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先輩! 私の新人フォロー編
第151話 迫るデビューと打ち合わせ伝説
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私による、釣り垢作成、嫉妬勢釣り上げ配信は大いに受けた。
あと、物凄く物議を醸しだした。
『この捨て垢、はづきっちなのでは……!?』『まさか我々アンチに混じって行動を監視されているのでは……!?』『登録者数1000万を超える配信者のフットワークじゃないぞ……!!』
なんかアンチ界隈に激震が走ったみたい。
そして多分、お前らが捨て垢を作ってアンチと闘争を開始したりしてる……。
争いは何も生まないですねー。
そんな話を、事務所でやったのだった。
パーテンションで区切られてるだけの社長室。
いるのは兄と私。
「先日の釣り作戦で引っかかったのは、埼玉に住むフリーターの男だったそうだ。お前が自分の考えた未発表のネタを脳内サーチして盗作したという妄想、そしてそれが受けた嫉妬からアンチになり、そこを嫉妬勢に付け込まれたな」
「女子高生に嫉妬を……!!」
「表向きは分からんからな。女子高生という設定の成人女性や、ムキムキの巨漢かも知れん」
「あー」
私の正体がムキムキの成人男性説とか流れてたもんね。
どこからそんな考えが出てくるんだろう。
とりあえず、嫉妬勢はSNSを使った勧誘方法をしていて、結構な数の人々が絡め取られているのではないかという話になった。
嫉妬勢に落とされた人が、新しいアンチを勧誘してまた嫉妬勢に落とす……。
ネズミ講みたいにもりもり増えていくのかも。
ひえー。
「こわいこわい……もぐ」
「怖がりながらおもむろに買ってきたドーナツを食べるな。ここは一応社長室だぞ」
「お兄ちゃんだってポテチ食べてるじゃない」
「社長だからいいんだ」
「ずるい」
「ずるくない」
どうでもいい話をした後、社長専用冷蔵庫からコーラをもらうことに成功した。
私はスカッと爽やかにコーラを飲みつつ、社長室の外へ。
まあパーテンションを一枚抜けると事務室なんだけどね。
すると、シカコ氏とビクトリアが一緒にやって来たところだった。
「おはよー」
受付さんが挨拶する。
この人は朝も昼も夜も、挨拶はおはようだ。
業界用語なんだって。
「おはようございますー」
「グッモーニンー」
ふにゃふにゃ挨拶した二人。
シカコ氏が私を見つけて、トテテテと駆け寄ってきた。
「はづき先輩! これこれ」
「あっ、なんですか」
「新作の惣菜パンです。私が作ったかぼちゃパン。生地にかぼちゃを練り込んで、かぼちゃの種とほくほくに蒸したかぼちゃを埋め込んであります」
「おほー」
私はすごく笑顔になってこれを受け取った。
大変美味しい。
かぼちゃ尽くしだあ。あまーい。
事務所はそこまで広くないので、マネージャーさんが入ってきたら、室内にある椅子が全部埋まる感じになった。
そこで近づいてきたデビューイベントの打ち合わせを始める。
「舞台になるダンジョンについては、業者に調達をお願いしています。できるだけ発生したてがいいので、ギリギリまでアンテナを立ててくれていますから」
マネさんが説明してくれる。
事務所で一番年上の女の人だけど、物腰は柔らかいし仕事は一つ一つ丁寧だ。
そしてやり手!
なんか、若い子を全力で応援できるのが楽しくて仕方ないらしい。
母が推薦してきただけある。
私は行き当たりばったりで発生したダンジョンに突撃だけど、彼女はきちんと段取りを組めるように用意してある。
「これ、昨日作ってきた資料です。機械翻訳だけど英訳も付けてますからね」
「サンキュー」
にくい心遣いに、ビクトリアも微笑む。
まあ彼女日本語読めるんだけど。
プレゼン資料は、いらすとショップさんという可愛いイラストであらゆるシチュエーションを再現するサイトのフリーイラストを、有料になるギリギリ直前の24種類使って作られていた。
うーん、可愛い資料だ……。
シカコ氏は歌、ビクトリアは物騒武器を次々使うパフォーマンス。
最後は二人でダンジョンのボスか、それと目されるモンスターを倒して終わり。
途中にゲスト出演も挟む、と。
私はスタッフとして二人の手伝いをするけど、自分の配信枠は立てずにちょこちょこ映り込んで構わないと。
「これははづきさんの知名度を利用しています。それにちょこちょこ映り込んだ方が面白いし話題になるでしょう?」
「確かに……!」
この人、面白いというものをよく理解してる……!
すごい人だ。
私とシカコ氏とビクトリアが尊敬の目になる。
受付さんも思わず唸った。
「だ、だから私には台本が無いんですね」
「ええ。はづきさんは素のままで喋ってください。普通にマイクははづきさんの声も拾いますから。それとはづきさんは保険の意味もあって」
「あ、はい。保険?」
「そうです。想定外の状況が発生した時に、はづきさんに対処してもらいます。デウス・エクス・マキナですね」
妙齢の女性の口からそういう文言が飛び出してくるのは面白いなあ!
ビクトリアも目をキラキラさせてる。
そういうの大好きだもんね!
その後、台本の読み合わせをするというので私は事務所を追い出されてしまった。
マネさん曰く、
「はづきさんは新鮮な反応をしてほしいので、今回はあえて読み合わせから外しますね。でも本番では何も知らないはづきさんの反応で、お二人のペースも乱れると思いますから。そこもまた面白さということで」
で、できる……!!
