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受けてる私の拡大編
第61話 お忍び委員長コラボ伝説
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「ということで……。我々は今、はづきさんのコラボカフェに来ています……」
「あひー」
「はづきさん、鳴き声をあげてはいけません、気付かれますよ。企画倒れになってしまいます」
私は今……。
なうファンタジートップ配信者の風花雷火委員長とともに、自分のコラボが開催されているカフェに来ていた……!
今回は動画形式なので、コメント欄の合いの手はなし。
つまり風花委員長とマンツーマンなんだけど……。
時間がちょっと戻って秋葉原駅電気街口。
風花委員長と私は合流した。
バーチャライズしていない彼女は、小柄で長い黒髪の女の人で、思っていたよりも全然若い人だった。
水無月さんより若くない……!?
いや、年上の年齢はあんまり分からないんだけど。
「ふっふっふ、お待たせしましたはづきさん。このコラボ企画はですね、自由に話してもらっていいです。後でわたくしが編集しますから」
「な、なるほど……。なんで、私のコラボカフェ、行くんですか……?」
「それは今、一番旬だからです! ついに登録者数80万人を超えたそうですね、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
私はペコペコ頭を下げる。
「はづきさんは、個人勢ではトップクラスの登録者数を誇る超大物配信者になってきているわけですが……」
「ええっ、私が!」
「そう、あなたが! ですけど逆を言えば、わたくしたちはこの登録者の皆さん……生徒諸君を常に楽しませねばならないのです。ダンジョン配信は大切ですが、それ一辺倒ではみんな飽きてしまうでしょう?」
「な……なるほどー」
冒険配信者になってみて分かったことだけど、思ったよりもみんなダンジョンに潜らない。
月に三回とか四回くらいだ。
他は普通のアワチューバーみたいにゲーム配信したり、オフでコラボして遊びに行ったり。
思っていたよりも自由なのだ。
そうかあ……。
これはみんな、人気を保つためだったんだ。
「じゃあ行きましょうか。道すがら話しましょう。秋葉原の人波にまぎれて、わたくしたちの声は周囲に聞こえないでしょうから」
電気街口を出てすぐに、別のコラボカフェが見えてきた。
なうファンタジーコラボカフェ!!
「やってる……」
「もちろんやっています。ありがたいことです。そして今そーっと入り口から出てきた方に見覚えがあるでしょう」
「あ、八咫烏さんだ」
「ああして自らコラボカフェに通ったりして、ファンの生の声を摂取したりしているんです、わたくしたちは」
な、なるほどー。
ということはこういうイベント、何食わぬ顔で御本人がいたりするんだろうな。
「ちなみに斑鳩さんは在籍中、一度もコラボカフェに行きませんでしたが」
「あ、兄は人見知りなのと、孤独を愛する人なので……」
「ええ、とても面白い……いえ、いいキャラクターをした方でした」
大通りへと出る。
少し歩いた先にあるビルの3Fがコラボカフェだ。
「ふくろうカフェもありますね。わたくし、たまに通うんですが。アニマルセラピー」
「は、はあ。やっぱり委員長さんもストレスとか溜まりますか……?」
「この仕事はストレスとの戦いですから。セルフでストレス解消できないと長続きしませんよ。おっと、ここからは声を潜めましょう……」
エレベーターで、コラボカフェに向かうらしい男性たちと一緒になった。
出る時は、私たちを先に通してくれる。
私はペコペコしながら外に出た。
「ここがはづきっちのコラボカフェか……」
「楽しみですなあ」
「グッズは一人一種類一個までらしい」
「おお、購入制限付きとは……」
「既にグッズがマルカリに流れてて……」
「転売ヤー死ね」
あの会話、間違いなくお前らだ……。
顔を見たこともない80万人のお前らのうち数人が、今眼の前に……!
