47 / 517
イケてる? 私の勇躍編
第47話 ウサギとご一緒伝説
しおりを挟む
スタッフの顔合わせと言う名の飲み会があるらしいんだけど、全部兄が断ったみたい。
『金が発生しない。地上波の連中は取材や取引相手をタダで済ませる事に正義を感じているからな』
「そ、それはなんか歪んだ考えでは……!」
兄がプンスカ怒りながら言うので、なだめる私なのだ。
本日もいつも通り、ザッコを使った会話。
このちょっと前まで、カンナちゃんとお喋りしたりしてたんだけど。
向こうもそろそろレコーディングが始まるとかで、レッスンの追い込みが大変らしい。
……冒険配信者がレコーディング……!?
歌ってみた動画を出すとか言ってたけど、冒険配信者が歌ってみた動画……!?
よくわからない世界過ぎる。
でも、そうやって人気を稼いで行かないと登録者は増えないし、同接だって増えないからダンジョン配信できないもんね。
仕方ないのかもしれない……。
私もゴボウのお料理配信とかした方がいいのか……?
ダンジョンより楽そうだし、今度やろう……。
私のゴボウ料理レパートリーは七つくらいに増えている。
お前らに、このレパートリーを拡散してやってもいいかも知れない。
『ということで、ピョンパルを招待した』
「うん」
なんか兄が喋ってたのを聞き流していた。
突然誰かの名前が出てきて、私は適当に相槌を打って……気付く。
えっ!?
ピョンパルを招待した……!?
『放送対策用のルームであるここで、俺たち三人で会議をするぞ』
『ぴょーん! ピョンパルだピョン! この度はお招きにあずかりありがとうございます』
軽い乗りの前半から、落ち着いた声色の女の人の変わった!
「ど、ど、ど、ど、どうも。きら星はづきです……」
『はづきさん、先日はお世話になりました。新しい仕事でもよろしくお願い致します』
凄く丁寧だ!
未体験のタイプ……。
『ということで……挨拶は終わりですね。これから地上波放送対策会議を始めたいと思いまーす!』
「よ、よ、よろしくお願いします!」
『はづきさん、皆さん最初は緊張するものですけど、それはとても大切ですよ。ダンジョン配信は危険ですから、緊張感を失ったバカから死にますから。この間のダンジョンハザードとか…なんてもう、本当にありえねーピョン! なーに考えてんだピョン!! お陰で予定してた配信がわやになったピョンなー!!』
「うわーっ!! 一瞬でピョンパルさんに戻った!」
『こいつのよそ行きモードはすぐに崩れる』
『一緒に炎上した仲の斑鳩さんに言われたくないピョンなー。ってことではづきちゃん、気をつけて下さい。地上波側、基本的に冒険配信者を下に見てますから。つまり舐めてかかってくるってことです』
「ひええええ」
『うちの会社の黒獅子リオネも、共演した芸能人にセクハラっぽいことをされて、裏でボコボコに叩きのめしたって言ってたピョン。証拠は撮影したから表沙汰にはならなかったピョンなー。年配ほどろくでなしがいるので気をつけて欲しいピョン!』
「は、はい! でも私はよわよわなので……!」
『配信中にゴボウで叩けば芸能人が物理的に粉砕されるピョンな! あっはっはっはっは!』
『おいこらうちの妹に何をさせようとしてる』
『アヒェー! シスコンが怒ったピョン!!』
兄とピョンパルさん、割りと仲が良さそうだ。
とりあえず明日、現場の下見に行こうという話になり、ピョンパルさんと待ち合わせするのだった。
登録者200万人を超える大配信者でしょ……!?
とんでもない人だ。
私が会ってきた中でトップクラス!
