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夏めく私の充電編

第228話 とびだせ、レースゲーム伝説

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『最近入り浸っている我がこのゲームの遊び方を解説しよう。これがアクセル、これがブレーキ、ハンドルの操作はこう。アイテムはこちらの操作で……』

「ほうほうほう」

 バングラッド氏、教えるのがなかなか上手い。

「本来なら不倶戴天の敵のはずでしょう? なのに肩を寄せ合って操作説明受けてるのはどういうことなんですの?」

※『カンナちゃんが戸惑っておる』『はづきっちならやりかねないということで……』『敵意がない相手の楽しい説明はちゃんと聞くんだなw』『あっ、なんかジョークを言い合って笑ってるぞ!』

 ははは、すっかり打ち解けてしまった。
 だがここでバングラッド氏、ギラリと兜の奥で目を光らせる。

『レースが始まってしまえば、我とうぬらは敵同士! 魔将バングラッドの名にかけて手加減はせぬからな……! 叩き潰してくれよう!』

 おお、すごい覇気だ!!

※『魔将っぽいぞ!』『はづきっちが戦ってきた相手の中でトップクラスの強キャラだからな』もんじゃ『ゴボウを直撃して生きているから、大罪勢より格上なのは間違いないな……。問題はこれがレースゲームをするための発言なことだが』

『ちなみに最初の3レースは慣らし運転だ。手加減をしてやるからな……』

「やさしい~」

「なんでこの魔将こんなに優しいんですの」

※『な、馴れ合いだーw』『初心者をゲームの沼にはめる正しいムーブをしとる』『マナーがいい魔将だなあw』

 こうして始まった、スーパーオクノカート!
 私はヒロインキャラのラムハちゃんという女の子を選択した。

 体格が細くて小柄なので、全体的な重さが少なく、スピードが出やすいらしい。
 その代わり、ウェイトが無いからぶつかられると弾かれたりスピンしたりしやすいとか。

 バングラッド氏は邪神メイオーを選択。
 大柄でスピンに強いけど、重いので加速の立ち上がりが悪い。

 カンナちゃんはポンコツ三等兵ダミアンというドラム缶ロボっぽいキャラを選んだ。

 レーススタートです。
 私、ぶいーんと走らせたら、いきなりコース外に飛び出していった。

「あひー!」

 壁に当たって止まったら、上から神様の手みたいなのが降りてきて私を吊り上げ、コースに戻した。
 うへへ、ありがとうございます。
 また走り出すと、ビックリマークがコース上にある。

「あひー! ぶ、ぶつかるう」

 ぶつかった。
 と思ったら突き抜けて、ビックリマークがアイテムに変わる!

 ピコーン!と音がした。

『エナジーボルト』

「こ、これを使えば……!? えいっ!」

 私のカートから、バリバリと紫色のビームが飛ぶ。
 すぐ前にいたカンナちゃんに当たった。

「あーれー」

「カ、カンナちゃーん!?」

 スピンしたカンナちゃんと、巻き込まれてスピンする私。

「あーひー」

『レースは過酷ぞ! 普段は仲間と言えど、ここで敵味方に分かれる! 勝者は一人しかおらぬのだ!!』

 バングラッド氏が私たちを周回遅れにして走り去っていった。
 て、手加減とは一体……!

 で、なんかゲーマーの人とバングラッド氏が互角にやりあってる。

『ぬう! やるな! ぐわああああ! ここで妨害か! させんぞ、加速の乱れ雪月花!!』

 雪! 月! 花! とかなんか文字が出てきて、バングラッド氏が加速した。
 うほー、はやいはやい!

 ゲーマーの人と最後まで競り合いながら、バングラッド氏は一位になった。
 つ、強い。

 私とカンナちゃんはヘロヘロになりながら走り、9位と10位だった。
 私がビリの方だよ!

※『どんまいw』『はづきっち、運転はめちゃくちゃ苦手だったんだな……w』『カンナちゃんははづきっちに付き合ってトロトロ走ってくれたなw』

『初めてはそんなものだ。だが走るという感覚が掴めてきただろう。ではあと二戦行くぞ!』

「あひー」

「まだやるんですのー!?」

 ということで。
 今度はカンナちゃんも本気で走ったようだ。

 私は……ダントツのビリ!!!!
 うおおお、なんという難易度!
 凄く難しいゲームだ……ゴボウも使えないし。

 そこに、広島VS大阪のシャツを着たおこのみが近づいてきた。

『はづきっち……。頭で考えるんじゃない。フィーリングだ、フィーリング! カートをゴボウと思ってコントロールするんだ! くっ、センシティブではないことを言ってしまった……』

 そう言いながら、おこのみは去っていく……というか同じレースのプレイヤーじゃないか。
 それに、なんかレースのプレイヤーに見知った名前が増えているような……。

「お、お前らがなだれ込んできている! リスナー参加型になってるー!!」

※『イエス!!』『さっきは対ありでした!』『すげえ競争率だぞこれは』

 ゲームの趣旨が変わってる!

 そして三レース目がスタートした。
 私はおこのみの教えを思い出す。

 フィーリング……!
 カートがゴボウ……!?

 つまり……へろへろ走ってぺちっと当たるくらいのつもりで走るのか!

 私、開眼!
 他のリスナーさんをアイテムで弾き飛ばし『ウグワーッ!! はづきっちに弾き飛ばされた!! スクショーっ!!』
 私は突き進む!

 で、出た、加速の乱れ雪月花!
 私は猛加速し、先行していたバングラッド氏と競り合う。

『がはは! いいぞいいぞ!! ついに目覚めたようだな! 将来が楽しみだ! ちなみに我はここでゴール』

「えっ、なんで?」

『我、うぬよりも一周速く周り終わってるので。頑張れ!』

「あひー」

 カートの道は長く険しい……!!
 私、開眼したけど8位だったのだった……!!

 こうして魔将バングラッド氏と楽しく遊んだ私とカンナちゃん。
 じゃあまた遊ぼうね、と約束をして別れた。

 ツブヤキックスで、魔将とカート、がトレンドになっていたのに気付いたのはしばらく後なのだった。
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