なんかちょっと感動する光景だ。
委員長さんはこの光景を見てうんうんうなずくと、冒頭の宣言を口にするのだった。
席に通されて、私たちは最小限の発声でお料理を注文する。
委員長さんはきんぴらゴボウとコーヒーフロート。
私はゴボウと鳥の甘煮にライスとアイスティー。
「このコラボは端的に言って正気ではありませんね」
そんな事を言いながら、風花委員長はめちゃくちゃ嬉しそうだった。
Aフォンでバリバリに撮影している。
そしてきんぴらを食べてからコーヒーフロートを飲み、うーんと唸った。
「未体験の食べ合わせ……!」
「そ、それはそうですよー」
私はゴボウと鳥の甘煮をオンザライスして、もりもり食べる。
「はづきさん、普通にがっつり食べてますねえ……! コラボで緊張しててももりもり食べる人はなかなか珍しいですよ」
「お、お腹がすくので……!」
ゴボウはうちとはちょっと違う味付けになってるけど、美味しい美味しい。
あっという間にライスと料理を食べてしまって、私はアイスティを飲み始めた。
隣で委員長さんが色々カフェの分析を話しているところで、周囲の音にも耳をそばだててみる。
「コースターかわいいー!」
「これだけで八種類あるらしいよ」
「エメラクさんが描き下ろしてくれたはづきっちグッズでしょ? 全部欲しい~」
「ほんと、推せるよねー」
女子にも好評で嬉しい……。
「普通にゴボウうめえ」
「今全国的にゴボウが品薄になってきてるらしいな」
「ゴボウ特需じゃん」
「じゃーん」
「あっ、ゴボウの木刀売ってるのか!」
「どう見ても配信者のグッズには見えぬ……」
「ボタンを押すと光るんだ」
「うわーっ、親の顔より見たゴボウの光」
「もっと親の顔見ろ」
みんな楽しんでくれている。
私は思わずニコニコした。
「はづきさん、すっかり配信者の顔になりましたね」
委員長に言われて、私は目を丸くした。
「は、配信者の顔ですか」
「皆さんに楽しんでもらいたい、楽しんでもらえて嬉しいっていう、そういう顔です。始まりはみんな自分のことですけど、いつかリスナーの方々を巻き込んで、みんなのことになっていくんですよね」
委員長が微笑む。
そして、
「いいことを言ってしまった。こういうところは、編集でカットします」
と無情に宣言した。
プロ意識~!!
「ではお腹も膨れたところで、河岸を移して歩きまわりましょうか」
「お腹も膨れて……?」
私が首を傾げたので、委員長さんがハッとした。
「まさかはづきさん、まだ食べるつもりで……?」
「あ、はい。メニューを一通り制覇しようと……」
「それは美味しい映像です……。わたくしはあまり食べられないので、その分をはづきさんに奢りましょう。さあ、食べて食べて……!」
わ、私が食べる姿がなんで美味しい映像なんだ……!
結局私は、コラボメニューを制覇し、満腹で帰宅することになったのだった。
なお、私がめちゃくちゃいっぱい食べてるところは、委員長さんの動画のサムネに使われて大いに受けた。
「あひー」
「はづきさん、鳴き声をあげてはいけません、気付かれますよ。企画倒れになってしまいます」
私は今……。
なうファンタジートップ配信者の風花雷火委員長とともに、自分のコラボが開催されているカフェに来ていた……!
今回は動画形式なので、コメント欄の合いの手はなし。
つまり風花委員長とマンツーマンなんだけど……。
時間がちょっと戻って秋葉原駅電気街口。
風花委員長と私は合流した。
バーチャライズしていない彼女は、小柄で長い黒髪の女の人で、思っていたよりも全然若い人だった。
水無月さんより若くない……!?
いや、年上の年齢はあんまり分からないんだけど。
「ふっふっふ、お待たせしましたはづきさん。このコラボ企画はですね、自由に話してもらっていいです。後でわたくしが編集しますから」
「な、なるほど……。なんで、私のコラボカフェ、行くんですか……?」
「それは今、一番旬だからです! ついに登録者数80万人を超えたそうですね、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
私はペコペコ頭を下げる。
「はづきさんは、個人勢ではトップクラスの登録者数を誇る超大物配信者になってきているわけですが……」
「ええっ、私が!」
「そう、あなたが! ですけど逆を言えば、わたくしたちはこの登録者の皆さん……生徒諸君を常に楽しませねばならないのです。ダンジョン配信は大切ですが、それ一辺倒ではみんな飽きてしまうでしょう?」
「な……なるほどー」
冒険配信者になってみて分かったことだけど、思ったよりもみんなダンジョンに潜らない。
月に三回とか四回くらいだ。
他は普通のアワチューバーみたいにゲーム配信したり、オフでコラボして遊びに行ったり。
思っていたよりも自由なのだ。
そうかあ……。
これはみんな、人気を保つためだったんだ。
「じゃあ行きましょうか。道すがら話しましょう。秋葉原の人波にまぎれて、わたくしたちの声は周囲に聞こえないでしょうから」
電気街口を出てすぐに、別のコラボカフェが見えてきた。
なうファンタジーコラボカフェ!!
