上 下
178 / 517
新年! 私の心機一転編

第178話 推しがフィギュアになるんだが伝説

しおりを挟む
「お前ら、こんきらー! 今日はですねー、日野市豊田の方に行ってそこの空き家ダンジョンを探索して来ました! 普通のモンスターと怨霊相手だったんで楽だったんですけど、もうすっかり嫉妬の人たちはVRを拠点にしたんですねー」

※『こんきらー』『こんきらー』『新年からどんどんダンジョン攻略してて偉い』『大物配信者とは思えない位ほど活動がマメなんだよな……』『あの登録者数なのにコツコツ小さいダンジョンから潰して行っている……』

 最初の挨拶とやり取りは慣れたものなのだ。
 私は例の件を劇的な感じで発表すべく、機会を伺っていた。

 衝撃的ニュースのあまり、ベストラフィングカンパニーさんの予約サイトがアクセス過多で落ちてしまう危険性もある……。
 私の責任は重大だぞ。

「お正月はみんな何食べたー? 私はお餅を」

※『予想通りの回答w』『はづきっち季節ものは外さないもんな』『はづきっちお餅は何が好きなの?』『うちは正月から洋風おせち!』

「お餅は全部好き! 洋風おせちもいいねー。来年はそっちにしてもらおうかな……」

※『今日のはづきっちは普通の雑談をしているぞ』『おかしい……。いつもの天然な感じが薄く、何か緊張を感じる』『重大情報を隠しているのではないか』

 す……鋭い……!!
 配信をしながら、私の手は汗でしっとりしていた。
 こういう発表を配信内でタイミングを伺ってやるというのは初めてなのだ……!

「そ、そんなことないですよー。私はいつも通りですよー」

※『本当にござるかぁ?』『隠すのが下手なはづきっち』『全部バラして楽になっちゃいなさい』

「ま、まるで私がとんでもない情報を隠してるみたいに! ちゃんとお前らが喜ぶ情報ですよー」

※『ざわっ』『俺らが喜ぶ!?』『なんだろう……』『グッズ発表よりももったいぶるということは……』『もしやフィ』

「全部言ったらブロックですよー! 忖度! 忖度してください!!」

※『草』『アッハイ』『俺たちの姫がそう言うんじゃ仕方ない』『なんだろうなー楽しみだナー(棒)』

 お前らが理解度の高いリスナーで本当に良かった。
 私はとりとめのない話を十分くらいしたところで、そろそろいいかと発表することにした。

「えー、突然ですが重大発表を」

※『わー!』『ぱちぱちぱちぱち』『888888888』『重大? お付き合いしている男性がいるとかですかね?』『な、なにぃーっ!!』いももち『ゆ、ゆるさーん!!』

「うーわー! 落ち着いて! 落ち着いて!」

 コメント欄がなんかあらぬ予測でグワーッと加速した。
 私は慌てて、机の上に借りてきていた試作品を載せる。

「えーと、これです。これ。なんだか分かりますか?」

※『アッ』『そ、それは……!』『フィギュアだ!』『はづきっちフィギュアだー!!』『ジャージ姿のはづきっち!』『躍動感~』『ゴボウが五割増で太いw』

 盛り上がるコメント欄。
 こっちはいい方の加速だ!

「じゃーん。実はベストラフィングカンパニーさんから、春にフィギュアが出ることになりました。これはテストモデルで、私の3D映像を立体化したものなんですけど……この間採寸に行ってきまして。武器の持ち替えができて、ゴボウと展開バーチャルゴボウとトマト……なつかしー。あとレーザーブレードですね。表情も8種類ついてきて簡単に付け替えできるそうです」

※『なるほど、ジャージだというのにはづきっちのプロポーションがよく分かる』『リアルでは無いのだな……』おこのみ『マンガ的だけどこっちも好きよ』『小さいサイズだと思ったけど、オプション盛りだくさんなのね』

 おこのみはなんでもいけるなあ。

「正式に採寸したモデルはまだラフな3Dモデルでしかないんで、こんな感じで……」

 もらってきた画像を見せる。
 くるくる回転させたりする。

 ポーズは一緒なんだけど、より私がリアルになった感じ?

※『あれっ、ちょっと頭身上がってる……?』『あ、はづきっちの背が伸びてるんだ』『一年で成長したんだなあ……』『3D映像だとお姉さんに見える』『躍動感がマンガっぽいパースのままなの凄いなw』『待て! 手足に分割線が……。可動する……!?』

「可動式らしいです……! 関節に、カーボン? と真鍮線? とか使って強度と軽さを確保してるとか……。ということでですねー。春に発売なんですけど、まずは完全受注生産で、ある程度以上予約があったら一般販売もするそうで……」

※『なにっ!』『なんだって!?』『予約サイトまだできてねえのか!』『あった! ここだ!』『乗り込めー!!』『うおおおおおおおおおおお』

「早い!? みんな発表前に探し出して一斉に予約し始めるの早すぎるんだけど!? あー、サイトが落ちた」

※『サーバーが弱いぞ!』『なにやってんの!』『今一万人くらいが同時に予約にアクセスしたっぽいな』

 一万!!
 つまり一万個の予約は確定ということだ。
 どういうことなの。

※カンパニー『い、今復旧しました! 行けます!』『担当の人もよう見とる』『仕事が早いぞ!』『よし、乗り込め!』『俺たちの本気を見せてやる!』『うおおおおおおおおおおお』おこのみ『一家に一つはづきっち!!』

 またサーバーが落ちかけたり、復旧したりを繰り返しつつ……。
 なんとか配信時間中に、みんな予約を完了したみたいだった。

 二万円もするのに、大丈夫かお前らのお財布……!!
 私は思わず心配してしまうのだった。

※『アクスタや抱きまくらであれくらいの威力だっただろ? ってことはフィギュアなんかもう聖遺物みたいなもんじゃん』『強そう』『家の四方に配置して、さらに観賞用と布教用と保存用を買おうぜ』

「ひ、一人一個ですー!」

 思った以上に大変なことになっていた!
 兄は今頃、イカルガビルがさらに一個建てられるぞ、と考えているのではないか……。

※カンパニー『皆様たくさんの予約ありがとうございます! 一瞬で一般販売決定量に到達しました! 一般でも販売します!』

※『うおおおおおおおお』『やったあああああああ』『カード使えなくても買える!』『待ってます!』

 なにかあるたびに歓声が聞こえてくるようだ。
 喜ばれている……。
 これは近く、フィギュア第二弾とか企画されそうだなーと思う私なのだった。

 だとすると、体操服形態、水着形態、チベスナ形態、ブタ形態、丼形態の5つがいけるかな。
 いやいやいや、丼なんか誰が喜ぶんだ……!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...