配信の面白さって、割りと昔あったっていうバラエティ番組とかいうのの面白さに近いみたい。
リスナーから見て、予定調和にならない面白さというか。
凄いことになってしまったぞ……。
私は戦慄した。
戦慄しながら、近場をぶらついて新作のスイーツを探すことにした──。
あと、物凄く物議を醸しだした。
『この捨て垢、はづきっちなのでは……!?』『まさか我々アンチに混じって行動を監視されているのでは……!?』『登録者数1000万を超える配信者のフットワークじゃないぞ……!!』
なんかアンチ界隈に激震が走ったみたい。
そして多分、お前らが捨て垢を作ってアンチと闘争を開始したりしてる……。
争いは何も生まないですねー。
そんな話を、事務所でやったのだった。
パーテンションで区切られてるだけの社長室。
いるのは兄と私。
「先日の釣り作戦で引っかかったのは、埼玉に住むフリーターの男だったそうだ。お前が自分の考えた未発表のネタを脳内サーチして盗作したという妄想、そしてそれが受けた嫉妬からアンチになり、そこを嫉妬勢に付け込まれたな」
「女子高生に嫉妬を……!!」
「表向きは分からんからな。女子高生という設定の成人女性や、ムキムキの巨漢かも知れん」
「あー」
私の正体がムキムキの成人男性説とか流れてたもんね。
どこからそんな考えが出てくるんだろう。
とりあえず、嫉妬勢はSNSを使った勧誘方法をしていて、結構な数の人々が絡め取られているのではないかという話になった。
嫉妬勢に落とされた人が、新しいアンチを勧誘してまた嫉妬勢に落とす……。
ネズミ講みたいにもりもり増えていくのかも。
ひえー。
「こわいこわい……もぐ」
「怖がりながらおもむろに買ってきたドーナツを食べるな。ここは一応社長室だぞ」
「お兄ちゃんだってポテチ食べてるじゃない」
「社長だからいいんだ」
「ずるい」
「ずるくない」
どうでもいい話をした後、社長専用冷蔵庫からコーラをもらうことに成功した。
私はスカッと爽やかにコーラを飲みつつ、社長室の外へ。
まあパーテンションを一枚抜けると事務室なんだけどね。
すると、シカコ氏とビクトリアが一緒にやって来たところだった。
「おはよー」
受付さんが挨拶する。
この人は朝も昼も夜も、挨拶はおはようだ。
業界用語なんだって。
「おはようございますー」
「グッモーニンー」
ふにゃふにゃ挨拶した二人。
シカコ氏が私を見つけて、トテテテと駆け寄ってきた。
「はづき先輩! これこれ」
「あっ、なんですか」
「新作の惣菜パンです。私が作ったかぼちゃパン。生地にかぼちゃを練り込んで、かぼちゃの種とほくほくに蒸したかぼちゃを埋め込んであります」
「おほー」
私はすごく笑顔になってこれを受け取った。
大変美味しい。
かぼちゃ尽くしだあ。あまーい。
事務所はそこまで広くないので、マネージャーさんが入ってきたら、室内にある椅子が全部埋まる感じになった。
そこで近づいてきたデビューイベントの打ち合わせを始める。
「舞台になるダンジョンについては、業者に調達をお願いしています。できるだけ発生したてがいいので、ギリギリまでアンテナを立ててくれていますから」
マネさんが説明してくれる。
事務所で一番年上の女の人だけど、物腰は柔らかいし仕事は一つ一つ丁寧だ。
そしてやり手!
なんか、若い子を全力で応援できるのが楽しくて仕方ないらしい。
母が推薦してきただけある。
私は行き当たりばったりで発生したダンジョンに突撃だけど、彼女はきちんと段取りを組めるように用意してある。
「これ、昨日作ってきた資料です。機械翻訳だけど英訳も付けてますからね」
「サンキュー」
にくい心遣いに、ビクトリアも微笑む。
まあ彼女日本語読めるんだけど。
プレゼン資料は、いらすとショップさんという可愛いイラストであらゆるシチュエーションを再現するサイトのフリーイラストを、有料になるギリギリ直前の24種類使って作られていた。
うーん、可愛い資料だ……。
シカコ氏は歌、ビクトリアは物騒武器を次々使うパフォーマンス。
最後は二人でダンジョンのボスか、それと目されるモンスターを倒して終わり。
途中にゲスト出演も挟む、と。
私はスタッフとして二人の手伝いをするけど、自分の配信枠は立てずにちょこちょこ映り込んで構わないと。
「これははづきさんの知名度を利用しています。それにちょこちょこ映り込んだ方が面白いし話題になるでしょう?」
「確かに……!」
この人、面白いというものをよく理解してる……!
すごい人だ。
私とシカコ氏とビクトリアが尊敬の目になる。
受付さんも思わず唸った。
「だ、だから私には台本が無いんですね」
「ええ。はづきさんは素のままで喋ってください。普通にマイクははづきさんの声も拾いますから。それとはづきさんは保険の意味もあって」
「あ、はい。保険?」
「そうです。想定外の状況が発生した時に、はづきさんに対処してもらいます。デウス・エクス・マキナですね」
妙齢の女性の口からそういう文言が飛び出してくるのは面白いなあ!
ビクトリアも目をキラキラさせてる。
そういうの大好きだもんね!
その後、台本の読み合わせをするというので私は事務所を追い出されてしまった。
マネさん曰く、
「はづきさんは新鮮な反応をしてほしいので、今回はあえて読み合わせから外しますね。でも本番では何も知らないはづきさんの反応で、お二人のペースも乱れると思いますから。そこもまた面白さということで」
で、できる……!!
配信の面白さって、割りと昔あったっていうバラエティ番組とかいうのの面白さに近いみたい。
リスナーから見て、予定調和にならない面白さというか。
凄いことになってしまったぞ……。
私は戦慄した。
戦慄しながら、近場をぶらついて新作のスイーツを探すことにした──。
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