「やってる……」
「もちろんやっています。ありがたいことです。そして今そーっと入り口から出てきた方に見覚えがあるでしょう」
「あ、八咫烏さんだ」
「ああして自らコラボカフェに通ったりして、ファンの生の声を摂取したりしているんです、わたくしたちは」
な、なるほどー。
ということはこういうイベント、何食わぬ顔で御本人がいたりするんだろうな。
「ちなみに斑鳩さんは在籍中、一度もコラボカフェに行きませんでしたが」
「あ、兄は人見知りなのと、孤独を愛する人なので……」
「ええ、とても面白い……いえ、いいキャラクターをした方でした」
大通りへと出る。
少し歩いた先にあるビルの3Fがコラボカフェだ。
「ふくろうカフェもありますね。わたくし、たまに通うんですが。アニマルセラピー」
「は、はあ。やっぱり委員長さんもストレスとか溜まりますか……?」
「この仕事はストレスとの戦いですから。セルフでストレス解消できないと長続きしませんよ。おっと、ここからは声を潜めましょう……」
エレベーターで、コラボカフェに向かうらしい男性たちと一緒になった。
出る時は、私たちを先に通してくれる。
私はペコペコしながら外に出た。
「ここがはづきっちのコラボカフェか……」
「楽しみですなあ」
「グッズは一人一種類一個までらしい」
「おお、購入制限付きとは……」
「既にグッズがマルカリに流れてて……」
「転売ヤー死ね」
あの会話、間違いなくお前らだ……。
顔を見たこともない80万人のお前らのうち数人が、今眼の前に……!
なんかちょっと感動する光景だ。
委員長さんはこの光景を見てうんうんうなずくと、冒頭の宣言を口にするのだった。
席に通されて、私たちは最小限の発声でお料理を注文する。
委員長さんはきんぴらゴボウとコーヒーフロート。
私はゴボウと鳥の甘煮にライスとアイスティー。
「このコラボは端的に言って正気ではありませんね」
そんな事を言いながら、風花委員長はめちゃくちゃ嬉しそうだった。
Aフォンでバリバリに撮影している。
そしてきんぴらを食べてからコーヒーフロートを飲み、うーんと唸った。
「未体験の食べ合わせ……!」
「そ、それはそうですよー」
私はゴボウと鳥の甘煮をオンザライスして、もりもり食べる。
「はづきさん、普通にがっつり食べてますねえ……! コラボで緊張しててももりもり食べる人はなかなか珍しいですよ」
「お、お腹がすくので……!」
ゴボウはうちとはちょっと違う味付けになってるけど、美味しい美味しい。
あっという間にライスと料理を食べてしまって、私はアイスティを飲み始めた。
隣で委員長さんが色々カフェの分析を話しているところで、周囲の音にも耳をそばだててみる。
「コースターかわいいー!」
「これだけで八種類あるらしいよ」
「エメラクさんが描き下ろしてくれたはづきっちグッズでしょ? 全部欲しい~」
「ほんと、推せるよねー」
女子にも好評で嬉しい……。
「普通にゴボウうめえ」
「今全国的にゴボウが品薄になってきてるらしいな」
「ゴボウ特需じゃん」
「じゃーん」
「あっ、ゴボウの木刀売ってるのか!」
「どう見ても配信者のグッズには見えぬ……」
「ボタンを押すと光るんだ」
「うわーっ、親の顔より見たゴボウの光」
「もっと親の顔見ろ」
みんな楽しんでくれている。
私は思わずニコニコした。
「はづきさん、すっかり配信者の顔になりましたね」
委員長に言われて、私は目を丸くした。
「は、配信者の顔ですか」
「皆さんに楽しんでもらいたい、楽しんでもらえて嬉しいっていう、そういう顔です。始まりはみんな自分のことですけど、いつかリスナーの方々を巻き込んで、みんなのことになっていくんですよね」
委員長が微笑む。
そして、
「いいことを言ってしまった。こういうところは、編集でカットします」
と無情に宣言した。
プロ意識~!!
「ではお腹も膨れたところで、河岸を移して歩きまわりましょうか」
「お腹も膨れて……?」
私が首を傾げたので、委員長さんがハッとした。
「まさかはづきさん、まだ食べるつもりで……?」
「あ、はい。メニューを一通り制覇しようと……」
「それは美味しい映像です……。わたくしはあまり食べられないので、その分をはづきさんに奢りましょう。さあ、食べて食べて……!」
わ、私が食べる姿がなんで美味しい映像なんだ……!
結局私は、コラボメニューを制覇し、満腹で帰宅することになったのだった。
なお、私がめちゃくちゃいっぱい食べてるところは、委員長さんの動画のサムネに使われて大いに受けた。
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