上 下
195 / 517
年度末な私の決戦編

第195話 オープニングイベント異常なし!伝説

しおりを挟む
 今日は何の日?
 そう!
 カンナちゃんがVRフリースペースの総合ロビー拡張で、宣伝大使を務める日です!

 私が見に行かねばなるまい……。
 朝食の後でいそいそと準備をしていたら、兄からザッコで連絡が来た。

『今日は事務所に来ないのか? 研修生が会いたがっているが』

「カンナちゃんの晴れ舞台を見学に行くので……」

『そうか。伝えておこう』

 カンナちゃん関連だと物分りがいい兄。
 彼女が関わると、私のやる気が天元突破するのが分かってるんだな、きっと。

 そんなこんなで、オープニングイベントに顔を出しますよ!
 今日は完全なオフ。

※『こんな記念日をオフにするとは!?』とかお前らには驚かれていた気がするけど、『カンナに会いに行くからオフなんだろう……』とか真実を理解した人もいた。
 そういうことなのだよ、フフフフフ。

『あ、はづきっちオープニングイベント行くの?』

 たこやきから連絡入ってる。

「そうですー。楽しんできますー。一般アバター使うのでバレないと思いますー」

『そっか。じゃあね、僕が新しいの作ってみたからこれ仕込んでいって』

「なんなんです?」

『一般アバターの下に丼アバター仕込むMOD。さらに丼の中にきら星はづきアバター仕込めるよ』

「ま、マトリョーシカー!」

『その反応がほしかった。ありがとう! じゃあ楽しんできてね』

「はーい、こちらこそありがとうー」

 和気あいあいとやり取りを終えた。
 兄と父以外で肩肘張らずにおしゃべりできる貴重な異性だな。
 たこやきは大事にしよう……。

 ということで、面白いものをもらってしまった。
 私はリアルの私にちょっと似ている、一般のアバターを選択。
 顔とか髪型とかプロポーションは事前にいじってあるけど。

 シュッとした体型というのを経験してみたかったんだよね……。
 そしてVRへゴー!

 621ロビーに降り立っても、誰も私にそこまで注目しなかった。
 きら星はづきや丼じゃないと、こういう反応なのが普通なのね。

「これは行動しやすい……。注目されないのはこんなに楽なんだなあー」

 ほほほ、と快適さを堪能しながらフリースペースに移動する私だった。
 今後、フリースペースは総合ロビーという名前になるんだそうで。

 降り立ったら人、人、人!
 どこまでも続く、無限の人混み!

「あひー、とんでもないことに!」

 そうすると、なんか近くにいた角の生えたおじさん風のアバターが親切に教えてくれた。

『そりゃあそうさ! 日本中のVR者たちが集まってるんだ。今回のビッグイベントは土曜日に被せてきたし、みんな参加してくれって言ってるようなもんだぜ!』

「な、なるほど~」

『お前さんは誰かと参加するのかい? 一人? だったら気楽だな! 何よりも一人が最高だ。嫉妬しなくていいもんな。楽しんでいってくれよ! 最後には大罪的ビッグイベントも待ってるからよ! 糧になってくれ!』

「あ、はーい、ありがとうございますう」

 親切な人だなあ。
 私は一人、まったりと総合ロビーを行く。
 キョロキョロ見回し、セレモニーが行われる場所を探すのだ。

 おっ、あれは……。

『カンナちゃんまだかな』『楽しみー』『お嬢が出てきたらみんなで呼ぼうぜ』『今から練習しない?』『いいな!』『じゃあ声を合わせて……』『お嬢~!!』

 カンナちゃんのリスナーさんたちだ!!
 私はいそいそと彼らの中に混じった。

『お嬢~!』「お嬢~!」

 楽しくコールをして、和気あいあいと楽しむ。

『まさかカンナちゃんがこんなにビッグになるとはね! 嬉しい~』

「私も私も。デビュー前から絡みがあったけど、本当にビッグになってくれてうれしい」

『絡み……?』

 ハッ!

「で、デビュー前のアカデミー時代から追っかけてて」

『おおー、古参~!!』

 危ない危ない。
 私が配信者だとバレないようにしないと。
 でもまあ、あんまり個性を出してない一般アバターのままだから、そこまで怪しまれなかったみたい。

 配信者との特別な関係があるって吹聴する人は、よく出るしね!
 ツブヤキックスだと、よくおこのみが『俺は最初にはづきっちの配信見てた一人だぞ!』とか言って嘘認定されまくってるなあ。
 あれは本当なんだけどなあ。

 そんなこんなで時間を潰していたら、いよいよイベントの始まりがやって来た。
 私はカンナちゃんのリスナーさんに混じって、うおおおーっと歓声を上げている。
 この一体感!

 なるほど、アイドルのコンサートとか行ってみんなで叫ぶのはこの気持ちよさがあるのかあ!
 何事もやってみないと分からないものなのだ!

 カンナちゃんが笑顔で手を振ってくれる。
 水無月さんと卯月さんも、リスナーさんたちが来ていて声援を浴びているではないか。
 よきよき。

 トライシグナルもすっかり大きくなったなあ……。
 私は腕組みしながら笑顔で頷くのだった。
 いつもよりも腕を組みやすいぞこのアバター。

『みんなー! こんにちはー!!』

 トライシグナルの三人が、声を揃えている。
 爽やか~。

『総合ロビー公式サポーター、トライシグナル! リーダーのカンナ・アーデルハイドですわ! 皆様、ごきげんようー!』

 うおおー!
 カンナちゃーん!!

『同じく公式サポーター、トライシグナルの水無月みなでーす! この日のために禁煙して願掛けしてきました。よろしくー!』

 いつもはダウナーな水無月さんが今日は声を張り上げていて大変可愛い。

『みんなー! サクラサク! 卯月さくらでーす! あっ、公式サポーターです! あとトライシグナルね!』

 三人の中でのポン担当、卯月さんがいつものようにやらかしたので、ドッとみんな笑った。
 うんうん、いい感じいい感じ。

 さらにライブダンジョンのグループの四人が挨拶している。
 おお、リスナーの数はあっちの方が多いかもしれない。
 だけど熱量はトライシグナルも負けてないぞー。

『負けないように応援しなくっちゃ!!』

「で、ですねー!!」

 隣のリスナーさんと、頑張るぞーっと誓い合う私なのだ。
 ああー、配信者のファンってとってもいいものですねえ。
 なんだか元気を分けてもらえている気がする……。

 このイベントはもう大成功間違いなしですわ。
 何事もなく進んでいくに違いない……。

 私の心のなかで、お前らが『フラグ、フラグー!』とか叫んでいるのだった。
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

【ダン信王】#Aランク第1位の探索者が、ダンジョン配信を始める話

三角形MGS
ファンタジー
ダンジョンが地球上に出現してから五十年。 探索者という職業はようやく世の中へ浸透していった。 そんな中、ダンジョンを攻略するところをライブ配信する、所謂ダンジョン配信なるものがネット上で流行り始める。 ダンジョン配信の人気に火を付けたのは、Sランク探索者あるアンタレス。   世界最強と名高い探索者がダンジョン配信をした甲斐あってか、ネット上ではダンジョン配信ブームが来ていた。 それを知った世界最強が気に食わないAランク探索者のクロ。 彼は世界最強を越えるべく、ダンジョン配信を始めることにするのだった。 ※全然フィクション

処理中です...