねー」

※『155kmwwwww』『なんちゅう肩しとるんだw』『ツイスターゲームは弱いがピッチャーとしての才能がある女』『きら星お前入団しろwww』

「多分、同接数パワーのバフが掛かってるお陰だと思うんですよねー。バーチャライズしてない私だと、140kmくらいしか」

※『速い速い速いw』もんじゃ『ちょっと待ってくれ。女子の球速世界記録が137kmだぞ』『本当か有識者!?』『なんで記録に残らないところで世界記録出してるんだよw』『なんだこの女ww』

 なんかみんなが喜んでくれているようで何より。
 ちなみにスピードを測ってくれていた受付さん、腰を抜かすくらい驚いて、「なんで配信者やってるのはづきちゃん!!」とか言ってきたのだった。
 そりゃあもう、配信者はマイペースでやれるからですよ……。

「今日はみんなの反応が見たかったんですよね! ありがとう~。いい感じの反応が見られました。そっかそっか。私はもっと野球に力を入れたほうがいい……」

※『違う違うw!』『ちゃんと配信やってw』『ちょっと球速が早かっただけで……あ、ちょっとどころじゃないんだな』『はづきっちは打撃センスもヤバいぞ』

「はっ、150km台のストレートとカーブならバッティングセンターで九割九分打てますねー」

※『強い』『そりゃ、普段からあの動体視力してるからな……』『本気になったら十割だろうな』

 私への解像度が高い……。
 この日の配信は、その後ワイワイと雑談をして終わった。
 みんな魔将関係の話を全然しなかったなあ。

 ツブヤキックスをスーッと探してみても、アンチの人たちが陰謀論的な話をちょこちょこしてるだけだ。
 うんうん、すっかり沈静化している。
 私はアンチの人たちのツブヤキを保存した。

 後でどっちがより変なことを言ってるか比べて遊ぼう……。

 そんなことをしていたら、ザッコで風街さんから連絡が……!

『はづきさん、ちょっといいかな? 迷宮省の人間として、魔将の話を聞きたいんだけど』

「あっ、はーい」

 私が待ち合わせ場所に指定したのは……。
 最近通い出したバッティングセンターだった。

「バッティングセンター!!」

「おぉ~。はづきちゃん、変わったところに通ってるねぇ……」

「風街さんだけだと思ったら、はるのみこさんまで!!」

 この二人はライブダンジョンでユニットを組んでる、ゼロナンバーズなのだ。
 でも、迷宮省の所属は風街さんだけで、はるのみこさんは特に何も……。

「みこはねえ、ノリで来たんだよねぇー。超忙しくて暇とかないんだけど、でもノリで……!」

「の、ノリでしたかあ」

 マイペースな人だった。
 その後始まる、私とみこさんのバッティング対決。

「うおわー! みこをなめんじゃねぇ~!!」

 気合とともにバット一閃……空振り!

「うわぁ~」

 くるくる回ってる!
 配信のままの姿だ……!!

「じゃあ次は私が……。あ、130km? あちょっ」

 カキーン!

 球速が遅いから、飛距離はそこそこ。
 バックネットに当たって落ちた。

「ひ、ひぇ~! はづきちゃん、猛打者じゃーん! みこはとんでもない相手に勝負を挑んでしまった……」

「みこっちはちょっとおとなしくしててね! 私の仕事があるので! えー、おほん! じゃあはづきさんが魔将と会ったときの話を聞きたいんだけど……。彼は本当に、友好的だったのね?」

「そうですねー。バングラッド氏は今はゲームに夢中で、侵略とかはしてない感じでしたねー」

 あの時はスーパーオクノカートで一位取ってたけど、その後は普通に一般参加者に負けて悔しがってたもんね。
 カートを極めるまで、あの人は侵略に移らないと思う。
 というかそもそも、あの人は侵略とかそういうのに興味ない気がするなあ。

「じゃあ次の質問。対戦してみてどうだった? 彼は、魔将は何かをしかけてこなかった?」

「妨害とか全然してこなかったですね! むしろ一般参加者の人が妨害アイテム使ってきてこてんぱんにされました。私は手加減してもらった……! ゲームは全般的に不得意なので……」

「魔将が手加減!!」

 なんか風街さんが衝撃を受けていた。

「どうやら、大罪勢とは全然違うみたいだね……。長官としては、あなたが騒ぎになってる件は気にするまでもないという方針だけど……。はづきさんは今、たくさんの人達から注目されてる。その中には、あなたを良く思ってない人もいるから」

「あっはい! 気をつけます! こう、脇を締めて……」

「そうそう、脇を締めて……」

「バットを振る!」

 カキーン!!
 飛んできた速球が、きれいに吹っ飛んでいった。
 いやあ、やっぱり速度出てる方がやりやすいなあ……。

「ま、まあはづきさんなら大丈夫でしょ。大丈夫……かな……」

 なんかひきつった顔で風街さんが呟くのだった。
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