日が開けて、ガチガチに緊張しながら私が待っていると。
「お待たせしました」
落ち着いた声色の女の人がやって来た。
年頃は、水無月さんよりも上だと思う。
背丈は私よりちょっと低いくらい。
大人の女性だなーという雰囲気で、グリーンのサマーニットが似合ってる。
彼女はスススッと近づいてくると、
「失礼ですけど……はづきさん?」
と声を掛けた。
「あ、は、はい、私です! その……ピョンパルさん?」
「はい、私です……ピョン」
そう言って彼女は笑った。
待ち合わせ場所から、近くの喫茶チェーンへ移動する。
そこでピョンパルさんから、今度の現場の地図を見せてもらった。
「ここ。中古の住宅だったんだけど、ダンジョンハザード前に事件が起きて無人になったところね。建物が老朽化して取り壊される予定だったのだけれど、前の住人が怨霊化して占拠しちゃったみたいで……。あと、ハザード以降、モンスターの全体的な強さが上がったみたい」
「なるほど……。あ、あの、どうでもいいことかもなんですけど」
「うん、どうしたの?」
「全然ピョンパルさんと違う喋りだなーって。その、普段の……」
「あれ、外でやったら一発で私だってバレるから……。声色ともども完璧に抑えてる」
「な、なるほどぉ」
「はづきさんもそのまんまだから、気をつけたほうがいいよ。あなた多分、かなりガチ恋勢が多い……!!」
「ひえっ、私がですか!! あひー!?」
「無自覚だったピョンか!? かーっ!! これだから天然は!! あんたの仕草、アーカイブを見たらどれもこれも男を迷わせる魔性の女ムーブピョン! ガチ恋勢量産システム、既に完成していたのか……!!」
ちょっと盛り上がって声が大きくなってしまった!
「あれ……? はづきちゃんとピョンパルの声がしたような……」
「誰か動画見てる……?」
「異常に臨場感があったような」
いけなーい!!
私とピョンパルさんは口を押さえて黙り込んだ。
二人でアイスラテを一気飲みして、現場下見の続きに出かけることにするのだった。
『金が発生しない。地上波の連中は取材や取引相手をタダで済ませる事に正義を感じているからな』
「そ、それはなんか歪んだ考えでは……!」
兄がプンスカ怒りながら言うので、なだめる私なのだ。
本日もいつも通り、ザッコを使った会話。
このちょっと前まで、カンナちゃんとお喋りしたりしてたんだけど。
向こうもそろそろレコーディングが始まるとかで、レッスンの追い込みが大変らしい。
……冒険配信者がレコーディング……!?
歌ってみた動画を出すとか言ってたけど、冒険配信者が歌ってみた動画……!?
よくわからない世界過ぎる。
でも、そうやって人気を稼いで行かないと登録者は増えないし、同接だって増えないからダンジョン配信できないもんね。
仕方ないのかもしれない……。
私もゴボウのお料理配信とかした方がいいのか……?
ダンジョンより楽そうだし、今度やろう……。
私のゴボウ料理レパートリーは七つくらいに増えている。
お前らに、このレパートリーを拡散してやってもいいかも知れない。
『ということで、ピョンパルを招待した』
「うん」
なんか兄が喋ってたのを聞き流していた。
突然誰かの名前が出てきて、私は適当に相槌を打って……気付く。
えっ!?
ピョンパルを招待した……!?
『放送対策用のルームであるここで、俺たち三人で会議をするぞ』
『ぴょーん! ピョンパルだピョン! この度はお招きにあずかりありがとうございます』
軽い乗りの前半から、落ち着いた声色の女の人の変わった!
「ど、ど、ど、ど、どうも。きら星はづきです……」
『はづきさん、先日はお世話になりました。新しい仕事でもよろしくお願い致します』
凄く丁寧だ!
未体験のタイプ……。
『ということで……挨拶は終わりですね。これから地上波放送対策会議を始めたいと思いまーす!』
「よ、よ、よろしくお願いします!」
『はづきさん、皆さん最初は緊張するものですけど、それはとても大切ですよ。ダンジョン配信は危険ですから、緊張感を失ったバカから死にますから。この間のダンジョンハザードとか…なんてもう、本当にありえねーピョン! なーに考えてんだピョン!! お陰で予定してた配信がわやになったピョンなー!!』
「うわーっ!! 一瞬でピョンパルさんに戻った!」
『こいつのよそ行きモードはすぐに崩れる』
『一緒に炎上した仲の斑鳩さんに言われたくないピョンなー。ってことではづきちゃん、気をつけて下さい。地上波側、基本的に冒険配信者を下に見てますから。つまり舐めてかかってくるってことです』
「ひええええ」
『うちの会社の黒獅子リオネも、共演した芸能人にセクハラっぽいことをされて、裏でボコボコに叩きのめしたって言ってたピョン。証拠は撮影したから表沙汰にはならなかったピョンなー。年配ほどろくでなしがいるので気をつけて欲しいピョン!』
「は、はい! でも私はよわよわなので……!」
『配信中にゴボウで叩けば芸能人が物理的に粉砕されるピョンな! あっはっはっはっは!』
『おいこらうちの妹に何をさせようとしてる』
『アヒェー! シスコンが怒ったピョン!!』
兄とピョンパルさん、割りと仲が良さそうだ。
とりあえず明日、現場の下見に行こうという話になり、ピョンパルさんと待ち合わせするのだった。
登録者200万人を超える大配信者でしょ……!?
とんでもない人だ。
私が会ってきた中でトップクラス!
日が開けて、ガチガチに緊張しながら私が待っていると。
「お待たせしました」
落ち着いた声色の女の人がやって来た。
年頃は、水無月さんよりも上だと思う。
背丈は私よりちょっと低いくらい。
大人の女性だなーという雰囲気で、グリーンのサマーニットが似合ってる。
彼女はスススッと近づいてくると、
「失礼ですけど……はづきさん?」
と声を掛けた。
「あ、は、はい、私です! その……ピョンパルさん?」
「はい、私です……ピョン」
そう言って彼女は笑った。
待ち合わせ場所から、近くの喫茶チェーンへ移動する。
そこでピョンパルさんから、今度の現場の地図を見せてもらった。
「ここ。中古の住宅だったんだけど、ダンジョンハザード前に事件が起きて無人になったところね。建物が老朽化して取り壊される予定だったのだけれど、前の住人が怨霊化して占拠しちゃったみたいで……。あと、ハザード以降、モンスターの全体的な強さが上がったみたい」
「なるほど……。あ、あの、どうでもいいことかもなんですけど」
「うん、どうしたの?」
「全然ピョンパルさんと違う喋りだなーって。その、普段の……」
「あれ、外でやったら一発で私だってバレるから……。声色ともども完璧に抑えてる」
「な、なるほどぉ」
「はづきさんもそのまんまだから、気をつけたほうがいいよ。あなた多分、かなりガチ恋勢が多い……!!」
「ひえっ、私がですか!! あひー!?」
「無自覚だったピョンか!? かーっ!! これだから天然は!! あんたの仕草、アーカイブを見たらどれもこれも男を迷わせる魔性の女ムーブピョン! ガチ恋勢量産システム、既に完成していたのか……!!」
ちょっと盛り上がって声が大きくなってしまった!
「あれ……? はづきちゃんとピョンパルの声がしたような……」
「誰か動画見てる……?」
「異常に臨場感があったような」
いけなーい!!
私とピョンパルさんは口を押さえて黙り込んだ。
二人でアイスラテを一気飲みして、現場下見の続きに出かけることにするのだった。
20
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜
代永 並木
ファンタジー
井坂蓮二、23歳 日々サービス残業を繰り返し連続出勤更新し続け精神が疲弊しても働き続ける社畜
ふと残業帰りにダンジョンと呼ばれる物を見つけた
ダンジョンとは10年ほど前に突如現れた謎の迷宮、魔物と呼ばれる存在が闊歩する危険なダンジョンの内部には科学では再現不可能とされるアイテムが眠っている
ダンジョンが現れた影響で人々の中に異能と呼ばれる力を得た者が現れた
夢か金か、探索者と呼ばれる人々が日々ダンジョンに挑んでいる
社畜の蓮二には関係の無い話であったが疲れ果てた蓮二は何をとち狂ったのか市販の剣(10万)を持ってダンジョンに潜り己の異能を解放する
それも3等級と呼ばれる探索者の最高峰が挑む高難易度のダンジョンに
偶然危機に瀕していた探索系配信者竜胆天音を助け社畜の傍ら配信の手伝いをする事に
配信者や異能者に出会いながら探索者として活躍していく
現2章
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる